え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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ラスボスは一人でも強いからラスボス

 

 

 

 十三体のハイエンド脳無のうち、間飛達は五体を撃破し一体を味方にする事に成功。転孤と荼毘が二体と交戦し、キュリオスを素体にした脳無がコンプレスの手で殺害された。

 

 現時点で九体のハイエンドの所在が割れており、残りの四体は未だ行方知れず……だった。

 

 

「……やっぱこの個性社会だとお前だいぶ無法だって」

「知るか……敵に容赦してやる理由がないだろ。ただでさえ死体から作られていると分かっているんだ、生け捕りに拘る理由がない」

 

 残る四体全てがイレイザーヘッドの足元で血溜まりに沈んでいた。そこに激しい戦闘の痕跡はなく、脳天に残された一突きの痕跡が全てを物語っている。

 

 久しく見る友人の青天井の怒りを前に、プレゼントマイクですらそれ以上の追求をする事はしなかった。自分だって脳無の……黒霧を作り出したドクターを見つけてしまえば怒りによってリミッターが外れてしまうだろうなという自覚があるのだから。

 

 

 二人が地下に突入した後、ルート選択で当たりを引いたのかさほど時間も労力もかけずにかなり下へと降りる事が出来た。

 ようやく辿り着いた先で見たのは起動前と思われる大量の培養カプセル。中には脱力したままの脳無が保管されていた。

 

 マイクはこれを破壊しようとイレイザーに提案し、それによって起動済みの個体が来るかもしれないことを警戒してイレイザーが潜伏。広範囲への音響攻撃が炸裂した。

 

 これに慌てたのがドクターの警護を任せられていたハイエンド達。割と近くにいたドクターが吹っ飛ばされたものだから爆音の原因を探りに来た瞬間。

 

 

 ───死ね。

 

 

 四体全員の個性が【抹消】された事、イレイザーの存在……気づいた時には手遅れだった。

 不意打ちで全員の脳天をナイフで一突き。一体一発で仕留めるという最短にして最高効率での勝利を収めた。

 

「んで、この小汚いジジイがドクター……でいいのか?」

「こっちにも黒髪の男が倒れていたが……まあどっちもヴィランであることは確かだ。どっちも連れていくぞ」

「おう」

 

 ハイエンドのついでで捕らえるにはあまりに大きい手柄。オール・フォー・ワンと異能解放軍の両者に欠かせない殻木とスケプティックの捕縛という成果を挙げた二人は一度戻ることにした。

 

 

 片や小柄な老人、片やデスクワークばかりの痩せこけた男ということでさほど苦にならない重さだが、どうしたって人一人担いでいる以上は速度が落ちてしまう。

 デザイン性皆無の薄暗い通路を足音を鳴らしながら駆け抜けていく。

 

「……なあ、静か過ぎねェか?」

「ああ……俺達以外にも踏み込むと思っていたが、あまりにも静か過ぎる。プロヒーローとヴィランの連中がぶつかればこんなもんじゃ済まないはずだ」

 

 地上では脳無とオールマイトの分身達が戦っているのは分かる。しかし自分達以外に誰一人として地下へと入ってこないはずがない。むしろ人海戦術で押し切るべきだというのは分かっているはずなのに。

 

 考えられるのは……少数精鋭で向かわせた為に地下内で合流しなかっただけ、もしくはなるべく目立たないようにステルス的な分野に長けた者が突入したのか。或いは……。

 

「地下まで手を回す余裕がなくなった、か……」

「さすがにありえねェだろ!?だってオールマイトがあんなにいるんだぜ!?」

「それでも足りねェ何かがあるかもしれん。気を引き締めろ……ッ!?」

 

 考えたくない可能性に行き着いたその時、彼らの頭上で一際大きい揺れが起こった。

 

 何が起こった、と思うよりも早い答え合わせに天井が崩れ落ちてくる。もしや罠か、とも考えたがそれにしては小規模な崩落だった。

 せいぜい数メートル程度の通路の崩落。ガラガラと喧しい音はしているけれど、落ちてきた瓦礫が更に床を砕いて……という事は起きなさそうだ。

 

 もうもうと立ち込める土煙の中、何者かがゴホゴホと咳き込んでいる音が聞こえる。それも二人分。静かに警戒心を強めていると。

 

 

「だから言っただろうが頭エンデヴァー野郎!!」

「倒せたからいいだろ!?」

 

「……死柄木、弔?」

「と……アレ?アイツってエンデヴァーの記者会見で見た写真に似てね?」

「「あ゙!?」」

 

 あ、やっぱり爆発したんですね。

 

 

 脳無二体を纏めて焼き殺したまではよかった。実際細長い体躯のハイエンドは抵抗する間もなく死亡した。問題は丸々と太った二体目。

 

 勢いよく放出された青い炎は肌を貫き体内にすら達した。その瞬間、体内に溜め込まれていた可燃性物質に着火してしまったのだと。

 

 その脳無は【オイル】や【ニトロ生成】といった可燃性物質を生み出す個性を大量に搭載されていた。それらを放出する為の【ホース】も。

 あのハイエンドは遠距離でヤベー物質を吐き出し続け、もう一体のハイエンドによって起爆させるという戦法をする予定だったのだ。

 

 そんな火薬庫を自ら着火すればそりゃあ大惨事になるわけで。

 

「咄嗟に火力を上げて対抗しなきゃ死んでたな」

「仲間巻き込んでおいて言うセリフがそれか?」

「……雄英なら間違いなく落第だな」

「明らかな罠じゃねえか。何してんだお前ら」

 

 とてつもない爆発に火力を上げて何とか防ぎきったまではよかった。先に限界を迎えたのは地面の方だった。

 

 ビキリと一際大きく響いた音に『ん?』と思った時には遅かった。亀裂はドンドンと広く大きくなり、やがて重力に従って下へと落ちてしまう。

 

 落下中に少しずつ瓦礫を【崩壊】させて最小限の被害で着地に成功したのが現在だ。

 

「お前らは……ソイツがドクターか?」

「多分な」

「丁度いい、今から黒霧にゲートを開いてもらうつもりだ。お前らも地上に戻るか?」

「お、おう……」

 

 黒霧の名に色々と複雑な思いがあるけれど、とりあえず味方にいてくれるだけでも喜ぶべきかとマイクは言葉を飲み込んで、現れた黒いモヤのゲートへと躊躇いがちに突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 エンデヴァー達がオール・フォー・ワンが地下にいない事に気づいた頃、地上では蹂躙という言葉がこれ以上なく相応しい光景が広がっていた。

 

 トランペットの撃破、並びにハイエンド個体の討伐によって上がっていた士気はオールマイトの消滅で帳消し……否、消沈すらしている。

 それでもやられっぱなしでいられるものかと、ホークスやエッジショットといったトッププロを中心に反撃のチャンスを伺っていた。

 

 

 あの男が出てくるまでは。

 

 

「やはりと言うべきか……ヒーローともなれば皆素晴らしい個性を持っているね」

「そりゃどうも……っ!!」

「だからこそ惜しくて仕方がない。マキアの身体では個性を奪う余裕がないんだよ」

 

 病院の跡地を中心に円形に広がっていたヒーローの包囲網に対し、オール・フォー・ワンはあえてホークスがいるエリアの近くに現れた。泥によるワープなどではない、単なる跳躍で上から現れた。

 

 明らかに異様な存在が出現した事で全員の警戒度が跳ね上がったけれど、何一つ結果は変わらなかった。

 

「腕の一振りでこれか……あれだけ改造してようやくオールマイトと互角と呼べるかどうか、なんて馬鹿げた話だと思わないかい?」

(それはちょっと同感)

「それでもこの辺りのヒーローは半分以上吹っ飛んだわけだけどね」

 

 誰よりも早くオール・フォー・ワンに気づき、余裕をもって回避したホークス。同時に理解させられた。

 

 コイツは危険だ、と。

 

 速すぎるという評価に恥じない速度でのヒットアンドアウェイを軸に何とか押し留めようとはしているものの、与えたダメージがすぐに無かったことになるほどの再生力を有しているオール・フォー・ワンの脅威にはならない。

 

 何よりオール・フォー・ワンは硬い。速度を乗せても重みのないホークスの攻撃では表面を薄く傷つけることしか出来ていない。

 

「今の僕は個性の数が限られていてね……先程の【二倍】も含めて十個くらいしか持っていないんだ」

「普通なら、それでも破格でしょ!!」

「おいおい、ラスボスの僕と一般人を同じだと思うのかい?君達にとってはそうでも、僕にとっては不満しかないんだよ」

 

 【剛翼】で得た速度を乗せた剣のような羽根でのフルスイング。それをオール・フォー・ワンはあえてノーガードで受けた。

 

 ガギィッ!!と耳障りな音を立てて衝突し、僅かに皮膚に食いこんで停止した。それ以上刃が進むことはなく、完全にダメージになっていない。

 

「ッ……!!」

「【耐久】と【硬化付与】を混ぜて【頑強】という個性に変えたんだ。硬さとタフさを兼ね備えたいい個性だろう?」

 

 弄ばれている。殺そうと思えばいつでも殺せるであろう自分をいつまでも泳がせて、どんな抵抗をしてくれるのかを楽しんでいる。ホークスはこの時点で自分の役割を足止めだと割り切ることにした。

 

 エンデヴァーかオールマイトが来るまで持ち堪える。それまで生きていられりゃ丸儲け、程度の覚悟を決めた。

 

 羽根による弾丸と剣にしての攻撃。その全てが決定打には程遠く、オール・フォー・ワンが少し個性を使用するだけで蹴散らされてしまう。

 

 他のヒーロー達も参戦したいのだが、押し寄せる脳無によって手を塞がれてしまっている。また、仮に踏み込んでもあの戦いについていけるとは思えなかった。

 

「……そろそろ限界かな?」

「くっ……そ……!」

 

 それも長くは続かない。少しずつ【剛翼】の数を減らされ、とうとうまともなスピードすら出せないまでに追い詰められた。

 ギガントマキアの肉体でオール・フォー・ワンは粘ついた笑みを浮かべる。既に勝利は確定したようなものだから。

 

 肩で息をするホークスを見下ろしながら、オール・フォー・ワンは口角を上げて口を開いた。

 

「既に絶望的な状況だが……更に絶望を見せてあげようか」

「何……!?」

「君達にとっての希望を、君達にとっての絶望にしてあげようじゃないか」

 

 

 オール・フォー・ワンは見せびらかすように【二倍】の個性を発動した。

 

 






荼毘「発射ァ!」
転孤「ちょ、おま」
脳無「自爆するやでー」
荼毘&転孤「「あっ」」

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