え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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開戦の行進

 

 

 

 開戦の合図は無い……はずだった(・・・・・)

 

「何だコイツら!?一体一体が強いぞ!!」

「硬ェし速ェ!?」

「やっ、やめろォ!?こっちに来るな!?」

「クソ!!聞いてた話と違うぞ!?バレてないんじゃなかったのかよ!?」

「泣き言を漏らすな!絶対逃がすなよ!」

「ああクソォ……!何で、何でっ……!?」

 

 

 

「何で脳無がもう出てくるんだよ!!?」

 

 

 蛇腔病院を中心に展開されていたヒーロー達による包囲網を襲ったのは漆黒の怪物……脳無だった。

 

 突如騒がしくなった病院内に何事かと警戒していた時、ガラスや壁を破って現れた。開戦時点で想定外の奇襲を打たれるとは思わず、オール・フォー・ワン討伐に回すはずだったエンデヴァーを筆頭としたトッププロまでもが参戦を余儀なくされた。

 

「ンの……!!コイツらそこそこ強いな!!」

「お前にゃこれでもそこそこ止まりか!!頼もしいじゃねえか!!」

IXA(・・・)!?滅茶苦茶つっよ……」

 

 同じく最前戦に配置された間飛からしても面倒に感じる程度には強い。耐久力で言えばエンデヴァーやオールマイトが必殺技を持ち出す程度には頑丈だと言えば伝わるだろうか。

 

 どんな命令を受けているのか脳無達はヒーローの横を素通りするような素振りすら見せており、おそらく市街地に向かえとでも言われているのだろうか。

 とにかく前に立ちはだかってでも止めるしかなく、初手は完全にオール・フォー・ワン達に譲ることになってしまった。

 

「一体何考えてやがる……!?」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 時は遡り脳無の出現から10分ほど前の事。

 

 意識が目覚めていないものの何とか残していた個性によって病院を包囲されつつあるのは分かっていたオール・フォー・ワン。

 しかし意識が無いので殻木やリ・デストロ達にそれを伝える手段はなく、ギリギリまでギガントマキアの肉体を調整する事にしていた。

 

 オーバーホールも決戦が近いことを理解していたのか休眠を取っており、あと数分もすればアラームによって目を覚ますだろう。

 

「最終的に用意できた脳無は13000……ニアハイエンドと呼べるのはその内の2000程度か」

「そこにハイエンドが13、だったかな?あの時の無限に出てくるオールマイトを思えば頼りないが……こちらから打って出れば問題ないだろう」

 

 数だけ増やしても無駄じゃないか?というスケプティックの意見を黙らせたのは他でもないリ・デストロだった。

 

 トゥワイスの個性による圧倒的な数の暴力は確かに恐ろしい。しかし忘れてはいけないのはその起点にはどうしてもトゥワイスの増殖が必要であるということだ。

 

「トゥワイス君が自分を増やし、増やされたトゥワイス君がオールマイトを増やすことであの光景は実現していた……」

「自分だけならともかく、オールマイトで埋め尽くすにはワンテンポ遅れるという話じゃったな」

「……ならば準備をさせなければいい」

 

 ウォールマイトをも生み出せるトゥワイスの明確な弱点。それはノータイムで増やせる自分とは異なり、増やした自分にオールマイトを増やさせるという手間がかかる事だ。

 

 生み出されたトゥワイスでは分身の生成に限界があり、分身自体の強度も著しく落ちている。

 トゥワイスがいればあらゆる数的優位は覆せるが、それは圧倒的な個人を前にした時に無意味になるのだ。

 

 要は増やされたトゥワイスの時点で倒してしまえばオールマイトは増えない。トゥワイスを倒すならば質と量を兼ね備えた奇襲が一番成功率が高いのだ。

 

 衛星カメラの映像でトゥワイスの位置だけは監視を続けられており、その気になれば何時でも仕掛けられる。

 

 ……もっとも、この時点では先手を打っていたのはヒーロー側だったが。

 

 既に包囲されていることなど知る由もないリ・デストロは不機嫌そうに鼻を鳴らしながらオーバーホールが起きているかを確認に行こうとした。

 

 

 その時だった。

 

 

「リ・デストロォ!?大変です!!」

「……?スケプティック、君がそんなに慌てるとは一体何が───」

 

「ニアハイエンドが脱走した!!」

 

「───は?」

「なぬ?」

 

 スケプティックの悲鳴じみた報告に思わず一瞬惚けてしまう。何がどうしたって?ニアハイエンドが?脱走?何で?

 

「な、何故そうなる!!?起動しなければ動かないのでは!!?」

「まさか……オーバーホールの個性ありきで作った個体なら……いや、しかし……」

「何かあるのか!?そうなる原因が!」

 

 脳無の仕組みなどさっぱり知らないリ・デストロは慌てふためき、殻木は顎に手をやってうなり出した。どうも心当たりがあるらしい殻木の肩を揺さぶりながらリ・デストロが尋ねた。

 

「おおお、落ち着かんかい!?オーバーホールが作った脳無には感情らしきものが見られたと言うだけの話じゃ!!……ニアハイエンドとハイエンドの違いというのは、知性を持つかどうかで……」

「……まさかニアハイエンドには素体の意思が?」

「考えられるとすればそれくらいしか無いわい!でなければ脳無に感情などあるものか!!」

 

 殻木の回答は単純明快。忠実な死体だったはずの脳無に人間としての意識が残っていたのではというもの。

 

 事実脱走した脳無達にはとある目的があった。

 

 

 それはお家に帰りたいという子供のような、酷く切実な願い。

 

 

 自分の肉体がどうなっているのかも理解できないほどに低下した知能の中、辛うじて残された意識に刻み込まれた最後の願いを叶えようとしているのだ。

 

 ニアハイエンドは待機状態から自力での覚醒に成功し、ついでに自分と同じ扱いを受けていたらしい他のニアハイエンド達も解放。あっという間に2000もの脱走兵が生まれてしまった。

 

「ど、どうする!!?あんなものを外に出してしまえば一発で我々の居場所がバレてしまうぞ!!」

「どうするもなにも手遅れじゃ!!腹をくくれ!オーバーホールを起こしてこい!!ワシは先生に伝えてくる!!」

 

 どちらの想定からも外れた開戦の正体。それは人の意志と願いを甘く見た殻木達のミスによるもの。

 

 既にどちらから仕掛けるなんて話ではない。最初の一手を打ったのはオール・フォー・ワンでもオーバーホールでもない、哀れな死体の行進によるものだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「クッソ……!バレてたってことか!」*1

「まんまと向こうの計画に嵌められちまった……!!」*2

「何てことをしてくれやがるオール・フォー・ワン!?」*3

 

 第一波のニアハイエンド達によって半壊しかけている包囲網だったが、帰宅を望む脳無達はほとんど戦闘ではなく逃走を狙っていた為に被害自体は少ない。しかし陣形も何もないくらいには掻き乱されてしまった。

 

 そこに飛び込んできたもう一つの報告。潜入していた渡我被身子からの通信が入った。

 

『こちら潜入捜査官トガです!』

「っ、ナガンだ!何があった!?」

『びょ、病院の地下から大量の脳無が出ようとしています!トゥワイスさんに準備するように言ってください!』

「……わかった!!おい!聞こえていたな!?」

「ああ!何だって!?」

「聞けよ!?」

 

 すいません。その人ちゃんと聞いてはいたんです。ちょっと人格が割れかけてるだけで。というか克服したんじゃねえのかよ。

 

「っしゃあ!!いくぜいくぜいくぜー!!」

「お、おお……!?何度見ても凄まじいな……」

 

 11000体の脳無VS無限のオールマイト。

 絵面がB級映画のソレだが現実で起こればとてつもない衝突になるだろう。

 

 その間にも病院内にいる患者や看護師達の避難誘導が続けられている。先程のように脳無が出てくるまでには何とか間に合いそうだ。

 

 トゥワイスの望みはたった二つだ。

 

 

「増えろ俺!!そんで増やせ俺ェ!!」

 

 

 愉快な行進(ラフィングパレード)”!!!

 

 

 爆発的にトゥワイスが増えていく。人間の海にすら見える規模のソレは秒を追う事に数を増やし、同一人物による包囲網の補強が行われる。

 

 ものの数分でトゥワイスによる人の壁が完成し、そこから更に【二倍】の個性が発動された。

 

 

「「「もう大丈夫……!!」」」

 

 

「「「何故って……!?」」」

 

 

「「「我々が来たァ!!!」」」

 

 

 

 

 

「……むさ苦しいな」

「アラフィフどころか五十代後半のマッチョだからな。増やせばそうもなるだろ」

 

 どうしよう。絵面がB級通り越してハジケリストになってる。

 

 

 

*1
いいえバレてませんでした。

*2
いいえ計画じゃありませんでした。

*3
AFO「僕のせいじゃないです」






オバホ「久々にまともな休みが取れた……個性で俺自身のメンテナンスも済んだし、とりあえず朝食でも───」
リ.デストロ「起きていたか!早速だがもう始まるぞ!」
殻木『お前さんが作ったニアハイエンドが脱走したせいじゃぞ!文句は受け付けんからな!』
オバホ「」

オバホ「わァ……!ァ……」

AFO「( ˘ω˘ ) スヤァ…」

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