え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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遅れてしまい申し訳ありません……!
少し離れると書く速度が落ちてしまってますね……本当に申し訳ない。





デクとIXA

 

 

 

 一向に飛んでくることの無い次弾。ガントレットの上から前腕に大きな痣を残した銃撃が再びこちらに向けられる事はなく、コンクリートの床や壁に弾痕を残していくばかり。

 

「あの人が【IXA】……?」

 

 舞台の上にいたはずの少年はいつの間にか脇へと追いやられ、諦観に染まっていた狙撃手はチープな演技でもしているようにやたら滅多らに撃ち続けている。

 ナガンの銃口の先、緑谷の視線の先に立つ第三者は動揺する素振りも見せずに実力の差を見せつける。

 

 闇の中で火花が瞬いてはコンクリートを穿つ音が聞こえるだけ。二人のやり取りで数十発もの弾痕が周囲に作り出された。

 

 その光景を少し離れた位置からぼんやりと眺めていた緑谷だったが、彼に背後から声をかける人物がいた。

 

「デク!」

「っ、エンデヴァー!」

「突然連絡が途絶えたから来てみればレディ・ナガンとIXAだと……!?」

 

 トップヒーローの増援。ホークスとの連絡中に襲われていたのでオールマイトからGPSが途絶えたという連絡を受け取る前から動き出していたらしい。

 

 いざ現場に着いてみれば遠距離系でもトップクラスと言われていたレディ・ナガン、正体不明ながらダツゴクを仕留めて回るIXAの二人が戦っているのだから困惑も一入だろう。

 視線だけで緑谷に尋ねるエンデヴァーだが、緑谷とて何かしらの情報を得ているわけでもない。

 

「僕を襲ったのはナガンの方で……IXAはナガンを止めたがっているみたいです」

「相変わらず敵か味方か分からん奴だ……!」

 

 エンデヴァーが言いたいことも分かる。緑谷が体勢を立て直している所に乱入してきてナガンを蹴り飛ばし、ほぼ一方的にナガンを追い詰めている。

 彼女が元はヒーローであったことも加味すると本当に『これどっちがヴィラン?』という疑問が湧いてくる。一応今はナガンがヴィランでIXAがヒーロー……ヒーロー?うん、多分ヒーロー。

 

 加勢すべきか?と思案するものの、必死の形相のナガンと余裕な態度を崩さないIXAを見ればそんな考えは霧散する。今割り込んでも何の意味もなさそうだ。

 

 やがて今この場での説得は不可能と悟ったのか、IXAがナガンの近くにワープするとアッサリとナガンを無力化させてしまった。

 

「……話を聞きに行きましょう」

「危険だぞ」

「直接会うのはこれが初めてです。危険なのかどうかもまだ分からない」

「……何かあればすぐに逃げるぞ」

 

 ありがとうございます、と少し申し訳なさを滲ませながら謝った。本当なら替えのきく誰かに行かせるべきだ。だが緑谷は自分の目で確かめたいらしい。

 エンデヴァーと共にビルの屋上を跳び移りIXAの元へと向かう。逃げる様子はなく、気を失っているナガンを抱えたままこちらを待っていた。

 

 どちらも同じ相手と戦っていたというのに二人の姿はまるで違っている。緑谷はガントレットを砕かれ出血もしているというのに、IXAは雨に濡れている以外の汚れは何一つ見当たらない。

 

 言葉を交わす前から実力の差を知らされてしまうが、黙るわけにはいかない。恐る恐るといった様子で緑谷は口を開いた。

 

「……貴方は何者なんですか?」

「あれ?ホークスとかエンデヴァー経由で話聞いてたりしない?」

「あれだけでは分からないことが多すぎるんです。出来れば……僕達に着いてきて欲しい」

 

 武装と呼べる武装はない。しかし普段着と言うには物々しい服装だ。ヒーローコスチュームと言われれば納得出来なくもない。

 

 異形型ではないと思われるが、それにしてはやけに身長は高いし体格もいい。面構えも強面……というには優しさが滲んではいるけど、表情が変われば普通に怖い。これで一般人と言われてもちょっと納得できないかもしれない。

 

 まあ超常社会の人間を見た目で判断するのはあまりよろしくない。とりあえず話を聞きたいので来てくれないかと尋ねてみる。

 

「その前にこの人どうにかした方がいいぞ」

「ナガンさんを……ですか?」

「多分だけどオール・フォー・ワンに何か細工をされてる」

「っ!?」

 

 しかしIXAはそれどころではないと言う。

 

 先程までのIXAはただ説得を試みていただけではなかった。攻撃を回避しつつ『あの腐れ顔金玉ならやりかねない』という疑念を払拭する為に感知能力を使用し続けていた。*1

 案の定彼女の【ライフル】の銃身に無関係の装置が取り付けられていた。

 個性由来の遠隔爆弾らしきソレを発見した時点でIXAはやる事が決まった。なるべく最小限のダメージでナガンを捕えるべきだと。

 

「【ライフル】に妙な仕掛けがされていた。攻撃手段を失った時点で口封じでもするつもりだったんだろうな」

「オール・フォー・ワン……!!」

「……何ならお前にナガンの銃身を砕かせて『お前のせいでナガンは死ぬ』とでも言いたかったのかもな」

 

 緑谷は怒りを滲ませながら魔王の名を呼ぶ。IXAもオール・フォー・ワンのやり口を知っているからこそその最悪の可能性に気づくことが出来たものの、あのまま交戦を続けていれば銃身の破壊を狙っていただろう。

 

 そういう可能性があっただけだろうと言ってしまえばそれまで。だが結果論でもナガンと緑谷が助けられたのは事実だ。

 

「とにかくだ。慰めにもならねえかもしれねえが相澤先生に【抹消】して貰いながら取り除いた方がいい。いつ爆破されるか分かったもんじゃねえ」

「っ……僕は…………雄英高校には、戻れ、なくて……」

「はあ?何でよ?」

 

 しかしその提案は受け入れられない。ナガンを雄英高校に入れたくないのではなく、緑谷が雄英高校に戻る訳にはいかないのだ。

 

 いつオール・フォー・ワンの魔の手が伸びてくるか分からない現状、多くの市民が避難してきている雄英高校に緑谷が戻れば巻き込んでしまう可能性が高い。

 それに1-Aや母親、大切な皆も巻き込んでしまう。そんな事を考慮すると彼は雄英高校に戻ろうと思えないのだ。

 

「……IXA、一つ聞きたいことがあるんだがいいだろうか」

「どーぞ。答えられることならね」

 

 それを知った上でエンデヴァーはこう尋ねた。

 

「お前はデクを雄英に戻すべきだと思うか?」

「っ、エンデヴァー!?」

「そりゃ勿論」

 

 いきなり何を、と言うよりも早くIXAはそれを肯定した。

 

「どれだけ緑谷が強くてもオール・フォー・ワンを相手取るなら一人で戦い続けるのは無理だ。最悪、使い捨ての駒を大量に押し付けて疲弊した所を潰すだけで勝てるしな」

「……でも、皆を巻き込みたくない」

 

 緑谷とて理屈としては分かっているのだ。しかしオールマイトから託されたのは自分であり、オール・フォー・ワンに狙われているのも自分だ。

 緑谷にとってこの戦いは自分の戦いなのだ。誰かを巻き込むなんてしたくない。

 

 IXAからすればそんな事実など知ったこっちゃないのだろうが、それだけは譲れない。緑谷はIXAとエンデヴァーの提案を断ろうとしたが……。

 

「いや今更だろ」

「え……?」

「巻き込むも何も日本がこうなってる時点で全員が当事者だ。ヒーローは特にな」

「違っ……これは僕がやらなくちゃいけない事だ!」

「ンなわけあるかい。むしろオール・フォー・ワンを倒したがる人間なんていくらでもいるんだし、使命とか関係なく戦おうとしてる連中だっているのに」

 

 彼の視線が緑谷の隣に立つエンデヴァーに向けられる。突然向けられた視線にわずかに警戒心が湧くが、彼の言いたいことを悟ったエンデヴァーは静かに首肯した。

 

 エンデヴァーがオール・フォー・ワンと戦うことを決めたのは【ワン・フォー・オール】の継承者だからではない。ましてや二つの個性の因縁に関わりがあったわけでもない。

 

 エンデヴァーはヒーローだ。ヒーローがヴィランを倒すことに理由がいるのだろうか。

 

「無意識で頭の中から排除してる可能性を言ってやってもいいんだが……どう思う?エンデヴァー」

「…………」

「沈黙は肯定と受け取るぜ。じゃあ緑谷。お前が無意識に目を逸らしている可能性を言ってやる」

 

 それでも頷かない緑谷に対し、IXAはソレを口にすることにした。

 

 

「お前がいなくてもオール・フォー・ワンが雄英を襲撃する可能性はあるんだぜ?」

「っ……!!?」

「瓦礫の山の上で汚ねぇ笑みを浮かべながら『君の嫌がることをずぅっと考えてた』とかな……想像しただけで腹立つなアイツ」

 

 

 僅かな時間緑谷と言葉を交わしただけでIXAでも気づけた可能性。ならば緑谷でも気づけたはずだろう。恐らくその可能性をずっと見ないように、考えないようにしていたのかもしれない。

 

 それをIXAは突きつけた。自分の頭の中とは違う、逃げようのない他人からの言葉で。

 

「だから俺としては戦力を集中させて守る場所を限定した方がまだマシだと思うんだけどなあ……ま、それでもってンなら別にいいけど」

「僕は……」

「エンデヴァー、雄英に連れてってくれ」

「む?」

「さっきも言ったがまずはナガンだ。その気になったらお前も来いよ」

 

 後はお前次第だ。言外の忠告は緑谷の頭を迷いで満たしていた。

 

 

 

*1
裸体を知ったなテメェって?元の世界で知り尽くしてるので別に……。






緑谷(この人……絶対強い!威圧感が……!)
間飛(コイツ滅茶苦茶臭いんだが。洗ってない犬の足裏の臭いがする……風呂はいってねえなコイツ)
エンデ(何かろくでも無いことを考えてないか?)


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