え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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立ち止まる勇気と跳ね除ける度胸

 

 

 

「ごめん……なさい…………」

 

 ダメージを覚悟で打った一撃は確かな爪痕を左腕に残して、慌てて担ぎ込まれた保健室は暖かくて、どうしようもなく苦しかった。

 リカバリーガールによって急速に消える腕の痛みとは裏腹に、胸の奥が痛くて苦しくてしかたがない。

 

「ごめんなさい……!」

 

 雄英体育祭の前に話していたのに、あれだけ僕に期待してくれていたのに。これっぽっちも応えることが出来なかった。

 準備不足は百も承知だった。それでも、それでも何とかしなきゃって、何とか出来るんじゃないかって驕っていたんだろう。

 

 ああダメだ。きっとオールマイトは僕よりも泣きたいだろうに。目をかけた後継者がこんなにも頼りない物だと、歯痒い思いをしているだろう。

 でも。後から後から溢れてくる涙が全然止まりそうにない。

 

「……全く、アンタまた変にプレッシャーかけたろ」

「必要な事だと、思っていました……」

 

 ため息をつきながらオールマイトを窘めるリカバリーガール。違うんです、できなかった僕が……

 

「…………緑谷少年」

「っ」

「君には悪いけど、ちょっとだけホッとしたんだよ」

「え……?」

 

 怒られる。そう思っていたのに、掛けられた言葉は今の僕には理解不能なもの。ホッと?何が?どうして?

 

 弾かれるように涙も忘れて顔を上げると、そこにはどこか力の抜けたオールマイトの顔があった。

 

「入学試験に対人戦闘訓練……私が焚き付けたとはいえ、君は立ち止まることを知らないんじゃないかと思っていた」

 

「このまま突き進んでいては、いつかきっと取り返しのつかない事になるかもしれないと……私よりも先に死んでしまうんじゃないかと…………」

 

「君には酷い事を言っているという自覚はある。でも、無理をして走り続けるんじゃなくて、君のペースでいいから、ゆっくりと強くなってくれればいいんだ」

 

 

 オールマイトは子供を寝付かせるような優しい声色で、僕にそう言った。

 

 正直、自覚はあった。

 皆よりも遅れているからと、無理をして無茶を重ねて。寝る間も惜しんで休むことなく突き進んで、何とかして追いつこうとしていた。

 

 じわりと、先程とは違う熱が籠った涙が落ちる。悔しいし悲しいし自分への怒りもあるけれど、オールマイトの言葉にホッとしてしまった。

 感情の整理が少しだけ出来た途端、急激に眠気が襲ってきた。運動量はそこまで無かったはず……だけど、立ち止まれたから、自分の疲れに気づいたんだろう。

 

 僕はそっと意識を手放して眠りについた。

 

 

 

「アンタらしくないね。もう少し焦ってるもんだと思ってたけど」

「…………いえ、焦ってはいます。時間が足りないのは確かです」

「?」

「でも間飛少年を、心操少年を見て……緑谷少年なら大丈夫だと思えましたから」

「……アンタと違って頼れる仲間が居てくれる、って?」

「どちらかと言えば『頼らせる仲間』と言うべきですね。緑谷少年を1人にさせない様にしてくれる生徒がいたことに、心底安心しています」

 

 きっとそう遠くない未来で、緑谷が孤独を感じなくなる事を知った。それだけでオールマイトは嬉しいのだ。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「お疲れー」

「間飛か。勝ったぞ」

「知ってる。ナイスファイト」

 

 唯一勝ち残った普通科にして最終種目の初戦という緊迫した晴れ舞台の後、戻ってきた心操と間飛はリラックスした面持ちで話していた。

 あれだけの動きを見せていたけれども、やはりまだ学生の身分。やっと観客の視線から開放された心操はリラックスと言うよりは脱力、上手く立ち回れた安心感から大きく息を吐いた。

 

「っはあ……マジでヤバかった」

「緊張か?緑谷か?」

「どっちも……強いて言うなら緑谷、の個性の威力だな。お前より上ってのが本当だとは……」

 

 傍から見れば余裕を持って対処していたように見えていたが、実の所緑谷のがむしゃらな一撃はかなりギリギリだった。ともすれば風圧のみで負けていたとさえ思える。

 

 心操が緑谷のパワーを知った上で戦えたのは他でもない、目の前の上位互換との訓練経験があったからこそである。

 仮に初手から【洗脳】を仕掛けたところで、近接戦闘になれば【超パワー】を警戒し続ける泥沼展開になっていた。

 

「まだタネは割れて無い。お前のクラスの推薦男にも勝ってやるよ」

「期待しといてやる。上手く上がれば3回戦でかち合うんだから頑張れよ?」

「お前こそな」

 

 ニヤリと悪そうに笑い合い、普通科の観戦席へと戻る心操。しかし顔を背けた後にはその笑顔はどこにも無かった。

 

(轟焦凍……氷と炎ってどんなキメラ個性だよ。回避するので精一杯まであるじゃねえか)

 

 次の強敵。間飛とぶつかる前の巨大で分厚い壁。

 間飛からはエンデヴァーの息子だということは聞いていたが、彼ほどの炎熱系個性に匹敵する強度の氷結個性とはどれほどのものなのか。

 

 轟の対戦相手である瀬呂範太には悪いが、彼が上がってくることはまず無いだろう。もし彼が轟焦凍を下したとなれば拍手喝采を送るしかない。

 

 No.2の炎熱系個性と同居できる氷結個性だ。弱いなんてことは有り得ないだろう。現時点では氷結しか見ていないものの、出力の高さから温存している可能性も考慮しなければならない。

 

(……次こそはマジで先手必勝しないとマズイかもな)

「……おや?君かね、心操人使君は」

「え?あ、はい……え゛!?」

 

 どう対応すべきか、と思考を重ねている所に不意を突くように声がかけられた。パッと顔を上げて声の主へと視線をやると、そこにはメラメラと燃えている炎だけが写った。

 

 No.2ヒーロー・エンデヴァー。自分に声をかけたのはどうやらその人物らしいと理解するまでに数秒の時を費やした。

 

「すすす、すいませんっ!?か、考え事をしていて……」

「あ、ああ……別にぶつかった訳では無いし、そう畏まらなくてもいい」

「そ、うですか……」

「それで君とは少し話がしたいと思っていた」

「へ?」

 

 勿論だが心操とエンデヴァーの間に面識は無い。今日この時この場所が初対面。話も何も無いだろう?という疑問は尤もなものだ。

 

「何、焦凍の……轟焦凍の次の対戦相手は君だろう?だから話がしたかったんだ」

「は、はぁ……」

「どんな個性か知らないが……素晴らしい判断力だった。まずはおめでとう」

「ありがとうございます」

アレ(・・)はオールマイトを超えさせる為に作った仔でね。今のうちから目覚しい活躍をしてもらいたいと思っている」

 

 会話時間にして1分も経っていないけれど、既に心操はエンデヴァーの事を嫌悪しつつあった。最初はNo.2直々に激励を貰えるのかとも期待したけれども。

 しかし口を開いてみれば何が言いたいのか分からない、それでいて所々に刺々しい物を感じられる。

 

 というか何故こんな所にエンデヴァーが?と思ったが、なるほど息子に何かしらの話をした後という事らしい。ついでに見かけたから話しかけてみた、程度の認識だろう。

 

「出来れば先の試合のような、見栄えのしない戦いにならない事を期待しているよ」

「……」

 

 ああ、そういう事か。エンデヴァーは自分のことを息子が活躍する為の踏み台程度に思っているのか。そう理解した心操は目を細めてエンデヴァーを睨む。

 

「……なんか、幻滅しました」

「ん?」

「No.2ともあろう方が、ご丁寧に道の整備(・・・・・・・・)に勤しんでるなんて知りたくなかったですね」

「……貴様」

 

 チリッ、と強まった炎が心操の肌に強い熱を掠めていく。エンデヴァーの苛立ちに応えるように炎が僅かにうねりだす。

 

 しかし心操は怯まない。この程度のプレッシャーにしっぽを巻いて逃げるくらいなら、とっくのとうに折れてしまっている。今更逃げるものか。

 

「アンタが何を願っているのかなんて知らないし、知りたくもない。でも……」

「……」

「慢心してるなら、足掬いますよ」

「!!」

「……轟、焦凍さんにも同じことをするだけです。それじゃ」

「待てっ……!?」

 

 去ろうとする心操の言葉に反応し(・・・)、引き留めようとしたエンデヴァーはその場でピタリと停止した。目から光は抜け落ち、生気を感じさせない。

 

 たった1人の男子生徒に足元を疎かにしたNo.2が動き出したのは、轟焦凍の2回戦進出が決まった後の事だった。





エンデ「おのれッ……!」
ショート「……何してんだ親父」

心操「エンデヴァー【洗脳】したった」
間飛「はぁ?何でそんなことしてんの」
心操「ムカついた」
間飛「ファーwwwwwww」


【悲報】瀬呂範太がカメラ外でドンマイ負け
【悲報】心操君にスイッチ入った
【朗報】エンデヴァーが普通科生徒に足を掬われる
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