え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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先手必勝かつ油断大敵

 

 

 作戦決行日、朝。

 

 青山と緑谷が打ち合わせをしている頃、間飛はとある人物達からある物を受け取っていた。

 

 片や最速の肩書きを持つ男、片や現在の雄英の防衛システムの要とも言えるサポート科の少女。

 かなりの無理を言ってしまった自覚があるだけに申し訳なさと感謝の念でいっぱいになりながら、間飛はそれを手に持ってニヤリと笑った。

 

「最高の仕上がりだ……!」

「……コレ、そんな風になるんだね」

「少し苦労しましたが概ね想定通りです!」

「いやマジで助かります。貴重な時間を使ってもらって申し訳ない」

 

 必要な事だと分かっているホークスも発目も特に何かを言うことはなかったけれど。それはそれとして心の中でこう思ってもいた。

 

 

((ご愁傷さまです……オール・フォー・ワン))

 

 ……それ今から倒しに行く奴なんですけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作戦決行日の今日……今更言ってもどうしようもない事だが、ヒーロー達は誰一人としてオール・フォー・ワンの正確な手札の数を把握出来ていない。

 

 というのも奴は有用と思った個性を片っ端から集めていたらしく、時間が経てば経つほど手札を増やしてしまうのだ。

 故に、最も長くオール・フォー・ワンとの戦いに身を投じたであろうオールマイトですら完全な対策は難しく、最終的に出した結論が『やられる前にやる』になったのも当然と言えば当然だろう。

 

 しかし今のヒーロー側にはそんな戦力は……無いとは言わないがまずオール・フォー・ワン本人が出てこない事には戦いようがない。

 

 そこでオール・フォー・ワンを釣り出す必要があるのだが、今度は釣り出す為にもいくつかの障壁が立ちはだかった。

 

 まず【嘘をついているか分かる個性】や【相手の思考が読める個性】などの可能性。単純にして最も厄介な可能性。

 次にラグドールから奪った【サーチ】によってヒーロー達の位置が割れてしまうという問題。

 

 オール・フォー・ワンを誘き出すには緑谷を餌にしても【嘘をついていない】かつ【ヒーローが近くにいない】状況でなければ出てきてはくれない。はっきり言ってとんだクソゲーもいい所だ。

 

 その二つの障壁を超える為に呼び出されたのが心操人使と物間寧人だ。

 

 個性伸ばしを経て【洗脳】で会話までさせられるようになった心操が青山の両親を操る事で『彼らは嘘をついていない』状況を作り出した。

 緑谷の近くにヒーローを待機させられないので、黒霧から【ワープゲート】を【コピー】した物間がヒーロー達を呼び出す形をとる事で『ヒーロー達がまだ(・・)来ていない』状況を用意できた。

 

 ここまで来たら後は青山の演技力次第。口八丁手八丁を尽くしてオール・フォー・ワンを欺き、勝利を確信させて呼び出した。

 

 

「──よくやってくれたね青山優雅」

 

 

 音もなく上空から現れるオール・フォー・ワン。

 その声には確かな喜色と勝利を確信した昂りが滲んでおり、全てが己の思い通りに進んでいると思い込んでいる。

 

 信じてたのに、と叫ぶ緑谷を前に青山は蹲る素振りを見せ──

 

 

「裏切るのは心苦しい……なんてものじゃなかったよ叔父さま!!」

「……恩知らずめ」

 

 

 ──その身を翻し、与えられた個性で牙を剥いた。

 

 【ネビルレーザー】はオール・フォー・ワンにとって不要でしかない弱個性。致命傷どころか目立ったダメージすら与えることは出来なかった。

 しかしその一撃は決別を意味し、同時に彼がヒーロー達と共に戦う道を選んだ決意が込められている。

 

 とてつもない不快感。オール・フォー・ワンにとってその類の人間は不愉快以外の何物でもない。

 

 何故という思考が頭を過ぎったオール・フォー・ワンだが、その疑問をすぐに捨てた。罠だろうがなんだろうが目視できる距離に【ワン・フォー・オール】があるのは変わらない。

 

 そして【サーチ】によって周囲にヒーローがいないと思い込んだオール・フォー・ワンはヘドロによるワープを発動。死柄木弔や荼毘ら異能解放戦線の残存勢力全てを召喚した。

 

 対するヒーロー陣営は物間によって【ワープゲート】が開かれ、そこからエンデヴァーやミルコ達トップヒーローを筆頭に最強で最高のヒーローが現れた。

 

 

「ハーッハッハッハァ!!フィィィィクサァアアアア!!!」

 

「黒霧の……!?そんな個性があるとは……!」

 

 あのオール・フォー・ワンを、あの魔王を出し抜いてやった。我慢するつもりのない高笑いと共にファントムシーフは更に多くの戦力を呼び出す。

 

 数の上では既にヒーローが上回った。ダブルスコアなんてものではない人数差があって尚、誰一人として安心も油断もない。目の前の全てをここで終わらせない限り平穏は訪れない。

 

 

 ……ここで両陣営、どちらにとっても予想外の出来事が起こった。

 

 

 

 呼び出されたヒーローの中には当然彼の姿もあった。

 

 未だ三十年にも満たない生涯の中で、初めて憎悪というものを抱えた一人の男が。

 

「……やっと会えたなァ」

 

 

 

 あまりにも隙だらけだった。

 

 自分の事をまだ支配できているとでも思っているのか、無防備にさらけ出された背中がそこにあった

 

「ああ、ダメだ……我慢出来ねェ……!」

 

 

 

 二人が同時に動き出す。不快感を顕にしながら下らない能書きを垂れ流す魔王へと向かって。

 

 当然周囲にも気づかれている。エンデヴァーが一人飛び出して行った間飛に手を伸ばして静止を試みるも届かず、駆けだして行った方向がどう考えてもオール・フォー・ワンの背中なので何するつもりだと尋ねようとした荼毘もいて。

 

 オール・フォー・ワン本人が気づいた時にはもう間に合わなかった。

 

「面倒なことを──……ん?!」

 

 

 

「「くたばれクソ野郎!!!!」」

 

「ボゲバブォぅ!?!?」

 

 

 

 両者の振りかぶった()が思い切り振り抜かれた。それも首の辺りを前後から挟むように。

 

 奇しくも同じ場所へと放たれた真一文字蹴り(ラリアット)により、変則的なクロスボンバーが炸裂。オール・フォー・ワンにちょっと看過できないレベルのダメージが入った。

 

 想像してほしい。オールマイトにも劣らない超パワーを改造手術によって得た死柄木弔と、オールマイトから直々に『育ちきったら私以上になるかもね!』と言わしめた間飛移の二名によるクロスボンバーを。

 

(((致命傷では……??)))

 

 この瞬間、敵味方を問わず全員の感想が一致した。多分石炭でもダイヤモンドに変わるくらいの圧力がかかってると思うの。

 

 そんな威力の攻撃を受けたのだから当然オール・フォー・ワンのマスクはおシャカに。

 ホークスが懇切丁寧に『ここを狙いましょう!』と言っていた部分を開幕早々敵の一番ヤベー奴と、味方の一番ヤベー奴によって粉砕されてしまった。

 こんな時どんな顔をしたらいいのか分からないって?笑えよホークス。

 

 

「ッシャオラァ!いいの入れてやったぞクソ野郎!」

「悪いな先生……あんまりにも隙だらけでつい手が出ちまった」

「ぐ……!奴はともがぐ、死゙柄゙木゙ィ゙!!?何故お前まで!!」

 

「よ、よく分からんが今だ!押し込め!」

「人の心とか無いのかテメェら!?」

 

 ヴィラン達より一瞬早く立ち直ったエンデヴァーが慌てて全員に指示を出す。それに荼毘が『お前が言うか』な反応を示したがチャンスはチャンスだ。多少強引にでも、とヒーロー達がそれぞれを押し留めんと個性を発動する。

 

 それに合わせて【システム誘導牢(トロイア)が起動される。地面のコンクリートを砕きながら現れ、ヴィラン達をバラバラに収容していく。

 

「ゲボッ……そうか……!オールマイト達の狙いは……っ!!」

 

 ほんの数秒間の拘束。それそのものに大した意味はなく、ただ小分けに出来ればそれでよかった。

 

 再び開かれる【ワープゲート】。それもオール・フォー・ワン達を閉じ込めた牢獄の背後に。

 

 全ては全員を確実に分断する為に。

 

 オール・フォー・ワンに痛手を与えながら、全てが【ワープゲート】を潜り抜けた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「……あーあ、あとちょっとで殺せたってのに」

 

 【崩壊】の矛先が土地に向くことを警戒された死柄木弔の転送先は天空の棺。膨大なマネーパワーとマンパワーによって生み出された人工の戦場。

 

 一見何も無いように見える空と舞台の境目には強力な電磁バリアが張り巡らされており、【崩壊】の伝播をとことんまで警戒したステージはブロック毎に切り離しては再生産を可能にしている。

 

 そこに招待されたのは死柄木弔一人、そして……。

 

「そうは思わねえか?緑谷出久」

「っ……(何だ!?前とは何かが違う!)」

「気ィ引き締めろデクゥ!!」

 

 【ワン・フォー・オール】九代目継承者とそのライバル。ベストジーニストやミルコらトッププロ達だ。

 

 ひたり、と五指が地面へ触れる。しかし崩れるどころか亀裂すら入る様子はなく、やはり【抹消】されていた。

 少し周囲を見渡せばソレは簡単に見つかった。イレイザーヘッドとマニュアル……と、奇妙な笑い声を上げている男子生徒。

 

 

「フィ───フィフィフィフィ!【抹消】が嫌いなんだってねェ!?ラスボスさァん!!」

「……何だアイツの笑い方」

 

 

 それはそう。緑谷も爆豪も静かに頷いていた。

 

 

 

 





ついでに殺る気満々な方々が意気揚々と突っ込んで行った模様。

エンデ「綺麗に決まってたな……」
荼毘「何してんだアイツ」
緑谷「ええ……(困惑)」
青山「ええ……?(混乱)」

間飛「ッシャオラァ!!」
死柄木「ッシャオラァ!!」
AFO「いやもう瀕死なんですけど??」


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