え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

21 / 243

お久。私だ。

本編終了後の番外編はサブタイトルに【EX】を付けて投稿します。なのでEXがついてない番外編は本編終了前のつもりで投稿しますね。書くかどうか分からない二年生以降の時系列もEXがつきます。

よろしくお願いします。





本編終了後番外編
EX①正妻戦争?いいえレイドバトルです


 

 

 

 ───正妻とは、あらゆる乙女が願う到達点だ。*1

 

 過去のやらかしが縁としてヒロイン枠を増やし、最初の一人を目指して争う。そしてその勝者は(相手に対して)全ての欲望を叶える権利が与えられる。

 

 あらゆる年代、あらゆる地域での縁が現在に影響し、愛を競い合う蹴落とし合い。*2それが──

 

 

 

 ───正妻戦争だ。*3

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 IXA事務所。創立からようやく三年目になるこのヒーロー事務所には六名のサイドキックが在籍している。

 そのうち四名は同級生であり、一人は幼馴染で一人は違法な人体改造の被害者という何とも珍しいメンバーで構成されている。

 

 もうぶっちゃけお茶を濁すのも疲れたのでオブラートを破り捨てるが、ここにいるサイドキックは心操以外の全員が間飛に惚れてる。

 

 ……何?ちゃんと説明しろって?柳レイ子以外は本編読み返してもろて。

 

 丁度よく柳が問い詰められてるので本人に説明してもらおう。

 

「えー……今更聞く?」

「言わなければ戦いの土俵にすら上がれないよ?」

「そーだそーだ!……まあ私B組じゃなかったから本当に分かんないんだよね。唯ちゃんも知らないくらいだから当然だけど」

(関わらんとこ)

 

 あ、心操が逃げた。

 まあ女性だらけの中に間飛がいなければ紅一点ならぬ黒一点になるし妥当な判断だろう。*4

 

 心操はさておき柳の話だ。

 

 間飛に目を向け始めたのはいつ頃かと尋ねられると一年生の時の合宿先で起きた事件……開闢行動隊による襲撃が起こった日からになる。

 

 あの夜、間飛はオール・フォー・ワンと一人戦う事を選んだ。ラグドールを始めとした森の中にいた者達が逃げる時間を稼ぐために。

 

「あの時の私さ、移とラグドールの結構近くに待機してたんだよね。中継地点ギリギリで脅かしてやろ!って」

「……もしかして戦ってたのを見た、とか?」

「そ。まあ、私以外にも移が何か恨めしいのと戦ってることに気づいた人いると思うけど」

 

 今でこそ緑谷の【ワン・フォー・オール】がパワー()上回っている【フィジカルギフト】だが、当時現場にいた者の中では間違いなく最強格。そんな男子が加減も何もかも投げ捨てて本気で戦ってる事態が普通なはずがない。

 

 絶対に危ない状況にあるはずの間飛。彼は魔王を睨みつけた上で、恐怖を噛み殺すように笑っていた。

 

 よくオールマイトも言っていた。『助けに来たヒーローが笑顔でなきゃ、助けられた人も笑えるはずがない』と。

 あの時柳は言葉でなく心で理解出来た。ああ、そういうことだったのか……と。

 

「我ながらチョロいというか恨めしいというか……戦ってる時の横顔をチラッと見ただけで……ねえ?」

「うーん、でも移君の真剣な横顔綺麗カッコイイし……分からなくもないかも?」

「そうね。実際あの戦いに気づいてた耳郎とかもそんな事言ってたし」

「衝撃の事実ッ!?」

 

 余談だが柳以外にあの戦いに気づいていたのは感覚が鋭い耳郎と障子、ラグドールと共に避難した小大と骨抜と麗日に梅雨ちゃん……あれ?結構いるな。

 

 その中でも柳と耳郎、そして小大はあの戦いを知ってからほんのり間飛を意識するようになった。特にそういう意識が強まったのは柳だ。

 

「……恨めしい話、移の競争率ヤバくない?」

「この事務所だけでも五人いて……リューキュウとかミルコもだっけ?」

「あとトガちゃんとか発目ちゃんとか。あ、耳郎ちゃんもか」

「多分ラグドールも。この前移があの人から貰った肉球グローブ持ってきてた」

 

 そして現在。間飛に向けられる矢印は控えめに言って逆ハリネズミ状態。何なら教師として活動してる時に初恋ハンターまでしてるので逆ヤマアラシかもしれない。

 

「移ってさ、滅茶苦茶共感してくれるんだよね」

「そんでべた褒めもするし、ダメなことはダメって叱る」

「かといって完璧超人じゃないのデ、時々子供みたいにはしゃいだりしますネ」

「無敵か……?」

「誤用だけどスパダリが正しいと思う」

 

 何だアイツ。いや本当に何だアイツ。

 

 しかも何が腹立つって、こういう複数の人間が好意を向けていたら少しくらい険悪になりそうなのに、女性側が終始和やかに話が進むのだ。

 大抵一人がポツリとこぼしたら誰かがそれをいい感じにレシーブし、そのまま会話のラリーが続く。そこにマウント合戦もなければ火花も存在しない。

 

 強いて言うなら時々ミルコが『最初に目をつけたのは私だしな!!』的な事を言った時だけミルコVSその他が発生するくらいか。

 

 なので穏便かつ水面下で行われる競争には一つの約定がある。

 

 それは……。

 

「“一番目が確定したら、二人目以降は移本人の意志を尊重する”……とは言うけどどうなることやら」

「移君が二人目三人目って手を出すかと言われると……怪しいなあ」

「こっちから仕掛ける分にはいいのでハ?」

「……難儀な人を好きになっちゃったなあ」

 

 賛否両論通り越して『正気かお前ら』と言いたくなるソレ。要は『正妻は無理でも愛人枠ならワンチャン……!』だ。ダメだろ。

 

 まあやろうと思えば多分出来る。誰とも婚姻届を出さずに事実婚状態を保ち続ければいいし、何なら本人達の間で納得出来ているのなら外野からどれだけ口出しされても関係ない。

 

 ただ流石にこちら側の一方的な願望で間飛をシェアというのも酷い話なので、もし間飛が良ければ……という事になっている。

 

「問題は……今のところ一番可能性があるのが男性って所だけども」

「零治さん強いですからネ……」

「性別間違えてないか疑ったもんね」

「困った……ちょっと勝てない」

 

 その上でヒロインレース独走中なのがよりにもよって氷叢零治なのが一番困る。おのれ、幼馴染は負けヒロインの法則はどこへ行ったのだ。*5

 

 もう自虐を通り越して嫌味か貴様ッッ!!と言われ始めているが間飛はコミュ障……具体的には異性が相手になるとコミュニケーションが受け身の姿勢になるのだ。

 なので動くときはどうしてもこちらから動くしかなく、小大のように振り切れて抱きつきにでも行かないと距離が縮まりにくい。

 

 じゃあ零治はというと見た目はともかく生物学的には男性、しかも幼馴染なのでどれだけ女の子のような見た目であっても『でもコイツ男だし』という認識が根底にあるので名前の通り距離が零のままだ。ハハッ、ワロス。

 

 

 そうこうしているうちにひと仕事を終えたらしい間飛が帰還。ほんのり煤けた痕跡が見られるが怪我らしい怪我はなく、相も変わらずの無傷なようだ。

 

「ただいまー……疲れた」

「おかえりー!間瀬垣どうだった?」

「ん、アレ見たら分かるだろ」

「アレ?アレってど───零治さーん!?」

 

 で、少し後から満身創痍の零治。別に怪我がとか出血がとかじゃないけど、風がピウと吹いたらパタリと倒れそう。

 いつも間飛を見てキラキラしている瞳は何処へやら、死んだ魚のような目とはこの事かと妙なことをステラが学習する程に意気消沈している。

 

 何があった!?と先程の恨めしさも忘れて間飛に尋ねると。

 

「……俺の仕事についてきた時の零治ってさ、八割くらいは子供から性別間違われるだろ?」

「うん、よく愚痴ってる」

「で、間瀬垣小の子供達が想像以上にクソg生意気な感じで……零にもイタズラしようとしたんだわ」

「……あっ」*6

 

 話に聞いていた通り間瀬垣の子供達はかなりやんちゃだった。それはもうグラウンドで間飛が『今から俺に向けてなら個性使ってもいいぞー』と言った瞬間にノータイムでぶっ放してきたくらいには。

 

 そんな小学生達が同行していた零治には何もしない、なんてことがあるはずもなく。当然のように零治にもイタズラの矛先が向けられた。

 

 小学生が思いつくイタズラなど些細なものだろうと思うだろうが、幼いが故の無知とは時に大人の想像力を軽く凌駕してしまう。

 最初はハイハイ、と片手間に氷でイタズラを防いでいた零治だったが、間飛と違って探知能力を持たない彼は背後に回った男子に気づかなかった。

 

「そいつが持ってた個性が【触れた相手の感覚を鋭くする】って能力でな。感覚を鋭くさせられた所を思いっきり擽られて……」

「……擽られて?」

「滅茶苦茶可愛い悲鳴あげて笑っちまったんだわ」

 

 普通なら『それだけでこんなに満身創痍に?』と思うだろう。しかし目の前の男性と言うには無理がある面の良さをしたカルドルがそうなってしまえば話が変わってくる。

 

 不意打ちのくすぐりに感覚鋭敏化。何より男性だか女性だか分からないカルドルの可愛らしい悲鳴と笑い声。

 自業自得とはいえ間近でそんなものを浴びた小学生達の性癖が無事かと言われると……。

 

「……帰る時、男子達が露骨にそういう感情を向けてるなあってわかった時のやるせなさ」

「まあつまるところ、自分が小さい子の性癖捻じ曲げた瞬間を目撃したからこうなってるわけだな」

「「可哀想……」」

「あノー……被害者の方々は推定何名ほド?」

「最低五人。最大九人」

 

 零治とていつまでも引きずっていたりはしないけれども。おそらく多分絶対彼らの中でのカルドルは『ちょっと抜けた所がある儚げな美人のお姉さん』で焼き付いてしまっている、というショックが強い。え?ナルシストだって?失礼だな、事実だよ。

 

 一人だけ別のベクトルで精神的疲労が積み重なった零治は泣いた。戻ってくる途中で車を停めて少しの間間飛に縋り付くくらいには泣いた。決して役得とか思ってはいない。

 そしてこういう風に女性と間違えられた日は決まって間飛ニウムを補充する為にベタベタしだす。実はもう立ち直ってるんじゃねえかと疑惑の視線から目を背けてでもひっつき虫に徹する。

 

 間飛は間飛で日頃からステラにくっつかれていることが多いので、その日は零治とステラの二人がかりを背負う事になったり。

 

 

「……やっぱりまずあの人から倒さなきゃね」

「ある意味雄英より倍率が凄い」

「むぅ……」

 

「仕事しろお前ら」

 

「「「アッハイ」」」

 

 

 色恋沙汰にうつつを抜かすなとは言わない。だがそれはそれとして俺一人に押し付けるな。やや“おこ”な心操の一言にそそくさと全員が仕事に戻っていった。

 

 

 

*1
過大評価

*2
風評被害

*3
本家に謝れ

*4
零治「I'm 男。あーゆーおーけー?」

*5
幼馴染枠「これもう誹謗中傷だろ」

*6
大体察した賢い葉隠






〜IXA事務所の仕事事情〜

間飛…全部やる。依頼を受けるかどうかはコイツ次第だし、活動の方針もコイツ次第。実務も書類もキチンと終わらせてくれるけど、目を離すと人の仕事までやるので定期的に怒られてる。

零治…間飛の補佐全般。立ち位置的には秘書……というよりは相棒に近い。基本セットで動くけど間飛不在時はコイツがリーダー役になる。

心操…苦労人枠。書類関係の仕事を主に任されがちだが、間飛以外のサイドキックからは受け付けない。自分でやれ。色恋沙汰抜きなら一番距離が近いのコイツかもしれん。

ステラ…秘書枠。生い立ち的にあまり表に出せないのでパパラッチすらノータッチ。心操と並んで書類仕事を重点的に片付けてくれる。

葉隠…広報活動担当。全員の面の良さを自覚してるのでそっち方面で押し出してみたら人気が爆発して困ってる。広報担当なだけあって書類仕事にはなれたがその分現場に出られないことが増えた。

柳…現場に出る時小大と組んで動くことが多い。【サイズ】と【ポルターガイスト】が救助現場で超有能。書類は苦手で避けがち。

小大…柳と組むことが多いが基本誰とでもいける。コミュニケーション能力が少し育ったけどまだまだ未熟なのでメディアは避け気味。書類は……まあ、うん。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。