息抜き番外編二日目です。
前回の続きになります。
個性の獲得によって仮装のクオリティが大きく跳ね上がった超常社会のハロウィンだが、個性発現の前後でも変わらないことだってある。
「……ごめんデクくん。何それ?」
「え。オールマイトデビュー10周年の時のハロウィンイベントで披露したコスプレのコスプレだけど……?」
「なるー……ほ、どぉ……?」
「当時流行ってた映画に『ゴリラの鎮魂歌』っていうのがあって、それに出てきた人気キャラのアーマードコングを──」
「緑谷君、麗日君が困っている」
仮装に慣れてない人は妙なチョイスをすることがある、という点だ。何だその野性味を感じる脳筋スタイルは。
間飛達が参加したように緑谷達もイベントに参加することを決めた……まではよかったのだが。いざ現地集合で飯田と共に緑谷を待っていればそこには『ジャングル帰りですか?』と尋ねたくなる格好の緑谷がいた。
アーマードコングとやらは武装ゲリラ兵のような装備をしたゴリラらしく、ヴィランを退治する側よりもヴィランとして退治される側にしか見えない。最早ヴィランってかテロリストじゃねえか。
「麗日君の仮装は……何だ?」
「これ?ベイ〇ックスのアーマー!お餅みたいですっごく可愛いキャラクターが着てたやつ!」
「むぅ……間飛君アニメ関係の知識凄いからなあ。僕の知らないキャラクターが麗日さんに布教されちゃってて何か、こう……モヤモヤするような……」
一方で麗日は全身を真っ赤で丸っこいアーマーで覆っていた。腹部や肩の辺りだけは青色になっており、ゴツさよりも可愛らしさが来るような丸みを強調されたデザインになっている。
その隣にいる飯田もアーマーを着込んでいるものの、スチームパンクというテーマだけを決めてロボットのような格好をしている。すれ違う人々から時折『とうとう本物のロボットに……!?』という凄い誤解をされているような会話が聞こえてきたのはご愛嬌。
つまりこの三人が並んでいると、絵面としてはロボット二体を引き連れるゲリラ兵になるわけだ。どうみても人型兵器運用中のテロリストである。
勿論当人達はそんな事になっていると思わないので自然体でいつも通りの会話を繰り広げている。
「そういや爆豪くんは来ないん?」
「あー……来る、かも?」
「何かあったのか?」
「いや何かチャットに既読はつくんだけど返事がなくて……来ない時はすぐに来ないって返ってくるから多分来るんだろうな、って」
「忙しいんかな」
話題に上がったのは友人達について。既に轟や間飛が参加することは分かっているのだが、緑谷にとって唯一無二の幼馴染である爆豪だけが未だにどうする予定なのか掴めずにいた。
こういう時の爆豪は不参加の時だけは即返信をしてくれるのだが、どうにも既読をつけるばかりで返信が来ないのだとか。彼のことをよく知るからこそ緑谷は少し不思議に思っていた。
他で言うと砂藤は副業で開いた洋菓子屋の書き入れ時なので不参加だし、青山と峰田が体調不良を理由に不参加を明言している。
障子なんかはこうしたイベントに積極的に参加することにしており、異形型個性への偏見や差別を無くす事に意欲的に取り組んでいたりする。
「凄いなあ。皆頑張ってるんだ」
「……ツッコミ待ちやったりするん???」
「えっ、何で?」
「緑谷君……君、自分の直近の功績も忘れたのかい?」
「えーっと……異形排斥主義の集団を捕まえたやつの事?あれは人数が多かっただけでそこまで大したことはしてないよ?」
「「いやいやいや。それはない」」
「全否定……!?」
じゃあ緑谷はというと、かつてのオールマイトのように【ワン・フォー・オール】100%をバリバリ迸らせながら日本中を飛び回っている。
そこに間飛も加わるせいでヴィランの逃げ場が本当に消えているとか。憐れ。
つい先日も千人程度の規模の異形排斥集団を潰したらしく、それを当の本人だけが『そんなに強いネームドヴィランとかいなかったし別に……』と大したことないように思っている。やってる事が無双系ゲームと同じだということを理解して欲しい。
と、そんなことをだべっているうちに三人も会場に到着。イベント開始までまだ30分はある。随分と早めに着いてしまったらしい。
まあ着いたものは仕方ない、ととりあえず先に来ているであろうかつての同級生達に挨拶しに行くことにした……のだけれども。
「I need more power!!」
「心操君何してんの??」
「仮装だけど?」
「そうだけどそうじゃない」
半年ぶりにあった友人が明らかに毒されている時はどう反応するのが正解なんでしょうか。
「あ、そういや爆豪が探してたぞ。緑谷はまだ来てねえのかーって」
「やっぱり来てたんだ……どこにいるか知ってる?」
「さっき間飛と会って爆笑してたのは見た」
「待ってかっちゃんが爆笑する間飛君の仮装何?」
「……見たらわかるよ」
本日の間飛被害者のカウントが少し増えた。
◇
「「「ミッナイせんせー!!」」」
「あらやだ百鬼夜行。ここ新宿じゃないわよ?作品間違えてない?」
「先生。同時期に連載されてたけどコレ特にクロスとかしてないからそれ以上いけない」
と、メタ発言もそのくらいにしておいて。
イベント開始20分前に来れる奴らが爆豪以外全員揃ったのでミッドナイトに挨拶をしに来た。当然全員が仮装しているので魑魅魍魎が押し寄せているみたいになっているが、流石はミッドナイトと言うべきか怖気付くでもなくサラリとツッコミを入れてくれる。
それにしてもやっぱりというべきか、俺が布教しまくったせいか大半がアニメキャラのコスプレしてるな。ヤオモモさんはそのボディラインで鋼のアルケミスト名乗るのは無理があると思うの。
「毎年雄英生が来てくれるから集客には事欠かないのよね。本当に助かってる〜」
「でも去年はそこを狙われましたよね……」
「【アオハル喰い】は忘れなさい」*1
あっ、ミッドナイトが遠い目をしちゃった。気持ちは分かります。あの変態共自分の性癖に合うと思ったらどこにでも湧いてきやがるからね……。
今日は大丈夫なのかって?ついさっき俺と緑谷で発見してボコっといたから問題ないぞ。俺の姿を見てずっと爆笑してたから余裕だった。
それに皆もここに来るまでにも何件か犯罪に遭遇したらしく、やっぱハロウィンに乗じてアホなことをしようとするやつはいつも一定数いるらしい。
ちょっと遠くで爆豪が戦ってるのも感知したしそのうち来る─……いや、今もうそこに来てんな?
「悪い、遅れた──…………!?」
「あっ、かっちゃ──…………!?」
「その仮装で被ることある??」
「そうだった。爆豪もオールマイトの強火ファンだったわ」
「すっげ。どっちもクオリティバカたけえ」
あー……もしかして、とは思ってたけどマジで被ってたのかよ。感知能力で見たシルエットがそっくりだったけどまさかね……と思ってたのに。
流石は幼馴染〜と瀬呂や切島が揶揄い始めると案の定爆豪がブチ切れ。【爆破】を使わずにグーパンで瀬呂を沈めて切島に関節技をかけに行った。わあ、スムーズなコブラツイスト。
「さ、じゃれあいもその辺にしときなさいね。もうすぐイベントが始まるんだから」
「「「はーい!」」」
「あだだだだだ!?ギブギブ!痛ェ!?」
「……知ってっかクソ髪。こっからこっちにやるともっと痛ェぞ」
「し、知ってるからやめ──あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!?」
すげえ。【硬化】貫通してやがる。
その後イベントは無事に終了。去年の【アオハル喰い】襲撃もあって客足が遠のくかと思われていたが、参加するヒーローを知った市民は『まあ何とかなるやろ』の精神で去年以上の人数が参加してくれた。
自爆特攻みたいなことをしようとしていたヴィランが会場外にいたりしたけど、こっそり裏に回って【瞬間移動】してぶん殴っておいた。
一応警備としてレディ・ナガンとホークスが待機してるらしいけど、位置的に気づきにくかったんやろな。無線で滅茶苦茶謝られた。
ん?肝心のイベントの人気投票はどうなったのかって?
「まあ間飛だよな。お笑い部門1位は」
「身に余る光栄だな」
「いやもう満場一致だったじゃん!?ネタに走った他のヒーロー達も納得しかしてなかったよ!」
「ちょっとダンスしただけなんだが」
「……しばらく夢に出てきそうなくらい焼き付いたわ。ケロ」
そう褒めるな。
他の部門で言うとクール部門1位を燈矢が掻っ攫って、可愛い部門を唯が僅差で1位に。技術部門とかいう変わった部門では発目がブッチギリで1位だったぞ。何あの【アーマーで再現したオールマイト】って。
ああ、そういえば緑谷と爆豪なんだが。
「はっ、ここのグレネード手ェ抜きやがったなァ!俺ァしっかりカラーリングも個数も合わせてんぞ!」
「で、でも腰と右足に巻いてるベルトは僕の方がちゃんとしてるじゃん!かっちゃんのと違って同じ素材の奴を用意したよ!」
「あ゙あ゙!?ンな事言い出したら俺は──」
「それを言い出したら僕の方だって──」
「おーい、誰かあの二人止めるの手伝ってくれー。俺の【テープ】だけだと止まらねえよ」
「俺も手伝おう。間飛も来てくれるか?」
「はいはい……いつまで言い争ってんだアイツら……」
……ずっとあんな感じでどっちのクオリティが高いか言い争ってるんだわ。
もうどっちも凄いで済ませたらダメなん?
「「ダメ!!」」
「アッハイ」
【仮装内容】
梅雨ちゃん→ゲッ〇ウガ
芦戸→人造人間21号
尾白→西尾錦
上鳴→超サイヤ人(低クオリティ)
切島→空条〇太郎
口田→デカイパンダの着ぐるみ
耳郎→廣井き〇り
常闇→闇堕ちホークス(っぽいなにか)
八百万→豆粒ドチビ
障子→カイ〇キー