R-18版の方ですが……まさかの日間ランキング一位取ってたみたいでビックリしました。ありがとうございます!
つい先程確認した時は二位でしたが、とても嬉しいです!
これからもR-18版、並びに本作をよろしくお願いします!
……オレはオールマイトに憧れる子供の一人に過ぎず、何ら特別なナニカを持たない有象無象の一部でしか無かった。
もう名前も忘れた私立のヒーロー科高校に入学して間もなくその認識が間違っていたことを悟った。
なんてことは無い。オレが憧れた“ヒーロー”はフィクション、想像の産物でしかなく。現実に蔓延るのは金と名声への欲望に塗れた職業としての“ヒーロー”ばかり。
──ヒーローとは、見返りを求めてはならない。
ヒーロー科の授業は規則だの法律だのを教え込むことに躍起になっていた。十人十色の個性に『右にならえ』と叩き込み、許される範囲での活動しか出来ない。
同級生は数年後に獲られるかもしれない富と名声しか見えておらず、救い出した人間を利益にカウントしているのではとさえ思わされた。
──自己犠牲の果てに得うる称号だ。
中退する事を話した時の教師達の言葉は今でも耳の奥にこびりついたまま。困ったような理解できないような顔で『いいヒーローになれるって期待してたのに』と言われた記憶。
それが誰にとって、何にとって“いい”だったのか。オレには未だに分からない。
──本物のヒーローは、オールマイトただ一人。
……結局は、そういう事だったのだろう。
この世にオールマイト以外の本物は存在しない。オレを含めた彼以外の全てが贋物。
ならばどうする?裁くべきだ。
誰の手で?贋物の数は多く、社会の機構に組み込まれてしまった。
どうやって?法律は決して認めはしないだろう。
じゃあ、このままでいいのか?
……そんなはずは、無い。
だから、オレが断罪する。
あの日、オレは確かにそう誓った。
◇
「……緑谷、君?」
「救けに来たよ、飯田くん!!」
「委員長らしい簡潔さだったが……もう少し説明が欲しかったな」
「轟君まで……!」
怒りに任せた一太刀は阻まれた。未だ己の力を十全に使いこなせない未熟な二人の、No.1とNo.2の系譜の力によって。
轟の
ステイン自身はその痛みによって冷静さを取り戻したが、ここに来ての数的不利。それも今の一瞬だけで脅威性を推し量れる攻撃力。スゥと目を細め甘くは無い現状に息を零す。
「3対1か……これは加減する余裕もなさそうだ」
「……ッ!気をつけろ!ヤツに斬られたプロヒーローの方が動けなくなっている!なるべく刃を受けるな!」
「動けなく?推察されていた個性だね。発動条件がわかれば……!」
「とにかく攻撃を受けなきゃいいんだろ」
自然と三人の役割は決まっていた。飯田と緑谷が前衛を張り、轟が炎と氷による支援。言いたいことは沢山あるけれど、今は目の前のヴィランから目を離してはならない。
ユラりと幽鬼のような出で立ちで刀を構える。あの刃は一体どれだけの血を吸ってきたのか、どれだけの苦痛を生み出して来たのか。考えるだけでもゾッとする。
「『救けに来た』……か。良い台詞じゃないか……」
「…………!」
「だが、オレはソイツらを殺す義務がある……ぶつかり合えば当然…………
弱い方が淘汰される訳だが……
さァ、どうする」
最後通告。これ以上踏み入るのならば容赦はしないという、思想犯にこそ見られる警告。既に飯田とヒーローは殺害対象としてカウントされている。手を出すのならば、死を覚悟しろと。
ステインの圧が強まり、空気が鉛のような重さを持ち始めた。USJのチンピラ崩れとは比較にならない、静かに燃える思想犯の殺意。ただの威圧感だけで緑谷達の身体を強ばらせる。
しかし──
「……僕達は飯田くんの都合には無関係だ」
「……ハァ、そうだろうな」
「でも、そんな事を言っていたらヒーローは何も出来ない」
「!」
「オールマイトも言ってたんだ……余計なお世話は、ヒーローの本質なんだって」
──その程度で膝を折るくらいなら、今この場所に来たりなんかしない。
飯田から送信されたメッセージ。突然一括送信されたソレはとある位置情報を示すもので、それ以外には何一つ文章が無かった。
職場体験前の飯田の態度がおかしかった事を思うと、きっとステインが関わっているとは思った。そこに行けば生命の危険があることも。
死ぬかもしれないからと逃げる?バカバカしい。緑谷達は生命の危険を覚悟して友人を救けに来ているのに。
「良い……!」
「ッ来るぞ!」
復讐者との問答など忘れたように、口元は弧線を描きながら刀を振るう。そうだ、これこそが求められるべき理想なのだと。
◇
自分の胴体程もある太さの腕。握るだけで人を殺せそうな手。凄まじい膂力で振るわれたソレはただの身体の一部でしかなく、同時に必殺の一撃足りうる威力を秘めている。
その矛先を向けられた少年は恐れるでもなく、じっくりと見据えた上で受け止め───逸らす。力任せに振り下ろされたゲンコツはするりと間飛の身体を避けて行き、コンクリートの地面を砕くばかり。
「もうちょっと……」
知性なき剛腕は既に三十回は振るわれたというのに、間飛移は全くもって無傷なまま。目の前の脳無は随分前から彼にとっての脅威では無くなっていた。後は無力化するだけだ。
知性は無くとも感情はあるのか、焦れた脳無は強引に叩き潰そうと隙を晒す事も厭わずスレッジハンマーを構えた。握力だけでミシミシと嫌な音が聞こえるほど強く、硬く握りしめられた両拳。明らかに受けてはいけない破壊力を秘めているだろう。
危ない。ヒーローも一般市民も同じ危険を感じとった。しかしもう遅い。誰も割り込むことが出来ない渾身の殺意が放たれた。
グシャアッ!!
「───うし、大体わかった」
「はあっ!?」
「ヴィランの腕の方が……」
「ま、マジで?そんな事ある?」
肉の潰れる音。発生源はヴィランと間飛のいる場所であり、脳無の腕が歪に砕かれた音だ。
誰も割り込めない……が、間飛本人が対処出来ない訳では無い。オールマイトの勝利ポーズを思わせる右腕、突き上げられた腕が間飛の実力を雄弁に示している。
これまで間飛がほぼ一方的に受けに徹していたが、その実脳無の【ショック吸収】の個性の
コイツに100%をぶち込みたい。だが殺す訳には行かない。故に100%に耐えられるかどうかを知る必要があった。
「全盛期のオールマイトなら二発でKOだろうが……」
「██████────ッ!」
今まで無言を貫いていた脳無が吠える。それは怒りからか気合いからか……或いは恐怖を押し殺す為か。
技巧も何もない、大振りで隙だらけのテレフォンパンチ。上段に引き絞られた腕が振り抜かれるも、咄嗟にしゃがんだ間飛には当たらない。
同時に間飛が脳無の腹を蹴りあげ、宙に浮いたところを更に足裏で思い切り
「
「……!」
「なあに殴り合いなのは変わらねえよ……サンドバッグが殴り返せンならよォ!!!」
足場も邪魔者もいない空中。枷から解き放たれた【フィジカルギフト】が暴れ出す。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!」
例えるならば滝壺。落ちてくる膨大な水が途絶えないかの如く、抗うことさえ許されない圧倒的暴力のラッシュ。顔を、腹を、胸を……全身のあらゆる部位を叩きのめしていく。
何度も爆発が連続しているような轟音。もし近くに他の人間がいれば打撃の風圧だけで目を開けていられず、両腕で己を守りながら立ち尽くす事しか出来なかっただろう。
──そして、【ショック吸収】に限界が訪れる。
「受け取りな脳無!これが
───ってなァ!!」
あの感覚……自分が世界の中心なのだと錯覚するほどの全能感が、己の全てが完璧にガッチリと噛み合ったようなイメージが。ゾーンとも言うべき領域に踏み込んだ。
脳無の【ショック吸収】は意味をなさず、荒れ狂う竜巻の如き破壊力に身を任せることしか出来ない。もう生きているのか死んでいるのかも分からなかった生ける屍は、悲鳴をあげることもせずに吹き飛ばされた。
「っはー……アレが俺の全力、の結果か」
数キロ先の道路に落ちた脳無は白目を剥いたまま起き上がることはなく、間飛の目からは見えない場所まで吹っ飛ばされてしまった。
やり過ぎたかとも思ったが、幸い【ショック吸収】の残りカスが仕事をしたのか道路や建物に大きな被害はない。少々道路が抉れた程度だ。*1
しかし、これでようやく自分の最大限を把握出来た。同時に更なる成長性がある事も。まだまだ強くなれるだろうという確信が生まれた。
「……にしても、飛ばしすぎたか?」
とはいえ考え無しにぶっぱなしていい物で無いのは当然である。ヴィランの捕縛に手間をかけさせて申し訳ないが、誰かしらプロヒーローか警察が対応してくれることを祈るばかりだった。
「二位の子ヤベーな……」
「控えめなオールマイトじゃん」
「リトルオールマイト……リトルマイト?」
「リトルマー○イドみたいに言うなよ」
……あの、プロヒーローなら仕事しててくれませんか?
間飛「Heyオカン」
間飛ママ「Siriみたいに呼ばんといて」
間飛「連続パンチは『オラオラ』と『無駄無駄』どっちがええかな」
間飛ママ「『アァタタタタタタッ!』で」
間飛「それラッシュちゃう。暗殺拳や」