「あけましておめでとう諸君!今日の授業は実践報告会を行うそうだ!」
冬休みの間に得た成果や課題等を共有しようという事で、ヒーローコスチュームに着替えてグラウンドαまで。少し硬さの取れた様子で飯田はクラスメイト達にそう伝えた。
それから数分とせずに相澤が教室に着いた頃にはコスチュームケースを抱えて移動する直前という所で、何人かの「あけおめー!」という軽い挨拶を受けながらすれ違っていく。
「本日の概要伝達済みです。今朝伺った通りに」
「……そうか」
「飯田が空回りしなくなったなー」
「マニュアルさんだっけ?インターン先」
「ああ!保須でチームを組んでリーダーをしていらしてね……」
この短期間で随分と変わったな、なんて自分らしくない感傷に浸るような思いを感じてしまう。入学したてのお堅い雰囲気から柔らかな物腰というのを学んだのだろう。相澤は顔にこそ出さなくともどこか嬉しそうにしていた。
……しかしすぐにメッキが剥がれてしまうのは頂けない。柔らかい物ごしを学んだのはいいが、その腰振りの動作はやめておけと言いたい。誰がどう見ても変態のソレだぞ。
更衣室に着いた生徒達はそれぞれのコスチュームを見てわいわいとはしゃいでおり、インターン先で感じ取ったらしい必要な機能や不要な部分を改良した事に気づいて楽しく話し合っていた。
例えば麗日の装備である耳郎が『うららかリスト』と呼んだソレはずっしりと重たく、個性によって重さが邪魔にならない彼女だからこその装備になっている。中にはワイヤーが入っているそうだ。
一方で青山は騎士の甲冑のような重装甲だったものが少し軽量化されていたり、尾白や砂藤は手足の保護となるプロテクター付きのグローブやブーツを履いていたりと基本的な部分を改良した者もいる。
「わ〜た〜が〜し〜機だ!!」
「アレ?オールマイト?」
「相澤先生は?」
「ヘイガイズ。私の渾身のギャグを受け流すこと水の如しだね」
一人アップデートもクソもない脳筋がいたようだがそれより相澤先生is何処?がA組の総意だった。綿菓子機を抱えた脳筋は何しに来たの?という視線を向けられて少し泣いた。*1
どうも相澤は急用が入ったらしく、手が空いていたオールマイトが代わりに見ることになったそうだ。本当はオールマイトにかかってきた電話だったらしいが、何やらプレゼントマイクに首根っこを引っ掴まれて連れていかれたとか。
「それじゃあ改めて!!冬休みの間に得た成果、及び課題等の共有の為の対ロボットの戦闘訓練を始めよう!!」
「ロボットなんスか?」
「その方が思いっきりやりやすいだろう?一思いにバラバラにしちゃってくれ」
使われるのは入試の時のロボット達を改造した物。より高度で複雑なAIを搭載し、強度や装備を向上させた代物だそうだ。
とりあえず今回は100%を見たいので下手に生身の人間を相手取らせるくらいならロボットを相手させて、全力を出させて気持ちよくぶっ壊してもらおうということらしい。
今更入試の時の0ポイントにすら臆することもない彼らには本当に単なるサンドバッグにしかならないが、むしろ無双ゲームのような爽快感すらあると思われる。
あの日は苦労したロボット達を相手に比較する、という意味でも最適な相手だ。
『去ねヤ人類!!俺タチがこの世界のスカイネットだ!!』
誰の趣味だよ、なセリフを再生しながら殺到するロボット達。入学したての頃ならば逃げの一手になる者もそう珍しくない物量攻めを前に、青山は笑みを崩さなかった。
「ネビルセーバー☆」
「新技!!いいな、ソードだ!!」
「まだなんかするっぽいぞ?」
臍から出るレーザーを剣のように扱い、少々癖のある動きで一刀両断。しかしそこで止まらないのが雄英生。グローブとブーツだけが見える少女葉隠が参戦すると、剣状に保たれていたネビルセーバーが変則的な軌道を描いて背後のロボットを貫いた。
「曲げた!?」
「見てて気持ちいいな」
「ふふん!光の屈折を使ってグイッと出来ちゃうんです!」
彼女の【透明化】は光の屈折を利用したもの。そこに自分の意思で屈折を調整出来るようにしたことで、光線系の個性に干渉できるようになった。
他の者には見えていないが、間飛の探知能力でニコニコと笑っているのが確認できる。新技というのはやはり心をくすぐるらしい。
どうだ!と話している葉隠達だがロボットはこれで全てではない。更に追加されたロボット達が群れを成して襲ってくる。
『えぇいカカレ!!審判の日は今日なり!!』
「むっ!じゃあ次は私だ!」
その前に立ちはだかるのは芦戸。軽い身のこなしで跳躍しながら飛び込み、手のひらだけでなく全身から【酸】を放出する。
それは液体でこそあるもののスライムのようにブヨブヨとした強い粘性を有しており、着地したところに突撃してきたロボットの突進を防ぎきった。
「粘性MAX!アシッドマン!!」
同時に強力な酸性をも持つ液体に突っ込んだことでロボットの機体が融解。『ニンゲン……コワッ……』という断末魔を残して停止した。
具足ヒーロー・ヨロイムシャの下でインターンに参加していた三名の成果に全員が拍手を送る。でも半分くらい綿あめ食ってるから拍手がおざなりだ。何してんだ。
「この調子で各々のインターンの経過を見せてくれ!」
「押忍!!」
「行くか!」
インターン先、ライオンヒーロー・シシド。
参加者…尾白&砂藤。
純粋な近接戦闘に特化した二人が鍛えられたのは手数と先読みの力だ。
尻尾と手足を使って流れるように叩きのめす尾白、力に任せた連打によって一撃一殺を実現する砂藤。
「一連の流れをよりスムーズに……!」
「ラッシュは一撃一撃で仕留めるつもりで!!」
インターン先、鯱ヒーロー・ギャングオルカ。
参加者…耳郎&障子。
既に十分な性能だった索敵能力を更に強化中。間飛の探知能力を知ったせいで余計に扱きが厳しくなったらしいが間飛本人は無関係。
それだけに留まらず基礎的なフィジカル面も鍛えられたらしい。障子のパワーやスピードが増しており、耳郎は身のこなしに磨きがかかった。
「途中から変な対抗意識を燃やしていたな……」
「アレなんだったんだろうね……?」
インターン先、峰山ヒーロー・Mt.レディ。改めチーム・ラーカーズ。
参加者…上鳴&瀬呂&峰田。
一人一人では一点に特化している三人が手を組み、最短効率のチームプレイを行えるようになった。
峰田の【モギモギ】で機動力を奪ってから瀬呂の【テープ】で完全に拘束。トドメに上鳴が飛び込んで放電という極悪コンボをスムーズに決めた。
「うぇーい……」
「「うぇーい!!」」
インターン先、ノーマルヒーロー・マニュアル。
参加者…飯田。
四角四面な柔軟性に欠けることが多かった飯田はリーダーとして柔軟に対応するマニュアルを見て多くのことを学んだ。
どうしても一直線になりがちだった攻撃が流れるようにロボット達を蹴散らすように変化しており、一瞬だけの【レシプロターボ】の使用という器用な芸当すらこなすようになっている。
「物腰!柔軟性は大事だ!!」
インターン先、洗濯ヒーロー・ウォッシュ。
参加者…口田。
単独での戦闘力は勿論、個性による動物との意思疎通が欠かせない彼はより円滑なコミュニケーションが取れるよう……という方針で鍛えられた。
マスコットじみた挙動とまではいかないが、少々複雑な指示であっても即座に伝わる程度にはなったようだ。
「まだちょっと虫は怖い……」
インターン先、ウイングヒーロー・ホークス。
参加者…常闇。
速すぎる男に着いていく事に必死だった常闇だが、向上したのはスピードだけではない。総合力を鍛えられていた。
ホークスの速度に着いていく為には彼の行き先を予測する目、障害物を乗り越える機動力、一瞬で仕留める為の攻撃力が求められた。
【黒影】の腕が一気にロボットを薙ぎ払い、近づくことさえ許さない。
「まだまだ強くなれる……!」
『当タリ前ダゼー!!』
インターン先、BMIヒーロー・ファットガム。
参加者…切島。
開始と同時に【安無嶺過武瑠】を発動。ガチガチに硬められた手足が板チョコのように機体を砕いていく。
出し惜しまない。如何に早く戦意喪失させるかを教えられた切島は躊躇なく初手で切り札を切ってくる。全ての相手を秒で制圧する為に。
「っハァ……!!もっと、早く!!」
インターン先、ドラグーンヒーロー・リューキュウ。
参加者…麗日&梅雨ちゃん。
間飛がいた時は任せっきりだった攻撃面の強化。手首の装備からワイヤーを放ち、梅雨ちゃんも舌を使って巧みにロボット達を振り回す。
どちらかと言うとサポート寄りに思われていた個性ということもあって決定力不足だった二人だが、今となっては二人も立派に前衛を務められるだろう。
「ところでさっきのオールマイトストラップはツッコまない方がいいのかしら」
「できればそうしてクダサイ……」
インターン先、魔法ヒーロー・マジェスティック。
参加者…八百万。
八百万ほどではないが万能な個性を持つマジェスティック。彼の予測精度と効率的な動きはサー・ナイトアイのソレとはまた違った形で洗練されていた。
自信が持てなかった為に迷うことが多かった八百万。確かな予測能力を得たことで無限の手札に効率的な運用が加わり、脆いロボットでは何体いようがただの的にしかならなかった。
「これぞマジェスティックさんから教わりし予測と効率!ですわ!」
インターン先、フレイムヒーロー・エンデヴァー。
参加者…緑谷&爆豪&轟(&間飛)。
パワー、スピード、判断力。全てにおいての底上げをされた三人は特に成長が著しい。
【全身爆破】をものにしつつある爆豪、溜めて点での放出を会得した轟、振り回されていた個性を完全に制御してみせた緑谷。
最早ロボットなど敵にもならない。広域爆破で蹴散らされ、すれ違いざまに炎と氷に砕かれ、かち上げられた機体を【黒鞭】が捕まえる。
「……ちっ、“クラスター”はまだキツイな」
「炎と氷の融合……不安定過ぎる」
「まだ、一つ目……!!」
それでも尚、更に向こうを目指している。
そして最後の一人。インターン先はサー・ナイトアイ……なのだが、それ以外のヒーローからも教えを受けた間飛。
「……あれ?アイツ武器持ってる」
「何あれ?木刀?」
エンデヴァーの下でわずかな時間だが武器の使い方を見た緑谷達三人だけが彼の動きを見逃すまいと目付きを鋭くしていた。
軽く二、三回ほど素振りを終えると、間飛が動き出す。
『残った全てに火をつけるのだ!!』
「んじゃー……試すか」
殺到する機械を前にただ一言。「邪魔」と呟くと真っ直ぐに剣を振り抜いた。
バツンッッ!!!
「うぉわっ!!?」
「スッゲェ!?一振でぶった切った!!?」
「な、なんちゅう威力だよ……」
技術も何もあったものじゃない、力任せの横振り。たったそれだけで、放たれた衝撃波によってロボットの群れが真っ二つにちぎられた。
しかしまだ生き残りがいる。目視するまでもなく理解している間飛はすぐ様剣を投げつける。
グシャリ、と機体に突き刺さるどころか貫通し、そのまま向こう側へと飛んでいく……前に【瞬間移動】で回り込んでいた間飛がソレをキャッチ。そのまま近くにいたロボット達をまとめて薙ぎ払う。
「っとと……やっぱ武器は慣れねえな。向いてねえよ……」
それを成した当人は不満そうにそう言い放つ。いや十分では?
間飛が会得した物は武器の使い方を除けばそう多くないように見える。
しかしプロヒーロー10名、時にはサイドキックやルミリオンも入ってきたので最大13名を同時に相手取った事で先読みの精度と最短での無力化により磨きがかかっていた。
また情報の処理能力も向上し、現在はせいぜい半径5mに絞っているがその空間内を完全に把握している。
後の世に“もうコイツ一人でよくね?”と言われる化け物がいつの間にか完成していた。まだ伸び代あるとかマジで言ってる???
全体的に見てみれば欠点を克服しつつ強みを伸ばす、という最も望ましい成長を遂げていた。
同時に高水準に纏まっていた爆豪や轟のような者達は戦闘力、という一点においては既にプロ級の実力を備えてしまっている。
「皆しっかり揉まれたようだね!!……いや揉まれ過ぎまであるけども。録画しておいたから相澤君にも渡しておくよ」
既に引退した身のオールマイトからしても頼もしいことこの上ない。とっくに自分の手を離れている弟子を見ながら、自分の時代が終わったことを再確認させられた。
これからもインターン頑張って、という簡素な言葉で締めくくられた後は生徒同士でまたわいわいと話し合いが始まった。
「間飛くーん!それ何!?木刀!?」
「なんかめっちゃ軽い素材の木刀っぽいナニカ」
「木製ではない……素材によっては私でも創れるかもしれませんわ」
「ちょっと貸してくれないか。持ちたい」*2
「緑谷使えてたな」
「ご迷惑おかけしました……」
「緑谷お前なあ、俺の立場がなくなっちまうじゃん。なんてことしてくれんだコノヤロー」
「轟君が速いイケメンになっちゃった」
「いや……まだエンデヴァーには及ばねえ」
「基準が現No.1なのおかしいからね?」
「バクゴー冬克服したのか!?」
「してねェわ!!圧縮撃ちしただけだわ!!」
「お互い寒さには難儀するわね。ケロ」
……ちょっと烏合の衆が過ぎる気がしなくもない。
Q.間飛はこれから木刀装備がスタンダード?
A.お試しなのであんまり使わない。
Q.原作と比較するとA組はどのくらい違うの?
A.この時点で何人かは最終決戦時点の実力に近づいてる。誰とは言わないが【クラスター】と【燐】を会得すればもう最終決戦時点と同じレベル。
Q.コレAFOサイドに勝ち目ある?
A.そこになければないですね。