「外は脳無地獄……中も脳無だらけ、か」
内部に突入して真っ先に視界に入ったのは無数の培養カプセル。ちょいと探知範囲を広げただけでも吐き気がするほどの数がいる。
しかし機械やら個性やらのせいか探知が安定しねえな。大まかには分かるがどこに何があるのかがちゃんと把握し切れない。
一緒に入ってきたミルコが警戒心剥き出しにしてるから何かしらヤベエのがいるんだろうが……【瞬間移動】頼りの俺じゃあ分からねえな。クソっ、こういう時に備えて別の手段を持っておくべきだったか。
「……IXA、気ィつけろ。強ェのがいそうだ」
「了解です」
「多分入口が複数あるからバラけてるとは思うが……全員纏めてはさすがに厳しいかもしんねえ」
……ミルコにそこまで言わせるナニカ、か。オール・フォー・ワンの隠し球か或いはさっきの脳無達の上位互換的な存在か。どちらにせよミルコが警戒する程度には危ないのかよ。
無理に突っ走ってもいいが……下手に先行し過ぎて孤立しちまうのも良くない。ここは起動されていないっぽい培養カプセルをぶっ壊しながら進むのが得策か。
既に20は壊したがこの分だとまだ全然あるな。不完全な探知でもそれらしい存在を山ほど探知できる。
「アら……もう来たノね」
「っ……!?脳無が……喋った?」
「オイオイオォイ!?こりゃエンデヴァーのオッサンが戦った奴と同じような奴か!?」
「お俺達、ハ……特別セイだ」
「げ、もう一体」
「……!」
なんてこった。こんなことがあっていいのか。
ただ強いだけじゃない、これはもっと別のナニカだ。
「ワタシ達は脳無の中でもより優レた存在……“ハイエンド”」
「…………」
「ク、クク……恐れルのモ無理はナい。プロならとモかく、学生ニは立ち向カう気にもならんダろう……」
「……IXA?」
USJで見た時と同じ黒い身体……まではいい。片方の男性素体っぽいやつがカッチョイイヘルメット被ってるのも別に気にならない。
問題はもう一体。恐らく女性を素体にしたらしい脳無。
「……なあハイエンド」
「何かしら?」
「一個だけ聞いていい……?」
「……?どうぞ……?」
「何でお前の方だけ無駄にディテール凝ってんの??普通にエロくて綺麗な見た目しててバグるんだが???」
「エッ、エロッ!?キっ……!!?」
(あえて俺モ黙っテいた事をこイつ……!!)
ぬぁんでテメェだけ黒い身体じゃなくて悪魔娘みたいな青肌してんだよ。しかも他の奴と違って頭部をしっかり美女のままにしやがってからに。
これ絶対脳無に改造した奴が見た目が好みだったからで残しやがったな。
俺知ってんだぞ。お前の素体になった奴、だいぶ前に『美しすぎる凶悪ヴィラン!?』とかいう見出しで紹介されてた奴だろ。さては改造の主犯良い趣味してやがんな?
「……なあIXA。それ今言わなきゃダメか?」
「当たり前でしょーが!?隣のイカしたヘルメット野郎もだけどカッチョイイもんはカッチョイイ!エロいもんはエロいンスから!!」
「お、おう……」*1
「コレの下脳の接合ガ緩イから着けテるだけなんダが。カッコイイのか……そソうカ……」
「〜〜〜ッッッ!!?」
「オ前はお前デ何ヲ照れテいる!?あイつらら敵だゾ!?」
「デ、でも……だだッて……」
くっ……出来ればアイツだけは生かしておいてやりたいくらいに見た目が好みだクソッタレめ。まさかこれが狙いかオール・フォー・ワン!?*2
釣り眉垂れ目の強気っぽいのに優しさが滲み出てるご尊顔が普通に良き……!加えて2mくらいの身長!ヒーローだったらリューキュウと同じくらい推してるレベルで好みなのがムカつく。
「えエい!?グダグダになるマえにお前達ヲ殺しテやる!!」
「よく分からんが構えろIXA!妄想だのなんだのは後にしろ!」
「クッソ……何とか味方に引き込みてェー……」
「……!!?!?」*3
望まない闘いがこんなに辛いとは。許さん、許さんぞオール・フォー・ワン。*4
◇
「オイオイ……あのクソ野郎、ずっと出し惜しみしてやがったのか?」
腹立たしいことこの上ないな。何がオールマイト用に調整した特別個体だ。あの時の脳無とは比較にならねえのがいたんじゃねえか。
今更ソレを望んじゃいねェが、USJの時にコイツらレベルを二体引っ張り出してりゃ勝ってただろうに。
「……いや、どの道間飛がいるか。じゃあどっちにしろあのクソ野郎の負けか」
「さっきから何のことだ。この趣味の悪いお人形遊びに付き合うのはゴメンだぞ」
ハイエンド……だったか?ドクターが頻りに『他の脳無とは格が違う!』とか吐かしてた脳無。
ああ、そういや合宿襲撃までは調整段階とか言ってたっけ。なら碌なテストも出来てねェモンを引っ張り出さなきゃならねえ段階まで追い込まれてるってことでいいのか?
「シシ死柄木ィ……トムラ!うらウらララ裏切り者ォ……!!」
「ごロズッ……!!ぐチゃグチゃにシてゴろず……!!」
「……の、割には知能が足りてねえな」
「言語機能もままならねェのが最高傑作たァ笑わせるな。そもそも見た目もガリとデブで情けねえ」
枝みてえな細長い手足のほっせぇ脳無に、玉みてえに丸々とした脳無。こうも極端な見た目でマヌケにしか見えねえのにハイエンド……いや、片方はギリギリハイエンドみてえなもんか?丸い方は言語機能が怪しいあたり格落ち感があるな。
細い野郎には手足に棘があるくらいだが……丸い方は間違いなく面倒くせえ物を詰め込まれてそうだ。細い方を荼毘に任せるか。
「荼毘」
「ああ……分かってる。どっちも焼き殺せばいいんだろ?」
「……荼毘?」
「……殺す気満々ダな?」
「こウ、躊躇イとかナいのか?」
「こんな動くだけの死体共に構ってる時間はねえんだろ?俺なら片手間に殺せる」
「荼毘?聞いてくれるか?お前にはまず──」
「いくぞ……【赫灼熱拳】!!」
「いやおまっ……!!?」
「え?」
「エ??」
……エンデヴァーの血筋って人の話聞かねえ遺伝子でもあんのか。あんなパンパンに膨れてる奴、どう考えても中に爆弾でも抱えてるとか思わねえのか。
一緒に連れてくる奴間違えたかもしんねえ。
◇
「……む、揺れたか?」
「そりゃ揺れるでしょうよ!外は脳無とオールマイトが殴りあってるんですから」
「むむむ……!しかしこれは一際大きい揺れだぞ……!?」
間飛達や転孤達がハイエンドによる足止めを食らっている頃、エンデヴァー達は誰かと遭遇することもなく地下への道を順調に進んでいた。
時折ズズン……!!と強く大きな揺れが起こり、地上での戦闘の激しさを物語っている。
ヴィランの逃げ場を限定する地下空間だが、一度崩れ始めればヒーロー達にも牙を剥く。楽観視していい環境ではない。
一刻も早くオール・フォー・ワンを撃破し、最小限の被害で戻らなければ危ない。しかし迂闊に、無警戒に踏み入れば数秒後にはこちらが死体に成り果ててしまう。
「エンデヴァー!私が先行しよう!私の個性ならば奇襲されようが防ぎ切れる!」
「ああ、頼む。このペースで進んでいては敵に猶予を与えるばかりだ」
故にだ。防御力と攻撃力が両立可能なクラストを先頭に据えて多少の無茶を前提にして進もうとするエンデヴァー達の足は速い。
機械用のチューブやケーブルが目立ち始めた床で足音を鳴らしつつ、より奥深くを目指して駆け抜ける。カンカンと響く硬質な感触が日常の延長線かつ、非日常の中に潜んでいた事実を突きつける。
足を進めて横に逸れた先の室内を見れば培養カプセルが乱立しており、今この瞬間には手を出さずとも見逃すべきでは無い不気味さと悪辣さを感じさせていた。
そうしながら進むこと数分。やがて閉塞感の強い空間は巨大な広間へと変化し、伸びていたパイプやケーブルがなんの役割を持っているのかも分からないスクランブルな景色にたどり着く。
明らかに河岸が変わった。この先に間違いなくオール・フォー・ワンがいる。少なくともエンデヴァーはそう考えた。
「ンまさかもうここまで来るとは……」
「ッ!?何者だ……!」
「そう強く警戒しないでいただきたいね。表向きは善良な企業の社長だぞ?」
先を急ごうとするエンデヴァー達の前に立ち塞がったのは生え際の後退が著しい男……デトネラット社の社長であるはずの四ツ橋力也だった。
ほんの一瞬、民間人だと思い込んだクラストが手を差し伸べようとして───こんな所にいるという強烈な違和感が手を引っ込めさせた。
「……ほう。私は助ける対象に入らない、と?」
「当たり前だ!!貴様は守られる立場ではない……討たれる側だ!!」
ある意味では脳無よりもよっぽど面倒な男とNo.1の闘いが幕を開けた。
Q.女素体のハイエンドちゃんってウーマンちゃんの事?何か作者の癖に染まってね?
A.そうですが何か。そうですが何か??FGOのカーリーで調べて出てくるキャラをイメージしていただければ。
Q.転孤達のところにいた奴らってもしかしなくてもキノコ食ってる有名な兄弟モチーフの奴?
A.さすがに体型が極端過ぎるので“ワ”が着く方でイメージするとそれっぽい。
Q.これリ・デストロヤバいんじゃ?
A.ヤバイっす。