Q.前回の間飛やけに【浮遊】に辛辣じゃね?普通に便利で強いと思うんですが。
A.間飛「他の個性が有用だから相対的に優先度が下がった。というか【浮遊】は他と比べてもあれば便利程度だからしゃーない」
だそうです。
黒霧による垂れ込みから行われたのは敵勢力の確認だった。
ここで一人残らず潰しきらなければまた魔王は水面下に潜むだけ。故に脳無の生産工場とオール・フォー・ワンだけは確実に、オーバーホールとリ・デストロも逃してはならない。
黒霧が把握していたのはそこがどこかの病院の地下空間に作られていたということだけで、それ以上のヒントは持っていなかった。
「……もしかしたら俺か君に潜入任務を任されてた可能性もあったんだろうね」
「その場合は多分私になるでしょうね。【変身】出来る私ならどこでも忍び込めるので」
「可愛い可愛い後輩に任せるには重荷過ぎるし、個人的には出る幕が無くてホッとしてるけどね」
事務所の一室でホークスと渡我被身子は気だるげに話す。
今回の一件が想像よりもずっと大規模な戦いになりそうだと判断した公安により、調査より先に信用が出来るヒーロー達への通達を優先していた。
オール・フォー・ワン達が潜んでいるであろう病院の捜索は他のメンバーに任されており、プロヒーローにはホークスから、雄英高校には渡我被身子から連絡するように任されている。
情けないがコチラの最高戦力は学生と半ヴィジランテの連合の一人……この二人が組めばいつぞやのウォールマイトも目じゃない、無限に【瞬間移動】してSMASHを叩き込んでいく使い捨ての大砲を生産できてしまう。
「……後輩ちゃんの彼氏君強過ぎない?」
「まだ彼氏じゃないですが!!?……コホン、まあ、言いたいことは分かりますが」
「俺は俺で色々考えてたのにさー……ぜぇーんぶパーだよ。嬉しいことに」
「嬉しいならいいじゃないですか」
「そーだけどさぁ……」
ホークスとしては異能解放軍に潜入し、万が一オール・フォー・ワンと合流でもされようものなら、すぐにでも動けるようにするつもりでいた。
それがどういうわけか異能解放軍の大半が泥花市で削られ、ソレを知ったもう半分からも脱退者が続出。気づいた時には十分の一までに人数が落ち込んでいた。何だよウォールマイトて。脳筋の極みみたいな解決方法出しやがって。
とりあえず確実に言えるのはホークスがアレコレ手を回すよりもオールマイトに殴り込ませた方が手っ取り早かったということだろう。
「はー……
「いいんじゃないですか?その日まで負けなければ」
「……言うようになったね後輩ちゃん。先輩ちょっと嬉しいやら悲しいやらで複雑だよ」
「まあ移くんといい先輩といい負ける気がしない人が多いから言えることなんですが」
簡単ですよね?と笑うトガを前にホークスは両手を上げて無言で降参を示した。
◇
「どうじゃ?脳無の製造は」
頑なに名前を明かすことがなかったドクター……改め殻木球大は肩で息をするオーバーホールを揶揄うように労う。
殻木の顔には『それ見ろ、簡単にはいかんだろう?』という想いが滲み出ており、その裏には長年の研究成果をそう易々と再現されてなるものか……なんてプライドが見えている。
呼吸を整えるのに数秒を費やし、ようやっと口を開いた。
「全くだ……まだ慣れてないとはいえニアハイエンド一体に30分もかかるとは」
「さんっ、は?いや、嘘じゃろ!?」
「事実だ。もう少し短時間で作らなければ到底間に合わん」
時間かかり過ぎるわー……すまんの、なオーバーホール。何だその『また俺なんかしちゃいました?』みたいな態度は。
殻木の見積もりではどんなに優秀でも半日で一体が限度だと思っていたのだが、執念によって研ぎ澄まされた技術と知識はその上を行っていたようだ。
なんならまだ早く出来る余地があると思っているらしく、休憩を挟んだらまた脳無を増やすつもりでいる。
現在脳無の数はせいぜい五千体。素体として人間三体を使用するのだが、異能解放軍を見限った連中を拉致して来た為に材料に困ることは無い。後はとにかく量産するだけだとオーバーホールは瞳の奥に仄暗い炎を灯し、休憩に向かった。
「……ま、まあ戦力が増える分にはええわい。何より奴が作っているのは所詮
「機嫌が悪そうだなドクター」
「む、リ・デストロ……いや四ツ橋力也と呼んでやるべきかの?」
「出来ればリ・デストロでお願いしよう。それよりかの魔王は何処に?」
もう一人の協力者であるリ・デストロ。彼もまたオール・フォー・ワンの軍門に下ってでもことを成し遂げる必要があると思ってしまっている。
最早真っ当な彼の部下はスケプティックやキュリオスのような幹部しか残っていないというのに、何をどうやって解放思想を広められると思っているのか。
既に後がないリ・デストロはもう狂気に縋るしかない。そうでなければ偉大なる先人から跡を継いだ異能解放軍の壊滅を受け入れるしかなくなってしまう。
野心や希望に満ちていた瞳は粘ついた妄執に曇り、今の彼は魔王が必要だからと言えばスケプティックだろうがキュリオスだろうが差し出してしまうだろう。
「酷い顔をしとるのう。そこまでして見届ける価値があるものかね」
「一度は離反しても私の部下だったことに変わりは無い……最高指導者として最後まで見届ける義務がある」
胸が張り裂ける思いだと語るリ・デストロ。彼はオーバーホールや殻木が脳無を作成する現場に同席し、人をやめるまでの過程から目を離さない。それが彼らを導く者としてのケジメだと信じて。
しかし助ける事だけはしない。彼らは明確な裏切り者であり、我々を見限った者なのだから……と言われて納得する者はいるのだろうか。
「して、オール・フォー・ワンは?」
「調整中じゃよ。マキアと共にな」
「……それではどうしようもないか」
「何の用事だったんじゃ?」
「いや貴方でも構わなかった。一つ尋ねたいのだが……」
「荼毘……轟燈矢について何かご存知ではないか?」
◇
そろそろ春休みも終わる。春休みが明けてしまえば二年生へと上がり、新入生達から追いかけられる立場に変わる。
連日のインターンでクタクタの生徒達が共有スペースでソファに身体を預けながら、これからどう変わっていくのかを想像して語り合っていた。
そんな中、帰寮したばかりの麗日がスマートフォンの画面を覗き込んで首を傾げながらつぶやいた。
「あ……今度のインターンは遠征なんだ」
「あら、本当ね」
元々インターンではそれなりに移動を挟むことが多く、一々通達するのではなく事務所についてから話すことがほとんどだ。もし先に通達されるのであれば現地集合でお願いしますという事になる場合が多い。
しかし今回の遠征はそう遠い距離でもないのに事前通達が行われており、何かあったのかと疑ってしまう。
その呟きを拾った上鳴は反射的に言った。
「梅雨ちゃん達も?俺も俺も!」
「え、僕達もその日遠征だよ!?」
それをさらに緑谷が反応し……と偶然にしては多くの生徒達が同時に遠征に向かう事が判明。というかこの場にいる者達は全員遠征のようだ。
ここまで偶然が重なればそれは必然だ。もしかして何かあった?と思いつつもさすがにそうそうヤバいことは起こらないかとその考えを横によけた。
大方普段の担当地域を入れ替えてみよう的な試みでもしているのだろうとその時は何も思わなかった。
そしてインターン当日。
「……間飛と、緑谷だけいねえな」
「別のところにいるんじゃね?上鳴とかもいねえし」
「つか何でこんなに集められて……」
「よォし!あの山の麓にヒーロー達が集まっている!!我々は後方で住民の避難誘導だ!!」
「「「…………え?」」」
想定は尽く覆される。
オバホ「」
殻木「……大丈夫かの?」
リ.デストロ「起こさないでやってくれ。死ぬほど疲れてる」
オバホ「」
殻木「いい栄養ドリンクを持ってきてやるか……」