え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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無意識と無自覚

 

 

 

「ハイ私が来たってな感じでやっていくわけだけどもね。ヒーロー基礎学!久しぶりの少年少女達は元気かな!?」

 

「ヌルッと入ったな」

「久々なのにな」

「パターンが尽きたのかしら」

「脳筋だからしゃーない」

 

「尽きてないし……無尽蔵だし……」

 

 職場体験直後の訓練ということもあり、今回は遊びの要素を含んだ救助訓練レースをすることに。

 

 救助訓練ならばUSJでするべきでは、という疑問も出てきたがUSJはあくまで“事故や災害の状況下”における救助訓練を行う施設。今回はレース(・・・)、すなわち早い者勝ちの競争だ。

 

 今回のフィールドは複雑に入り組んだ迷路のような細道が続く密集工業地帯、運動場γ。そこら中に足場やパイプが伸びている事もあり、それらを避けつつ機動力を出すか、それらを無数の足場として見るかで大きく違って来るだろう。

 

「私は敷地内のどこからか救難信号を出す!それと同時に街外から一斉スタートだ。一番最初に私の所に辿り着いた者が勝者!」

「分け方はどうします?」

「五人一組……一組だけ六人で行こうか。分ける方法は勿論クジで!」

 

 そうして決まった最初の組。緑谷と飯田は先の職場体験もあって注目が集まり、尾白と芦戸は課題である機動力を如何に確保できるか。何より今回のフィールドと相性のいい瀬呂がいることから一位予想はバラけている。

 男子達は何だかんだと器用に【テープ】を使いこなす瀬呂と明確に機動力を有している飯田に票が集まり、女子達は不安定さから緑谷の事を測りかねている。

 

 

 それぞれが位置につき、早速とばかりに訓練が始まる。『START!!』の合図と共に五人は動き出し、予想通りに瀬呂が一気に高度を確保した。

 

「ホラ!こんなごちゃついてりゃ上行くのが定石!」

「と、なれば……滞空性能の高い瀬呂に有利だな」

 

 左肘から射出したテープを巻き取り、勢いを利用した超跳躍。無数のパイプも足場もなんのその、視界が開けるほどの高さまで容易く到達した。

 ヘルメットの奥でニヤリと笑いながらもう片方の肘からテープを射出し、勝利を確信する。

 

「ちょーっと今回!俺にうってつけ過ぎ──」

 

 

ダンッ!!

 

 

 それも長くは持たなかった。余裕の笑みは一瞬で消え失せ、勝利の確信を持った自分が恥ずかしくなるくらいに見せつけられた。

 

 

「うってつけ過ぎる!!修行にっ!!」

 

「お……おおお!?何だ緑谷その動き!?」

 

「凄い!あちこちピョンピョン跳ねて……」

「アイツ体壊してばっかだったのに、やるなあ!!」

「んー……あれで4、いや6%くらいか?」

 

 同じ組で競っている者たちは勿論、モニターで観戦している者たちもまた見せつけられた。七日間という僅かな時間での大きな飛躍に感嘆を零し、目を見開いて賞賛する。

 

 なによりその動き方。最小限の接地で駆け抜ける緑谷の姿に爆豪の【爆破】による変速軌道を思い浮かべる。他人をよく観察し分析する緑谷だからこそ、その身で再現する事が叶った。

 

(あの修行やっぱり凄い……フルカウルを発動しているのに、制御への意識が必要ない!)

 

 もしフルカウルの制御が甘かったのならば、不安定な足場に対応しきれずに踏み外す可能性もあった。しかし緑谷の思考はフルカウルの制御にほぼ割かれておらず、跳躍と疾駆の為の注意深い観察に十分な余地を残している。

 

 ガン!!ドンッ!!と力強い足音を響かせながら、クラスメイト達の予想を裏切ってオールマイトの元に一番乗りと相成った。

 

「オイオイオイ!マジかよ!見違えたじゃないか!」

「……!ハイッ!!」

「ちなみにどんな訓練したとか……教えてくれない?」

「えっと、間飛くんから言われたのは常に2%を──」

 

 ……蛇足だが間飛の指導方針を聞いて『その手があったか……』と若干へにゃるオールマイトだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 授業も進み最後の組の順番が来た。組み合わせは間飛・蛙吹*1・常闇・峰田(エロブドウ)・轟の五名。

 

「ここは……まあ間飛だろ」

「同感☆」

「梅雨ちゃんもいい線行くとは思うけど……ねえ?」

「逆に最下位誰になるか分かんねえな」

 

 間飛のみに焦点を当てると忘れられがちだが、ただでさえ強い【瞬間移動】と【フィジカルギフト】の二つ持ちなのだ。機動力においては単純なスピードの飯田と比較しても圧倒的に上だと言える。

 加えて飯田ならば障害物足りえたパイプや足場さえ、間飛にとってはなんら意味を成していない。全員の頭には二位争いという単語が出てくるくらいには抜きん出ている。

 

 かといってやる気を無くすわけではない。自分なりのベストを尽くすと他のメンバーも目をギラつかせており、一概につまらないと切って捨てるような真似はできない。

 

「それじゃ……START!!」

 

「ッッ!」

 

 都合四度目の合図。やはり定石通り間飛もまずは高さを取りに行く。

 緑谷と同系統(っぽい)個性だが、かけ離れた出力と安定感は明確な差を生み出す。オールマイトをも思わせる跳躍力は密集工業地帯を容易く飛び出し、コンクリートジャングルならぬインダストリアルジャングルを見下ろす。

 

 

「───見えた」

 

 

 文字通り一瞬。視界にオールマイトの姿を捉えた間飛の姿は忽然と消え失せ、開始から数秒でゴール地点へと到着してみせた。

 

「───うわっビックリしたァ!?」

「ええ……俺の個性知ってるなら慣れててくださいよ」

「無茶言わないで!!心臓に悪いねソレ……」

 

 正に『瞬く間』と表現すべき早業。合図を送るための通信機器を持った手が降りきったとほぼ同時に到達しているのだから末恐ろしいという他ない。

 

 反則レベルの個性だが使いこなしているのは間飛の努力によるもの。能力自体はちゃんと評価してやらねばと一位証明のタスキを取り出してかけてあげようとして、手を止めた。

 

「……っと」

「おや?大丈夫かい」

「何かフラついただけなんで大丈夫ッス」

 

 重心が崩れたように二、三歩と後ろに下がる。転ばないように反射的に動いた様子。

 普段から人一倍の身体能力を持っている間飛だからこそ、突然の弱々しい挙動に驚かされる。本人は特に怪我や病気があるわけでは無いと言っているが、それならば尚更心配になる。

 

「自覚してない部分で疲れてるんじゃないか?緑谷少年のトレーニングにも付き合ってくれてるし、一度休んだ方がいいよ」

「いや……マジで大丈夫なんですよ。別に徹夜してるとか過負荷になってるとかでも無いですし」

「そうかい?せめてリカバリーガールのところには行くんだよ?」

 

 よくよく見ると顔色も良いとは言えない。青白いとは言わないが目に見えて調子を崩している。原因を自覚出来ていないのなら専門家に任せようかとリカバリーガールに頼ることにした。

 

 二人が話しているうちに梅雨ちゃん*2、次いで常闇が到着した。先にいた間飛に対して驚くような素振りも見せず『まあそうだよな』という顔でオールマイトの方に向き直る。

 

「二人とも早いね!ああいや嫌味じゃなくて……間飛少年がいなかったら君達のデッドヒートになっていただろう!」

「勿体なきお言葉……」

「しょうがないわ。間飛ちゃん凄いもの」

「この手の競争なら負け無しなんでね。特に【瞬間移動】は元々俺の個性だ」

 

 【フィジカルギフト】は所詮後付け。生来の個性である【瞬間移動】の方が使い慣れているとは本人の弁。制御に苦労した思い出もあるが、今となっては過去のことだ。

 

「ケロ……そう思うと不思議な個性ね。【フィジカルギフト】って」

「自分一人じゃ何にもならない個性だし、珍しいのはそうだな」

「されど個性。人間が増えれば自ずと類似する個性も出てくるだろう」*3

 

 梅雨ちゃんから始まった個性談義。色々な個性が発見される昨今だが、人類の歴史を積み重ねていけばどこかで似たような個性が生まれるのは当たり前だろう。

 

 例えば異形系に分類される個性は分かりやすい。顔が犬のようになる個性もあれば、顔が猫のようになる個性もある。この二つの個性の違いは人間の身体が犬になるか猫になるかでしかない。それ以外は人間でない動物の体になる事は同じなのだから。

 現代でヒーローと持て囃される個性がかつては大量虐殺犯と同じだったかもしれないし、逆もまた然り。

 

 授業そっちのけだが三人の個性談義はやけに盛り上がった。

 

 

 

 一方オールマイトは『最近の子たちって賢くて怖いなあ……!』と震えていた。

 

 

 

「や、やっとついた……!」

「峰田」

「……あ?轟、お前いつの間に来てた?」

「少し前だ。そこの氷を使って……」

「うわなにこれスゲエ」

「…………私、寒いと眠く、なっちゃっ……て……」

「冬眠!?やべえやべえさっさと離れよう」

「悪ぃ。今溶かす」

 

 

*1
「梅雨ちゃんと呼んで」

*2
「ニッコリ」

*3
オールマイト「そ、そうだね……」





梅雨チャン「(何か賢そうな会話)」
常闇「(厨二混じりだけど真面目な考察)」
間飛「(オールマイトの胃に悪い仮説)」

オールマイト「……ヒエッ」キリキリ

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