前後編を予定しております。
今回は前編ということで後編をまた後々投稿するつもりです。
またまたカオスな番外編をそれではどうぞ。
昨今の個性社会では通勤通学中にヴィラン事件に遭遇することも珍しくない。緑谷が中学生の頃にシンリンカムイやMt.レディの活躍を見ていたように、今となってはいつでもどこでも誰かの個性に巻き込まれる可能性は十分にある。
それは雄英高校の生徒達も例外ではない。電車だろうがバスだろうが遭遇する時は遭遇する。勿論ヒーロー科に通っているからといってもまだまだ子供……そうしたとてプロヒーローと肩を並べて戦うなんてことは許されない。
当たり前だろって?まあそうだろう。ヒーローの卵であってもヒーローそのものでは無いのだ、余程の正当防衛でも無ければ個性の使用は認められない。
つまり絶対的な回避能力を誇る【瞬間移動】を持っていようとも、個性の使用が出来なければヴィランの個性を受けることがあるという話なわけで。
「……おはザース」*1
「「「いや誰ェ!!?」」」
【悲報(?)】間飛君は女の子になりました。
◇
そう難しい話ではない。登校途中で『TSして恥じらう若人の姿が見たいですぞおおお!!』とか叫ぶ変態クソ野郎ヴィランの個性【反転】を食らった間飛が性別を変えられただけだ。
流石にヴィラン……というか変態の個性を食らってしまえば正当防衛も成り立つ。(その癖は分からんでもないが)ふざけんな変態と被害者が増える前に叩き潰したまでは良かった。
──あれ、戻らねえ?
どういう訳か変態野郎の個性は解けず、まだ意識があるのかと目をやればとっくに目を回して気絶している。じゃあ何故……?
結論から言えば変態の個性は時限解除式らしく、その持続時間は24時間にも及ぶ。何でそこまで研ぎ澄ましていながらこんな事に使ってんだお前は。
何が悲しいって相澤先生に事情を話して【抹消】まで使ってもらったのに、俺を見ても変態を見ても微塵も戻る気配が無かった事だ。発動したら時限解除以外では解除されないらしい。ねえ本当になんでこんな事に使ったの?
もう24時間経つのを待つしかないという事になり、一限目に遅れながらも登校してきた。
「……なので今日一日俺はこのままだと」
「なんつーか災難だったな……?」
「まずそのヴィラン何者だよ」
「一応
「その情熱を別のことに向けよう……?」
百も事件が起こればそのうち一つや二つくらいはとち狂った物もあるだろうけども。それにしてもここまで素っ頓狂なヴィランもそうそういまい。
クラスメイトは皆話を聞いて首を傾げるか頭を抱えるかのどちらかであり、普通なら被害者の間飛に同情したりするところをひたすらヴィランへの疑問に思考が埋め尽くされてしまっている。
性別を反転させられた、つまり男子から女子へと変わってしまった間飛だが先ほどから誰も触れないように見ないようにして来た人物がいる。
「落ち着け……落ち着けオイラァ……あれは間飛、そう男子のハズだァァ……!」
「……で、お前は何してんの峰田」
我らが性欲モンスター、峰田ことエロブドウ。*2
何故か先ほどから目は血走り息は荒く、何かを自分に言い聞かせるようにブツブツと呟いていた。
それもそのはず女子となった間飛は控えめに言って何かエロい。
戦闘訓練の時にはかきあげるようにしていた前髪が平常時ということもあって下ろされており、目を半分ほど隠す辺りまで伸びている。時々揺れた髪の隙間からチラリと綺麗な瞳が顔を出し、伸びた後ろの方は雑に一つで束ねられている。
190cm近くあった身長は10cmほど縮んだものの、それでも180cm近くあって異形系を除けば高身長の部類に入る。
そしてどういうわけか妙にデカい乳と尻。乳派も尻派も手を取り合ってウンウンと頷く曲線美が男子用制服の下からこれでもかと主張している。
トドメに口調はいつも通りなのに声が完全に女子のソレ。本人は普段通りの喋り方をしているだけなのだが、可愛らしい声で男勝りな喋り方をするものだからギャップも相まって変に魅力を感じる。
結論:とてもえっちですごい()
「……まあ、そういう訳だ。一日経てば元通りなんだからそう騒ぎ立ててやるな」
「はーい!」
「はいは伸ばすな」
「はい!」
相澤も教師として一応配慮している。必要以上に揶揄われる事が無いように質問攻めを続けさせることなく授業に入った。
三限目の授業を終えて休み時間に入った時事件は起こった。
「……?何か肩が凝るな」
なんてことは無い間飛の小さな独り言。男子ならば無縁の疲労を感じ取り何故肩が凝るんだという真っ当な疑問。腕をムニュンと自分の胸に押し当てながら肩をトントンと叩いていた。
埒が明かないと今度は両手を組んでグーッと背筋を伸ばすような動作をした。するとどうだろう、ただでさえ『ご立派ァ!』な胸部装甲がたゆんと揺れて(本来ならば同性であるはずの)男子たちの目を釘付けにした。
「でっっっ……!?」
「禁断の果実……!」
「……すげえ揺れたな」
思わずといった様子で声を漏らしたのは上鳴・常闇・瀬呂の三人。峰田のように性欲100%ではない、純粋に心配していたはずの彼らでさえこの始末だ。
彼らの言葉を聞いてふと自分の状況を思い出した間飛はこれが肩凝りの原因かと気づく。そして次にとんでもない爆弾を放った。
「───持ってみ?クソ重てえ」
「「「な…………!!?」」」
間飛は自分が性的な目で見られているなどこれっぽっちも考慮していない。だって男だし。あくまで『これやばくねー?』的な感覚を共有したいが為の提案だ。
じゃあ他の男子達も同じ認識かと言われるとそんな事はなくて。如何に女子でいるのは今だけと言っても思春期真っ只中の少年にはあまりにも刺激が強過ぎる。いつもの男子同士のノリでじゃあ遠慮なく、などできるはずも無い。
ここに誰も意図していない地獄が顕現した。
どうするよと話し合うことも出来ずフリーズしたままの男子達。そんなもん知ったことかと自分の胸を『こんなに重たいもんなんかこれ……』と好き勝手に持ち上げたり鷲掴みにする間飛。おいやめろ自覚は無いだろうが誘惑しているようにしか見えない。ぐにぐにと形の変わるおっぱいに男子達の視線がスっと逸らされる。
「間飛ちゃんそういう事は軽々しくしちゃダメよ」
「そうか?俺元は男子だから別にいいと思うんだが」
(((ナイス梅雨ちゃんッ……!!)))
空気が死にかけた所、見るに見兼ねた梅雨ちゃんの注意によって目から摂取するタイプの劇薬が供給を停止した。男子達は致命傷ですんだぞ良かったな。もう少しで性癖が歪むところだった。*3
はしたないも何も自分は男子だから別にいいじゃんと思っている間飛は梅雨ちゃんから注意された理由がわからず、頭上にはてなマークを浮かべたような顔で首を傾げている。
そもそも個性の影響で女子になってるだけの俺に対しKEN☆ZENな目を向ける奴なんて……と、ふと気づいた。そういやコイツら俺のおっぱいガン見してたな、と。
ニシャリ、といいこと思いついたと言わんばかりの笑顔を浮かべると、ゴホンゴホンと咳払い。梅雨ちゃんが何事かと心配そうに覗き込もうとして───
「ヒーロー科の人達ってカッコイイですね!憧れちゃいます♡」*4
「ぎゃあああ!?やめろやめろ!ゾワッとしたわ!」
「くっ……淫蕩の化身か」
「一瞬普通にときめいたからやめろ!?」
きゅるん♡とでも効果音が付きそうなあざとい声で喋った。反応は三者三様であったものの、三分の二に僅かでもときめかせたのなら大勝利だろう。
元が男子でも興奮するんかいコイツら……と頭のどこかで笑いを堪えながらも間飛の悪ノリは止まらない。滅多にない機会だからとここぞとばかりに要らんことに頭を働かせる。
いきなり目の前で豹変した間飛に固まっていた梅雨ちゃん。その手を片方優しく握ると打って変わって爽やかに……俗に言う王子様的な笑みを浮かべた。
「心配してくれてありがとう。でも……君の前だからやったんだよ?」*5
「───ケロ。ケロケロ?ケロケロケロケロ……」
「うわあ梅雨ちゃんがバグった!?」
「間飛くん何しとん!?」
(……ちょっと私も照れちゃったなんて言えない)
お姉様!と呼びたくなるような演技。とうとう目の前の情報を処理出来なくなったのかケロケロとしか言葉を発さなくなってしまった。尚表情はいつも通りである。ポーカーフェイスにも程があるんよ。
先程までは被害が男子にばかり向いていたけれど、まさかの梅雨ちゃん陥落に今度はにわかに女子達が騒ぎ出した。何なら今の間飛は身体は女子のものでも制服は男子のまま。おかげでより一層
自分の見た目が少々よろしいと気づいた間飛の悪ノリは止まらない。そのまま流れるように他のターゲットへと足早に近づいては被害者を増やしていく。
頼むからさっさと元に戻ってくれと男女を問わずにA組の意思が合致した貴重な瞬間だった。
間飛の反転した要素
・性別【男︎→女】
・羞恥心【強→弱】(!?)
・精神力【強→弱】(!!?)
警察「……恥じらう姿が見たいとか言ってなかった?」
変態「いいましたね」
警察「羞恥心弱めてどうすんのさ」
変態「殴られたせいで手元が狂いまして……」
警察「ええ……?」