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『報告だよ。条件達成最初のチームは間飛・心操チーム!』
各試験場に響くアナウンス。正直誰もが予想出来た結果であり、それでも予想外と言わざるを得ない早さの勝利。それは全員に焦りを与える。
「こんな放送あんのかよ!?ああやべええええ!!」
「まあまあ焦る必要はねえよ峰田。アイツが……アイツらがヤベエなんて最初から分かってたろ?」
「そうだけどよぉ……!」
ミッドナイトの【眠り香】を警戒し距離を取ることを強制される峰田と瀬呂。ただでさえ自信の無い峰田がモロに先着が出たことに焦りを感じ始める。
瀬呂からしてみれば『そりゃそうだろ』でしかないのだが、それを峰田に強要することも出来ない。
「間飛か……早いな」
捕縛布で吊し上げられながら、話し合わなかったことを反省している所に届いたアナウンス。超えるべきライバルの一抜けに対し、自分は何をしているのか。
きっと八百万ならば相澤を凌いで戻ってくると信じ、次の手を講じる。動けない今の自分にはそれしかない。
「轟さんっ!?」
「っ八百万!!」
さあ、間飛に続く為に反撃の狼煙を上げよう。
「YEAHHHHHH!!!」
「うっるさ……!!」
「今、アナウンスが!」
「わかってる!」
こちらは大苦戦。
音というカテゴリーの個性同士のマッチングはプレゼントマイクの高出力によって一方的な蹂躙劇となっている。
耳郎の音波は掻き消され口田の操る動物は大音量を前に逃走。強みを押し付けるという単純な戦法がこれ以上ない形で二人を苦しめていた。
◇
それでは一番(色んな意味で)不安に思われていた爆豪と緑谷のペアはと言うと───
「作戦ぐらい立てようよ!?何もなしに突っ込んで勝てる相手じゃないって!」
「俺に指図すんじゃねええええ!!!」
(いや結構キツイなこれ!?)
片や策を弄するべきだと考えてこの場を凌ぐことを優先し、片やこのまま一気に畳みかけてケリをつけてやると好戦的。
なのに。なのに、二人の動きはどこか噛み合っている。意図的なのか無意識になのか、互いを補完し合うような動きになっている。
爆豪の【爆破】が視界を遮ったと思えば、誰からトレースして来たのか変則的な軌道で確実に一撃を当ててくる緑谷。何一つとして示し合わせていないはずなのに、妙に様になってしまう。
───とはいえそこはNo.1ヒーロー。
「んん〜っ……!!
OklahomaSMASH!!」
「ごあっ……!?」
「ぎゃあ!!?」
力任せの強引なダブルラリアット。単なるプロレス技の一つでしかないそれも、オールマイトが使えば脅威度は跳ね上がる。
目の前で爆発的に巻き起こる暴風、そして衝撃。腕を僅かに掠めただけの爆豪が胃の中身をぶちまけかけるくらいには破壊力を秘めている。
「やっぱり無茶だ……!正面からぶつかっても勝てない!」
「黙れクソデク!!俺ァテメェの力なんざ借りねえ!!」
「怒鳴らないでよ!それでいつも会話にもならないんだろ!?」
緑谷の弱気な発言に爆豪が噛み付く。やはり一瞬は連携が取れたとしても根本的なところでは相容れない。緑谷が正しいかどうかも関係なく、自分の力で成し遂げてみせると吠えるのだ。
「逃げられちゃあ困るんでね……!」
「しまっ──」
「消極的な君にはガードレールをプレゼントだ!」
勿論そんな事はヴィランには無関係。オールマイトはそこらで引きちぎってきたガードレールを容赦なく突き立て、ギロチンの拘束のようにして緑谷を捕える。
真横にいた爆豪が反応するよりも早く、オールマイトが動く。手のひらを向けることも出来ずに巌のように固く握られた拳が土手っ腹を打ち据えた。
ゴボッ、と今度こそ胃液をぶちまけて殴り飛ばされる。これまでに経験のない鈍く重い痛みが爆豪の四肢から力を奪う。
「緑谷少年の急成長……長い付き合いなら焦りもするだろうね」
「ガハッ……うっ……」
「でもさ、レベル1とレベル50の成長速度が同じなわけないだろう?雑魚キャラを倒してもレベルが上がる彼と、魔王クラスの敵を倒しても1上がれば御の字の君では違うんだ!」
その指摘は正しい。今の爆豪と緑谷はどうしたって成長目標が異なるのだ。
緑谷が【ワン・フォー・オール】を安定して使えるようになる事に対し、爆豪は既に応用の段階。手探りで己の未来を作り上げていく段階にいる。
もし違いがあるとするならば成長後のステータス。今は緑谷がレベル1だとしても同じ50に辿り着いた時はどうなっている?自分を上回っているのでは?自分よりも下の木偶の坊が?
何より身近なところに間飛という現実味を帯びさせる存在がいる。それこそレベル50よりも高いかもしれないけれど、それで納得できるなら最早それは爆豪ではない。
「黙れよオールマイトォ……!」
「……」
「あのクソの力ァ借りるくらいなら……
まだ負けた方がマシだ……!」
「……そっか。後悔は無いようにな」
でも。でも、それだけは看過できない。
「──っ!?」
「おや」
「負けた方がマシなんて──……君が言うなよ!」
ガードレールを跳ね除けた緑谷が
放せと暴れる爆豪も意に介さず、緑谷は走りながら話す。
「僕にはオールマイトに勝つ方法も逃げる算段もとても思いつかないんだ!」
「あ゙!?」
「でも、君なら違うんだろ!?諦める前に僕を使うくらいしてみろよ!」
「ッ──……」
「負けていいなんて言わないでよ……勝つのを諦めないのが、君じゃないか……!!」
ほんの僅かな間ではあったけれど、二人がかりであればそれなりに戦えた。何の打ち合わせも無いのに噛み合い、戦いが成立した。
緑谷のフルカウルは現時点で
まだ、負けてない。
それだけを胸に緑谷は爆豪の助力を求めた。
◇
「お疲れ様でーす」
「はい、おかえり」
「……ただいま、です」
誰よりも早く試験を突破した二人はブラドキングと共に出張保健室のテントへと戻ってきた。二人は無傷なのだが、ブラドキングがそれなりに手痛い一撃を貰った事もあって担架に乗せて運んできてたりする。
「大丈夫かい?この子ら強いから、随分と痛めつけられてたじゃないか」
「……否定できません。間飛もですが、心操は想像よりもずっと強かった」
「あ、ありがとうございます」
「ただし、詰めが甘いのは確かだ。特に間飛の最初の囮!アレは決まるかどうか分からなかったのではないか?」
「それは……まあ、はい」
ブラドキングの視線を上に向けさせる為のワープと大声。もしあれが失敗、或いは視線を向けさせた上で心操の攻撃を防がれていたらどうなっていたか。
第二第三の手は方針だけ決めて詳細は練っておらず、言わば初見殺しの要素で勝利しただけ。ブラドキングが指摘するまでもなく、手の内がバレてからの事を考える必要があると自覚していた。
が、それには間飛が異論を唱えた。
「いやあそれはしょうがなくないです?」
「何?」
「多分相澤先生とかは気づいてると思うんですが、俺の個性って応用効かないんですよ」
「む……それは、そうだが……」
心操には工夫の余地があるのに対し、間飛の個性にはそれが無い。【瞬間移動】の対象には自分しか選べず、かといって【フィジカルギフト】はそれ以前の問題。
間飛の強みであり弱み。強力無比であるが故にそれ以上が出来ない。故に手札の少なさを指摘されたとしてもこれ以上増やしようが無いのだから仕方ない、としか言えないのだ。
「戦闘面については殴り方蹴り方のバリエーションを増やすぐらいしか出来ないんですよね……」
「他人とか物体のワープは出来ないのか?」
「昔っから試してんだけど、一向に出来る気配はないな。身につけている装備は出来るんだが」
「ううむ……それは思った以上に難しいな。そう言われると応用手段があまりない」
発展方法が分からない。それが間飛の課題だ。
「……あ。エンデヴァーの……轟?が」
「イレイザーのところか!」
考察に頭を持っていかれていた三人だったが、不意にモニターに映った光景を口にした心操。釣られて他の二人もそちらに目をやると、八百万と轟が攻勢に出ていた。
イレイザーヘッドが使っているものと酷似した布。しかし轟が地面を這わせるように放った炎で急激に形状が変化し、あっという間にイレイザーヘッドを絡めとって拘束した。
「おお……!何がどうなってるのか知らんがカッケェ!」
「……ただの捕縛布じゃないな。何か混ざってる」
「ふふふ、やはりイレイザーも生徒には甘いのだな」
彼らの試験はとうに終わったけれど、他の者たちはまだまだ勝負を仕掛け始めたばかり。
ニヤニヤと役得の気分でモニターを眺めているのだった。
〜オマケ〜
間飛が他の試験を受けたらどうなっていたのか。
VSイレイザーヘッド
どっちが先に相手を見つけるかのクソゲー。尚仮にイレイザーが先に発見しても不意打ち以外は勝率がかなり低い。
VS根津校長
機械で勝てるわけないのでワンパン。
VS13号
ブラックホールより殴る方が早いのでワンパン。
VSプレゼントマイク
音波でワンパン出来なかったら逆にワンパンされる。
VSエクトプラズム
無双ゲーになる。
VSミッドナイト
息止めてワープワンパン。
VSスナイプ
当たらないしワンパンだし。
VSセメントス
我慢比べorコンクリートごとワンパン。
VSパワーローダー
落とし穴に落ちてくれない&SMASHで強引に引きずりだされる。
VSオールマイト
神野区レベルの衝突が発生。音を置き去りにするのが当たり前の打撃が飛び交い、割り込める人間が限られてくる戦場になる。勝敗が着く前にオールマイトの制限時間が来るor残り火消滅なので真っ当な決着はつかない。