ミルコのキャラがあってるかわからない……
もし違和感がありましたら感想欄でご指摘いただけるとありがたいです。エミュが難しくてちょっと自信がないので。
「……じゃあ、間飛の小僧はマジで無関係なのか?」
「その、勝手なことは言えないので、断定は出来ませんが……おそらく、無関係です」
こんな古ぼけた家屋にプロヒーローなんているのか。という舐めた思考を一発で取り払ったご老人、職場体験の指名を出してくれた『グラントリノ』は額を手で押さえ、困ったようにため息をついた。
指名してくださったとはいえ、人の前でそう露骨にため息をつかないで欲しい……でも、グラントリノが何に対してどんな感情を抱いているのか理解出来てしまう。
現時点ではどうしたって彼の方が……間飛君の方が優れている。違う条件で上回ってくる人は多いけれど、全く同じ条件の上位互換ともなれば話が変わってくる。
……期待はずれ、或いはアッチの方がよかった。そんな風に思われても仕方がない。
「んー……いや、確かに俊典と比べると弱いとは思ったが」
「……はい?」
「体育祭の映像で見たんだが、間飛の小僧に継承したってンならもっと強いと思ってたんだ。決勝なんかは手加減してる余裕も無かったろうし、何か変だとは思ったが……」
あれで、弱い?どういう事だろうか。
「その、僕には間飛君が弱かったようには……」
「いやいや、そういう意味で言ったんじゃねえよ。俊典から【ワン・フォー・オール】を受け継いでたンなら、決勝のアレとは比べ物にならねえはずだ」
「そうなんですか!?」
アレが比べ物にならない?僕は本当にとんでもない個性を受け継いだらしい。もう何度目かも分からないけど、改めてこの個性の凄さを再確認させられる。
グラントリノが言うには【ワン・フォー・オール】はただ力を蓄積して譲渡するだけでは終わらないらしい。
例えば10の力を蓄積して次の人に渡す時、
仮にこれまで【ワン・フォー・オール】の力を受け継いで来た人達が10ずつ蓄積していたとして、順当に継承を重ねていけば九代目の僕には80の力の蓄積が譲渡されているはず。
しかし継承する際に僅かでも倍率が乗っていたのなら、文字通り桁が変わってくる。100や200まで伸びていてもおかしくない。
一方間飛君の個性【フィジカルギフト】はどうだろうか。もし同じように倍率が乗っていたとしても、彼はまだ四代目*1だ。八度の継承を経た僕よりも下回っているのは当たり前だろう。
「いくら歴代継承者が短命ったって、倍率が乗ると違ってくる。コッチが10ずつでアッチが20……いや25ずつでもまだ【ワン・フォー・オール】の方が強い」
「なるほど……」
それを聞いて納得、同時に【フィジカルギフト】への畏怖を覚えた。
だって、彼の元まで届く前にはたった四人しかいなかったのに、既に【ワン・フォー・オール】に、オールマイトのパワーに並びつつあるという事になる。
例え今この瞬間に僕が間飛君を上回っていても、努力次第でこの差はひっくり返ってしまう。
───そうなれば二人目のオールマイトが生まれるも同然だ。
その事実に気がついてしまい、急に僕は怖くなってしまった。
「……聞いた話じゃ向こうは血縁関係が必要だとか、制約が多いらしいからな。もしかしたら倍率も向こうが上かもしれん」
「そ、れは……」
「現時点でお前と同格でもおかしくはない、ということだ」
上位互換。誰に言われるまでもなく、僕の心のうちから漏れ出た言葉が僕自身を縛り付けていた。
◇
一方間飛。職場体験キター!と遠足前の小学生よろしく楽しみにしていた彼だったが。どういう訳か到着して最初にしたことがミルコの自宅の掃除だった。
別にミルコに強要された訳では無いし、なんならミルコ本人は『ちょっと散らかってるけどゆっくりしてけ!』*2ぐらいの感覚だったけども。
それはそれとして思春期チェリーボーイには過酷(意味深)な環境のままではマズイ。そういう訳で自ら掃除を提案していたのだが…………
「…………いや女子力ゥ!!」
「なんスかいきなり大声出して。ご近所迷惑ですよ」
「いやいやいや!そんなモンより何だテメエのその女子力!」
「女子力ってか家事能力でしょ」
……無駄にも程がある意外な能力が発揮されていた。
某リフォーム番組もビックリの『なんということでしょう』な変わりよう。散乱していた物が片付くどころか最早新築一軒家かな?とさえ思うレベルで綺麗になっていた。
何でコイツこんなハイスペックなんだと思うだろうが、彼の個性を今一度思い出して欲しい。そう【フィジカルギフト】の事だ。
【フィジカルギフト】の効果の一つに『技巧の譲渡』もあるわけで。その技巧がどこからどこまでを指すのかという話だ。
……もうお分かりだろう。間飛には四人分の家事スキルまで継承されているのである!
元々子供の為に筋トレが出来るような家族だ。一々ストイックな彼らは当然仕事も家事も手を抜かず、男女を問わずに叩き込まれてきた。その結果がコイツだ。
お年寄りの豆知識と熟練の家事スキルが合わさり、脳筋ハイスペック陰キャというアホが生まれた。
「……私、冷蔵庫の中身がこんなに充実してた事ねェよ」
「一気に食わないでくださいよ。そのタッパーはほとんど常備菜なんですから」
「じょう……なんて?」
「常備菜。作り置きで何時でも食べられるご飯のお供とかそういう奴です」
「へー……」
何でこのアホは“きんぴらごぼう”とか“ひじきの煮物”を作ってるんだろうか。しかも貴重な職場体験の初日全部潰して。相澤先生と切り捨てられた指名先のヒーロー達が泣くぞ。
見るがいい普段は無理やりスペースを作られていた食卓テーブルを。炊きたてご飯と温かい豚汁と鮭の塩焼きが並んでいるではないか。副菜にと里芋の煮っ転がしや(市販の)沢庵まで。ここまで来ると女子力通り越してオカン力じゃないか?
ちょっと予想外の方向で有能さを見せつけられたミルコだったが、まあ家は綺麗になったし美味い飯食えるしいっかと考えることを放棄した。腹が減っては戦が出来んのだ。
「んじゃ、いただきます!……美味っ!?」
「それは何より」
「スゲーなお前!店出せるんじゃね?」
ヒーロー志望だって言ってるでしょうが。
夕飯はあっという間にミルコの腹に消えていき、間飛が半分ほど食べ終えた時にはニコニコで腹をさすっていた。ミルコが完食してから七分ほど空いて、ようやく間飛も食事を終えた。
掃除も終わり食事も摂った。普段ならばこの後は風呂と歯磨きを済ませて寝るばかりの状態にするところなのだが、今は職場体験中。
……うん、職場体験中なんだけどね?どう見ても久しぶりにあった親戚のズボラな生活に物申した後みたいになってるんだわ。
それはそれとして、だ。
「そんじゃ、お前のヒーロー名とか色々聞かせてもらおうか」
「……今ですか?」
「いやー、本当はここに来た時に聞くつもりだったんだけどな!何か掃除するとか言い出したから聞きそびれてた!」
それはそう。何かミルコがズボラなのが悪いと思われそうな状況だが、掃除を言い出して職場体験初日をぶっ潰したのは間飛本人だ。何してんだお前。
ここからは真面目にやろう、とミルコが雰囲気を作ってくれたのだ。間飛はとりあえずそこに乗っかる事にした。
「俺のヒーロー名は『カノン』です」
「カノン……よし覚えた!じゃあ、お前は何がしたくてヒーローになりてえンだ?」
「……?どんなヒーローに、じゃなくて何がしたくて、ですか?」
想定していた質問と微妙にニュアンスが異なる質問。言葉遊びのようなものだが、実際はまるで違う考え方を求められる質問だ。
雄英高校では度々聞かれる質問で、お前は将来どんなヒーローになりたいのかと突きつけられる。そこに辿り着くためにお前は何をすべきで、今のお前に足りないものはなんなのかと。
尋ねたミルコ本人は逆に『何言ってんだこいつ』とでも言いたげな顔をしており、言葉を続けた。
「逆だろ?こういう事がしたいと思うから、自分はこんなヒーローになりたいって思うんじゃねえのか?」
「……確かに」
「私はヴィランを蹴り飛ばしたくてヒーローになった。一歩間違えりゃヴィラン側になってたかもしれねえが、それが人助けになると分かったからこっちに来た」
お前は何がしたい?言葉にせず、視線だけで問いかけてくる。
時間にして一分もかかってないけれど、やけに長く感じられた数十秒を経て。ようやく間飛は口を開いた。
「その……だいぶ荒唐無稽ですけど───」
「ハハハ!!お前面白いな!そんな事考えてたんか!?」
間飛の口から語られた『やりたいこと』は、ミルコにとってあまりにも面白く魅力的なものだった。実現するかどうかもわからない遠い未来の話を、楽しみに待とうと思えるくらいに。
それを語った間飛は少々照れくさそうにしながらも、至って真剣に考えて辿り着いた答えだと、胸を張って隠すことはしなかった。
「あー……そうだな。私は蹴る事しかできねえから役に立てねえが、何かあったら後押しくらいはしてやる!」
「マジっすか!?アザーっす!」
「ただし!絶対途中で止めンなよ?中途半端はこのミルコさんが許さねーからな」
ワハハ!と上機嫌に笑いながら間飛の背中をバシバシと叩く。実際ビルボードトップ常連のミルコの後押しはかなり大きい影響力があるだろう。間飛にはかなりありがたい事だ。
ミルコの方も色々と決めたらしい。元々雄英体育祭の試合を何となく見ただけだったが、いい掘り出し物を得た気分だ。
目をつけた理由は戦闘力の一点のみだったが、ここに来てコイツを選んで良かったと尚更思わされた。こんなに面白いこと考えてるやつ、他所に渡して堪るか、と。
(コイツは絶対面白いことをしてくれる!やっぱり私の目は間違ってなかった。最初から最後まで見届けンのは、こいつを見つけた私の特権だな!)
逃してなるものか、と目を細めながら獰猛に笑う。獣は獲物の横取りを決して許さないのだ。迂闊に手を出せば……兎の足が飛んでくることだろう。
曽祖父「美味いもん食いたいし、家は綺麗な方がいい」
祖父「飯には手を抜かん。掃除は……うん」
母「美味い飯には手がかかるのが当然!」
父「潔癖症っぽい?いや綺麗好きなだけだよ?」
間飛「で、俺(の家事スキル)が産まれたって訳」
OFAの倍率云々は完全に作者の妄想です。もしかしたら実際は全然違うかもしれませんが、この作品ではこういう設定になりました。
ぶっちゃけこの理論が後々深く絡むことは無いと思うので、違和感があったという方も安心してください。多分この後はあんなに長々語らないと思うので。