え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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最後にものを言うのはパワー

 

 

 

 

「デラウェアッ……スマッシュッッ!!」

 

「ぐうっ……!」

 

 拳を握って溜めた力を、手のひらを開いて叩きつける。馬鹿げた超パワーの一振りによる超規模の空気砲が死柄木弔の全身を叩いた。一撃に怯んだ死柄木へ更に二発目、三発目の空気砲が叩きつけられる。

 あまりにも力任せで強引な攻撃だが、それは緑谷の特権ではない。

 

 鈍い痛みを噛み殺しながら死柄木が手を構える。見様見真似かつ、意趣返しでしかないけれどやり返さずにはいられない。子供じみた感情の反撃が振り抜かれる。

 

「痛ェじゃねェかおい!!」

 

 全く同じ。否、僅かに緑谷に劣る破壊力だ。

 バン、といっそコミカルにすら聞こえる破裂音を轟かせて薙ぎ払っていく。火薬もないのに大砲の撃ち合いでも起こっているのか、瓦礫が挟まる余地などどこにもない。互いの姿は隠れない。

 

「っ……ぶねェ!?出久は!?」

「僕も平気!避けられた!けど……」

 

 しかし緑谷と爆豪には命中せず。ギリギリの所を回避してみせた爆豪と冷や汗を流して返事を返す緑谷。二人の意見は口に出さずとも一致していた。

 

 

 ──遠距離なら分がある。

 

 

 死柄木の個性は【崩壊】……と、【オール・フォー・ワン】及び複製された個性因子が複数。

 だというのに死柄木は強化改造された肉体による風圧攻撃しか遠距離を使ってこない上に、その風圧攻撃も緑谷やオールマイトに比べるとどこか稚拙さがある。

 

 何故他の個性を使わないのか。その理由は簡単で、オール・フォー・ワンと違って複数の個性の操作に慣れていないのだ。

 【オール・フォー・ワン】とオール・フォー・ワンの意思があった時はまだよかった。死柄木の手には負えなくとも、中にいるオール・フォー・ワンの補助があったお陰である程度は使うことが出来ていた。

 そのオール・フォー・ワンが消えた今、死柄木がまともに扱えているのは【崩壊】と【超再生】、それから【サーチ】がやっと。分からない個性に手を出すほど命知らずでもない。*1

 

 しかしこのまま遠距離から削り切る……なんて希望的観測は無意味だ。

 【崩壊】による致命傷の可能性を許容してでも近接戦闘を選ばなければならない。その理由も【崩壊】によるもの。

 

「……あの日の大規模な【崩壊】を思うと、地面に触らせる訳にはいかない」

 

 ヒーロー社会が壊れたあの日、死柄木弔を起点とした【崩壊】は文字通り街一つと山一つを更地にしてみせた。【崩壊】が伝播し、触れていないものにまで【崩壊】が伝わって被害は拡大した。

 

 で、あれば。

 今の死柄木にそれと同じ……いや、それ以上の事が出来ないはずがない。

 

 緑谷達は死柄木の【崩壊】を一度も受けることなく、しかして【崩壊】を地面に使わせてもならない。自分以外全てを壊せばいい死柄木と違い、ヒーローであるが故に守るべきものを抱えてしまっている。

 

「気ぃ引き締めろ出久。アイツの手から目を離すんじゃねェぞ……!」

「ヴィランの前でベラベラと……余裕そうじゃねェか!なァ!?」

「喋っても問題ねェから喋ってンだよ!ガンギマリ野郎!!」

 

 まさにその警戒すべき【崩壊】の手を叩きつけんと死柄木が駆け出す。対【ワン・フォー・オール】を想定された肉体は数十メートルを予備動作も無く食いつぶした。オールマイトや緑谷、間飛との対戦経験がある爆豪でもなければ反応すら不可能な突撃。移動の余波すら攻撃になりうる。

 

 しかしノーモーションはお互い様。下に向けたままにしていた手のひらから強烈な爆風を放ち、反動だけで空へと逃げる。

 

 爆豪を捉えきれなかった手を突き出し、極一瞬の間死柄木の身体が硬直する。如何に改造を施されようとも空振りの反動からは逃れられない。

 その一瞬があれば緑谷は反応出来る。爆豪のようなセンスではなく、己を弱者だと知っているからこそ鍛えられた観察眼が好機を逃さない。

 

「デトロイトォ……ッ!!」

「っ、早───」

 

 

 

「SMASH!!」

 

 

 

 何度も何度も繰り返し見ていた憧れの必殺技。右腕を真っ直ぐに振り抜く、最強の超パワーの一撃が死柄木の顔を打ち抜き──殴り飛ばした。

 オールマイトやオール・フォー・ワンと同じ領域に踏み込んだ怪物と分かっていなければ躊躇うほどの威力。それを一切の躊躇なく叩き込んだ。

 

 ボールのように跳ね飛んでいく死柄木。皮が破れ肉がちぎれて骨が砕けているであろうダメージを与えたというのに、緑谷にも爆豪にも安心という感情は訪れていない。

 

「いっっっ……てェなクソが!!」

「一々吠えてンじゃねェよガンギマリ!(効いてねェ……!?いや、再生が早いのか!)」

 

 数度目のバウンドで強引に停止し、怒りを滲ませながら猛る。並大抵どころか同級生の防御自慢ですら危うい威力だろうがと毒づきながらも攻めの手を緩めない。

 

 爆豪が咄嗟に空中への回避を選んだのは体勢だけが理由じゃない。もう一つ、自分の必殺技を用意するにも空中の方が都合がよかった。

 

 両手の【爆破】を器用に制御し、加速と共に回転。二度、三度と【爆破】を繰り返して更に加速と遠心力を強めていく。

 生まれ持った才能を膨大な自尊心と上昇志向で磨き上げ、開花させたセンスと【クラスター】でより強化された必殺技。

 

 

「吹っ飛べクソヴィラン!!」

 

 

 

榴弾砲着弾(ハウザー・インパクト)ォォォッ!!!」

 

「っ…………!!?」

 

 

 速度、遠心力、爆発……そして【クラスター】。持ちうる全てを注ぎ込んだ最強の一撃が死柄木に余すことなく叩き込まれる。回避も防御も間に合わない顔面に目がけて盛大に。

 

 【ワン・フォー・オール】継承者でもなければオール・フォー・ワンと因縁があるわけでもない。それでもこの戦場に立っているのは実力故によるものだと示さんばかりに笑う。

 

「ッシ!あと十発ぐらい叩き込まねェと気がすまねェぞ……!」

「かっちゃんそれ多分オーバーキルだよ!?いくら死柄木でも死ぬんじゃない……?」

「バカか。それでくたばるならここまで大事になっとらんわ」

「……よく分かってるじゃねえか」

「「っ!!」」

 

 同情すらしてしまいそうな破壊力を目の当たりにした緑谷だったが、その心配を嘲笑うように死柄木の声が届いた。

 力任せに爆煙を振り払った先で焼け爛れた皮膚を再生させながら、なんでもない様な顔でこちらを睨む死柄木弔。今の【榴弾砲着弾】ですら致命傷には程遠いらしい。

 

 ノーダメージでこそないけれど、数秒後には元通り。であれば倒し方も限られてくる。

 

「説得……は無理そうだ」

「ンなら一番簡単なヤツでいいだろうが」

「それしかない……!」

「へえ?俺をどうやって倒す気なんだ?教えてくれよ」

「そんなもん───」

 

 

 

 

 

 

「一撃でknockout以外ないだろ?」

 

 

「っっっ……!?スターアンドストライプ……ッ!!」

 

 

 大胆不敵な宣言と共にエントリーした星条旗の体現者、スターアンドストライプ。【新秩序(ニューオーダー)】で強化された彼女の拳が死柄木をかち上げた。

 

 弾丸のように打ち上げられた死柄木が立ち直るよりも早く、スターは次の手を打つ。

 水が入ったボトルを一本取り出すと、中身を自分の手のひらにぶちまけながら新たなルールを宣言した。

 

「【水】は【トムラシガラキ】の手の周りで固まる!」

「あ゙!?ンだこれ……!」

 

 与えられたルールに従い、彼女がひっくり返したボトルの中身がすぐさま死柄木の元へと向かった。毒か強酸を警戒していた死柄木だったが、それは何の変哲もないただの水。そこらで汲んできただけの普通の液体だ。

 

 問題は液体そのものではなく、液体に付与されたルール。死柄木の手を手袋のように覆ったまま固まり、しかし液体であるが故に【崩壊】が発動出来ない。

 形状を定めて固定されていてもそれが液体である限り死柄木の【崩壊】は発動しない。してくれない。

 

 盛大に舌打ちを鳴らしながらスターを睨みつけても【新秩序】は解除されない。軽く手を振り回しても抜け出すことは出来そうにないらしい。

 

 実質【崩壊】を封じられた。死柄木がつくづく厄介な女だと怒りのボルテージを上げている中、スターは緑谷達の方に視線を向けると申し訳なさそうに笑った。

 

「私が来た!……遅刻だけど」

「スター!今までどこに……!?」

「遅れてすまないね。ちょっと寄り道してたらこのザマさ」

「……寄り道?」

「っ、危ねェ!」

 

 何の為の、と尋ねる前に爆豪が声を荒らげた。それを聞いてほぼ反射的にその場から大きく飛び退く二人。次の瞬間に二人がいた場所は轟音を立ててクレーターとなっていた。

 真上を見れば拳を振り抜いた体勢の死柄木が苛立ちを隠しきれない様子で睨みつけていた。

 

「【崩壊】を封じた程度で勝ったつもりか?俺にはまだいくらでも手札がある」

「ちっ、諦めが悪い野郎だ。デク!ダイナマイト!」

「は、はい!」

「ああ!?」

「悪いが私はあまり役に立たない!ヤツの【崩壊】を封じるのと私の強化に【新秩序】を使っちまってる!」

 

 未だに詳細を知る者が少ない個性である【新秩序】だが、高過ぎる自由度の反面同時に付与出来るルールは二つまでという限度もある。

 その二つを【崩壊】封じと自身の強化に使っており、新たにルールを付与するには自身の強化を解除したりかけ直したりしなければならなくなっている。

 

 だがその隙を死柄木が見逃してくれるかと言うとそれも怪しい。故にスターは自分の手で倒すのではなく、二人のヒーローのサイドキックに徹する事にしたのだ。

 

「私じゃパワー不足だ。フィニッシュブローはアンタらが頼りだよ」

「はいっ!!」

「アメリカNo.1がパワー不足たァ笑えねェな……!」

 

「お喋りは済んだか?済んだよなァ!」

「来るぞ!」

 

 ここから先は泥臭い殴り合い。規模が膨れ上がっただけの最も単純で最も分かりやすい、純粋な根比べだ。

 先に倒れた方が負ける、先に負けを認めた瞬間に終わる。それ以上でもそれ以下でもない。

 

 世界の命運を賭けた戦いはたった三人の子供による殴り合いに成り果てた。

 

 

 

 

*1
おっ、そうだな(本編【で す よ ね】を見ながら)






スター「パワー不足だわー(最大火力が巡航ミサイル付きのパンチ)」
爆豪「俺もだわクソが(最大火力が絨毯爆撃レベル)」
緑谷「ええ…?(最大火力がただのキック)」
死柄木「ふざけんな(最大火力が土地削りクラス)」


間飛「せやな(最大火力がほぼ全盛期オールマイト)」


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