雄英高校ってのは日本全国に存在するヒーロー科がある高校の中でも、話題に事欠かないので常日頃記者の1人や2人は彷徨いているらしい。
スキャンダルを求めるパパラッチみたいなクソもいれば、雄英高校に勤めるプロヒーローの方々に取材を行いたいだけの記者もいる。
話は変わるのだが記者に追いかけられるプロヒーローと言えばやはりオールマイトだ。
こちらもパパラッチから取材まで幅広くカス共に追いかけられているわけだが、オールマイトのフットワークの軽さもあってまず追いつけないし呼び止められない。
で、マスゴミに追いかけられるオールマイトが、マスゴミに張り付かれてる雄英高校に勤務してるとなれば……
──オールマイトの授業について一言!
──平和の象徴が教壇に立っているという事で、何か感想は!
──教師のオールマイトについてどう思われますか?
「コイツら死なねえかな」
マスゴミがキングマスゴミに進化しやがった。ふざけんな。
そういうメディア関連の知識がないから、実はこの人達も苦労してるとかやりたくないけどやらされてるとか、ほんのちょっぴりくらいは同情できる何かがある可能性は否定できない。
でもコイツらのせいで実害を被ってる側としては「死ね」以外の言葉は出てこないんですよ。遅刻したらどうしてくれるんだコノヤロウ。
……ええい、仕方がない。中学生の頃から無駄に『大抵の人はそれで黙る』と言われたアレをするしかない。
というわけでレッツ、髪上げ。普段は目にかかりかけてる位置まで伸ばしてる髪の毛を、グイッとかきあげて目付きを悪くする。そんで威圧感満載の態度をとって完成。
これぞ身内友人に『どこをどう見てもチンピラ成分100%』の太鼓判を押された、見掛け倒しのビビらせ作戦。いざ出陣。
「すいませーん!オールマイトの授業についt……ひっ!?」
「邪魔だ、どけろ」
「ヒーロー科……じゃないよね?あの子」
「ヴィラン養成所と間違えてないかしら?」
ははは殺すぞ。
誰がヴィラン予備軍じゃボケこら。
というかここまでやってるのに、爆豪の方がナチュラルボーンヴィラン予備軍扱いされてるのは何なんだよ。アイツのヴィラン要素なんて目付きと態度と言動ぐらいしか……悪ぃ、やっぱ庇えねえわ。
「強く生きろよ爆発さん太郎」
「あ゛あ゛!?急になんだ舐めプ野郎!!」
「……?舐めプとは」
「…………戦闘訓練ン時、明らかに手ェ抜きやがっただろうが」
………………ごめん、何の話?
もしかして『お前が最初からワープして2人とも沈められたのに、ギリギリまでワープしなかった』とか考えておられる?だとしたら的外れにも程があるんだが。
「つか何だその格好は」
「マスゴミ避け。便利だぞ」
「知るか。雑魚」
「お前マスゴミの群れに投げ込んでやろうか」
コイツ息を吐くように他人を罵倒しよってからに。言葉の暴力性というものを身をもって知りやがれ。
あ、後ろの方で雄英バリヤーが発動してら。事前に聞いてなかったら俺らもひっくり返ってたなアレ。マスゴミはざまぁ。
◇
学校生活ってのはあれだね、慣れるまで時間の経過が早いというか何と言うか。朝のマスゴミ騒動でもアレだったのに、気がついたら昼休みですよ。
当然授業はあったし時間も経ってる。でも俺の中ではほんの1時間も経ってないくらいなんだよね。いざ経過時間を突きつけられると『またまたそんなご冗談を……』的な感想しか出てこない。
途中で学級委員を決めろというお達しが出たけど、ぶっちゃけ俺には無関係。そういう時はひたすらに存在感を殺し、先生が指名するか自己犠牲精神の強い誰かを待ち続ける。
投票制度になったからとりあえず八百万ちゃんに入れといた。同票だった緑谷にジャンケンで負けてしまって副委員長になってたけど。
「学級委員なんて面倒なだけだろうになあ?」
「……知らねえ。なった事もねえ」
「マジで?俺は中学の時に立候補者が多すぎてくじ引きになるレベルだったけど」
「そんな事あるのか。どんな権力が与えられるんだよ」
今は瀬呂と轟と昼飯を食ってるところ。1人で食うのもな〜って思ってたら、瀬呂と轟がいたから不自然にならない程度に近づいて、ナチュラルに3人で昼飯を食うように誘導しました。
話題はもちろん、今日いきなり決めるように言われた学級委員について。
轟は何を話しても妙に上の空っぽい返事ばっかりだけど、瀬呂はいい感じにレスポンスしてくれて気まずくならない。ありがてえ。
そういや轟って推薦組だったんだっけか?このコミュ力で?嘘だろ。
あんまり人のことは言えないけど、せめて振られた会話に応じるぐらいのコミュニケーションは取ろう?プロになった時に現場のチームアップの雰囲気ぶっ殺す気かお前。
「……ゴクン俺は学級委員の仕事をする時間があるなら、もっと強くなりてえ」
「お、おおう……轟ってかなりストイックなんだな」
「気持ちは分からんでもないな。申請すれば訓練場とか借りられるらしいし、今日の放課後辺りやってみるか?」
「マ?」「本当か?」
「相澤先生に聞いたからマよ、マ」
その日確実に使えるとは限らんけどな。何の設備も無いだだっ広いだけの所ならワンチャンいけるかも。
早めに昼食を終えて3人で申請書類を出しに行くことにしたが……どうも俺たちが出た後に食堂はパニックになってたらしい。危ねぇな。
◇
間飛移
一般入試で入学してきた俺の同級生で、そこら辺を見渡せば1人くらいは似たような格好をしてる奴がいそうな見た目をしている。
俺は俺の目的の為に、少しでも強くならなきゃならねぇ。だから同級生でも負けるつもりは無いし、俺を上回る何かを持ってる奴がいれば見て盗むぐらいの意気込みでいた。
個性把握テストの時から爆豪と八百万と間飛の3人を警戒して、あの3人の強みは何かと観察してきた。
今も俺の考えは間違ってないと言える。言動はヤベエが戦闘能力がずば抜けた爆豪と、個性の汎用性と知識や判断力に優れた八百万。どちらもかなり優秀な部類に入るだろう。
戦闘訓練の授業で、間飛への警戒心は一気に跳ね上がった。
爆豪と八百万を足して2で割ったような……いや、2人の良いとこ取りをしたような奴。それが間飛の印象だ。
近接戦、それも至近距離の殴り合いにおいては爆豪と同等以上の攻撃力と機動力。それらを適切に運用してみせる判断力と観察眼。
戦闘能力という1点において、アイツはプロにも匹敵するんじゃないかとさえ思える。
俺と間飛と瀬呂の3人で広いだけで、何の変哲もない訓練場を借りている。
体力作りでもするのかと思っていたが、間飛が提案したのは『良くも悪くもフラットな状況での攻撃防御手段の考察』だった。
「だあああ!!やっぱ俺ァ柱とか壁とかねーと無理だって!」
「ンなことねーって。地面に向けてテープ射出してスケート移動出来るだけでも違うだろ?」
「そりゃそうだけど!いきなりはできねー!」
俺と間飛はむしろ障害物が無いから動きやすいが、瀬呂はテープの扱いに苦労してるらしい。ひとまず試しているのはテープを利用した高速移動のようだ。
「……あっ、いっそテープで地面を引き剥がしてハンマーみたいにできねえ?」
「どれどれ……おっ、いけそうかも」
「ンじゃ試してみようぜ。大体この辺に叩きつけてみ?」
……かと思えば思いつきで妙なことを試し始める。なのにそれが妙に様になっていたりする。
今だってそうだ。瀬呂のテープを短く切り取って粘着性のある面を外側にしてリング状にすると、地面に置いて一言『峰田じゃねえけど、透明で見えにくい粘着罠にならねえ?』と言っている。そこそこに厄介そうな事を考えていたらしい。
「問題はお前が上手くリング状にテープを射出出来るかなんだが……」
「ちょっと難しいな……待てよ?いっそリング状にせず、端の方だけ地面に付けて裏返したら……」
「蜘蛛の巣みてえに張り巡らせると強そうだな」
そうして瀬呂は最終的にテープを裏返して地面に設置し、粘着トラップを一直線に配置する技を編み出した。
まだまだ不慣れで未熟だから時間がかかっているが、もしあれをスムーズに無駄なく出来るようになればかなり強力だろう。
「ンでこうやって……半径20mのテープの結界!とか」
「……強いのはわかるけどよ、お前どうやってそっから出るんだよ」
「ワープだが」
「そういやそうだったわ!忘れてたわ!」
…………
遊んでねえか?
瀬呂に微強化入りました。何故コイツに……?
個人的な意見ですが、瀬呂とか峰田みたいな拘束力の高い異能って使い方によっては最強格だと思うんですよね。イレイザーヘッドの捕縛布の上位互換にもなれそう。