入学して日の浅い少年少女達が環境の変化に慣れ始めて、当たり前の授業に却って違和感を覚え始めた頃。
雄英高校職員室では手の空いた教員達が顔を突合せては、ただの一個人の個性の為に頭を悩ませていた。
「うーん……やっぱマジの無関係なんじゃねーの?」
「でもそんなことあるかしら?よりにもよってこんな、ピンポイントでオールマイトと同じって……」
「雄英高校ノ歴史ヲ遡ッテモ、同ジヨウナ個性ノ生徒ハイナカッタ。不合格者マデ確認シテモナ」
焦点が当てられるのはやはり間飛移。数日間を調査にあてて尚、魔王の影は確認出来なかった。数世代に遡ったところで、それらしい記録は欠片も見られない。
本来であればオールマイトの個性を知る者は極限られた人数しかおらず、この時点で【ワン・フォー・オール】の事など詳細に知る由もないのだ。
しかしここに間飛移……【フィジカルギフト】という個性が現れた事で、一部の関係者達に情報公開をせざるを得なかった。
それもそのはず、過去にオールマイトの手によって討伐された魔王、個性社会の闇である【オール・フォー・ワン】という存在があるのだ。
オールマイトから緑谷出久へと受け継がれた今、【ワン・フォー・オール】と同じ様な個性が現れたとなれば、魔王の謀略を疑うのは当然だろう。
これが凡百の個性であればプレゼントマイクの発言に同意する者もいただろう、しかし数十年どころか百数年遡っても同系統の個性が発見されていないのだ。
例えば現No.2ヒーロー『エンデヴァー』の個性は炎熱系の最上級と言われているが、炎熱系という括りがあるくらいには同系統の個性が存在している。他に強い炎熱系個性持ちがいたところで、何もおかしなところは無い。
「そうは言うけどよォ……イレイザーの【抹消】でさえ似たような記録があったんだから、今更じゃね?」
「ウウム……否定ハ、デキンナ」
「…………もういっそ本人に尋ねた方が早いんじゃないかしら」
嘘発見器にでもかけて、と呟く同僚にプレゼントマイクとエクトプラズムはさすがに厳しい目を向けた。
疑わしきは罰せよ、とまではいかずとも褒められた行為でないのは確かだ。
「軽いジョークよジョーク!本気でそんなことするわけないでしょ!?」
「……いや、お前ならやりかねないしなぁ」
「ソモソモ仮ニ直接尋ネタトシテ、無関係ダッタ時ハドウスルンダ。生徒ヲ巻キ込ム事ニナルゾ」
「うっ……そう、よねえ……」
AFOの関係者ならば手早い対応が必要だが、無関係だったとしても『じゃあいいや』と放置することも出来なくなる。それどころか無関係の生徒を危険に巻き込む可能性すら出てくる。
結局この日も結論が出ることはなく、間飛本人が聞けば鼻で笑う様な悩みを抱え続ける事になった。
◇
「何かあれだよな、思ったより普通というか。これぞヒーロー科!みたいな授業はあんまり無いよな」
次の授業までそう時間も無い頃に、やや不満そうな顔をして上鳴が話しかけてくる。
言いたいことはわからんでもない。今のところ初日の個性把握テストが1番“らしい”というか、個性が絡むような実技が行われていない。
当然だが教室での授業にもヒーロー科だからこそ、という物もある。わかりやすいのは『特定の環境下では使用を避けるべき個性』や『サポートアイテム関連の規則について』なんかが挙げられる。
じゃあ実技はというと、おそらく指導方法の決定に時間がかかってるんじゃないかと思う。
「初日にやったのが個性“把握”テストだったろ。あの時に取った記録を元に授業をしようとしてるんなら、分析だのなんだので時間がかかってるんじゃねえの?」
「あー……確かに。毎年生徒の個性が変わるんだから大変なのか」
「オイラの個性は唯一無二だからな!そりゃあ先生達も苦労して当然だぜ……!」
「……言っちゃなんだが、お前の【もぎもぎ】は近い個性なら割とありそうだよな」
ンだとテメー!と怒るブドウ頭を時間が近いからの一言で椅子に座らせ、教員が来るのを待つ。思わず言っちまったけど、使いこなせたら強いとは思ってるから許してくれ。
聞きなれた始業のチャイムと共に、教室前方のドアが勢いよく開かれる。突然の物音何か目もくれず、物音の主に俺を含むクラスメイト全員が意識を持っていかれた。
「わァ〜たァ〜しィ〜がァ〜普通にドアから来た!」
「うおお…!マジのオールマイトだ!本当に教師やってんだな!」
「気迫が凄すぎて画風まで違うぜ……!」
テレビの向こう側でよく見たコスチュームとは違う、別バージョンのコスチュームに身を包んだNo.1がそこに居た。緑谷曰くシルバーナンタラのコスチュームだとか。
そういや今年から教師やってたな……全然見かけないから本気で忘れてた。まあオールマイトは一人しかいないし、ヒーロー科だけでも2クラス3学年あるんだから、単純に手が回らないだけなんだろうな。
「早速だが今日はコレ!戦闘訓練だ!」
「戦闘訓練……!」
「ザ、ヒーロー科って感じのヤツ来たな」
「僕が主役の授業だね☆」
っと、戦闘訓練と来たか。しかも初回から、いや初回限定だからこそコスチュームを着れるらしい。やったぜ。
オールマイト曰く『形から入るのも大事だろう!?』とのこと。わかる、わかるぞ。誰だって牛乳配達や甲羅の重りじゃ無くて、かめ○め波から始めるもんな。魔貫光○砲とかファイナルフ○ッシュでもいいぞ。
コスチュームに着替えたらグラウンドに集合しなきゃいけないので、ちゃっちゃと着替えようか。
◇
幼稚園から中学生までの間、誰しもが一度は自分がヒーローなら……という妄想で自分のコスチュームを考えていただろう。
そういう時は大抵見た目に全力を費やしており、ちょっとしたオシャレを通り越して9割くらい装飾品になってたりするもんだ。
1歩間違えれば黒歴史になりうるそれを、俺はひたすら磨き抜いた。痛いヤツと笑われようとも、俺は俺に適したコスチュームをひたすらに考察した。
その結果出来上がったのがコチラ。
耐熱性ピッチリ黒シャツ!耐熱性迷彩ズボン!銀色のガントレットとグリーヴ!ヒジ、ヒザ、肩の動きを阻害しない程度の肘あて膝あて肩あて!スチームパンク風味なゴーグル!
ついでに僅かながら道具を携帯する為のウエストポーチ!
はい、なんか軍人みたいになりました。
でも俺の個性を考えると、手足の保護さえ出来ればどうとでもなるんだよね。火を噴いたり水を生み出したりなんて出来ないから、そういう意味では特殊な機構は必要ない。
ひたすらに頑丈かつ、殴ったり蹴ったりしてもこっちはノーダメージ。それさえ守れるならあとは動きやすさを重視でいい。
「おお……お前のコスチューム、なんかカッケェな!」
「そうか?ありがとな。切島は……肌面積ヤベェな」
「男らしくてカッケェだろ?裸一貫じゃねえけど、この身一つで戦ってやるって感じでさ!」
「気持ちは分かるけど……せめてノースリーブのシャツくらい着た方がいいんじゃね?寒冷地とかどうすんだよ」
「……確かに!」
ヘッドギアと厚めのブーツはいいと思う。ただ上裸はやめとけ。個性の性質上衣服が邪魔でも、素肌晒すのはなるべく控えめな方がいいって絶対。
あれ、もしかして俺が考え過ぎてるだけか?ブドウ頭といいシッポ君といい、個性にあわせずともシンプルでいいのか?
いや、個人差か。爆発さん太郎とか飯田は明らかに個性に合わせた装備してるし、或いは個性に合わせたコスチュームってのが思いつかなかっただけの可能性の方が高いよな。
そう考えると俺は楽な方か。殴ったり蹴ったりする事だけ考えりゃあいいし。ごめんね。
「ごめん、遅れた……!」
「……ああ、緑谷か。てっきり不審者かと」
「酷くない!?」
「初手からほぼ全身タイツはだいぶ攻めてるだろ」
「うっ……で、でもこれは母さんが作ってくれたやつで……」
「ふっ……悪く言ってすいませんでした。許してください」
「綺麗な土下座!?」
ちょっとダサいとか思ってマジすんませんでした。親の愛情が籠った素晴らしいコスチュームでした。配慮が足らないこの愚か者を許してください。
「さぁて!準備は出来たか有精卵どm何事!?」
「あ、なんでもないです。続けてください」
「土下座してる生徒をスルーは出来ないよ……?」
いいからはよ。
説明前に質問責めに遭いながらも、オールマイトは何とか訓練内容を説明する。
2人1組のペアをクジで決めて、ヒーロー役とヴィラン役に分かれて対戦するとのこと。21名なので3人の組み合わせが一つだけ出来るけど、その辺は柔軟に調整する、と。
それぞれで多少の交流はあっても、まだまだ入学してから時間は経っていない。初対面からクラスメイトぐらいには仲良くなってもらうのも兼ねてるんだろう。
せめて最低限のコミュニケーションが取れる人がペアだと嬉しいんだけど……
緑谷・麗日VS爆豪・間飛
尾白・葉隠VS障子・轟
常闇・蛙吹VS切島・瀬呂
上鳴・耳郎VS峰田・八百万
青山・芦戸・飯田VS砂藤・口田
俺のペアのコミュニケーション能力 is 何処……?
ヒロアカ二次創作恒例のオリ主コスチューム設定が立ちはだかってました。色々考えた結果、なんかあったら後で変えりゃええやんの精神で雑に決まりました。
ここから下は語りたがりの作者が作った設定なので、読み飛ばして問題ありません。このアホが何考えてるか確かめたろwって人はどうぞ。
各装備設定
・ピッチリ黒シャツ…防刃性能も盛りたかったけどボディストッキング的な質感にしたかったのでやめた。
・肩当て類…肘打ちとか膝蹴りの威力を高める為の装備。うっすら角がついてるのでまともに食らうと割と痛い。
・ガントレット…薄めのロンググローブの上に装着している。前腕を覆い隠しており、外側の部分は厚みを増やして角度をつけている。断面を見ると横長の五角形のようになっている。
・グリーヴ…足首の可動域を邪魔せずに防御力を高めている。膝下まで防具がついており、膝あてから上は迷彩ズボンのみ。シンプルに硬くて丈夫。
総評:なんかお前だけファンタジー感満載だな。