※ちょっと長い前書きです。飛ばしても構いません。
今回、小大唯が登場します。
前回頂いた感想の中に『脚注で翻訳されるといちいちタップするのが手間だ』とおっしゃった方がいました。
これ自体は私も懸念していた事で、そういった感想が出てくる可能性も考えておりました。
手間だと思われる方々には申し訳ありませんが、これからも小大唯の翻訳(?)は脚注機能を用いて表現させて頂きます。
「ん」の後にまた別の括弧を付けて文章を書くよりも、そちらの方がより小大唯との会話が難しい事を表現しやすいと思ってのことです。
応援していただける読者の皆様、これからも本作品をよろしくお願いします。
無駄に長い前書きに飽きた皆様、本編をどうぞ
轟VS瀬呂に続いて芦戸VS常闇踏陰。
……え?飯田と発目の戦いはって?そんなもん、発目の企みに乗せられた飯田を利用してのテレビショッピングみたいなもんだったからスルーよ。
でも普通に有用そうなアイテムばっかり出しやがるから困る。体育祭終わったら色々相談に乗ってもらおうかな。
『息をつかせぬラッシュ!ラッシュ!!ラッシュゥゥウウウ!!!芦戸は手も足も出ない!届かない!!』
「もー……酸が当たっても効かないんじゃどうしようも無いじゃん!」
「無効では無い。しかし有効でも無いだけだ」
「ガンガン行クゼー!」
おっ、決まった。さすがにダークシャドウ?の方が上か。射程的にも芦戸さんは相性悪かったし、こればっかりは運が悪かったかな。逆に轟とかは善戦、ないし勝利すらあったか?
完全に射程を押し付けられた形で場外まで押し込まれて敗退。常闇の奴は間合い管理が上手いな。もう少し本人が強くなるだけで大化けするんじゃないだろうか。
そんで俺的注目カードは次だな。A組最強格の個性【創造】の八百万VS実質無限武器の【サイズ】小大唯。どっちが勝ってもおかしくねえな。
八百万が【創造】した物を唯に利用されるかどうか、ってのが勝敗を分ける要因になるだろう。最悪そこらの石ころさえ武器になるし、警戒し続けなきゃな。
本当は同じA組の八百万の応援した方がいいんだろうが、騎馬戦で組んだのもあって正直唯の方を応援してる。だって八百万滅茶苦茶強いし。
「ん」*1
「ああ……真っ向勝負するならまず──……ん?唯?」
「ん」*2
「いやなんでいるし」
何ナチュラルに俺の背後取ってんだよ。怖いよ。てかここ一応A組側のエリアなんですが。それに貴女次の試合に出るんじゃないのかね?
「ん」*3
「ああなるほど……いや良いのか?」
「間飛テメェ何1人抜け駆けしてやがる!オイラにもその美女とお近づきにならせ──ヘブっ!?」
「……ん?」*4
「ファッキンえろブドウはスルーしてくれ」
こういう嗅覚だけは鋭いのやめろ。思わずノールックで裏拳叩き込んだじゃねえか。
酸液の中和や除去が済むまで時間を貰えたので、B組の友達と話して緊張を解していたそうだ。言っちゃあ悪いが緊張とかするタイプなのかアンタ。
そんでやはりと言うか、B組唯一の最終種目出場生徒が話していればB組の人間が来るわけで。昼食程では無いが数人のB組生とまた話し始めた。
「やあやあ間飛くん!だっけ?うちの!小大と組んで最終種目に出られたっていうラッキーくんは!」
「えーと……アレな人だっけ?」
「何がとは言わないあたりが卑怯だねぇ!?全く……君のような性根が悪そうな人間と組まされるなんて小大も可哀想だったね!」
「うるせえ負け犬」
「シンプル悪口!?」
物間寧人……だったか。唯から聞いた話だと【コピー】とかいう触れた相手の個性を複製して使用出来るんだっけ。普通に強個性じゃん。
俺ならコイツと心操、もしくは相澤先生と組ませたくなる。声か視線、どちらも不可視にして単純故に防ぎにくい発動条件と、コピーしたてで不慣れでも扱いやすく強力な個性を増やしに行きたいね。
それだけにコイツが他人と仲良くしようとしないのがもったいない。お前は友達100人作っといて損しないだろうが。敵を作んな友人増やせ。
「ん」*5
「唯?どしたん」
「ん」*6
「……俺そういうのセンス無いんだけど」
「ん」*7
「やっぱり仲良くなってるよねえ!?いつの間に下の名前で呼び合う仲になってるんだい!」
こういう時の語彙力の無さって泣きたくなるくらい滲み出てくる。ここは無難に『決勝で待ってる』でいいか。俺もトーナメント残ってるし。
で、物間はさておきB組女子は何をそんなにキャイキャイはしゃいでいるのかね。ニヤニヤこっち見んな。やめろ。やめろ……陰キャ男子に内緒話してる女子達の視線はやめろォ!!
「……ん!」*8
「え?あ、おう」
そうこうしているうちに舞台の準備が整ったらしい。やけにフンスフンスと気合いの入った唯は小走りで舞台へと向かった。
◇
『オッシャお前らァ!!まだまだ冷めきってねえよなァ!?』
『推薦入学のエリート女子!八百万百!!
「小大さん……全力で参りますわ!」
「ん!」*9
「ん、んん……?な、何と仰いました……?」
「……ん」*10
『レディ!FIGHT!!』
開戦の合図と同時に八百万が【創造】を発動。警察が使用するような武装、ライオットシールドと警棒を作成。近接戦闘でのアドバンテージの確保に移った。
小大との勝負が決まった瞬間から八百万が決めていた作戦。飛び道具がある個性では無いと踏んでの初動だ。
一方、小大はライオットシールドと警棒の【創造】を見て
「……っ!」
「真っ向勝負……!?それならば武器があるこちらに分がありましてよ……ッ!?」
何を考えているのか。膠着状態になる事を予想していた八百万にとって、小大の正面突破を選んだような行動は奇を衒った、或いは投げやりの突撃に見えてしまう。
僅かな躊躇いを噛み潰し、八百万はシールドを構えて警棒を振りかぶる。シールドで受けてカウンター。優位に立っていると思っている八百万が選んだ作戦は、個性という唯一無二の能力で瓦解する。
「んッ!!」
「!!しまっ…ッああっ!?」
『うおお!?シールドが消えちまった!?何が起こったああああ!!?』
『……騎馬戦でやってただろ。シールドのサイズを変えたんだろ』
繰り出されたのはパンチ───では無く、手のひら。ビンタのようなスイングも無ければ掌底のような鋭さもない、優しいタッチだった。
それがシールドに触れた瞬間。シールドがふた回り程小さくなり、どっしりと構えていたはずの八百万に出来た隙を狙い、今度こそ拳を突き出した。
シールドでの防御を前提としていたものだから、当然回避など頭に無く。堅牢なシールドの奥の無防備な腹部に拳が突き刺さる。
そして予想外のダメージからか、八百万の手元からシールドが落ちた。小大はそれを見逃さずにすかさず回収。警棒を警戒して2歩半ほど後退する。
「ゲホッ……シールドに触れて『サイズ』を変更した、という事ですか。大きくするだけでは無い、と」
「ん」*11
決してダメージは小さくない。しかし立ち直るのにさほど時間はいらない。咳き込みながらも小大の個性を分析し、ならば次はどんな手を取るべきかと頭を回した。
だが忘れてはならない。八百万が渡してしまったのは単なるシールドでは無い。小大に掛かればあらゆる道具が武器になりうる。
更にシールドのサイズを小さくし、トランプよりは一回り大きいくらいのサイズまで縮める。するとフリスビーでも投げるかのように小さくなったシールドを投げつけた。
こんなもので、という一瞬の油断がトドメとなった。
「ん!」*12
「え──きゃアッ!?」
八百万に到達する前に個性を解除されたライオットシールドが、本来のサイズを取り戻した。当然威力も本来のもの。
八百万が【創造】で創り出したライオットシールドはポリカーボネート製。重量を減らすために金属枠すら無い、比較的軽い種類のシールドだ。
その強度は銃弾にこそ負けるものの、鈍器や投石には負けない代物。そしてその重量は約3kg。
フリスビーのように飛来すれば、それなりの威力を発揮する。
警棒で受け止めようと試みるが、やはり耐えきれず。鈍い音が響いた後、八百万は倒れ込むように場外へと落ちていった。
『こいつァクレバー!!八百万の個性で生み出された道具を逆手に取って!小大唯が2回戦進出だああああ!!!』
「ん」*13
「あ……ありがとうございます。警棒で受けたので怪我らしい怪我はありませんわ」
「ん」*14
小大の手を取ってゆっくりと起き上がる。本音を言えば手首を痛めているし、悔しくて仕方がないけれど。今は勝者を讃えよう。目を合わせてお互いにニコリと笑いながら、八百万は小大を賞賛した。
「やはり間飛さんが選ぶだけはあります……とても、素晴らしい動きでしたわ」
「……ん?」*15
「や、やっぱり読み取れません……間飛さんかB組の方に来て頂かないと……!」
「ね」*16
拳藤「もしや……」
角取「小大サン……」
小森「間飛の事が……?」
八百万「間飛さん!」
小大「ん!」
八百万「通訳を!」
小大「ね!」
間飛「……えーとカクカクシカジカ」