え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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長くなるのが確定したので章分けしました。





パラドックス・5

 

 

 

 まだオール・フォー・ワンは知らない。雄英高校の内通者が救われた事を、並行世界からイレギュラーな存在が来ていることを。

 

 青山の虚偽報告を餌にオール・フォー・ワンを釣り、相手に好き勝手させないまま一方的に殴り潰す方向でいくことは決まった。後は誰が誰を相手するべきかという話し合いになったのだが……。

 

「……なあ、イレイザー。アイツさっきからめっちゃコッチ見てくるんだけど、誰だ?」

「アイツが例の助っ人です。あなたが見られてる理由は知りませんが……聞けば教えてくれるとは思いますよ」

「けどよぉ……すげえ泣きそうな顔してっから聞きにくいんだが」

 

 ……集められた主戦力の一人であるミルコを見た間飛の反応に困惑させられていた。

 彼の視線の先にあるのはミルコの左腕と両足。そこにあるはずの生身の部位はなく、代用として戦闘用の無骨な義手義足があるだけ。

 

 間飛には聞かされていない話だが、死柄木弔が覚醒するかどうかの瀬戸際でハイエンドの脳無によってミルコの腕と両足は失われていた。その状態で尚引退表明どころか最後の最後まで戦い抜くと言ってのけたのだから驚きだ。

 

 彼とミルコの仲は職場体験と神野区事件、仮免試験で顔を合わせた程度……あれ?意外と頻度高いな。まあそう深い関わりがある訳でもないけれど、先達として尊敬していたのは確か。

 そんな彼女の痛ましい姿を見て悲しむのは当然だろう。

 

「なあ!お前さっきから何見てんだ?」*1

「……いえ、なんでもないです」*2

「何でもねえわけねえだろ。あのなあ、何か言いたいことがあるならハッキリ言え!生きてるうちに言わねえと言いてえ事も言えなくなるぞ!」

IXA(・・・)、何か懸念があるなら言ってくれ。失敗は許されないんだ」

「……あっちで少し世話になった人なんで、気になっただけです」

 

 埒が明かない。うがー!っと頭を掻き毟りそうになるのを堪えてミルコが問いただし、それにエンデヴァーが続いて話すように促せば間飛はそれっきり何も言わなかった。

 しかしそれだけでその場にいた者達のほとんどは間飛の言いたいことを理解したらしい。

 

 ピリピリとしていた空気が一転して静まり返り、気まずそうなものへと変わる。

 

「……そっちの私と何があったんだよ」

「体育祭後に指名を頂いて職場体験に行って……それなりに目をかけて頂いていたんですよ」

「へえ……?並行世界とはいえ私が目をつけるって事は何か面白いもんがあるってか」

「その辺りは分かりませんが、尊敬していた先輩だったので……その、怪我を見て勝手に凹んでました。すんません」

 

 ミルコの四肢欠損はこちらの世界ではすでに終わった出来事だ。話題に出すほどでもなければ時間を取って確認するようなものでもないと分かっているからこそ、間飛は自分勝手な感情だと判断して口を閉ざしていた。

 

 イレイザーヘッドやエンデヴァーもそれを理解し、それ以上の追求をしなかった。

 

 誰かのわざとらしい咳払いが全員の意識を切り替えさせ、再び打倒オール・フォー・ワンに向けての作戦会議が行われる。

 

 

 

「……じゃあIXAはオール・フォー・ワン本体の方に向かわせるということでよろしいでしょうか?」

「ああ」

「死柄木弔の方にデクをぶつける必要がある以上、IXAの配置先は限られてくるからな。ならば荼毘よりもトガヒミコよりもオール・フォー・ワンを優先するべきだ」

 

 降って湧いた追加戦力の配置先。間飛をオール・フォー・ワン本体、氷叢を荼毘、トガ(並行世界)をトガ(原作時空)に当てることに。

 

 トガヒミコとトガヒミコの戦いは見分けがつかなくなる可能性を考えるとやめるべきでは?という声もあった。しかし本人が頑なにトガヒミコ討伐班に入れてくれと声を上げていた。

 決定打となったのはトゥワイスの血液を所持しているかもしれないという点だった。

 

「トゥワイスさんの個性【二倍】で戦力差をひっくり返されたらお終いですよね?」

「……トゥワイス本人は死んでいるが、血液を確保していないとは言えないか」

「だとしてもだ。お前は相手の数を上回る手札があるのか?」

「あります。取っておきの手札が」

 

 周囲の不安を押し切ってトガは力強く答えた。

 

 自分と同じ業を抱え、自分と違って救われなかった自分。何が変わる訳でもないけれど、一度会って話さなければならないだろう。トガは覚悟を決めてそっと息を吐いた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「……向こうの私は何故コレを作ろうと思ったんでしょうか」

 

 独特な匂いに満ちた工房で一人、発目は並行世界の存在を証明してしまったサポートアイテムを見つめながらそんな疑問を口にした。

 

 そりゃあ自分だって外付けのアイテムで個性の対象や範囲を拡張させる方法について考えなかったわけではないけれど、この“ワールドシフター”とやらは明らかに自分の持つ知識だけでは作れない。専門外の知識に手を伸ばしてようやく、と言ったところだろう。

 それで出来るのはたった一人の人間の個性に他の人間を着いて来させるだけ。イレイザーヘッドではないがあまりにも非合理的ではないか。

 

 発目の疑問の要は『何故そこまでしてコレを作ったのか?』という点にある。はっきり言ってハイリスクローリターンにもほどがある代物なのだが、並行世界の自分が力を注いだ理由が不明なのだ。

 

「いわゆるマッドな方々であれば面白そうだからで作るとは思いますが……私なら別方面の強化をオススメするのにどうして……?」

「……ん?発目ちゃん何してんの」

「助手さんいいところに。実はですね……」

 

 手が止まった発目を不思議に思った間飛父が様子を見に来たらしい。何かしら知らないかとダメ元で自分の中の疑問を話してみる。

 

 すると彼は少しウンウンと頭を悩ませると、言葉を選ぶように慎重に話し始めた。

 

「あっちの世界だとさ、うちの子と発目ちゃんって結構仲が良かったんだよ」

「みたいですね。彼のコスチュームにも幾つか私が作ったと思われるものがありましたし」

「そんでな?アイツって地力が滅茶苦茶強いから基本的にサポートアイテムとか頼らないんだわ。近づいて殴りゃいい話だし」

 

 まあよくある話だ。サポートアイテムを絡めて面倒なことにするくらいなら本人の個性や能力を底上げしてワンパンさせた方が早い、なんて結論に至ることは珍しくもない。

 そういう相手はサポートアイテムの作りがいがないと言う者もいるらしいが、本人が要らないのなら仕方ないのでは?と発目は思っている。

 

 では間飛はどうか。彼の【瞬間移動】と【フィジカルギフト】の組み合わせは並大抵を通り越してネームドヴィランだろうが瞬殺が可能なレベルだ。サポートアイテムを挟む余地などどこにもない。

 

「だからアイツが発目ちゃんに頼みに来るのはコスチュームの補修とかその程度らしいんだわ」

「はあ……それが何か?」

「……ああもういいや、面倒くせえ。ぶっちゃけあっちの世界の発目ちゃんがうちの子に好意を持ってるっぽいんだよね」

「………………???」

「わあスペースキャット」

 

 背中に宇宙を背負ってしまった。発目の優秀な頭脳でも処理しきれなかったらしい。

 

 

 並行世界の発目がワールドシフターを作った理由。それは滅多に頼ってくれない間飛が珍しく普通に頼ってくれた為、それにテンションが上がった発目が滅茶苦茶に張り切っていたからだ。

 

 別にコスチュームの補修が嫌という話でもないけれど、彼のコスチュームに少し手を加えるだけで終わっては何か面白くない。

 

 そこに間飛から『俺の【瞬間移動】の対象を増やしたりできねえ?』と相談を持ちかけられ、ようやく技術者らしく彼の力になれる!と鼻歌が漏れる程度には喜んでいた。

 

 なんでそこまで喜んでるの?と言われれば、そりゃあ発目が間飛に好意を持っているから……好きな人に頼られて嬉しくないわけがないからという話である。

 

「………………ん゙ん゙!!?!?!?」

「おお、爆発した」

「そっ、それは向こうの私と彼が恋仲とかそういう話になるんでしょうか!?」

「付き合ってるのかは知らないけど……向こうの発目ちゃんは息子の前だと露骨に機嫌がいいし、笑い方もふにゃっとしてたりするよ?」

 

 ワールドシフターの制作にあたって何度も発目と顔を合わせていた間飛父だが、昼休みになると間飛が迎えに来たりしていると知って後方腕組厄介オタク面で見守っていた。

 先程まで小難しい顔で唸っていた発目が間飛の声を聞くなりパアッと笑うわ少し上機嫌になるわ……なんというか、飼い主を見つけたわんちゃんのような挙動をしていたものだから笑いをこらえることもあった。

 

 間飛父から見た並行世界の発目明は間飛に惚れ込んでるのかなあ、という印象になったのはその為だ。というかアレで惚れてないなら魔性の女が過ぎる。

 

 その他にもスキンシップが多めだとか他の相手よりも甘えがちだとか色々とそれっぽい根拠はあるのだが、目の前の少女のキャパオーバーが見えてきたのでそれ以上は言わないことにした。

 

「まああくまでも並行世界の発目ちゃんだし、こっちの発目ちゃんが気にすることはないよ」

「……すいません、取り乱しました」

「朕としてはくっついてくれちゃってもいいんだけどネ!発目ちゃん良い子だし!」

「反応に困るのでやめてください!?」

「えー?だってうちの子も満更じゃないと思うしなー」

「尚更反応に困ります!」

 

 機械一筋の発明馬鹿と呼ばれようともまだまだ思春期の女子高生。ただでさえ耐性のない恋バナなのにその対象が自分となれば尚更照れくさい。

 

 発目にしては珍しく完全に振り回されたまま会話は終わった。そこにほんのりと赤さを残しながら。

 

 

*1
100人中97人がカツアゲに見えると答える顔

*2
100人中98人がカツアゲに怯えてるように見えると答える顔






【各√の発目→間飛について】

発目(並)「私の出る幕がなくて寂しいです!たまに間飛さんに頼られると嬉しいので張り切ります!」

発目(R18)「移さんですか?前腕と鎖骨がエッチですね!」

発目(原作)「その、向こうの私ってどんな感じですか?」
間飛「賢くて可愛くて優しい友人。身嗜みを整えだしたら滅茶苦茶モテそう」
発目(原作)「ピエ」


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