ハッキリ言って絶望的と言うしかなかった。
ギガントマキアが出てきた時の為に温存するはずだったMt.レディやリューキュウが出撃せざるを得ず、最初のニアハイエンドからずっと出ずっぱりのシンリンカムイやエッジショットといったメンバーも疲労が色濃く滲んでいる。
通常の脳無も雑魚とは呼べない強さを持っている。ヴィラン撃退を中心に活動しているヒーローですら苦戦、或いは敗北する程度には強い。
オールマイトの分身が消えた今、現状の戦力差をひっくり返せるだけのパワーが足りていない。
加えてオール・フォー・ワンが直々に出てきた事で更にヒーロー達の勝ち目は薄まったかに思われていた。
何とか地下から出てこれた間飛達が地上で見たものは───
「……エンデヴァー」
「……何だ」
「俺……目ェおかしくなったんスかね……?」
「ふむ、何が見えている?」
「ガァッ!?こ、の!!」
「…………オール・フォー・ワンが殴られて浮いたり跳ねたりしてる所、ですね」
「奇遇だな。俺にもそう見えている」
「ははは、私にもそう見えるぞ」
「じゃあ少なくとも俺だけがおかしいという可能性は消えましたね」
「そうだな。三人とも目がおかしくなってるかこれが現実かの二択だ」
「ちょ、やめ……スネはやめろスネは!?」
「なあ、脳無達も止まってね?」
「口かっぴらいてフリーズしてますね」
「……ということは現実、ということか」
「ですねえ」
「あ痛ァ!?足の小指はダメだろ!?本当にヒーローか!?」
「……何で若いオールマイトがいるんですかね???」
「こっちが聞きたいわっ!?活き活きとあの巨体を殴りおって……!!」
「うわー、的確に右足の小指蹴りやがった。アレいてーぞ」
───ギリギリまで出てこないはずのオールマイトが若々しくなってオール・フォー・ワンを殴り飛ばす姿だった。
【巨大化】を発動したのか10m程のサイズに変化した身体で駄々をこねる子供のように手足を振り回しているが、極太で巨大な手足をスルスルと掻い潜っては見慣れたSMASHを叩き込んでいる。あ、スネはやめたげて。金的はもっとマズイ。
サイズ的には間違いなくオール・フォー・ワンが勝っているのだが、パワーそのものはだいたい同じ……何ならオールマイト(?)の方が上回っているというバグ。体格差が無意味を通り越してマイナスにしかなってないのは初めて見た。
彼らが戻ってくる数分前の事だ。トゥワイスから【二倍】を奪ったオール・フォー・ワンは完全に勝ちを確信しており、ホークスを前にして尚遊ぶ余裕さえあった。
他のヒーロー達はホークスの限界が近いことを悟り、割り込むようにオール・フォー・ワンに挑んだものの……ホークス程の実力者でダメなら他のヒーローでも結果は同じようなもの。容易く跳ね除けられてしまった。
デステゴロやフォースカインドといった武闘派をも返り討ちにした彼の前に現れたのは───デクだった。
「お前が……オール・フォー・ワン……!!」
「……?…………ああ!君が後継者か。なるほどなるほど……てっきり間飛移がそうだとばかり思っていたよ」
もしその場に間飛が居れば、本体のお前はその誤認が原因でタルタロスでオギャバブしてんぞと鼻で笑い飛ばしただろう。字面酷いなホントに。
ここにいるオール・フォー・ワンは実際に間飛から受けた被害は泥花市でマキアごと殴られたことだけ。トゥワイスによるオールマイトの増殖もあって間飛個人への感情は『腹立つからちょっと優先的に殺すか』で止まっていた。
それ故に本体とは異なり【ワン・フォー・オール】の継承者と見間違えたけど似てたからしゃーないで終わっている。これが本体だと【ワン・フォー・オール】でも何でもない奴に負けたから拗らせていたわけだ。
真の【ワン・フォー・オール】継承者を前にしたオール・フォー・ワンは有り体に言ってニチャついていた。いい玩具はっけーん的なアレで。
「そうだ、いい事を思いついた!君にいい物を見せてあげよう……」
「っ……!」
「僕はね、オールマイトが憎くて憎くて……殺したくて仕方なかった!その為にはらしくもなく分析なんて真似もしたのさ!オールマイトの全てを!!」
熱に浮かされた魔王は止まらない。いつかの慣れない一個人への分析が役に立つ日が来たと、演技がかった仕草で語る。
「……トゥワイス君の個性【二倍】は身体を測定していれば誰でも増やせる。それが例え……オールマイトであろうとも!!」
「まさか……!?」
「自分の師匠と殺し合うのはどんな気分だろうね……?教えて欲しいよ」
ズルリ、とオール・フォー・ワンの手のひらから一人の人間が作られる。
見間違えるはずもない。筋骨隆々の肉体、画風が違うとさえ言われる鋭い眼光。
オールマイトが生み出された。
「ハッハッハ……!全盛期のオールマイトだ!君達が頼りにしていた衰えきったものとは違う!!僕をも死ぬ寸前まで追い詰めてみせた最強の───」
「Detroit……!!」
「───ん?」
「SMASH!!!」
音が消えた(本日二度目)。
SMASHの矛先は緑谷出久……ではなく、オール・フォー・ワン。彼が語った彼自身を死ぬ一歩手前まで追い詰めた一番強い時のオールマイトによる全力のSMASH。ノーガードの時に叩き込んでいい威力じゃない。
昂りから巨大になりつつあった肉体が歪むほどの破壊力。それから一拍遅れて耐え難いダメージを受けたことに気づき、オール・フォー・ワンはパニックを起こしていた。
「な、は!?いや、ちょ……アレェ!?」
「お、オールマイト……?」
「誤算だったなオール・フォー・ワンよ……!!」
ここで一つオール・フォー・ワンの誤解について教えよう。彼はトゥワイスが増やしたオールマイトを見てこう思っていた。
──増やした人物は問答無用で服従するようだね……誰を増やしても思い通りなら、是非とも欲しいねえ。
……聡明な読者の諸君ならもうお気づきだろう。
決して!問答無用で服従などしないのである!
何なら自分で増やした自分自身さえも!時には自分が本体だと主張し出すくらいには言うことを聞かない時だってあるのである!
まさか自分で出したオールマイトが自分に殴りかかってくるなどと露ほども思っておらず、ノータイムで叩き込まれたSMASHに抗う術などなかった。
ちなみにオールマイトは状況を認識した瞬間に拳を握っていた。矛先?オール・フォー・ワン以外にありますか?
「お、オールマイト!僕も戦います!」
「君は……そうか。君が、そうなんだね」
「っ……はい!!」
「よし!ついてきたまえ!!」
師弟によるエモい共闘に聞こえるだろう?アレは遠回しに処刑宣告をしているようなものなのでそんないいもんじゃない。オール・フォー・ワンですらちょっと悲鳴漏らしてるし。
それから戦闘とも呼べない一方的なタコ殴りが始まった。
◇
そして現在。間飛達の視線の先では今と違って元気いっぱいのオールマイトの分身がオール・フォー・ワンの腹を殴りつけ、下がってきた頭に【黒鞭】を巻き付けて引き倒す緑谷の姿が。
そこにエンデヴァーやミルコが参戦すれば酷いオーバーキルもいいところだろう。じゃあIXAはって?控えめに言って負けイベントとかじゃない?
「まあ、千載一遇のチャンスであることに変わりはない。我々も行くぞ!」
「おう!」
「押忍!」
あっ、負けイベントになった。
トゥワイス「それそんなに便利じゃねえぞ」
原作トガ「ですです」
AFO「もうちょい早く教えて?」
最強脳筋「私が来た」
ヴィラン's「「「ヒエッ…」」」
ヒーロー's「「「ヒエッ…」」」