「テメーマジで腕の2、3本は覚悟しとけよ」
「腕は2本しか無いが!?」
「ンなもん治ってからもう一本折ればいいだろ」
「その腕への執着心は何なんだ……?というか俺に恨みがあるなら脚に来るんじゃないのか……?」
「脚がいいか?」
「腕も脚も良くないに決まってるだろう!?発目さんの件は謝ったじゃないか!?」
謝って済むなら警察もヒーローも裁判所もねえんだよ。マジで許さんからな貴様。
『何かよくワカンネー事で言い争いしてっけど、START!!!』
「死ねやオラァ!!」
「これまででダントツの殺気!?」
クッソやっぱり避けるよなお前なら。開幕デコピンブッパしたってのに、あっさりと横に躱しやがる。
飯田の強みの一つは地上での機動力。上下はともかく横の移動は爆豪以上の上、スピードが乗った高威力の蹴りはA組でも上位の威力だ。
付け入る隙があるとすれば移動から蹴りに転じる一瞬。どうしても体勢の問題なのかスピードが緩み、攻撃してくる事を隠しきれない。
ドルルン!!と軽快にエンジンを吹かしながら飯田が加速していく。走らせ続けると速度が乗ってマズイな。一度ワープして様子見も兼ねて一発入れてみるか。
「──そこかッ!」
「うおわっ!?危なッ!」
『おおっ!?飯田がワープ先の間飛に狙い済ました蹴り!!防がれちまったけど、圧がかけられるか!?』
「確信持って蹴ったって事は、何かしら見分けてんのか……?」
「どうかな?そして……止まっていて良いのか!?」
「おっと!」
予想以上にケリが重い。スピードもそうだがそれよりも、鍛えられた足が硬い上に重たい。ありゃ筋肉も骨も相当な代物だな。
考察しているとまた蹴りが飛んでくる。キックのパターン自体が少なくても、加速やスピードのせいで射程が読みにくい。最小限の回避からカウンターに繋げたいのに、カウンターを捨ててでも大きく回避することを強制される。
なるほどこれは厄介。幸い【エンジン】の向きの問題で爪先側でしかキックは来ないが、向こうはそれで困ってないんだよな。どうしようか。
「……よし、決めた」
「ッ、来るか!」
舞台に来たなら難しく考える必要は無い。そういうのはここに来る前にやってきた。俺がすることなんざワープして殴って蹴るぐらいしか無いんだよ。
今度は飯田に向かって俺が走る。飯田が停止状態から横に動こうとすると【エンジン】の都合上、向きを変える動作を必要とする。
【フィジカルギフト】の移動速度ならそんな隙を与えない。いや、向きを変える動作よりも可能性のある選択肢を炙り出せる。
「──フンッ!」
「って、うぉわっ!?バカかテメェ!」
コイツ!カウンター誘ったってのに、真正面の俺に向かって駆け出して来んなよ!正面衝突する気かよ!
「この程度、臆していては君に勝てないだろう!?」
「そうだよクソッタレ……!」
既のところで衝突回避。まーた距離取られた。
まだデコピンショットは狙いが不安定、かといってパンチの風圧は向こうが止めに来るだろうし。これはちょっと面倒くせえな。
やっぱ方針は変わんねえな。相手が機動力を武器にしてるならこっちはどっしり構えてカウンターで仕留めるしかねえ。
「僕は!君に勝ちに来た!行くぞ……!」
「……何か来るな。かかって来いやァ!」
「──トルクオーバー!!レシプロ、バーストッッ!!!」
叫んだ瞬間、飯田が爆発的に加速した。初速から最高速度を大きく超えた、これまで以上の超スピード。これがアイツの切り札か!
その速度たるや、俺のワープ移動にさえ追いつきかねないレベル。障害物がなければ最速の名を欲しいままに出来ているだろうスピードだ。
「……でも、その使い方は悪手だろ」
「はあああああっ!!」
絞り出した全身全霊を賭けた一撃。なるほど凄まじい威力だな。でもな……
「──消え」
「当たらなければ、どうと言うことは無いだろう?」
THUD!!
『ヤベースピードの蹴りに対し!!クレバーなワープの蹴りで対抗!!間飛移!準決勝進出だああああ!!』
「ぐっ……まさか俺の上にワープしてくるとは……」
「結構危なかったんだぜ?ギリギリまで引きつける事も出来なかったし」
「君が消えた事に動揺したのが敗因というわけか……まだまだ俺も精進が足りないな」
こいつが蹴りに来た瞬間、飯田の斜め上の背後に来るように当たりをつけてワープ。脚を振り抜いたところで背中に蹴りを入れて吹っ飛ばしてやった。
もしレシプロバースト?を機動力での撹乱では無く、初速のまま蹴りに来られたら負けていた。あれは不意打ち気味に使って初見殺ししとくべきだったな。
「最後のあれスゲーな。何したん?」
「あれはレシプロバーストと言ってな……」
何にせよ勝ったのは俺だ。次に進める権利を得たんだ、やれる所までやってやる。
◇
「次は小大さんか……」
リカバリーガールから貸してもらった毛布にくるまりながら、ボソリと呟いた。
間飛の心配なんて欠片もしてなかったけど、ヒーロー科を侮るのはダメだな。あのメガネの男子凄く強かった。一芸もあそこまで突き詰めればかなりの強みになるもんだな。
で、次の試合の小大さん。騎馬戦で組んだだけの縁だけど、どうせなら勝って欲しいな。せっかく仲良くなれたし、決勝で俺か間飛と戦って欲しい。
……けど、ちょっと心配だ。何せ1回戦と違って次の相手は試合中に武器を拾えない。拾わせてくれる隙もないだろう。
「心操、あの子どんな個性なの?」
「えーっと……【サイズ】って言って、触った物の大きさを変えられる個性だった。生き物は無理だって」
「舞台の破片でも拾えたら武器になるのか。そりゃ強い……てかまだ寒いのか?」
「めっちゃ寒い」
だって俺の体操服も少し凍ってたし。轟なら自分の炎で暖まれるだろうけど、俺の個性にそんな能力無いし。怪我らしい怪我は無いけどキツかった。
「どっちもヒーロー科なら、一緒に頑張った方に勝って欲しいよなー」
「……だな」
あ、始まった。
やはりというか苦戦……いや避けるので精一杯という感じだ。あの影みたいな個性、攻撃力がやばいな。手数も威力もかなり高い。
何とか拾い上げた舞台の破片を大きくして投げてみても、元のサイズが小さいせいか大きくなる前に弾かれてしまっている。
「防戦一方だ……」
「いや避けれるだけ凄いでしょ。私無理だもん」
「それはそう。でもこのまま行くと……あっ」
凌ぎ切るので精一杯、と思ったのも束の間。とうとうクリーンヒットを貰ってしまった。痛みに身体が硬直したところを掴み取り、ポイッと舞台の外へと放り投げられてしまった。
「あー……負けちゃったかあ……」
「相性もあるんじゃない?1回戦は凄かったし」
「……うん」
武器があれば、アイテムがあれば……なんて考えてしまうのは傲慢なのだろう。何より本人がそれを一番思っていることだろう。
次に進めるのは勝った者だ。勝敗が着いた以上は俺が外からどうこう言っても何の慰めにもならない。
「……少し横になったら?ほら、私達避けるよ?」
「え、いや……」
「普通科の星なんだから協力するっての。ほらほらお前らも少し避けてやれー」
「……ありがとう」
俺に出来るのは、勝てるように頑張ることだけ。間飛、お前にも勝つぞ。
◇
「おう、2人ともお疲れ」
「む、間飛か」
「ん」*1
何となく、戻ってきた2人に声をかける。唯にだけ声をかけるつもりだったんだけど、同じタイミングで戻ってきたので2人ともに。
今のところ圧倒している常闇の体操服は汗にこそ濡れているけれど、土埃なんかの汚れは付いておらず比較的綺麗なまま。唯は……回避やら投げられた時の物が付いていて所々白かったり茶色かったり。
こうして見ると常闇が圧勝したみたいだな。
「常闇の【
「ん」*2
「……無敵では無い。弱点もある」
「そうなのか?」
弱点、ねえ。芦戸さんの酸液にもノーダメージっぽかったし、【黒影】の倒し方とかあるのか?決勝でぶつかる可能性もあるから深くは聞かないけど。
で、唯は思ってたより元気だし。てっきり負けて凹んでるものだと思ってたんだが。そうでも無い?
「ん」*3
「……コスチュームの着用許可欲しかったな」
「ね」*4
……悔しいならちゃんと泣いて来なさいよ。目ェ真っ赤にしながら強がらなくていいから。常闇ちょっと【黒影】出して。んで俺のジャージ持たせて。
はい、即席プライベートルーム。周りには見えないから今のうちに泣いとけ泣いとけ。観客席に戻るとB組とか物間とか物間とか物間とかうるさいぞ。
【黒影】もすまんね。呼び出してこんなことさせて。
『イイッテコトヨ!』
「涙は隠す物……」
お前ら良い奴かよ。俺まで泣いちゃうじゃん。
心操「…zzz」
小大「ぴえん」
間飛「常闇って『黒棺』の詠唱とか好きそう」
常闇「なんだそれは」
間飛「(詠唱中)……どうよ?」
常闇「お好きでござる(お目目きらきら)」