感想で『マリオがレトロゲー扱いの時代なのに、主人公がピクミンのアメボウズ知ってるのは何で?』というごもっともな指摘を頂きました。
うちの主人公はレトロ作品オタクってことで許してください()
「Hey爆発さん太郎」
「誰が爆発さん太郎だ殺すぞ!」
だってお前から直接的自己紹介されたことないし。お前の名前が爆豪勝己だって知ってるけど、自分の知らんところで名前知られてたら嫌でしょー?
爆発さん太郎呼びが嫌ならキッチリ自己紹介しろっての。
「チッ…爆豪勝己だ」
「おう、知ってる」
「そこに直れ。殺してやる」
ごめんて。真面目に自己紹介すると思わなかったから茶化すしか無かったんだ。真面目には真面目で返してやらねばならんというのに……俺としたことが。
んで爆発さんタロ……じゃねえな、自己紹介されたし。爆豪はなんか作戦とかあります?
「あ゛あ゛?俺一人で片付けるから黙ってろ!」
「……せめて授業内容くらい守ろうぜ」
言うか言わないかでいえばお前は間違いなくそういうこと言うけどさあ、協力して〜って言われてるんだから協力しよう?
確かに緑谷も麗日ちゃんもお前一人で片付けられるだろうけど、これ一応授業の一環なんですよ。
えーと、爆豪の個性は【爆破】か?手のひらから出る?じゃあ基本的にはインファイターって感じなんだな。機動力は十分だからヒットアンドアウェイも行けそう。
で、俺は【瞬間移動】だから、間違いなくインファイターかつヒットアンドアウェイ……おん?
「戦法ダダ被りしてんなこれ」
「……」
聞いてる?聞いてよ。聞けや。
爆豪はミドルレンジぐらいまで何とかなるかも知れないけど、俺は無理だな。その辺の瓦礫を投擲するのが精一杯。
向こうはよくわからんけど反動付きの【超パワー】と触れたらなんか浮かされるヤツ。ゼロ距離戦闘なら条件は向こうが有利。
じゃあ取るべき作戦はひとつしか無い。
2人がかりで真正面から叩き潰す。
……でも、爆豪は1人で殺らせろってうるせぇし、どうしようか。
いっそ爆豪が片方を押し留めてもう1人が登ってくる事に賭けるか?つかそれしかない。
『お互い準備は出来たかい?それじゃあ……』
あっ、もう始まるんですね。作戦は諦めマース!
◇
「頑張れって感じのデクだ!」
爆豪の奇襲に完璧なカウンターを決め、緑谷は大きく、やや頼りない決意を口にした。
これまでビクビク怯えて来たけれど、勝負するなら絶対に負けてやるもんか。クソナードがクソナードなりに反発して見せたのだ。
爆豪が立ち上がるまでの僅かな間に緑谷と麗日の2人がボソボソと短く言葉を交わす。内容は『かっちゃんは僕が相手する』『先に行ってくれ』『頑張って』と、緑谷が爆豪の対処にあたる事を決めるものだった。
階段を1階分登りきる頃には、既に階下で戦闘が再開されている。床や壁を挟んで尚、ビリビリと肌を叩く強烈な爆音に冷や汗を流すのは、つい先日まで荒事とは無縁だった子供ならば当然の反応と言える。
爆豪のペアは間飛移。実技試験で見せつけられた実力を思い浮かべると、はっきり言って自分だけでは太刀打ち出来ないというのが麗日の感想だ。
緑谷の一撃のあと始末程度とはいえ、あのゼロポイントを盛大に殴り飛ばした光景は今でも目に焼き付いている。油断どころか自信さえ持てない。
爆豪のような奇襲を警戒しつつ、ビルの部屋を確認して回る。幸いと言うべきか、間飛が奇襲をしかけて来ることは無かった。それどころか1階での戦闘が激化している事がわかるほどに静まり返っている。
そうこうしている間に残るは最上階のみとなった。オールマイト曰く、最上階は巨大なワンフロアとなってるらしいので、間違いなくドアの向こうに間飛が待ち構えている事だろう。
気づかれないようにこっそりとドアを開けてみる。隙間から覗き見てもドアの付近にはいない。麗日は少し躊躇いつつも静かにドアを開けてフロア内へと転がり込んだ。
こちらの個性を警戒してか、周囲の荷物は片付けられてしまっている。『核兵器』と書かれたハリボテの方に固められているのが見えた。
はて、そう言えばもう1人のヴィラン役はどこに行ったのか。フロア内に入り込んでから間飛への警戒が足りていなかった事を思い出し、慌てて周囲の様子を確かめる。
息を殺していると、カツンカツンとわざとらしい足音をたててハリボテの反対側から姿を現した。そんなところにいたのか、と声を漏らしそうになる。
ペタペタとハリボテを触っているが、どうしたのだろうか。何やら仕込みでもしているのか、とヴィラン役の少年を警戒していると、不意に間飛が独言を漏らし始めた。
「あンの爆発さん太郎が……人の話しぐらい聞けっての」
爆発、さん、太郎???
それが誰を指す言葉なのかを理解した瞬間、麗日は思い切り口元を手で塞いだ。
爆発さん太郎て。ヤンキーみたいな口調の怖い男子に対してつけるあだ名としては、なんというか……あまりにも身も蓋もない無慈悲さを感じさせる。
真面目な雰囲気も相まって、本来なら鼻で笑う程度のワードセンスが腹筋トレーニングの一助となってしまっている。
麗日の苦悩を知ってか知らずか、間飛の独り言は止まらない。
「あームカつく。緑谷があの爆弾ウニぶっ飛ばしててくれねぇかな」
爆弾ウニて。確かに彼の個性は【爆破】そのものだしトゲトゲチクチクした頭をしているけれど。まさかそんな水産業のブランド物みたいな……
───このとき、麗日に電流が奔る。*1
初対面の頃の緑谷への印象は『モジャモジャわかめヘアーの人』くらいの感覚だった。
つまり──
今麗日の脳内には世界一どうでもいい下克上が生み出されてしまった。
「ブフッ……!」
「……えっ、なんかいるし」
麗日お茶子、痛恨のミス。
気の緩みと言われてしまえば反論出来ないミスだが、同級生達のほぼ全員が同じ場面で笑いを堪えるのは不可能だろう。何せ脳内で涙腺ブチ切れワカメとポンポン爆破してくる爆弾ウニが海中で戯れているのだから。
しかしそれ以上はいけない。*2
麗日は何とか脳内の妄想に蓋をすると、通信機を使って緑谷に呼びかけた。
「ゴメン!見つかっちゃった!」
『くっ……!どうしたら……!』
「爆豪……こっち1人来たんだけど?」
『知るか!俺ァ今忙しいンだよ!』
片や危機的状況に冷や汗を流し、片や味方であるはずの1人を煽り散らかしている。残念ながら全員プロヒーロー志望の生徒だ。
しかし麗日はまだ諦めていない。まだ負けていないのだから──
◇
このままじゃ勝てない。
かっちゃんの気迫に潰されなくても、麗日さんが頑張ってくれていても。僕が何も出来ていない今、攻めに転じなければ負ける。
「何ゴタゴタ考え事してやがる!」
「ぐっ……!」
だというのに、僕よりもかっちゃんの方が余裕がない。何かを焦っているように動きが乱れているというか……なんか変だ。
今だって無理に突っ込んで来なければ、投げで返すことは出来なかった。1歩引いてフェイントでも混ぜられた方が厄介だった。
よくわからないけど、僕だって勝ちたい。勝って超えたい。僕にとっての憧れはオールマイトとかっちゃんなんだ。
今ここで勝ちに行かなくてどうする!?
「麗日さん!」
『こっちは準備出来てるよ!』
ここなら行ける。ビルの中心部、1階から屋上までぶち抜いても問題のない位置。
オールマイトの静止の声も振り切って、僕とかっちゃんが吠える。負けられない、これが僕なりの意地なんだから───
『え、消え──?』
僕とかっちゃんが真正面から殴り合う……振りをして天井をぶち抜こうとしていた時、通信機の向こうから届いた戸惑いの声がやけに鮮明に聞こえて
「悪い……ねッ!!」
SMASH!!!
かっちゃんの爆破よりも早く、間飛君の拳が僕の鳩尾を捉え、吹っ飛ばした。
◇
……危ねぇ!?
緑谷の奴、絶対下からぶち抜くつもりだったじゃねえか!?
爆豪との通信繋げっぱなしにしてある程度の位置把握してなかったら……ああ、もう絶対ろくな事になってねえな。足場は悪くなるわ武器を与えるわで、不利にしかならん。
やったことは単純。
【瞬間移動】で緑谷がぶっぱなす前に目の前に移動して殴り飛ばして、もう1回【瞬間移動】で麗日ちゃんの前に戻ってきて麗日ちゃん蹴飛ばして確保テープ巻き付けた。
目視してない位置へのワープは不安定だからちょっとだけ博打になったけど、上手くいったからセーフってことで。
『ヴィランチームWIIIN!!!さっそく講評と行こうか!』
うるさっ。
【瞬間移動】の追加情報
最大射程が300mではあるが、これは双眼鏡等の視力補正があり、ワープ先に何の物体も存在していない開けた地形である場合のみ。
実際の有効射程(動いている人間や障害物競走がある空間へのワープ)はレーダー機能もあってせいぜい30m程度。開けた場所である程度の目視が出来ていれば60mまで伸びる。
〈例〉
双眼鏡で誰もいないことが確認できた300m先のグラウンドへ→可能
300m先の中が全く見えていない雑居ビルへ→不可能
壁一枚隔てた中がまったく見えていない部屋へ→可能
障害物の無いグラウンドの真ん中から障害物の無い60m先へ→可能