「それでは!これより表彰式に移ります」
巨大な氷も舞台の欠片も、激戦の爪痕は何一つ残っていない晴れ舞台。丸一日を費やした雄英入学から初めての祭りが、終わろうとしている。
会場の真ん中にはセメントスお手製の表彰台が並んでおり、三位に常闇と轟が、そして二位に俺……間飛移が。(本当なら)栄えある一位には爆豪が立っている。
「……まさか一位じゃなくて、二位を争うとは」
「結果を聞かされて同時に言ってたもんね」
そう、俺と爆豪の試合結果は引き分け。馬鹿みたいな威力で殴りあったせいでカメラによる判定は不可能であり、どちらが先に場外負けになったのかさえ不確かなものだった。
それをリカバリーガールの治癒を受けた後に聞かされ、俺と爆豪が同時に『コイツの勝ちでいい』と口にしたわけで。
『あ゙あ゙!?お情けの一位なんぞ要らんわ陰キャ!!』
『俺こそ嫌ですゥ〜!メッキの一位なんぞごめんだね!』
『……面倒だからジャンケンで決めなよ。ここまで来たらどうなっても不服だろうよ』
一位になる方を決めるってのに、負けた方が一位を押し付けられるという訳の分からん状況になったけれど。どうなったって俺か爆豪のどっちかは不服の一位にならざるを得ないんだから、しょうがないと言えばしょうがない
結果?俺はパーを出したぞ。爆豪君は相変わらず脳筋ですねえ。その固く握りしめたグーは俺には無意味でしてよ。
「……チッ」
「ハハハ。一位の台座はどうよ?」
「いらねえにも程がある」
諦めとけよ。お前の事だから一位でも二位でも同じ顔してたよ。俺だって相打ちは残念だが、お前ほど強烈なプライドがある訳でもないし。
ここからは私語はなるべく控えようか。カメラも本格的に俺らを写し始めた。
「メダル授与よ!!今年のメダルを授与するのは当然この人!!」
「私が!!メダルを持って来t「我らがヒーロー!!オールマイトォ!!」
「……!」
「被っちゃった」
……被ったとは思ったけどさ、そんな悲しそうに見つめてやるなよオールマイト。そういう事もあるでしょ。
「まずは常闇少年!おめでとう!強かったな君は!」
「勿体なきお言葉」
「ただ!相性差を覆したいのなら……個性に頼り切りじゃあダメだね!もっと地力を……自分自身の力を鍛えれば、きっとやれる事も増えてくる」
グッ、とオールマイトのマッソゥボデェによるハグが行われる。うわぁお筋肉の動きがやべえやべえ。これこそ究極のパワーってやつか。
「轟少年!おめでとう!繰り上げという負い目もあるだろうが、誇るべきだ!」
「……ありがとうございます」
「中々炎を使わなかったのは……何かあったのかな?」
次に轟。エンデヴァーの件を知る身としてはあまり深掘してやらないで欲しいところだが、轟の表情は大丈夫そうだな。憑き物が落ちたってのはああいう顔の事を言うんだろうか。
轟自身もあまり多くは語らず、抱え込んでいたものを清算して来ると、オールマイトへの憧れを語っていた。
そんで次は俺だ。
「間飛少年!おめでとう!最後の試合はどちらが勝ってもおかしくなかったよ!」
「ウス!アザーっす!」
「爆豪少年に負けず劣らずの攻撃力は見事としか言えないね!敢えて言うならワープの使い方が少々単調かな?」
まあ、自覚はあるよ。【フィジカルギフト】も合わせた攻撃力の高さに甘えてる部分は大いにある。いつかどこかで壁にぶつかる可能性もあるだろう。
でも大丈夫です。
「やりたい事、するべき事が見つかりました。まだ強くなれますし、強くなります」
「!……っフフ!本当に逞しいね!期待してるよ!」
飯田と爆豪に言われて気づいたワープの視線だけじゃない、俺には足りないものが多すぎるから。やれるだけの事をやり続けていく。それは変わらない。
……問題の爆豪だが。
「爆豪少年!優勝おめでとう!」
「……ああ。納得はいかねーけどな」
「君のストイックさを思えば当然だろうね。正直、私の中では君と間飛少年の二人ともが一位だ」
あらま、思ってたよりも大人しい。もうちょい暴れたりするもんだと思ってたけど、目付きや態度が悪いくらいで全然普通じゃないか。心配して損した。
「次は、完膚無きまでの勝利で優勝してやる」
「うーん……君達はどれほど上を見ているんだろう?その向上心があれば、絶対に強くなれる!今はただ、身体を休めなさい」
「……うす」
向上心ならソイツが一番強いしな。何だかんだ言って誰よりも自分に厳しい奴だ、そりゃあ不満だろうな。
だからこそか、緑谷もだけどコイツの伸び代がどれだけあるのか。頼もしいったらありゃしないな。
「さァ!今回は彼らだったけれども!!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!」
「ご覧いただいた通り!競い、高め合い!さらに先へと登っていくその姿!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!」
「てな感じで……最後に一言!皆さんご唱和ください!せーの!」
『Plu「お疲れ様でした!!」tra!!』
……プルスウルトラじゃねえのかよ。締まらねえよオールマイト。
◇
雄英体育祭が終わった。モニターの向こう側では和気藹々とした雰囲気が流れており、空回りした憎き仇敵の気遣いへのブーイングが飛んでたりする。
見るべきものは見た。男はテレビのリモコン……ではなく、自身の指を肘掛から軽く持ち上げる。それに釣られるようにテレビはプツッと音を立てて電源を落とす。
「ふ、ふふふ……まさかこんなにも分かりやすいとはね」
ああダメだ、我慢できない。クツクツと喉の奥から漏れ出す感情を押し留めようとするが、口角はゆっくりとつり上がって行く。
カラン、と手元のグラスの中で氷が鳴いた。どうやらあれを見ただけで想像以上に昂っていたらしいことを自覚する。
「まさか隠す気も無いとはね……本当に僕を殺したと、本気で思っているのかい?オールマイトォォ……」
何をどうしてやろうか。子供じみた稚拙な考えだが、その内容はあまりにもドス黒い邪悪。何をどうすればアレは嫌がるのだろうか、なんて事だけが頭の中を埋めつくしていく。
ああ、確かに見たとも。オールマイト。
炎と氷の爆発でさえも打ち破るパワー、そして同時にあらゆる距離を無意味にするワープの個性。
間違いない、彼だ。*1
魔王を倒したと思い、
何せこの通り魔王は存命。君でも倒しきれなかった魔王を、そんな未熟な勇者*3に倒せると思っているのかい?
「ああ、楽しみだねぇ……オールマイトォ…………」
身体が万全ならば小躍りさえしていただろう。今の自分はそれだけ上機嫌だ。
だって見つけてしまった。*4彼の弱点を発見してしまった。*5嫌がることが思いついた。*6
「彼が後継者なんだね?オールマイトォ……」*7
……暗闇に笑う魔王は気づかない、気づけない。幾つもの個性をその身に宿していながら、全ての個性が唯一無二では無いことに。
そしてそれは【ワン・フォー・オール】さえ例外では無いということに。
「……何か、違わんか?先生」
「そうかね……?」
AFO「みーつけた♡」
間飛「人違いです」
Dr.「何か違くね?」
AFO「イヤイヤまさかそんな笑」