え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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ステラ

 

 

 

 ソレは突然起こった。

 

「オールマイト達が……消えた……!?」

 

 これまで供給され続けていたトゥワイスの【二倍】によるオールマイトの分身が戦場から消えた。耐久限界を迎えての消滅ではなく、全員がほぼ同時に消滅したのだ。

 

 増やしたオールマイト込みで互角以上を保っていた均衡が崩れていく。なるべく捕縛を優先していたヒーロー達が不殺を破って対抗しようとも、全員が【超再生】を持っている以上は即死させない限りは反撃を受けてしまう。

 

 どうなっている。何が起こった。ヒーロー達の間に動揺が走り、ただでさえまともに機能していなかった陣形が更に崩れていく。

 

 

 

 

 

「僕はね、機会を伺っていたんだ」

 

「君を認めようトゥワイス君。僕は君の異能を正しく恐れた!この場にいる誰よりも君が怖かった!」

 

「でも、それもここまでだ」

 

 酷く粘ついた執念を感じさせる声。かつては狂戦士に片足を突っ込んでいた理性がなかった瞳にはドロドロとした悪意が満ちており、制御出来ていなかったはずの【巨大化】を解いた野人の姿がそこにあった。

 

 彼の右腕が伸びた先にいるのはトゥワイス。首を掴まれたまま地面に捩じ伏せられ、意識を失っている。

 

 ギガントマキア……ではない。そこにいるのはこの世全てが自分の為にあると信じて疑わない邪悪の権化、オール・フォー・ワンだ。

 

「……【二倍】の個性。これさえあればこのくだらない茶番をひっくり返せる」

「ンの……!」

「ああ、君もいたんだったね。レディ・ナガン」

 

 超至近距離でのライフルによる銃撃。まず間違いなく致命傷足りうる威力の一撃を受け───魔王は無傷だった。

 

「【土竜】の個性にこれほど感謝する日が来るとはね……お陰で一番の脅威を排除出来た」

「ッ……!?」

「ん?何を驚いているんだい?僕がどんな攻撃を防いでも不思議じゃないだろう?」

 

 放たれた弾丸はあと数ミリのところで停止し、重力に従って地面へと落ちた。

 

 

 オール・フォー・ワンがやった事はとても単純だ。ギガントマキアに搭載していた【土竜】の個性を使って地下から脱出し、探知系の個性を総動員してトゥワイスの位置を探り出して不意を突いた。それだけの事だ。

 

 【巨大化】を完全に解いたギガントマキアの肉体はせいぜい2mもあるか怪しい程度。地面から現れたところで周囲が気づくはずもなかった。

 

 そして今更気づいたところで手遅れだ。オールマイトの供給が途絶えた為に様子を見に来たヒーロー達が異変に気づくが、既にオール・フォー・ワンは攻撃態勢に入っている。

 

 

 数秒後、地上から音が消えた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 やられた。いや、やらかしたと言うべきか。

 

 地下に入ってから探知能力がまともに機能しなかったせいで敵の動きを読めなかった。それでも何とかなるだろうとタカを括っていたのが悪かった。

 

 あの野郎、地面の中を移動して直接トゥワイスを狙いに行きやがった。地上にいたオールマイトの分身が根こそぎ消えたあたり、殺したんじゃなくて奪ったんだろう。

 

「ミルコ!すぐに上に戻るぞ!!」

「何があった!?説明しろ!」

「オール・フォー・ワンが上に向かった!脳無達を押し返していたオールマイトの分身が消えた!」

「なっ……」

 

 さっきハイエンドのお陰で探知出来るようになってから気づいた。こっちの最高戦力のエンデヴァーやオール・フォー・ワンの天敵である相澤先生が地下に来ている。地上の戦力ではオール・フォー・ワンを抑えきれないかもしれない。

 

 それに考えたくはないが、オール・フォー・ワンが【二倍】を手にした以上は頼みの綱だったオールマイトのように絶望が増えてしまう。それだけはさせてはならない。

 

 俺一人先に地上に戻ってもいいが、ミルコとハイエンドだけだと迷って出られない可能性がある。俺としてもこの二人には来て欲しいし、ワープでの脱出はやめた方がよさそうだ。

 

「ッ、危ナい!」

「おわっ!?」

 

 いきなり何!?急に押し倒されると心臓に悪いからやめてくださる!?あっ顔がい何でいい匂いすんの?君一応脳無だよね??

 

 って、また脳無か。しかもこの子と同じハイエンドって奴か。

 

「ナ何のツもりだ!!うう裏切ル気かお前エえ!!?」

「あンたらと違ッてクソみたいナ扱われ方してタから当然デしョ!?メイド服着せラれて上から目線デ命令さレテみなさいヨ!!」

 

 ……何か、お前も苦労してたんだな。なまじしっかりと自我があるせいでストレスに感じてたんだろうなあ。

 てかそっちのハイエンド達も知ってたんかい。四人中三人くらい顔を背けたぞ。言いたいことはわかる、みたいな態度とってんじゃねェ。

 

 てかそれだと俺の物宣言も嫌だったりしない?俺はノーカン?そうなの?よく分からんけどそれならいいか。

 

「……新しい名前。新しい名前ヲ私ニ名前を下さイ」

「はい?」

「覚悟を決めマした。ワたしはオール・フォー・ワンを裏切リ、貴方ノ為に戦いまショう」

「それってセクハラされてたからじゃn「ミルコさんシャラップ」

 

 名前……名前かあ。ちなみに今までは?え?ウーマンちゃん?捻り皆無かよ性別で呼ぶなバカタレ。

 

 じゃあ、青い肌と青い目が綺麗だし……。

 

「よし、お前は今からステラ()な」

「ありガとうござイマス。ウーマンちゃんとかイウ捻り皆無の名前トハ比べ物ニならないイい名前ですネ」

「前の職場の不満しか言わねえなコイツ」

 

 ブルースター(青い星)って花の名前にもかけてるが、まあその辺はわざわざ語る必要も無い。とりあえず目の前のハイエンド共をぶっ飛ばすか。

 

 ゾウみたいに鼻が長い奴に頭が伸びたアバラが浮いてるガリガリの奴、頭が複数ついてる奴に四足歩行の獣型の奴。一番面倒くさそうなのは……多分ゾウっぽい奴だな。

 

「っしゃ死ねオラァ!!」

「ちょ、ミルコ!?」

「どうせ蹴り倒すんならいいだろ!?」

「……私が言ウのもなんですが、あの人モフリーダムですね」

 

 初手でスマッシュ叩き込んで一体くらい仕留められねえか試したかったのに……まあさっさと地上に戻らなきゃならねえんだから早い分にはいいか。

 

 んじゃ、ついてこいステラ。発つ鳥は跡を濁しちゃならねェって言うし、目の前の濁りを掃除して行くとしようか!

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 凄まじい。その一言に尽きる。

 

 他のハイエンドよりも一際強い自我を持っている事に気づいてからは苦痛しかなかったけれど、その他のハイエンド達がたった二人のヒーローの前に敗れていく。

 

 距離を取ればミルコの足が叩きつけられ、不用意に踏み込めば短距離の【瞬間移動】の後にカウンターが返ってくる。彼らからすれば苦しい戦いだろう。

 近接戦闘ではパワーとスピードで競り負けており、距離をとって攻撃しようとすれば【瞬間移動】か【兎】の速度で吹っ飛ばされている。

 

「ぐうッ……!?ナんとイうパワー……!!」

「はっ、期待外れだなァ!!連携はカス!対応力もゴミ!何が最高傑作だ!」

「オノレ……!我ららラを愚弄スルか!」

「そういう無駄口が馬鹿だって言ってんだよ!!」

「しまっ────!?」

 

 これで二体目。間飛さんのスマッシュが四足歩行のウルフちゃんと呼ばれていたハイエンドを殴り倒した。今はまだ死んでいないが、おそらく致命傷……数分後には物言わぬ肉袋になっているだろう。

 

 残るは二体。ゾウさんと名付けられた個体とアバラちゃんと名付けられた個体。典型的なパワーファイターと鞭を使った近、中距離を得意とした二人では勝ち目はないだろう。強みの尽くが相性が悪い。

 

「ウーマンン゙ん゙ン゙!!ソイツを殺セ!!今ならマダゆゆゆ許し許しテやる!!」

「……何を馬鹿ナことを」

 

 貴方達からすれば私は酷い裏切り者なんだろうけど、私にとって貴方達は最初から仲間でもなんでもない。同じ被害者だった、とだけは言ってあげる。

 

 だからこれは私なりの慈悲。最初で最後の、貴方達への情け。

 

 改造されて獲得した超パワーに【巨大化】と【硬化付与】を右腕に発動。オールマイトには遠く及ばないらしいけれど、同じハイエンドならこれでも十分効くでしょう?

 

 

 ドゴォッッ!!!

 

 

「お、おお……すげえなお前」

「……どうデしょう?」

「やるなあステラ!潰れたカエルみたいになってら!」

 

 褒められました。ふふん。そうでしょうそうでしょう。

 

 

 諦観と絶望に支配された私に手を差し伸べた貴方。人間でなくなった私を美しいと言ってくれた貴方。私を欲してくれた貴方。

 私は貴方の為にありましょう。貴方の為に戦いましょう。他でもない、輝ける貴方()の為に。

 

 

 

 ……今犬みたいって言いませんでした?

 

 

 






ステラ「やりました!!」シャガミコミー
間飛「おー、偉い偉い。よくやった」ナデナデ
ステラ「ムフー」
間飛(何この可愛い生き物)
ミルコ(……ブンブン尻尾振ってるのが見えた気が)

ハイエンド's「「あんまりだ」」


【ブルースター】
青い星型の花。花言葉は『信じ合う心』『幸福な愛』らしい。


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