ほぼ説明回です。ようやくフィジカルギフトの詳細な情報を纏められたんで投稿。分かりにくかったら感想で質問してくださると助かります。
現No.1ヒーローの正体というとんでもない核爆弾を抱えさせられたが、さすがに一日も経てばそれなりに冷静になれた。
いくらなんでも知った瞬間から何かがあるわけでも無い。だったらパニック起こして不幸だと嘆くより、手元の核爆弾を如何に爆発させないかを考えるべきだ。
未だに俺以外のA組生徒は職場体験を継続中。誰もいない教室に用事はないので、ひとまず昨日伝えられた通りに昨日の
やたら天井が高く幅の広い廊下を歩き、人通りの少ないエリアまで来たらもう『仮眠室』のプレートが見えた。
ノックしてもしもぉ〜し、っと。あ、もう中にいらっしゃるのね。失礼します。
「おはようございまーす!」
「おはよう」
「おはよう!元気だな間飛少年!」
「昨日は特に身体を動かすような事もしてなかったんで、半日休みみたいなものでしたからね」
あ、嫌味じゃないんで。だから無駄に落ち込むのやめてもろて。
情報の整理から始めるとして、俺が昨日聞いたのはオールマイトの個性が【ワン・フォー・オール】で、オールマイトの宿敵の個性が【オール・フォー・ワン】ってことぐらい。
それをオールマイトの弱体化等と組み合わせると、【オール・フォー・ワン】が【ワン・フォー・オール】を消す……もしくは奪おうとしているとんでもないヴィラン、って感じの話になるのか。
「……そこまで知られたからにはもう話すしかないか」
「まず【オール・フォー・ワン】が何者なのかを説明させてもらうよ」
「はい……あ、長話になりそうなんで勝手に地の文で要約しますね」*1
【オール・フォー・ワン】とは個性の名前であり、個性の持ち主がそのままヴィラン名として名乗っている名前でもある。
その能力は『他人から個性を
超常黎明期の初期、社会が『個性』という異能に対応しきれていない頃に【オール・フォー・ワン】は産声を上げた。
人々が個性を使って思うままに暴れ、或いは個性を持つが故に迫害される中。個性を奪い与え、圧倒的な力によって瞬く間に勢力を拡げたという。
ここからが本題。【オール・フォー・ワン】によって個性を与えられた人間の中には元から所持していた個性と混じり合い、能力が変異するケースもあったらしい。
【オール・フォー・ワン】は自分の無個性の弟に『力をストックする個性』というものを与えた。それが哀れみからか単なる気まぐれだったのかは不明だが、無個性と思われた弟には個性があったらしい。
「それこそが『個性を与える個性』……二つの個性が混じり合い、彼に宿ったのが【ワン・フォー・オール】というわけなんだ」
「じゃあ、オールマイトの個性は……【ワン・フォー・オール】ってのは……」
「……そう、奇しくも【フィジカルギフト】と瓜二つの個性なんだよ」
ちょっと、さすがに茶化せねえな。なるほどグラントリノって人が俺を弟子と見間違える訳だ。大方【瞬間移動】の個性を持つ子供に継承させたとでも思ったのか。これは紛らわしいわな。*2
そんで俺を巻き込む巻き込まないの話になるのも納得した。要はその【オール・フォー・ワン】が俺を【ワン・フォー・オール】の後継者と勘違いしてる可能性が高いのか。
……でも、聞いた限りでは【フィジカルギフト】とは色々と違うみたいだな。
「相澤先生、俺の【フィジカルギフト】ってどんな風に聞いてます?」
「……確か、血縁者に限り蓄積した身体能力を継承出来る、と」
「一回俺の……曽祖父ちゃんの【フィジカルギフト】について説明させてください」
似てはいる。しかし、同じでは無い。ならば一度【フィジカルギフト】と【ワン・フォー・オール】の違いを確認しておくべきだ。
◇
「まず【フィジカルギフト】で受け継ぐ物は身体能力と技巧……
「何……?」
言葉にしても伝わりにくく、仮に伝わるとしても時間がかかり過ぎる為に簡略化として使われた説明。それが『身体能力の技巧の継承』だ。
厳密には身体能力や技巧なんてものとは全く違うものを継承する事になる。
「【フィジカルギフト】が受け継がせる物……それは経験値です」
「……経験値、とはなんだ」
経験値。古いゲーム作品等によく見られる設定で、キャラクターを強くする為に集める必要がある数値……というのが一般的な認識だ。
要求される分の経験値を入手し、一定値に達した時にレベルアップという形でキャラクターが成長する。そんなシステムだ。
ここでいう経験値とはゲームのソレに近いようで遠いものだ。
【フィジカルギフト】を所有していた人物が体験した出来事をコピーして保存し、過程と結果を『データ』として次の継承者に反映される。
例えばランニングをした場合。ランニングをした過程とランニングによって鍛えられた身体という二つのデータが継承される。
二つのデータを継承した者は『ランニングをする時の身体の動かし方』と『ランニングで付いた体力』を受け取る事になる。
間飛の言う経験値とはソレの事だ。
「このデータは自動で蓄積されていくんです。なので受け取ってから次代に継承するまでの人生そのもの……ほとんどの『過程』と『結果』をデータとして蓄積してます」
「……それだけ聞くとイカれた個性だな」
「ホントですよ。難しく言いましたけど、雑に言ってしまえば『前任者の体験したこと』と『その結果得られた成長』を継承してるんですから」
ここまでの説明を聞くと、なるほど【ワン・フォー・オール】とは似て非なるものだ。【ワン・フォー・オール】は純粋にパワーのみを受け継いでいくのに対し、【フィジカルギフト】はパワー以外のものまで受け継いでしまっている。
「当然そんな個性、継承方法も限定されますし欠点だってありますけども」
「それは、話してもいいのかい?」
「隠すつもりも無かったんで。だってAFOなんて知りませんでしたし」
「……そうだね」
やや凹み気味になるオールマイトを放置して話は進む。
継承方法は一つ。継承先の人物に接触して渡すだけだ。継承してデータを受け取れるのは前任者の血縁者のみ。
しかし一度に渡してはならず、何度も何度も接触して小分けにして譲渡しなければならない。それには欠点が関わってくる。
「さっきも言いましたけど、この【フィジカルギフト】ってのは人の人生っていう膨大な『データ』をバトンのように受け渡して来たんです」
「まさか……【ワン・フォー・オール】みたいに受け取る側にそれなりの下地が求められるとか?」
「まあそれも必要ですが、それより問題なのは『データ』を処理する能力です」
人間の脳みそはよくスーパーコンピュータ等に例えられるが、いざ単位にして表すとなれば膨大な記憶容量を持つ。情報処理能力はそれをも遥かに上回るとも。
スマホやパソコンが処理に手間取って動作が鈍くなるように、人間は処理能力限界に近い情報を与えられると体調不良という形で現れる。
では他人の人生のデータを一息に流し込まれた場合はどうなるだろうか?
「俺はなまじっか情報処理能力に長けてたせいか、地獄を見ましたよ」
「…………どう、なったんだ?」
「一番ヤバい時は自己喪失?ってヤツになりかけましたね。俺は間飛移なのか、それとも父親なのか……って感じに」
「…………っ」
間飛が【フィジカルギフト】の継承を開始したのは中学生に上がる頃。一年かけてゆっくりと受け取っていたけれど、その間はまともな生活が送れなかったという。
まず膨大な情報量によって発熱や頭痛は当たり前。時には目や鼻から血を垂らす事もあれば、いきなり酷い眠気に襲われていた。
次は精神面に影響を及ぼした。流し込まれる他人の人生のデータが間飛移という人間の自我に侵食し、自分が自分なのかさえ見失いかける。
最後には肉体や精神にデータが浸透。超人的なパワーと長い年月によって成熟するはずの精神力を得られた。
「いやああの頃はヤバかったッスね。ただでさえ人見知りだったのに継承中は人格壊れかけるし、継承が終わった後には『何かヤバそうなやつ』ってイメージが付きまとって来るしで」
さらりと何でもなかったように語られる中学時代は、あまりにも歪で哀れんでしまう内容だった。
……そしてずっと疑っていた個性が生半可なものでは無いことも理解できた。
◇
今振り返ると中々修羅な日々送ってんだな俺。幼稚園から小学校の間は【瞬間移動】に振り回されてたし、中学生になったら継承で死にかけて。どんな子供だよ。
本当は二年くらいかけるらしいのに無理やり一年でやったのが悪いんだけども。*3
親も途中で止めようか迷ったらしいけど、俺がいいからはよ!って急かすもんだから仕方なく継続して。明らかに白目剥いてんのに『うぇ〜い……俺また強くなった〜……』とか言ってたらしいけど記憶にございませんわー。
祖父ちゃんも母ちゃんもそこまで辛くなかったらしいし、父ちゃんに至っては継承しても『データ』のインストールが出来なかったからノーダメージ。酷い目にあったの俺だけやんけ!*4
「そ、そういえば!間飛少年に来る前にお父様の方にも継承したって聞いたけど……お母様と血縁者じゃ、無いよね?」
「ああ……別に血縁者じゃなくても継承自体は出来るんですよ。ただコピー保存されてたデータを受け取れないってだけで」
「しかし、それだとお前のところに来るのは父親の蓄積分だけだろ」
それ説明が面倒なんだよなあ……どう表現すりゃいいんだ。
ええと、まず大前提としてコピーして保存する先は【フィジカルギフト】って個性そのものになってます。
継承した人間が祖父ちゃんの血縁者だった場合……なので母ちゃんの場合ですね。保存されたデータを受け取って強くなれます。
でも継承者が祖父ちゃんの血縁者じゃなかった時、つまり父ちゃんの場合は【フィジカルギフト】に保存されたデータは受け取れません。代わりに蓄積だけは出来ます。
この時【フィジカルギフト】には曽祖父ちゃんと祖父ちゃん、そして母ちゃんまでは血縁関係で蓄積されてきました。父ちゃんはその三人と血縁関係がありません。
でも俺は前の三人と父ちゃんと血縁関係があるので、今まで蓄積された分全部のデータを受け取れます。
「って感じです。父ちゃんは個性が増強系ってのもあって身体の動かし方は結構たくさん貰えました」
「……何か、凄い個性なんだね」
ええ、とっても凄いでしょ?俺の自慢の曽祖父ちゃんの個性ですから!
でも別に自慢する為に教えた訳じゃないからね?
「で、オールマイト。今度は俺が聞きたいんですけど」
「ん?何をだい?」
「そりゃ決まってますよ。俺の【フィジカルギフト】と【ワン・フォー・オール】の相違点。貴方の個性の詳細が聞きたいんですって」
長々と説明してて忘れそうだが、あくまでも【ワン・フォー・オール】と【オール・フォー・ワン】について聞きたいんだ。まずはオールマイトの個性から教えてもらわないと。
……?あの、オールマイト?
「すいません……っ!私【ワン・フォー・オール】にそこまで詳しくないんです……!」
「オールマイトさん死にたいならちゃんと死にたいって言ってくださいよ」*5
「ステイ!相澤先生ステイッ!!気持ちはわかるけどやめてー!!俺一人だと収拾つけられないからあああああ!?」
間飛ママン「本当に一年でやるの?」
間飛「いけるいける!」
2ヶ月後
間飛「アバー」
間飛パパン「言わんこっちゃない!」
ここだけの話今回滅茶苦茶OFAとAFOって繰り返しちゃった事を反省中……説明してるとどうしても何回も出てきやがるコイツら……!
接触継承の具体的な光景はド○ゴンボールの気を分けてる的なものだと思ってください。