え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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最後の砦にて

 

 

 

 雄英より約30km地点。周囲より小高い丘の上に無骨な要塞が建てられた。

 

 雄英生達が過ごしていた寮、ハイツアライアンスをリスペクトした造形のソレの名は【トロイア】。かつて神話の世界の空想と思われていた、しかし実在したかもしれない古代都市の名を冠している。

 

 セメントスとパワーローダー、エクトプラズムがいるからこそ実現した超短期施工。雄英には到底及ばないものの、その堅牢さはオール・フォー・ワンや死柄木弔でも出てこない限りは陥落はないと言えるほどだ。

 

 そこに住まうのはコスチュームに身を包んだヒーロー達と……まだ成人すらしていない少年少女達。

 

「各自荷物を部屋に運んで準備を。決戦の時は近いぞ」

「雄英の寮リスペクトじゃん!親切ー!」

「……終の棲家にならなきゃいいけど」

「やめろ瀬呂ォ!?縁起でもねェこと言うんじゃねェ!」

 

 壁や天井に打放しコンクリートが見える室内へと踏み入りながら、思春期にしては比較的大人しめな会話を繰り広げている。

 

 もっと平和な状況ならば高まるテンションのままに謎会話を繰り広げたり、或いは面白おかしくちょっかいを出したりもしていたのだろう。

 今の彼らははしゃいでいながらも瞳の奥に不安や恐怖が揺れ動いており、その何倍も大きい覚悟の熱が揺らめいている。

 

 そんな彼らの様子を尻目に一人、間飛は懐かしむように笑っていた。

 

「……IXA?」

「ん?なんです?スナイプせ……失礼しました」

「いや……ああ、そうか。そう、だったな」

 

 どうしたのかと声をかけたスナイプだったが、彼がどんな背景の人物だったかを思い出してそれ以上は言わなかった。彼だって本来ならば別の世界であの中にいたのだろう。人が好き勝手に踏み込んでいい領域じゃない。

 

 先日の会議で根津校長が散々に警戒している様子を見せていた間飛だが、こうして見るととても救世主だの最強だのといった肩書きを持っていることが信じられなくなる。

 だってこんなにも普通の感性で、こんなにも普通の弱さを持っているじゃないか。少なくともスナイプにはそう見えてしまった。

 

 でも、指摘されたところで受け入れないんだろうな、とも思っている。今必要なのはそんな弱さを認めることではなく、強さを全面に押し出して味方の士気を上げるべきだろう?とでも返されるのが分かっている。

 

 だからスナイプも、他の教師もヒーロー達も。彼の覚悟を尊重して見守ることしか出来ない。

 

「……せめてIXAが心を許せる奴が居ればな」

 

 彼にも安らぎを与えられる誰かが現れて欲しい。並行世界の元教え子を前にしてそんな事を思うしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 馬鹿か俺は。

 

 分かっていたはずなのに、理解したはずなのに。その上で『俺ならどうとでも出来る』なんて何故考えたのか。

 

 あのクソ野郎がこの俺一人に懇切丁寧に時間をかけていた時点でこうなる可能性は想定できただろうが。所詮は何も分からねぇクソガキのままだったってことかよ。

 

「ふぅむ……調子はどうだい?」

「……マシな方だろ」

「まあマシではあるだろうね。三日前の君は見るに堪えない程酷かった。アレと比べれば確実にマシさ」

 

 よく言うぜ。一番取り乱していたのはテメェだろうに、よくもまあそんな飄々とした態度を取れるもんだ。

 

 今はスターアンドストライプとIXAに感謝すらしている。この目の前のクソッタレから解放してくれた事には頭を下げたいくらいに感謝している。

 あの時、IXAは【オール・フォー・ワン】が俺の何に手を伸ばしていたのかを知っていた。スターはその【オール・フォー・ワン】から()を守ってくれた。

 

 目の前のクソッタレは俺の中で何が起きているのかを全く把握していないらしい。

 

 こんなにも近くにいながら目の前のクソガキから【オール・フォー・ワン】が消えていることに気づいていない。アンタの意志(オリジン)はとっくに消え失せている。

 

 ただ、植え付けられた憎しみと怒りだけが燻っている。コイツの支配から逃れたというのに、俺自身の中で燻るそれらの感情がまだ残っている。

 

「まだまだ不完全だが……これ以上時間をかければジリ貧になってしまう。忌々しいヒーロー達の手がここに伸びてきてもおかしくないんだ」

「そうかよ」

「ああ。だから勝負を決めよう!」

 

 嬉々として語る。粘ついた悪意に塗れた不愉快な声で。

 

 

 誰も助けてはくれなかった?

 誰も手を差し伸べてくれなかった?

 こんな世の中にしたのは誰だ?

 

 ……本当によく回る舌だ。そこまでベラベラと出任せを宣う神経には尊敬の念すら覚える。

 

 そうだな。誰も助けないようにされてしまった。誰も手をさしのべないようにされてしまった……俺が世界で最も不幸な人間なんだと誰に教え込まれたっけなァ?

 

 アンタの教えは俺の中でちゃんと生きているさ。相手の嫌がることをしろという教えも、大切な物ほど目の前でじっくりと壊してやれと。

 

 

 俺には復讐する権利があるってのも。

 

 

 ……ああ、楽しみで楽しみで仕方ない。

 ずっと、ずうっと。アンタと身体の主導権を奪い合っている間中ずっと考えていた。

 

 

 お前の嫌がることを考えていた。

 

 

「決戦は二日後だ。それまでしっかり身体を休めるといい」

「…………」

 

 二日後の決戦。そこがお前の死に場所だ。

 

 覚悟しろ、オール・フォー・ワン。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 荷解きは済んだ。ほとんど何も持ってきていないからそう時間はかからなかった。

 

 吹き付ける風が少し冷たくて、遠くに見えるボロボロの街並みを眺める。倒れたビルや崩れてしまった家屋、いつ壊れてもおかしくない亀裂だらけのアパート……酷い光景だと思う。

 

「麗日さん!」

「わひゃいっ!?で、デクくん?」

「ご、ごめん!驚かせちゃった!?」

 

 し、心臓に悪い……!というか音もなく現れなかった!?デクくんまた何か身につけてない!?

 

 どうやらデクくんも着替えくらいしか荷物を持ってきていなかったらしく、私と同じですぐに終わったんだって。

 ……あんまり人の服に文句言えるセンスやないけど、デクくんのTシャツってなんかこう、独特なデザインのやつ多いよね。デカデカと『シーツ』って書いてたりオールマイト関係のグッズやったり。

 

「……麗日さん、あの時はありがとう」

「へ?」

 

 あの時……あ。

 

「ちゃんとお礼を言えてなかった。本当にありがとう」

「いやあれは別に……!細かいこと気にするねぇ相変わらず」

 

 あ、あの時は悲しいとか辛いとか色んな感情がごっちゃになってもうて、気がついたら身体が先に動いてただけやし!

 何でだろう。デクくんの顔をまともに見れない。どうしても照れくささが顔を出してしまう。

 

 私の照れくささを察してくれたのかデクくんは話題を直ぐに変えてくれた。外で何をしていたのかを尋ねられる。

 

「……私さ、変なんだよね」

「変じゃないよ。強いし勇敢だし髪型も似合ってるしとても優しいし素敵」

「いや違くて……思わぬ褒め言葉が」

 

 あの時……雄英の校舎の上で喋ってる時、トガヒミコが頭を過ぎった。

 

 先の戦い、ギガントマキアの進行中に一対一になった時、私は私が当たり前だと思っている事を言葉にして返した。

 街をこんなにして沢山の命と幸せを奪ったヴィラン。そんな彼女は私の知らないところで間飛さんが救い出してしまった。

 

「私は……あの人の当たり前を知らなかった。トガヒミコのことを何も知らないのに……一方的に私の当たり前を押し付けてた」

「麗日さん……」

 

 あの人、凄いよね。強さもだけど柔軟性?とかそういうの。どんな相手でも一回立ち止まって考えて、相手の普通と自分の普通の違いを擦り合わせられる。

 ああいうのはもう人生経験とかでしか磨かれないのかも。少なくとも私は無理だった。こんな事になるまでトガヒミコの中にある当たり前なんて想像もしてなかった。

 

 ……あの人多分すっごい人誑しだよね。周りとの感覚の違いに悩む人ほどあの人に救われるんじゃないかな。大抵の事は『個人差なんてそんなもんじゃね?』の一言で済ませちゃいそう。

 

「この戦いが終わったら……一度でいいからトガヒミコと話す機会が欲しい。あの人の事を分からないままにしたくないなあって……だから街を見てた」

 

 余計なことを考えないように、おぞましい光景を忘れないように。

 

「……僕も、なんだ」

「へ?」

「僕も死柄木の中に小さな少年が泣いているのを見た」

 

 ……そっか。君もか。

 

「戦いは避けられなくても、その奥にあるものを無視したくはない」

「じゃあ……二人とも変だね」

「……うん」

 

 

 

「「頑張ろう」」

 

 

 ……被った!

 

 

 

 






スナイプ(IXA……可哀想に)
間飛(うっわ何これ外見カッケェ。元の世界に戻ったら事務所改造しようかな。こういう無骨な感じの真っ黒な要塞とか厨二心燃えたぎるやんけ)
常闇(分かる)
間飛(こいつ直接脳内に……!?)


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