※注意!※
今回の後半から大量に脚注を入れていますが、成績順位を表記しているものになります。間飛がいる分順位がズレているだけなので面倒な方はスルーしても問題ありません。
(一応小ネタは仕込みました)
「久々の授業で汗かいちゃった」
「俺機動力課題だわ……」
「戦闘力だけーってのも問題だよなあ」
「情報収集で補うしかあるまい」
「それでも後手に回っちまうけどな。お前とか瀬呂とか羨ましいわ」
授業が終わればコスチュームは脱がなければならない。俺はガントレットやグリーヴが重ための素材で作られているというのもあって開放感が凄い。ゴトリと音を立てて脱ぎ捨てた装備が転がる。
そういう視点から考えるとシンプルで軽いコスチュームが羨ましいな。スルッと脱げて着る時も早い。留め具が多いのは要改善かもしれん。
「……!おい緑谷!やべえ事が発覚した!!こっちゃ来い!」
「ん?」
しっかし何なんだろうなマジで。脳無にいいのぶち込んでから調子が悪い。
……いや違うな。調子が良いとか悪いとかじゃねえ。ここんとこずっと乗り物酔いみてえな感覚が続く。死にそうとかそんな事はないレベルだが、頭痛もするし吐き気もする。
なのに身体のキレ自体は悪くない。ふとした瞬間にクラっと来るだけで動作の違和感は無い。むしろあの一件から感覚が研ぎ澄まされているまである。
マジで病院行くべきか?その辺は死ぬほど気をつけてるつもりなんだが……。
「峰田君やめたまえ!ノゾキは立派な犯罪行為だ!」
「オイラのリトル峰田はもう立派なバンザイ行為なんだよォォォ!!」
「お前そろそろ本気で除籍されるぞ……」
「八百万のヤオヨロッパイ!芦戸の腰つき!葉隠の浮かぶ下着!麗日のうららかボディに蛙吹の意外オッパ───」
「さっきからうるせえ」
何をはしゃいでんだこのエロブドウは。奴の背後にワープし後頭部を軽めにどつく。
ドスッ
ドックン!!!
「あ゛あ゛あ゛!!?」
あっ、変な噛み合い方した。どついた勢いと耳郎さんのイヤホンジャックの突き込みタイミングが被っちまった。
「耳郎さんのイヤホンジャック……!正確さと不意打ちの凶悪コンボが強み……!!」
「オマケに後押し食らってるから刺された痛みもやべえぞ」
すまんて。
◇
昼休み。カツ丼という燃料を補給した後、喧騒から離れて一人リカバリーガールの元を訪ねた。理由は勿論ココ最近の不調について。
事情を話した相澤先生も同行しており、半ば無理やりに寝かされた俺の横で椅子に腰掛けて目付きを鋭くさせている。
「……少なくとも病気や怪我の類では無いね。私が治癒しても何も変わらないだろうけどしておくかい?」
「そうですね、お願いします」
「はいよ……ちゅ〜〜〜!!!」
変化無し、と。
「んん……やっぱり効果なしだね」
「お前何をした?緑谷と組手か何かで変なとこ打ったか?」
「落ち着きなよアンタ。さっきその可能性は無いって言ったろ」
「そもそも緑谷と組手なんかしてませんよ。ずっとフルカウル2%をさせてただけなんですから」
原因不明の体調不良か。ちょっと怖いな。
もしや誰かの個性でも受けたかとも考えたが、接敵した時は大抵ワンパンで沈めて来たから可能性としては低め。それに遠距離発動で何日にも渡って持続しつつ、相手の体調を崩させる個性……ダメだどんな個性になるのか想像もつかん。
パンツ一枚になってあちこち確認してもらったけどそれらしい痕跡もなく、現状の結論は本当にただの不調という事になる。
「……そういやお前【フィジカルギフト】の継承中がそんな感じだったと言ってなかったか?」
「さすがにあそこまでじゃないですよ。アレと同じなら会話する余裕も無いんで」
「どれだけ酷い目にあってんだいアンタ」
そんな事言われましても。ちょーっと目と耳からも血が出てきたり言葉を話せなくなったりしただけですが。
それにあの時の症状は“無理やり短期で継承しきった”事と“
てか【フィジカルギフト】が原因なら相澤先生に【抹消】してもらえば何とかなるんじゃね?
「試すか」
「……おっ?」
「おや?」
短時間効果が残留する【抹消】を受けた途端、スウッと頭痛や吐き気が収まった。マジで【フィジカルギフト】が原因だったのかよ。
あ、やっぱすぐ戻ってくるか。うわきっつ。
でも【フィジカルギフト】にこんなリスクあったか?皆そんな事は話して無かったし兆候も何も無かったのに。
「個性の許容超過の症状だったけど……アンタの個性に許容限界とかあるのかい?」
「【瞬間移動】にはありましたけど……無理して使った覚えはありませんね。【フィジカルギフト】に至ってはそもそも許容量ってのがあるのかどうか」
「……一応糖分補給を心がけるようにしな。大抵の許容超過は頭の使い過ぎだったりするからね」
糖分……?そういや飯食ってしばらくの間はそんなにキツく無かったな。吐き気はあったけども。
結局原因は個性由来という以外は分からないままだ。【フィジカルギフト】の制御がより安定してきたところだってのに、とんだ妨害が入ってきやがる。まさか制御能力が上がったからってわけでもない……よな?
今までだって制御出来ていなかったなんてことは無く、俺が無駄におっかなびっくりで扱ってたってだけだ。脳のリソースを割く量が増えたという話でもないなら本当にわからん。
「……間飛」
「はい?」
昼休みももう残り僅かだから戻ろうと思ってんですが、なんですか。
「しばらくの間放課後と土日……時間を寄越せ」
「……一人暮らししてるんで大丈夫ですけど、何故?」
「何、一足先に顔合わせするだけだ」
◇
時は流れ、六月最終週……期末テストまで残すところ一週間を切っていた。
「全く勉強してねー!!」
「体育祭やら職場体験やらで全く勉強してねー!!」
「確かに……」*1
「中間はまあ、入学したてで範囲狭かったから苦労しなかったんだけどな」*2
「ウンウン」*3
目ん玉をかっ開いて半ば悲鳴のような声を上げる上鳴*4と諦めたように朗らかな笑みを浮かべる芦戸*5。クラス内成績ワーストの二人にはあまりに強大な試練だ。
普段なら差程気にも留めない話だが、期末テストの結果によっては補習地獄という罰が待ち受けているのだから必死にもなる。
加えて夏休みには林間合宿という少年少女が胸を躍らせるイベントがあるのだ。それを補習地獄なんかに潰される訳にはいかない。
しかし忘れては行けない。元々雄英高校は文武両道の超エリートが集まる学校。クラス内ワーストの彼らも他所では良い評価を貰える側なのだ。
故に筆記だけならばいくらでもやりようがある。倍率300という頭のおかしい受験戦争を勝ち抜いてきたのだ。では何をそんなに恐れているのかと言うと……
「演習試験もあるのが辛ェとこだよな」*6
「あんたは同属だと思ってた!」
「お前みたいなやつは馬鹿で初めて愛嬌が出てくるもんだろ……!どこに需要あんだよ!」*7
「世界……かな」
ドヤ顔のエロブドウは放置するとして演習試験。ざっくりと言うならば実技が一番分かりやすいだろう。座学の内容を筆記でテストされ、訓練の内容を実技でテストされる。文字通りの文武両道を求められている。
出来れば筆記に時間を割きたい二人だが、何も対策をしないまま実技に挑むというのもまた怖い。万全の体制で臨みたいのであれば数少ない自由時間を努力という名前に変えなければならない。
では他の者たちはと言うと……
「が……頑張ろうよ!やっぱ全員で林間合宿行きたいもん!ね!」*8
「うむ!」*9
「普通に授業受けてりゃ赤点は出ねえだろ」*10
「言葉には気をつけろ!!!」*11
……お察しである。
繰り返すが雄英高校に合格した以上は
故に頼るべきは友人。上鳴*12と芦戸は八百万*13に教えを乞う事にした。二人に続いて耳郎*14と瀬呂*15と尾白*16も声をかける。尤も、彼らの場合は『不安な部分を補強したい』なので同じとは言えないが。
「この人徳の差よ」*17
「そんなもん爆発さん太郎にあるかよ」*18
「俺もあるわ陰キャ野郎。教え殺したろか!!」*19
同じ授業を受けていたはずなのに出てくる格差。こればかりは勉強への適正としか言い表せまい。努力が苦にならない爆豪は(普段の態度からは想像つかないが)問題がなく、普段から真面目に受けているけれど不安は拭えない切島……普通逆では?と思いたくなるけれどこれが現実なのだ。
既にお先真っ暗やんけ!と叫ぶ暇があるなら勉強を。これもまた青春の1ページと受け入れる他ない。
その日から普段の三割増で真剣に授業を受けるA組だった。
間飛「え?お前3位?マジで?」
爆豪「ンだその反応」
切島「普段とのギャップよ……」