え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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女性型脳無強過ぎ案件

 

 

 

 間飛達が地下に突入してから三分ほど経った頃、地上での戦いは泥沼と化していた。

 

 全ての脳無に搭載されているらしい【超再生】や【筋力増加】を前にして戦闘を継続していられるプロヒーローの数は極僅か。現時点で四割の脳無が捕縛、及び死亡しているというのに勢力としては互角……なんなら脳無の群れに傾きつつある。

 

 実験の果てに生み出されたとはいえ戦っている相手は元々は人間だった。加えて脳無に限っては殺害の許可が出ているとはいえ、ヒーローで生計を立てている者の大半が殺すことに慣れているはずもない。

 

 それに加え───

 

 

『一人でも多く!我らの敵を殲滅せよ!!恐れるな!我々には絶対の邪智暴虐たる魔王がいるのだ!!』

 

「ンの野郎……!さっきからアイツのせいか!!」

「間違いない!!アイツが喋った直後から脳無が強くなってる!!」

 

「……いやはや、まさか私の異能があのような生ける屍にすら効果があるとは。これも科学の賜物と言うべきか」

 

 ───異能解放軍幹部。解放コード:トランペットの【扇動】によるブーストを受けているのが原因だ。

 

 彼の個性である【扇動】は声に特殊な電磁波を乗せる事で精神や肉体的な強化を与えるという能力だ。

 しかしそれにはトランペットに心を許している必要があるのだが、それを脳無の指揮権に上乗せする形で条件を突破していた。

 

 何より彼はオール・フォー・ワンから個性を、彼の個性を最大限に活かす【電磁波】を貰っている。これによって声そのものがどれほど小さくとも、全ての脳無に【扇動】の影響が及ぶようになっていた。

 

 隙をついて狙おうにも、彼の近くには常に一体の脳無……それもハイエンドの脳無がいる。

 

「あなな貴方……前ニ出る必要はナかッたのではなくテ?」

「分かりやすい指揮官を晒すというのも一つの手ですよ?というか貴女がいるならここまで出てきた方がむしろプレッシャーをかけられるというものです」

「そソう……」

 

 ドス黒い身体から伸びる四本腕には何やらイカついグローブが装備されており、他の脳無と同じで脳味噌を剥き出しにした不気味を通り越してグロテスクな見た目の怪物。

 素体として【触手】と【放油】と【反射】を持った人間を使用し、ベースにキュリオスという異能解放軍の幹部を使用されている。

 

 元々異能解放軍の幹部は全員脳無の素体にする予定ではなかったのだが、脳無作成の残酷さに食ってかかった事でオーバーホールの怒りを買って殺されてしまっていた。

 どうせ死なれるくらいならばとオーバーホールはついで感覚でキュリオスを素体として使用。それを見たドクターまでもが参加し、いつの間にかハイエンドとして完成していたのだ。

 

「近づけば彼女の異能で【地雷】にされ、ついでに油をかけられてより大きい爆弾として死ぬことになる。そうでなくとも射撃に関しては彼女が【反射】してくれる。それでもよければ私を狙ってください」

「クソが……!」

 

 しかし鍛え上げられた解放戦士だけあってその性能は凄まじい。近寄ればどこぞの殺戮の女王よろしく接触されて爆弾化、遠距離からの攻撃は体を張って受け止めた後に【反射】するという厄介な存在になっていた。

 

 最も潰したい敵を最も厄介な存在が守っている。隙をつくには二人の様子を伺うしかなく、そんなことをしていると脳無にやられかねない。トランペットが前線に出たことでヒーロー達は気を取られてしまっているのだ。

 

 このままウォールマイトをも越えてヴィランの世に手を届かせる………そう思った時だった。

 

 

 

「んじゃこうするわ」

「な───」

 

「ッ!!トランペット───!!?」

 

 

 一世一代の大勝負。明らかにヤバイ怪物の真横へと誰にも気づかれぬまま辿り着き、手のひらを背中に当てるとトランペットを【圧縮】した。

 

 しまった。護衛対象を取られた事に気づき、思わず声を上げた瞬間、ハイエンドの動きが停止した。指一本動かすことなく、振り返った姿勢のまま硬直している。

 

「……っぷはぁ!!?死ぬかと思った!!」

「の割には余裕そうじゃないか。オジサンびっくりしちゃったよ」

「あんたと違っていきなりの最前線だぞ俺は……」

「そりゃ失敬。とりまコイツは……殺しとくか」

 

 ものの一瞬で二人を仕留めたのは稀代の奇術師を自称する男、Mr.コンプレスと……初の実践にしてトランペットの悲鳴を真似てハイエンドを止めた雄英生、心操人使。

 

 後方で待機していた二人を分身したオールマイトに投げさせ、コンプレスが落下地点の調整とトランペットの襲撃を決行。アドリブでその際の悲鳴を真似る事でハイエンドを【洗脳】し、命令待ち状態のまま何もさせることなく仕留めた。

 

「これで少しは楽になんだろ」

「うぇ……気持ちわりぃ」

「……あ、そか。お前殺しどころか死体すら見るの初めてだっけ?ごめんごめん」

 

 少々無茶な作戦ではあったが、勝てば官軍だろう。【扇動】のブーストが途絶えればウォールマイトで押し潰せる。そう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全てのオールマイトが崩れ落ちるまでは。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「……お前マジでソレ持って帰るつもりか?」

「今まで巻き込まれたこと引き合いに出してでも持って行きますが何か」

「お、おう……お前がそこまで言うなら……どんな趣味してんだコイツ」

「は、はわわわわ……」

 

 一方その頃。ハイエンド二体とエンカウントしていた間飛とミルコはとっくにハイエンドの一体をぶちのめし、“ウーマンちゃん”という個体名を与えられていたハイエンド脳無をお米様抱っこしながら最奥部を目指していた。真面目にやれって?コイツ大真面目なんだわコレで。

 

 

 ヘルメットを被った脳無は真面目に闘った。何かポンコツ化して使い物にならない相方を抱えながらも滅茶苦茶頑張った。

 しかし悲しいかな。お前の前にいるのは頭のおかしいヒーロー志望と脳筋思考の兎だ。ただでさえ中、遠距離を得意としていたヘルメットの脳無には荷が重すぎた。

 

 ミルコの蹴りを食らった後に脳天にスマッシュを叩き込まれて再起不能。多分一番お労しい末路になってしまった。

 

 で、ウーマンちゃんはどうするかという話になったのだが。

 

『お前俺の物な!』

『……はい!!?』

『無駄に殺すぐらいなら味方にしたい。いやマジで』

 

 間飛の趣味嗜好を除いてもウーマンちゃんは殺すには惜しい存在だった。というのも与えられた個性が有用過ぎるのだ。

 

 本来は(原作では)【液体化】や【炸裂】を組み合わせてのウォーターカッター戦術を目論んでいたのだが、どうも件の美しすぎるヴィランには適していなかったらしい。

 そこで他に合うものは、と探したところ【細胞活性化】や【硬化付与】といったサポート系の適性が高いことが判明したのだ。

 

 今彼女に搭載されている個性は上の二つと【超再生】に加え、体の一部ずつしか出来ないが【巨大化】や消耗を抑えられる【省エネ】と完全にタンク兼バッファーという性能で完成していた。

 

 正直ミルコですら『コイツ味方だと割と有用だな……』と納得してしまうほど。

 

『まあそれとは別に見た目が俺好み過ぎるからお持ち帰りしたいだけなんですが』

『ミルコさんの納得を返せコノヤロウ』

 

 それはそれとして八割は私利私欲だ。

 これが普通に生きた人間のヴィランならそんなことを言ったり思ったりもしないのだが、そこにいるのは作られただけで特に何も罪を犯していない実験生物なわけで。

 

 味方になってくれました!と言えば連合のように受け入れてくれるんじゃないだろうかという打算的な思いでウーマンちゃんにスカウト(強制)をかけているのだ。

 

 いやいやさすがに無理があるだろ、というミルコのため息を他所に。

 

『そ、ソの……よろしくオ願いいシます……』

『…………はあ!!?』

『ッシャオラア!!』

 

 まさかのハイエンド脳無さん完堕ち。これにはチョロインの称号さんもニッコリ。

 

 ドストレートで情熱的なお誘いをかけられたハイエンド脳無、あまりにもあっさりとオール・フォー・ワンとドクターを裏切ってしまった。判断が早い。

 

 

 ……蛇足だが、素体となった美しすぎるヴィランとやらは乙女回路を拗らせてドストレートな褒め言葉に弱かった、という情報をお伝えしておこう。

 

 

 

 そして現在、彼らはオール・フォー・ワン……もしくはドクターかオーバーホールを捜索している。オール・フォー・ワンは全ての元凶だから当然として、最悪残りの二人を確保していれば脳無は作れなくなるはずだ。

 

 オール・フォー・ワンだけなら取り逃したところでどうとでもなる。

 今回は来ていないがラグドールの【サーチ】でいつでも位置を探れるので、どこに逃げおおせても時間の問題になるのだ。

 

 だというのにオール・フォー・ワンどころかドクターもオーバーホールも見当たらない。

 

「クッソここの探知が出来りゃ一発なのに……!」

「……ソれなら私が手ヲ貸しマしょうか?」

「へ?」

「【活性化】」

 

 ウーマンちゃんがそう言った瞬間、間飛の探知能力が劇的に変化した。今までモヤがかかったようにぼんやりとしていた探知能力がくっきりと全体を把握できるようになったのだ。

 

「うおっ……!?な、何だこれ……」

「お前何した?」

「わタしの個性ノひととツに【細胞活性化】があるのだけれど……一時的に個性ヲ強化モででデきるの」

 

 この子マジで大当たりじゃん。口には出さなかったがミルコは心底コレを味方に引き込めた(かもしれない)事を喜んだ。

 

 間飛はウーマンちゃんを一度下ろすと、ニヤリと笑い───その場から掻き消えた。

 

 ギョッと驚くウーマンちゃんに『【瞬間移動】だよ』と簡素に告げるミルコ。大方今の一瞬で何かしら発見したのだろう。

 その後数秒と経たずにどこかで鈍い音が響き、また同じ場所に間飛が戻ってきた。

 

「で、何をしてきた?」

「オーバーホール見つけたから殴ってきた。そっちの方に進んでいくと多分倒れてるぞ」

「仕事が早イ……!!」

 

 哀れオーバーホール。魔王に引っ張りだされたかと思えばブラック社畜と化し、挙句の果てに画面外でノックアウトされてしまった。これ以上悲しい奴もそうそういまい。

 

 間飛の先導に従って進むと、確かにオーバーホールが目を回して気絶していた。本当に可哀想。

 

「よォし!後はドクターも……どした?」

 

 目的の片割れを仕留めた事に気を良くしたミルコが声を上げるが、間飛は訝しげな顔をして上を睨んでいた。あまり見ない態度に声をかけると、彼はポツリと小さく返事した。

 

 

 

 

 

 

「…………オール・フォー・ワンが、上にいる?」

 

 

 

 






ミルコ「……お前から見てアイツはどうなん?」
ウーマン「え、えっと……その……」
ミルコ「ん?」
ウーマン「褒められて、嬉しかった……デス///」
ミルコ(あっ、ダメな奴だコレ)


ウーマンちゃん
身長:229cm
体重:108kg
個性一覧
【細胞活性化】…回復&個性一時強化
【硬化付与】…触れた物質&生物の強度増強
【超再生】…脳無のデフォルト能力
【巨大化】…四肢限定で最大5倍まで
【省エネ】…体力等の消耗緩和&他人にも付与可能
【タイマー】…上記個性を時間差で発動させられる


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