え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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オラッ!吐けってンだよ!

 

 

 

 

 

「……うん、もう1回話してもらってもいいかな?」

「えーっと……脳無とか呼ばれてた奴が一番危ないと思いまして、せめて周りから引き離そうと思って抱えあげて……」

 

 何度聞いても理解できない行動だが、本題はそこではない。あの脳無と呼ばれていた(ヴィラン)についての情報だ。

 緑谷にも事情聴取を行ったが、間飛同様出てくる感想としては『滅茶苦茶強い操り人形』というものだった。本人の自我らしき物はほとんど見られなかったという。

 

 抱えあげて持ち運ぶという危険極まりない愚行も、その後脳無がピクリとも動かなかった事で最適解となってしまっていた。やはり指示がなければ動かないということだろう。

 間飛がコミュニケーションを取れないものかと試していたことも聞いた。暴れる可能性を覚悟の上で敵のリーダー格がそうしていたように『殺れ』と言っても、指のひとつも動かなかったらしい。

 

「というかさあ、君バカでしょ?」

「……えっ」

「いやね?抱えて遠くに運ぶまではまだいいよ?でもさ、反応がないから『殺れ』を試すのはバカとしか言いようが無くない?」

「…………いやあ、ワンチャン制御権奪えないかと思いまして」

 

 聞けばイレイザーヘッドを殺す寸前まで行く程の戦闘能力を有していたらしく、それが味方になるかもしれないと思ったのならわからなくもない。

 しかし味方になる確率よりも矛先がこちらに向く可能性の方がよっぽど高いことぐらい、間飛にだって分かっていただろう。

 

 どこから突っ込めばいいものか、なんて独り言ちた警察官に同情する者は多いだろう。

 

 

 オールマイトの到着に対して敵連合を名乗る者達がとった行動は撤退だった。慌てふためく様子もなく、これ以上は無理だと冷静に判断しての事だった。

 半ば肩透かしを食らったような気分だったが、各エリアに散らされた生徒達を助けなければ。気を取り直したオールマイトはすぐさまチンピラ崩れの敵連合を叩きのめして行った。

 

 そうして生徒達の無事が確認され、唯一の負傷者はイレイザーヘッド1人。13号と生徒達には黒霧が数人の敵を充てがわれただけで、生徒達で十分に対処が叶ったという。

 

 被害を最小限に抑えられたのは、最初に脱出出来た生徒達が連絡を取れたというのが大きい。一瞬とはいえ黒霧を止めた事が敵連合にとっては大打撃だった。

 

 そして同時に敵が損切りをしやすかった理由でもある。頼みの綱である脳無はおらず、到着したのがオールマイトだけだったとはいえ援軍がどれほど来るかわかったものでは無い。

 主犯格には逃げられ、切り捨てられた残党は敵というよりもゴロツキの寄せ集め。勝ち逃げ……と言うよりは脳無の分だけ向こうが損をした形の痛み分けと言うべきか。

 

「……教師として情けない話だが、間飛君に大いに助けられた」

「火災エリアの敵制圧、及びワープゲートの個性持ちと脳無への対応……100点満点とは行かずとも死人を出さなかった、という1点だけで賞賛するしかないな」

「下手すりゃイレイザーも殺られてたかもな。つかそんな奴を相手によく正面切って殴り込めたなおい」

 

 本来ならば生徒の独断で危険な行いをしたのだから叱るべきなのだが、そうするにはあまりにも助けられてしまった。面と向かって彼を叱る権利があるのか?とどうしても尻込みしてしまう。

 警察とて何も言わなかった訳でもなく、当然間飛の行いを賞賛しつつも危険だったと咎めてはいた。しかし返ってきた言葉が『俺の個性なら何か間違えても逃げられるんで』だった事もあり、尚更口を閉ざしている。

 

 改めて彼の個性【瞬間移動】と【フィジカルギフト】の組み合わせがどれほどの強さかを理解させられた気分だ。最悪敵の攻撃を避けながら一方的に殴り続けられるのだから弱いはずもない。

 

「彼ニ弱点ラシイ弱点ハ無イノカ?コノママデハ簡単ニ危険ナ場所ヘ飛ビ込ムヨウニナッテシマウゾ」

「そうねえ……敵連合も気になるけど、教師としては間飛君が危なっかしいというかなんと言うか」

「私としては間飛君もだけど、緑谷君も気になるね。間飛君は『逃走手段がある』からまだわかるけど、彼も考え無しに突っ込んだそうじゃないか」

「そこはイレイザーが矯正すンだろ。今は敵連合と間飛リスナーだ」

 

 一度逸れた話は中々元には戻らない。敵連合という新たな脅威への対策の話し合いだったはずが、教師達の間で議論されているのは『間飛移の個性に対する考察』となってしまっている。

 ああでもないこうでもないと各々が【瞬間移動】の長所短所について意見を述べていると、プレゼントマイクが面倒くさいとばかりに呟いた。

 

「もういっそ本人に聞けよ……間飛リスナーよか敵連合の話しよーぜって……」

「む、すまない」

「……でもそうね。一度間飛君本人に直接尋ねた方がいいのかも」

 

「遅れてすいません!!」

 

「…………ビックリしたぁ。オールマイトか」

「オールマイト、アマリ大キナ声ヲ出サナイデモライタイ」

「しっ、失礼しました……」

 

 今後の方針が決まりかけていた所に、1人事情聴取を受けていたオールマイトが飛び入り参加。勢いよく開かれたドアの音さえかき消す挨拶に、全員の肩がビクリと跳ね上がったのは無理もないだろう。

 ちょうどいいとばかりに振り返りも兼ねて、会議の内容をオールマイトへと伝える。そうして一度間飛の個性を把握すべきだ、という話までを伝えると……

 

「ああ、それなら丁度先程聞いて来ました。休めばいいのに相澤先生がですね?『1回間飛の個性について詳しく尋ねておいてください』って……」

「お、おお……そうか。じゃあ、どんな感じだったか教えてくれ」

 

 何と既にイレイザーヘッドから指示を受けて間飛の個性を調べてきたらしい。コピーした資料をそれぞれに配布するとオールマイトは聞き取りの様子も含めて話し始めた。

 

 

 

 

 

 

「俺の個性……?どっちです?」

「【瞬間移動】の方だよ。色々と不明瞭な点が多くてね……」

 

 塚内君と一緒に間飛少年の話を聞く中、相澤君が言っていた事を思い出して尋ねた。質問の内容は『【瞬間移動】とは何が出来て何が出来ないのか』というもの。

 

 いくら強力な個性であっても、全ての個性が身体能力の延長線にある以上は無限に使い続ける事は出来ないはずだ。

 しかし個性把握テストの時から【瞬間移動】という個性の限界……消耗や使用不可能な状況が一切不明なのだ。射程限界こそあれども、いついかなる時でも発動可能であるように見える。

 

「んー……これでも制限は多いんですよ?」

「そうなのかい?結構自由度は高そうだけど……」

「まず前提なんですが『誰もいない場所』かつ『何も無い場所』にしかワープ出来ません」

 

 何かしらと座標が重なる位置にはワープ出来ないと言う事だ。これはワープ系の能力を持つ個性にはよくある話なのでさほど珍しくもない。

 

「次に『目視していない場所への即時ワープは不可能』で『目視していない場所へのワープはブレが起こる』」

「ワープ出来ないわけではない、と?」

「対人戦闘訓練でやりましたから。オールマイトも見てたんですよね?その時すぐにワープしなかったのはそういうわけです」

「……ああ、そう言えばしていたね」

 

 敵連合の黒霧と違い、ワープ先の精度は目視出来なければ大きくブレてしまう。感覚としては10m離れる事に0.7m程のブレが起こるのだとか。

 目視出来ない位置へのワープに時間がかかる理由は地形把握。時間さえかければ見えずとも正確なワープが可能だとか。

 

「他にも色々あるんですが……個性の使用で消費するのは『距離』なんですよね」

「「距離?」」

「説明が難しいんですけど……」

 

 現在の【瞬間移動】の最大射程は300m。これは一度のワープで移動できる最大射程であり、当然ワープ先からまた別の所へワープ出来る。

 

 この最大射程である『300m』こそが消費するものだ。

 

 例えば間飛が30mのワープをした時、残るワープ可能距離は270mのみ。また別の所へ30mワープすると残りは240m……という具合に残り距離が減っていくのだ。

 

 つまり30mのワープを10回連続で使ってしまえば、その時点で残りワープ可能距離が回復するまでワープすることが出来ない。

 

「その残りワープ可能距離……面倒なんで『レンジ』って言いますけど、レンジが回復したらまたワープ出来ます」

「そういう仕掛けか……ついでに聞くけどレンジ?はどうやったら回復するんだい?」

「時間経過か、個性を使わずに移動した分だけ回復します」

 

 1分あたり3mの回復速度らしい。個性を使わない移動については自動車なんかの移動も含むらしく、困ったことはないそうだ。

 

「無限では無いのか」

「無限じゃ無えッスよ?使い過ぎると酔うし」

「それはどのくらい使うと酔うんだい?」

「使い方に寄りますよ?連続であっちこっちにワープしまくったらすぐに酔いますから」

 

 視界がぶん回されなければノーダメージです。と間飛少年は言ってのけた。

 

 ……正直、並大抵の個性じゃ太刀打ち出来ないんじゃないかと思う。

 普通に考えて『近距離ならノーリスクでワープしまくれます!』なんて脅威以外の何物でもない。なんならそこに似非OFAまであるし。

 

 

 事情聴取をしていてわかった事だが、間飛少年は『自分に出来ることしかしていない』と言っていた。じゃあなんであんな無茶を、と聞くまでもなく理解出来てしまう。

 

 私達にとって無謀にも見える行動は、彼にとっては『出来るからやった』程度でしかないのだ。

 他の誰にも出来なくて、でも自分は出来る。なら自分がやればいいだけだろうと、それだけの思いで軽々しく命をかけられてしまう。

 

 かつて“誰にも出来ないから自分がやる”とやってきた自分とは、ある意味で正反対。

 今の彼は“誰も出来ないけど自分は出来るからやる”という、似ているようでどこか根本的に異なっている在り方。

 

 平然とそう言ってのける間飛少年に妙な危うさを覚えてしまったのは、子供を導く教師としての感覚なのだろうか。それとも、数多くの敵を見てきたプロヒーローとしての感覚なのだろうか。

 

 どちらとも言いきれない感情を隠しながら、彼の目を見るのが精一杯だった。

 

 






【瞬間移動】の個性についての説明が分かりにくかった時は感想欄で教えてください。後書きで追加の補足をさせていただきます。その時は出来ればどの辺が分かりにくかったか教えていただけると幸いです。
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