え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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気温の変化には気をつけましょう(1敗)

昨日は投稿出来なくてすいませんでした。最近の冬はレベルが高いですね。伝家の宝刀バ〇ァリンを使う羽目になりました。





無法者達

 

 

 

 自分の人生を一言で表すならば『よくある悲劇』で十分だった。

 

 普通の両親の下で生まれ育ち、平均的な個性を持って生きてきた。それは裏を返せば何一つ突き抜けた部分のない平々凡々で面白みのない人間でもあるという事だろう。

 

 しかし周囲の人間全てが優れていた場合、平凡という言葉は劣等感を生み出すネガティブな言葉に早変わりする。

 

 【個性特異点】なる都市伝説が流行る程度には子供の個性が強くなっていく頃に子供だった自分は、周囲の同級生と比較しても決して目立つような個性ではなかった。

 それに、個性そのものよりも個性による副産物の方が使い勝手が良かったのも劣等感に拍車をかけていた。

 

 

 事の発端はなんだったのか、ある時を境にいじめの矛先を向けられるようになった。

 

 語彙力のない阿呆共の罵倒でも、束になって継続されてしまえばどうしたって精神に傷をつけられる。ベッドに潜り込んでも彼らの悪口は消えてはくれなかった。

 

 そんな事が連日続けば誰だって限界を迎えるわけで。とうとう反撃をしてしまった。それも相手に大怪我を負わせるほどの。

 

 それまでの可哀想な被害者という立場が一転。あっという間に被害者と加害者の立場が入れ替わっていた。

 

 先生も同級生も、誰も彼も庇おうとはしなかった。守ってくれたりはしなかった。

 

 

 この超常社会で落ちぶれた人間が取る行動は二つ。這い上がる為に努力するか──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──堕ちる所まで堕ちるか。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 オール・フォー・ワンには一つ切り札がある。

 

 未だに名前すら付けられていない程に不安定ながらも、全力で行使すれば人一人を跡形もなく消し去ってしまえる個性……壊理の【巻き戻す個性】が。

 

 死柄木弔から受け取ったオーバーホール謹製の個性消失弾を解析し、一度発動すれば消失へ向かってしまうというデメリット付きのリセットボタンを手にした。

 

 その性質上切り札として温存せざるを得ない代物だが、切るタイミングによっては全てをひっくり返す事が出来る最凶の手札だ。

 

 

 オール・フォー・ワンは戦闘開始直後からずっとその切り札を切るべきか悩まされ続けている。

 

 

「【大気】!私の前方50mの大気は発火する!!」

「チッ……!!」

 

 瞬間、スターの前方の【大気】が爆ぜる。エンデヴァーのソレには程遠くとも、衰え弱りきったオール・フォー・ワンには痛手になる威力の爆発。

 付与されたルールは次の一瞬には解除され、高熱以外の何物も残さずに火炎が消えた。

 

 舌打ちと共にギリギリのところで回避したオール・フォー・ワン。この戦いが始まってからずっとそうだ、個性を総動員して何とか倒されないようにするのが精一杯だった。

 

 スターの【新秩序】による攻撃はルールを付与しようとしている時点から回避動作に入らなければ間に合わず、回避に失敗すればまた四肢のどれかが吹き飛ばされる。

 

 そして回避に成功したとしても。

 

「ボーッとしてんなよ!!」

「ぐあっ……!また、貴様ァ……!!」

「ついでに片腕も貰っていくぜ!」

 

 無慈悲な英雄が【瞬間移動】で追撃に来る。

 生やした傍から四肢を切り落とされ、再生の為に時間を稼いでいるうちにスターが次の手を構えている。

 

 好き勝手にルールを付与するエゴイズムの頂点【新秩序】と、あらゆる障壁障害を知ったことかと飛び越えてしまう【瞬間移動】の組み合わせは何百人ものヒーローによる包囲網すら霞んで見えるほどの堅牢さを誇っていた。

 

 オール・フォー・ワンをして防御に徹するしかないという時点でその恐ろしさは十分に伝わるだろう。

 

「ぐうっ……!!緊急で複製した【超再生】では追いつかないか……!?」

「万全でも足りねえよ阿呆」

「いつでもいいぞ!IXAァ!」

「ッ!!?」

 

 もう何度目かの手足の再生。激痛がのっぺらぼうの表情筋を歪めさせ、積み重なる怒りが魔王から冷静さを奪い続ける。

 

 故に、彼の本命がブレードなんかじゃない事に気づくのが遅れた。

 

 

「【IXA】の攻撃は跳ね返る!!」

「何をする気だ……!?」

「分かる頃には死んでるさ!IXA!」

「あいよ……っとォ!!」

「まず───」

 

 

 オールマイトの幻影が頭を過ぎった。

 

 

 

 SMASH!!!

 

 

 

「が、あああああああ!!?」

「来たね……!」

 

 圧倒的な暴力の極みによる一撃。継承と成長を重ねた超パワーの拳がオール・フォー・ワンの体を砲弾の如く殴り飛ばす。

 

 殴り飛ばされた先にいるのはスターアンドストライプ。飛来するオール・フォー・ワンを前に彼女は拳を握るのではなく、右の手のひらを砲身のように突き出した。

 

 何を、とオール・フォー・ワンの思考が動くよりも早く魔王の身体が全く同じ速度で跳ね返された。

 

「拡大解釈さ!今のお前はIXAの飛び道具扱いだよ!!」

「っ……この、無法者がァ!!」

「ヴィランが言うことじゃねえなあ?」

「ぐべっ!?」

 

 再び蹴り飛ばされるオール・フォー・ワン。そしてまたスターに触れた瞬間に弾き返されてしまう。何とかスターに触れられさえすればとも考えたが、再生が終わりそうになるとすぐに腕を切り落とされる。

 打撃、反射。打撃、反射。打撃、反射……逃げ出すどころか回避にも防御にも移る暇のないキャッチボールのボール扱い。一往復毎に生命の危機が迫ってくる。

 

「な、めるなァ!!」

「おっ、強引に脱出しに来たか」

 

 このまま嬲られるくらいならば、とオール・フォー・ワンが仕掛けた。全身から黒い結晶のような物を伸ばし、二人を串刺しにせんと殺到させた。

 そんな苦しまぎれが届くはずもなく、当然のように二人ともあっさりと回避してしまう。

 

 だが、彼が求めていたのは二人への致命傷などではない。彼らが回避に移ることで生まれる極短い猶予だ。

 

 【超再生】を【活性化】でブーストし、一呼吸の間に全身の傷を消していく。死にかけの肉体が再び生命力を取り戻したものの、未だ余裕はどこにも無い。

 

 

 故に、彼は切り札を使うことにした。目障りな英雄気取りの二人を殺す為に。

 

 

「奥の手があるのはヒーローの特権じゃないだろう……!?」

 

 

 魔王が再び嗤い始める。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「……始まったんでしょうね」

 

 狭苦しい牢獄の中で遥か遠くの戦場を見つめるように渡我被身子は呟いた。小さな独り言は監視のヒーローにも届いていた。返事こそなかったけれど、視線だけが向けられていた。

 

 元々他のヴィランに比べれば少ない人数で監視されていた彼女だが、決戦開始前から更に人数を減らされていた。

 加えて監視役の交代頻度がかなり下がり、この監獄に残っている人数そのものが少なくなっているのだろうとあたりをつけていた。

 

 彼女の頭を占めているのはヴィラン連合の仲間達と間飛、そして最後まで分かり合えなかった一人の少女。

 

 気を紛らわす為かトガは監視役のヒーローに声をかけた。

 

「ヒーローさん、少し聞きたいことがあるんですがいいですか?」

「……なんだ」

 

 意外にも監視役の男は返事をくれた。嫌悪感……というよりは警戒心が強く出ているようだが。

 

「もう始まってるとは思うんですが、オール・フォー・ワンとは誰が戦うんです?」

「それは……そんな事を知ってどうする」

「心配なだけです。多分あの人が戦うんだろうなと思っているので」

 

 あの人とは、とヒーローが疑問に思うことはなかった。彼女がどういう経緯でここにいるのかを知っているので、オール・フォー・ワンと戦う側にいる『あの人』の心当たりは一人しかいない。

 

 実際、オール・フォー・ワンの相手をするヒーローはその間飛とスターアンドストライプという二大戦力だ。心配する必要があるのか?と考えてしまうくらいには頼もしさしかないのだが。

 トガが心配するのも分からなくはない。が、ヴィラン側の人間が心配することでは無いのでは?とも思う。そんな視線を悟ってかトガは自嘲するように話し始めた。

 

「いやあ、出頭した身としては……オール・フォー・ワンに勝たれると困るので。その時は多分私を殺しに来ると思いますし」

「……まあ、だろうな。奴は裏切り者を許さんのだろう」

「それに……間飛さんには死んで欲しくないのです……」

「……」

 

 何故その感情を他の人間にも適応してくれなかったのか、と口に出さずとも思わずには居られなかった。何人もの人を殺した少女が今更そんな事を宣うなと思ってしまった。

 

 自分の目付きが鋭くなるのを自覚しながらも、ヒーローは問いかけずにはいられなかった。

 

「お前は……」

「?」

「お前は、そこまでして何がしたかったんだ。何人も殺して、社会を破壊しようとして……何を求めていたんだ」

 

 ヴィラン連合の主張はある意味で一貫していた。『“今”を壊す』という意思で集まっていた。

 じゃあ具体的に何をどうしたかったのか、ヒーローはそれを知りたかった。

 

 死柄木弔はオールマイトを始めとしたヒーロー達への憎悪が、荼毘はエンデヴァーからの虐待じみた訓練が始まりとなっていた。では渡我被身子は何が始まりなのか?

 

 トガは少し考えるような素振りを見せた後にゆっくりと口を開いた。

 

「“普通”ってなんだと思います?」

「……普通?」

「皆当たり前のように口にする言葉ですが……その普通っていうものの基準とか分かりますか?」

 

 普通。単純に考えればマジョリティに属する考え方や感覚の事を指す言葉だろう。しかし彼女が求めているのはそんな辞書をなぞったような答えではない気がした。

 

「例えば皆が従っているルール、皆がそんな事をしようと思わない行為……それに従い、守る事が普通だと俺は思う」

「……ありきたりな答えですね」

 

 せっかく真剣に考えた答えにこの返事だ。ヒーローは少しくらい引っぱたいても許されるんじゃないだろうかと思案した。やめな?

 

 じゃあそういうお前はどうなんだ、と今度はヒーローが問いかける。渡我被身子が考える普通とは何なのか。

 

「……同調圧力、ですかね」

「はあ?」

「複数の人間にたまたま存在した共通点を『全員がこうなんだ』と思い込んでるだけ、みたいな?」

 

 想像の数倍身も蓋もない意見が飛び出してきた。そして割と否定しきれない。ヒーローは思わぬ語り草に素の反応をしてしまった。

 

「だからその共通点を持たない人間は『普通じゃない』と言われて、特に何もしていないのに除け者にされる……そんな感じですね」

「……お前本当に未成年か?考え方が隠居した老人のそれだぞ」

「未成年ですよ。これも半分以上受け売りですし」

 

 彼女の脳裏を過ぎるのは何もかも常識外れの“普通”じゃない男。思えば彼こそ見た目通りの年齢とは思えない雰囲気を纏っていた気がする。

 

 

 間飛と関わった人間は皆僅かに自己肯定感が上がったりする。

 別に彼が全員に対して褒め殺しをしたりするわけではないのだが、不思議なことに誰もが少しだけ自分を信じられるようになる。

 

 その理由はいくつかあるが、その内の一つとして『大半の事を肯定してくれるから』という理由がある。

 

 よっぽどの暴論や狂った思考回路でもなければ大抵の事には『それもまた良し』くらいの感覚で肯定し、受け入れている。

 彼からすれば吸血欲求も数多くある趣味嗜好のうちの一つでしかなく、勇気をだして暴露したところで『ほーん。じゃあ俺のも飲みたくなったりするん?』とそのまま雑談の内容に持ち出す程度の認識だ。

 

 要は彼ならば受け入れてくれる、肯定してくれるという安心感を与えているのだ。誰かに受け入れられたという経験がその人達の背筋を少しだけ伸ばさせる。

 

 

「……あの人の強さってそこにあるんでしょうね」

「どういう……?」

「多分、ですけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どんな予想外が出てきても『そういうこともあるか』くらいで微塵も動揺しないんだろうな、って」

「…………まあ、確かに」

 

 

 スターアンドストライプが大笑いしながら組手をしていた彼の姿を思い出しながら、ヒーローは何となく同意を示した。

 

 

 

 

 






スター「何だコイツ滅茶苦茶強い。おもしれー男」
間飛「分かってたけどこの人無法過ぎんか?」


ヒーローA「何あの化け物達」
ヒーローB「もうあの人達だけでいいのでは?」
ヒーローC「たった二人の戦闘で出来る光景じゃねえ」


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