「今日のヒーロー基礎学だが……俺とオールマイトともう1人の3人体制で見ることになった」
プロ免許持ちを3人も配置とは贅沢な。それもNo.1ヒーローにイレイザーヘッドて。個性封じてタコ殴りにすれば終わりじゃん。何?生徒たちを拷問にでもかける気か?
……全然違ったわ。シンプルに『
災害水難なんでもござれ、時にはパニックを起こした市民たちが障害となって立ちはだかる事さえあるのが『人命救助訓練』だ。
だいぶ前にオールマイトの活躍動画とか出てたんだが、何よりも大変そうだったのは『全部が全部力ずくでは上手くいかない』事だったな。
1人1つの個性が当たり前な昨今だけど、ちょいと狙いを変えるだけで簡単に人が死ぬ武器を持ってるようなもんだよ。それも誰がどんな武器を持ってるのかわからねえってな。
それこそ峰田とか分かりやすいな。あの【もぎもぎ】は拘束に持ってこいな個性だけど、相手の口やら鼻やらを塞ぐだけで簡単に死人が出る。
そもそもの話、アイツは相性が悪いことが多いせいで弱く見えるけど、片手間にポンポン数増やせていいアイテムじゃねえんだよな【もぎもぎ】は。
『戦闘訓練』ではその場のノリと勢いでどうとでもなるだろう。しかし『人命救助訓練』となれば個性の使い方を工夫しなきゃならない場面が多くなる。
俺もバカのひとつ覚えみたいに脳筋ゴリ押し一辺倒じゃ上手くいかない時が来るだろうし、何かしら別の手札を持っておかねえとな。
訓練場への移動の為にバスに乗り込み、数分もしないうちに皆の会話が弾み始めた。コミュ強共め……!
「私何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」
「あ!?はい!?蛙吹さん!」
「梅雨ちゃんと呼んで……あなたの個性、オールマイトに似てる」
カエルの個性らしく、ぬるりと蛙吹さんが緑谷に切り込んだ。
ってかオールマイトと同じ、ねえ?同じと言うよりは『オールマイトみたいな超パワー』って感じなんだが。むしろ制御が叶えばオールマイト超えるんじゃね?
切島もだいたい同じような感想のようで、似ていることは認めつつも反動の有無から“似て非なるもの”って感じらしい。
「しっかし……増強型のシンプルな個性はいいな!派手に見せつけられる上に出来ることが多い!間飛とかヤベエしな!」
「……俺からすりゃ並大抵の攻撃ならカウンターに繋げられるお前の個性の方がヤベエよ」
「【硬化】な。確かに対人戦じゃあ強えけどよ、如何せん絵面が地味だろ?」
「僕は凄くかっこいいと思うよ。プロにも通用する堅実な個性だと思う」
おっ、緑谷わかってんねえ。中途半端で終わる程度の増強型と比べりゃ、間違いなく切島の個性は強い部類だよ。
防御力の高さは自身の動きを保証してくれる。多少の妨害をものともしないタフネスってのは、近接戦闘においてかなり重宝される要素だ。
「でも派手で強いっつったら爆豪と轟じゃね?ひと目でわかる大火力!って感じで」
「でも爆豪ちゃんすぐキレるから人気出なさそう」
「ンだとコラ!出すわ!」
「ほら」
お、おう。蛙吹さん思ったより強かと言うかなんというか。
怒れる爆発さん太郎を前にして冷静に指さして『ほら見た事か』出来るやつそういねえよ……。
「でもある意味凄えよ。この付き合いの浅さでクソを下水で煮込んだ様な性格って認識されてんだぜ?」
「てめえのボキャブラリーは何だ!殺すぞ!」
「おいおいクソと下水はこんなにニトログリセリンに満ち溢れてねえよ」
「てめえコッチ来やがれ陰キャ前髪」
あらやだワタクシにだけ殺意がマシマシチョモランマ。先生が注意してくれなかったら本格的に襲ってきてたかも。
◇
『すっげー!USJかよ!?』
バスが到着した施設には数多くのエリアが存在していた。
大量の水がうねる水難エリア、街をひっくりかえしたような土砂災害エリア、どういう仕組みなのか鎮火する気配のない火災エリアetc……
そこがプロヒーローを目指す為の教育施設だと知らなければひとつのテーマパークにさえ見えてくる、広大な敷地と数々のエリアに生徒達が思わず声を上げた。
「あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も……(U)ウソの(S)災害や(J)事故ルーム!!」
(((マジでUSJだった!)))
著作権的に宜しいのだろうか、なんて明後日の方向に飛来した心配を他所に麗日と緑谷のテンションは上がっていた。
「スペースヒーロー『13号』!」
「わー!私好きなの!13号!」
宇宙服を思わせる……というよりは宇宙服そのもののようなヒーローコスチュームを着込んだ教師、13号を見てはしゃいでいた。
戦闘に向かない個性の持ち主がプロヒーローを目指すとき、多くの人々が例として名を出すのが13号だ。ヒーローオタクの緑谷はもちろん、あまり戦闘向きとは言えない個性の麗日が好いているのも当然だ。
その13号が指折りで注意事項の要点を数え終えると、ゆっくりと諭すように話し始めた。
「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性は【ブラックホール】というものでして、どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」
「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね!」
「ええ……しかし、簡単に人を殺せる力です」
13号は続ける。
今現在社会が成り立っているのは、個性の使用を資格制にすることで厳しく規制しているからだ。
一見成り立っているようには見えるけれど、いつかどこかで誰かが一歩を間違えれば容易く死人が出る。己の手にあるものが単なる便利な力では無く、他人を傷つけうる武器であることを自覚しつつ、どのように扱うべきか考えることを止めてはならない。
「以上!ご清聴ありがとうございました」
どこか演技がかった、マスコットじみた動作で頭を下げた13号に生徒達は心の底からの尊敬を向けた。
当たり前の事で、忘れてしまいがちな大切なこと。それを改めて強く思い出させてくれる素晴らしい演説に爆豪でさえ首肯していた程だ。
演説も終わったことだし、と相澤が授業の段取りについて話を始めようとした時だった。
ズズズ……
「ッ!ひとかたまりになって動くな!」
誰も、何も無かった噴水前の広場に現れた黒いモヤ。それを掻き分けるようにして悪意が現れる。
困惑する生徒達を余所に相澤……イレイザーヘッドの指示が13号に飛ぶ。
「何だありゃ!?また入試ン時みたいな『もう始まってんぞー』パターン?」
「動くな!あれは
いつか将来人の命を救う為、生徒達が他人を救う方法を学ぶ場所で。
液晶の画面を挟まないリアルな悪意が、ほんの数メートル先に降り立った。
原作の13号の演説大好き侍「原作の13号の演説大好き侍。文字打ちが面倒だからとカットした作者を介錯しもす」
拙僧、こういうクライマックスでもなんでもない場面で出る名言や名演説が大変好みでして。何の気なしに吐いて捨てたようなセリフが名言であればある程大好物でして。
ちなみに拙僧は語彙力がカスですぞ♡