え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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成長後の再登場は瞬殺フラグ

 

 

 

 ダツゴク。タルタロスを始めとした堅牢な刑務所に収監される程の凶悪犯達が解き放たれ、再び娑婆に出てきたヴィランだからという理由の安直なネーミング。

 

 しかしその実力は脅威の一言に尽きる。【血狂い】マスキュラーや【ヒーロー殺し】ステインといった連中はビルボードチャートで100位以内にいるヒーローでさえ返り討ちにしかねないのだ。

 

 そして緑谷出久はそのうちの一人、例えとして挙げていた最悪のヴィランである【血狂い】マスキュラーを追っている最中だ。

 

(っ……あの時より、速い?それにパワーも増しているみたいだ)

 

 遠く離れた場所から視認出来たその姿は緑谷が知るかつてのマスキュラーよりも多くの筋繊維を有しており、強く厚く張り巡らされたそれらは成長した今の緑谷にとっても未だ脅威足りうるだろう。

 

 いつぞやの仮免試験でご一緒した覚えのある男性ヒーローが何とか立ち向かっているものの、今にも押し潰されてしまいそうだ。このままではマズイと緑谷は一気に加速。度重なる戦闘ですっかりボロボロになったコスチュームをたなびかせながら吶喊した。

 

「あ゙あ゙!?」

「……【危機感知(4th)】が止まない。マスキュラーなら道理か」

「っっ……!!その、声はぁああ……!!」

 

 まず一人目というところを視界の外から飛び蹴りによって割り込みをかけられた。いつもならばそのまま苛立ちに任せて正体を探る前に挽肉にしてしまっていたマスキュラーが、砂煙の中から聞こえたくぐもった声に口角を吊り上げた。

 

 忘れもしないあの日。自業自得とはいえたった一人のガキに負けて豚箱送りにされた合宿襲撃。

 

「忘れられるワケがねェ!お前だろ!?なァ!!」

 

 一万二千層の筋繊維装甲。あの日引きちぎられた筋繊維は超再生の果てにより多く、より強くなって復活している。

 叩きつけられた屋根の上でギチギチと音を立てて筋繊維が張り巡らされ、屋根瓦を握力だけで成形し直していく。ガリ、ゴリ、と手の中で削れていき、やがて小さなラグビーボール状に形成された。

 

 グチュリ、と血を滲ませながらポッカリと空いた眼孔に即席の義眼を捩じ込む。眼球があるべき場所から生じた痛みすらも今の彼にはアドレナリンを生む為の取っ掛りでしかない。

 

 昂りのままにマスキュラーが緑谷……の、足場であるビルへ向かって跳躍した。

 

(跳躍が足りていない……?いや、違う!)

「っハア!!」

 

 

 バッガァッ!!

 

 

 直接向かってこない事に疑問を持ったのも束の間。最早上半身が見えない程の筋繊維を纏ったマスキュラーはビルの上半分を純粋なパワーだけでへし折った。

 ちゃぶ台返しのようにビルが倒される。流石の緑谷とてダメージを負って気を失っている人間を抱えたままでは反撃不可能。【煙幕(6th)】をばら撒きながらひとまず怪我人を安全な場所に移す事を優先した。

 

 マスキュラーには探知能力はない。彼にあるのは純然たるパワーのみ。逆に言えばそのパワーのみでネームドヴィランと呼ばれるまでの実力を持っている事にもなるが……こうした単純な目くらましでさえマスキュラーの足を止めるのに役に立つ。

 

(あまり時間をかけると周囲に被害が出る……!)

 

 とはいえ悠長にしていられるわけではない。マスキュラーの持つ破壊力は放置していれば放置しているだけ被害範囲が拡大されていく。

 近くにいるらしいヒーローに怪我人を預けて一刻も早くマスキュラーとの戦闘に戻る必要がある。

 

「……あ!よかった、お願いします!」

「っ、ヨーくん!!バカ!もぉっ……!!」

「間に合わなくてすみません!すぐに手当てを……!」

 

 端的に指示を出しながら間に合わなかった事を反省する。自分がもっと早く気づいていれば、速く動けたならば。自分を責め立てる理由がいくらでも思い浮かぶ。

 だからこそ今すぐにでもマスキュラーを仕留めなければならない。これ以上間違えていいはずもないのだ。

 

 少し制御が不安定な【煙幕】を更に広げつつ緑谷は再びマスキュラーの元へ向かう。時間にして分も経たない僅かな間だが、奴ならばその間に数人殺しかねない。

 

 【煙幕】で視界を限定し【浮遊(7th)】と【危機感知】で索敵。緑谷に執着しているマスキュラー相手だからこそ成り立つ自分を餌にした釣り。さあ、いつでも来いと緑谷は警戒を張り巡らせ──

 

 

「……?来ない?」

 

 

 二分が経っても【危機感知】は発動しない。殺気を感じ取れない。

 あの【血狂い】が殺意を滲ませない事など有り得ない。ならば【危機感知】が発動しないということはこの場にマスキュラーがいない事を意味する。

 

 まさか見失った?それともさっきの怪我人の方を優先した?それとも歴代継承者から散々言われた通りにマスキュラーが【煙幕】を逆手にとって姿を隠しているのか。全くと言っていいほどマスキュラーの動向が分からない。

 

 一度【煙幕】を止めて煙が晴れるのを待ってみたがやはりあのグロテスクな筋繊維はどこにも見当たらず、吹き付ける風以外の音は何一つ聞こえない。

 

「……逃げられた、のかな」

 

 あの男が?という疑問は残る。しかし現に奴の姿が見えない以上はそう考えるしかないだろう。

 

 マスキュラーを取り逃したくやしさとほんの少しの安堵を胸の内に隠し、緑谷はオールマイトと合流する事にした。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「……てっきり脳無かと思ったら生身の人間かよ。えっらいグロテスクな個性だな」

「が……!テメ、何……!?」

 

 緑谷が釣りを開始した地点から12kmほど離れた場所でマスキュラーはのたうち回っていた。

 

 あの日己の全力を真っ向勝負でぶち抜かれた時の感覚を忘れられず、小細工に逃げる緑谷への苛立ちが募っていた。

 分かりやすい釣り針であっても自分から引っかかるくらいには緑谷との戦いを望んでいたのに、それを脇腹に横槍ならぬ横蹴りを入れられて怒りはピークになりつつある。

 

 しかしすぐには動かない……否、動けない。

 緑谷ですら気づかない程の速度での接近だけでも恐ろしいが、その上で目の前の男は自分を片腕だけで引きずって運んでしまえるパワーを有している。

 パワー自慢が自分以上のパワーに恐れを成すなどあってはならないのに、どうしても脳裏に逃走の選択肢が過ぎる。

 

「しっかし、ありゃ緑谷……だよな?何か縮んだような気もするけど何で古いコスチューム着てんだアイツ」

「……テメェ、誰だ」

「……あ、悪い悪い。お前のこと放置してた」

 

 軽い調子で男は宣う。それは『マスキュラーを前にして無防備でいても問題ありません』と宣言したも同然だ。

 

「舐めてくれてんなァおい!!折角のお楽しみを邪魔してくれやがって……!覚悟出来てんだろうなァ!?」

「うわー、マジでグロいなそれ。微妙に水っぽい音してるせいで滅茶苦茶キメェ」

「血ィ見せろやァ!!!」

 

 空気が爆ぜ、破壊力に満ちた拳が振り抜かれる。肥大化した筋繊維の塊が間飛へと迫って。

 

 

「弱点剥き出しで凄まれてもねえ?」

「が……!?ぁ……!」

 

 

 スカァン!!と小気味よい音が響いた。巨大な肉塊が人間を押しつぶすソレとはまるで違う、ともすれば間の抜けたようにも聞こえる音。

 

 マスキュラーの拳が到達するよりも早く間飛の裏拳がマスキュラーの顎先を掠めていた。顎骨に極小のヒビを入れながら脳を大きく揺らす最小の動作をもって最大限のダメージを与える一撃。

 

 分厚い筋繊維装甲の上から殴られればまだ耐えようもあっただろう。しかし一切の防御がされていない顎先をこうも的確に殴られてはどうしようもない。

 溶岩のように煮えたぎる闘争心も人体の仕組みに抗うには力不足で。悪態の一つもつけぬままグルンと白目を剥いて地に倒れ伏した。

 

「……そんだけの防御力があって何で頭だけ放置するかね」

 

 その姿を心底不思議そうに見つめる間飛は知る由もない。元の世界でも『耐えられる奴の方がおかしいからなそれ』と言われている事を。

 

 

 気絶した人間というのは存外に重い上に運びにくいものだが、なんてことは無いという風に間飛はマスキュラーを抱え上げると近場の刑務所か警察署を探す為に移動を始めた。

 

 先の戦闘もあって近くの住民達は避難所に移動したらしく、ゴリラを抱えて屋根の上を駆け抜けるゴリラを目撃した人物はいなかった。

 

「お、みっけた」

 

 意外と近くにあった警察署に立ち寄り強めのノック*1で知らせておくと、間飛はまたその場を離れる。今警察に見つかると多分ろくな事にならない気がするのだ。

 

 この数日の活動で間飛は何となくだが状況を理解した。まずここは自分のいた世界とは違う世界らしい。

 

「死柄木弔にオール・フォー・ワン……超常解放戦線、か。何がどうなったらこうなるんだ……?」

 

 ひょっとしてギャグで言ってるのだろうか。お前の世界の方がワッツハプンな状況だぞ。

 

 ……まあ、仕方ないと言えば仕方ない。所謂『原作』の世界線と間飛のいた世界線はあまりにも違い過ぎる運命を辿っている。そもそも超常解放戦線が結成してないので『性癖解放戦線*2の亜種かな?』と思われている。誹謗中傷やめてもろて。

 

 故にだ。彼はヴィラン連合のメンバーが今どうなっているのかなんて把握していないし、敵味方を問わず知っている人間が存在せずに知らない人間が同じポジションに……なんてこともある。

 

 じゃあこっちの世界での知り合いはどうなってるんだろうな、と思わなくもないけれどそれがどれほど奇跡的な確率なのかと自嘲する。

 自分の知る世界にいる友人と全く同じ存在がこちらの世界にいるとも限らないし、この惨状では生存しているのかも怪しい。下手な宝くじの一等よりも低い確率だろう……間飛はそう思っていた。

 

 

 だからこそ、この出会いは偶然と呼ぶには無視できないナニカを感じてしまう。

 

 

 

 

 

「お、こっちのトガち。おはこんハロチャオ〜」

「……?貴方……誰ですか?」

 

 

 奇跡的な確率を乗り越えての邂逅。世界線が異なっても尚、二人の縁が途切れることはなかったらしい。

 

 

 

*1
ドアと壁に被害が生じた模様

*2
【番外編⑪恋愛会談・学生の部(強制参加)】参照






緑谷(マスキュラーの殺気が……消えた……?)

間飛「典型的な脳筋で草」
マスキュラー「野郎オブクラッシャー!!」
間飛「貧弱貧弱ゥ!!」
マスキュラー「あはん」

警察A「壁ぶち抜いていったやつ誰だ」
警察B「先輩先輩。マスキュラー置いてあるんですが」
警察A「ンなもん後まわごめんちょっと待って?なんて言ったお前?」

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