え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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お久しぶりでございまする。






現実は思ってたより数倍酷い

 

 個性因子。この超常社会の真の黒幕と言ってもいい、謎に包まれた物質。

 

 ヒーロー科でなくとも義務教育を終えた時点で頭に入っているのが当然……という程度には認知されているものの、実際に正しい知識を持った人間はそう多くはない。

 大抵の人は『個性を発現したり使用する為の細胞的なヤツ』という認識。それ以上の知識を持つ者は医者か研究者、或いはドクターと呼ばれたあの男のような裏社会の頭脳役がほとんどだ。

 

 例に漏れず【アポート】を行った男も個性因子という言葉の知識はあっても、素人が語る遺伝子やDNAと同じで『世代を跨いで続いていく何か』くらいの感覚だ。

 

 じゃあ何で個性因子が、と断言したのかと言うと。

 

 ──他人様の精神世界的な所に飛ばされりゃあねえ……?

「聞き覚えしかねえ話だなおい」

 ──後は……勘としか。身体を失って精神体みたいな状態でいるのは分かってたし。

 

 間飛が思い浮かべたのは【ワン・フォー・オール】の一件。歴代継承者の意思が残ったまま引き継がれてきた個性。

 

 何となくそれをイメージすると分からなくもない話か、と納得させられる。今自分の中にある誰かの意思は残留思念に過ぎないのだと。

 

 すると男はヘラヘラとした態度から一転、申し訳なさそうに語り始めた。

 

 ──俺ヒーローの事とかよく分かんなくてさ……追い回される側だったのもあって『巻き込んだろ!』くらいのつもりで呼び出そうとしてたんだわ。

「だろうな。ヒーローはヴィランの苦労を知らねえし、逆も然りだ。そうおかしな事じゃない」

 ──……さすがに反省するよね。死に際の悪足掻きで無関係にも程がある他人を、それも平行世界の人間を呼び出すなんて。

 

 更に男は続ける。

 

 精神体として存在している以上、間飛の精神の揺らぎや負荷を本人よりもずっとしっかりと確認できていた。小さな罅割れから壊れそうなショックまで、この世界に来てからの間飛をずっと見ていた。

 

 如何に『自分以外どうでもいいや』の精神で生きてきた男でも、そんな光景を見せられ続ければ心変わりもする。

 

 呼び出しておいて身勝手な話だが、男は間飛を元の世界に帰してやりたいと思っていた。のだけれども……。

 

 ──お前の精神が強靭すぎてね……?呼びかけても全然聞こえてなかったっぽいのよ。

「……いや聞こえてたんだけど。これはお前の物語じゃねえとか」

 ──わあ、悪意に塗れた切り取り編集されてる。何でピンポイントでそこだけ聞こえてんだよ。

 

 精神体の声を遮るのは当然本人の精神力。なまじ間飛の精神が頑強過ぎたせいで呼びかけた声の大半をカットされてしまっていた。

 何とかして気づいてもらいたくて必死に呼びかけ続けていただけで、そこに悪意も嘲笑もなかった。つまり、間飛に聞こえていた声は正確には

 

 

 ──これはお前の物語じゃない(から頑張らなくていいよ!?巻き込んでゴメンナサイ!!)

 

 ──(俺が悪いの!お前が何かしなきゃいけないわけじゃないの!?)これはお前の物語じゃない(んです!だから死にそうな顔しながら駆け回らなくていいんです!!)

 

 となる。

 

 

 もうどこからツッコミを入れたらいいのか。間飛は頭を抱えてその場に蹲った。頭痛が痛いとはこの事か。

 

 気を紛らわそうと気になった点を尋ねてみるが。

 

「てか、俺の精神云々で声が聞こえてなかったってンなら、いま話せてるのはなんでだよ?」

 ──それはお前の精神が弱ったからだよ。だから声が通った。てか遮られなかった。

「…………」

 

 薄らと自覚していた部分を指摘されて押し黙るしかなかった。今の自分が精神的に参っている自覚がある。今まで生きてきた中でも特に落ち込んでいるのが分かっている。

 

 今自分が何をすべきなのか、自分が何をしたいのかさえ分からない。荼毘はもう助けられない、死柄木弔は……良くてタルタロスのような牢獄に幽閉、そうでなけりゃ一直線に死刑コースだろう。その流れに口を出すこともまず不可能と思われる。

 

 ──そう深く考えるな。助けたいかどうかだけ決めりゃあいい。

「いや助ける助けない以前の問題。多分アイツに助かる気がないからどうしようかと思ってな」

 ──と、言いますと?

「今の死柄木弔の憎悪の矛先の問題だ。オール・フォー・ワンが消えたのなら、次の矛先は現行の社会とそれを築いた人間……世界そのものに向く。落とし所ってのが無いんだよ」

 

 既に穏便に終わる可能性は潰えた。殺すか殺されるかであり、どちらの願いが圧し折られるか。この戦いの決着はどう足掻いてもそうなる。

 

「自分が勝てばそのまま世界をぶっ壊して、ヒーローに負けた時は潔く死ぬ。そのぐらいは考えていてもおかしくはない」

 ──……ヴィランってのは生き汚いもんだろ?俺みたいに。

「説得力が違ェな!てかお前のせいで俺もこの世界に留まってんだけどな!!」

 ──大丈夫大丈夫。(因子)の寿命なんざ残り数日もねえし。

 

 ホントかよ。

 

 しかしそうなると今度は別の問題が出てくる。俺がコッチにいる原因がコイツなのに、コイツが消えたら俺はどうなるんだ?元の世界に帰れるのか?

 

 ──多分俺が消えたら勝手に戻るよ。

「……そうかよ」

 

 そういや心の声もある程度は聞かれてんのか。隠し事も出来ねえなこりゃ。

 

 じゃあ、俺が何をしたいと思っているのかも分かってんだろ?

 

 

 ──精々最期まで足掻くから、遠慮なく使い潰してくれよ?それしか俺に出来る償いはねェ。

「……おぅ」

 ──何か反応薄いけどどした?

「いや……」

 

 それはそれとして。

 

 

 

「ぽっと出てきて相棒面されても困る。もうちょい申し訳なさそうにしろよ加害者」

 ──……すんません。

 

 よろしい。そんじゃそこの二人も……マキアはキツいし外典?だけでも持って行くか。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 神野区はオールマイト広場跡地。高熱の炎による応酬ですっかり様変わりしてしまった街の中。

 

 

 

 開かれたゲートによるヒーローへの妨害は極僅かで、致命的な一手を打たれてしまった。

 

 対死柄木弔に必須な人員であるイレイザーヘッドを黒霧の近くにいたプレゼントマイクごと別の場所に飛ばされ、沈黙していたギガントマキアと異能解放軍の幹部をIXAに差し向けられた。

 しかし逆に言えばそれだけ。覚醒した黒霧の【ワープゲート】による直接的な被害者は三名のみ。

 

 何せ各戦場ではほとんど決着が付いている。

 セントラル病院に押し寄せた暴徒は鎮圧され、その他ダツゴクやニアハイエンド脳無も既に鎮圧及び討伐が終わっている。

 戦いが終わった戦場に手を出しても結果は変わらない。だからこれ以上の最悪を避ける為にと本能的に最適な人物に手を伸ばしたのだと思われた。

 

 未だに決着が付いていない戦場は二つ。事実上のラスボスとなった死柄木弔と緑谷達、そして……

 

 

「【赫灼熱拳・燐】……これデいいノか?」

 

「なんっ……で!何でまだ立ち上がれんだよ!?」

「バーニンさん!!これ以上は……!」

 

 

 一度は鎮圧出来たはずの轟燈矢と、彼を相手取るエンデヴァー達だ。

 

 彼がした事は単純。オール・フォー・ワンのような巻き戻しでもなければ移植された覚えのない【超再生】でもない。

 

 胸に僅かに覗いた氷の結晶。魂すら燃料として焚べる復讐鬼を守り続けていた“氷叢”の氷。

 目の前のお手本を参考にその場で【赫灼熱拳・燐】を習得し、既に限界をも超えていた肉体に余力を生み出させた。

 

 一度火が点けば後は簡単、死ぬその瞬間まで燃やし続けるだけ。容易い着火とは裏腹に完全な消火はどこまでも遠のいていく。

 

 最早制御すらままならないであろう超超高熱、超高火力の蒼い炎を振りまきながらエンデヴァー目掛けて思い切り拳を振り抜いた。

 

「親父───」

 

 避けろ、と声が続かない。それよりも早く拳型の炎の塊がエンデヴァーを殴り飛ばし、吹き飛ばされる父親の姿を見てしまったから。

 

「こんナこともデきるヨウになったんだぜ!!」

「燈矢兄ぃ……!!」

 

 パキリ、と人体から聞こえていいはずのない亀裂音。炭化した端から砕けていく兄の身体と、エンデヴァーをも灼く熱の奔流。タイムリミットがすぐそこまで近づいてきている。

 

 選ばなければならない。燈矢をどうするのか、殺すとしても誰が殺すのか。最早誰もが納得出来る結末はどこにもない。

 

(【大氷海嘯】だけじゃあ足りねェ……!上がりきった火力を押さえ込めねェ……ッ!!)

「一人で逝かせはしない……!!」

「っ待て親父!まだ、まだ何か手が────!?」

 

 

「オ゙れヲ見ロォォオオオ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ンのっ……!?アイツ覚えてろォォオオ!!?」

 

 

 

 

 






因子「待って待って頑張んなくていいから!?ここお前の物語じゃないから!?何もしなくていいのよ!君無関係!!」
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悪意ある編集&フィルター
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幻聴「これはお前の物語じゃない」ネットリ

因子「……てなわけでして」
間飛「ハハハギルティ」
因子「サーセンッシタァ!?」

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