前話の後書きの魔法少女ステッキへのコメントが多くて大変嬉しく思います。まあシリアスな雰囲気の後にあれだもんね。
それはそれとして裏設定という程でもありませんがハリセンやピコハンはヤオモモに頼んで創って貰ったものでして。
アバウトに「武器ではないけど武器のように片手で振り回せる棒状の物」を注文した結果ヤオモモがついでに創りました。なので決して相澤先生の趣味では無い。OK?
※尚、魔法少女ステッキの形状についてはお好きなものをご想像ください。
死にそうな顔をしていた間飛だったが、戻ってきた時にはすっかり血色のいいいつも通りの顔に戻っていた。個性を使っていなければそう負荷が大きいものでもないらしい。
「すんません手間取らせました」
「いやいい。個性の成長に対する負荷を考慮しなかった俺の落ち度だ」
「じゃあその方向で」
「謙虚なのか図々しいのか分からんなお前は」
最近は比較的大人しかった問題児もこの通り、元気に問題児問題児してる。戻して。*1*2
同級生が元気になったことで安心した他の生徒達も間飛を見た後、各々の強化訓練に励む。特に補習組で纏められたメンバーは色濃い疲労に負けないようにと一層気合いの声をあげている。
間飛の不調が悪い影響を与えやしないかと危惧していた相澤も彼らの雄叫びを聞き、どうやら杞憂だったらしいとひっそり胸を撫で下ろした。
しかし困ったのはここからの事だ。いくら数多くの個性を見てきたとはいえ、情報処理の
「……まあ、まずは試しに昨日もやってた内容をやるか」
「目隠しスね?分かりました」*3
「また濃いの持ってきたな」
「こういうのついつい集めちゃって……」
分からんでも無いが、と零す。彼らの会話を聞いた生徒達が『なになに何の話?』と視線を向ければゴン太眉毛と鋭い目付きが描かれたアイマスクを見て撃沈した。急な笑いは想像以上に脱力してしまうものである。
そんな周囲を余所に相澤はピコピコハンマーを取りだした。形状の異なる物でもしっかり把握出来るのかテストする為だ。決してハリセン以外に面白そうなものを探した訳では無い……恐らく、きっと、多分、Maybe。
新たな笑いの火種を投下されて悶え苦しむ周囲を無視し、相澤は問答無用とばかりにピコハンを振り抜く。当たれば痛いというか恥ずかしい攻撃に対し───
「いきなり過ぎませ……ピコピコハンマー!?なして!?」
「…………へえ」
──【瞬間移動】すら使うことなく最小限の動作で回避。それどころか伝えていないはずの武器の変化まで読み取っている。
次いで二度、三度と攻撃を重ねる。縦に横に袈裟にと手加減のないラッシュ。手にしているのがピコハンでなければそれはそれは絵になる猛攻だが、それを回避するのも某スナイパー風アイマスクを付けた男子なのだから絵面としては妙にハイレベルなコントにしか見えない。
十数回もの連撃を掠ることすらなく避けきった。そこで一度相澤は手を止めた。
「お見事」
「よっしゃ褒められt危ねェ!!?」
「不意打ちも回避……やるな」
「人間不信まっしぐらなことするのやめてもらえます?」
次の動きを予測しての先行入力回避でもない。どうやら本当に物にしたらしい。
爆豪や轟を初めとしたストイックな者は一連の流れに冷や汗を流し、奇天烈な光景に笑いを堪えていた者達もまた、その光景がどれほど異質なものなのかを悟った。
──今、
回避どころか逆袈裟に振り上げられたピコハンを左手で打ち払ったのだ。目で見えていても難易度の高いはずのそれを片手間に、当たり前のようにやってのけた。
「……よし、今度こそ本当に終わりだ」
「信用出来ませんが?」
「信じないなら信じないでもいい。その代わりそこで突っ立ってろ」
「間飛、相澤先生信用しマース!」
突然の終わりと共に和やかな会話をする二人だが、しばらくの間間飛を見る目が戦々恐々としている者がほとんどだった。
◇
間飛の一件が終わった後も当然ながら強化訓練は続行。肉体的に、或いは精神的に色々と磨り減ってしまいそうだが上を目指す者ほどその手を緩めようとはしない。
「っはぁ……熱いな……」
轟もその一人。ドラム缶の五右衛門風呂に入りながら【半冷半燃】の氷結を発動し続けるというメニューを延々と繰り返している。
熱湯に浸かりながら氷結を連続使用する事で体温の低下を防ぎつつ、連続使用に慣れることで体温低下への耐性をつける目的がある。また熱湯はもう一つの火炎を使うことで温度を高く保つ訓練をしているので一石二鳥のトレーニングメニューだ。
しかし幾ら効率的と言われても夏休みの林間合宿。お日様がこれでもかと熱視線を送る空の下で熱湯に浸かり続けるのは肉体的にも精神的にもキツい。
水分補給は気をつけているけれどそろそろ一度休憩を挟むべきか、と轟がドラム缶の淵に手をかけた。
「……ん?五右衛門風呂?何してんだ轟」
「間飛か……目隠ししてても分かるのか」
「分かるようになった。で、何が目的なんだソレ」
そこに声をかけてきたのは間飛。今の間飛のトレーニングメニューは『目を閉じたまま日常生活を送ること』なので他の生徒達の訓練中に近づくことを許されていた。
えらく濃いデザインのアイマスクを気にしつつも轟はトレーニングの目的を話す。正直な話
轟の説明を聞いて間飛は暫し考える素振りをした後、こんな風に切り出した。
「そりゃ使って来なかったら制御なんて出来ねえだろ。練習してないことを本番でやるのはバカのやることだし」
「……俺は馬鹿だったのか?」
「そうだけどそうじゃねえよド天然。*4まずは使うことから、だろ」
理論は緑谷の【ワン・フォー・オール】と同じ。使い慣れていない、制御出来ないものは圧倒的にソレに触れている時間が足りないからだと。轟の場合は家庭環境の云々もあって反論のしようがないほど心当たりがある。
まずは息をするようにオンオフを切り替えられる必要がある。ハッキリ言ってしまえば轟の炎は緑谷の【ワン・フォー・オール】よりちょっとマシな程度とすら言える。
「後こっからは完全に持論だから相澤先生に怒られるかもしれねえんだけど……」
「取り入れるかどうかは聞いてから判断する。教えてくれ」
「お、おお……そんじゃあくまでも俺の持論だって念頭に置いて欲しいんだが」
間飛の持論はこうだ。
炎にしろ風にしろ自分の手元足元から出る個性の場合、ひたすらに高い出力での放出を鍛えようとするイメージがある。事実ネットではオールマイトやエンデヴァーを基準に攻撃力ランキングなるものまで作られるほどには重視される傾向にある。
しかしそういった個性の大半は非殺傷のヒーローには過剰火力であることが多い。最も分かりやすいのはそれこそエンデヴァーだろう。彼の炎は全力で放てばそこらの木っ端ヴィランなど一秒とたたずに燃え尽きてしまうだろう。
「だから相澤先生にゃ悪いが俺が鍛えるべきは精度……精密操作だと思うんだよな」
「……一理あるな」
「特にお前さ、体育祭であんな出力してたんだからそれ以上は過剰じゃね、ってな。いっそ最小限で無力化するなら滅茶苦茶強くて滅茶苦茶小さい攻撃のが強いだろ?」
イメージされるのはピストルの弾丸。警棒で数十発殴るくらいならば銃弾を一発足に撃ち込んだ方が早いだろ、という理屈だ。
であれば体育祭の氷結は過剰にも程がある。警棒で叩いて倒れたところにストンピングを繰り返して最後に大量のロープで縛り上げているようなものだ。
思い返せばあの時。八つ当たり気味だったとはいえ氷結の大半は何も無いところに大量の氷を作っただけだった。あの分の温存が出来ていれば……いや、たらればはキリがない話だと轟はかぶりを振って否定した。
つまりは『あんなに無駄が多いのに最大火力強化とか何考えてんの?』という指摘。
(言われてみれば峰田の【もぎもぎ】が三個もあれば完全な拘束が可能なんだ。あの規模の氷結じゃなきゃ捕えられない相手なんざ早々いねえか……)
自惚れるつもりはない。が、あの規模の氷結を必要とする相手は爆豪や間飛、緑谷クラスの攻撃力持ちだ。加えてその彼らを相手に視界を狭める大規模攻撃は愚策。尚のこと無意味だ。
氷ならば密度を、炎ならば……何だ?
「……おいゲロ陰キャ」
「純然たる悪口だよね?やめよう?」
個性伸ばしの手がかりに思考を割いていると、今度は爆豪が間飛に声をかけた。酷い呼び方に反射的にやめるように注意するけれど、まず素直に聞くことは無いだろう。
「お前なら俺の【爆破】をどう鍛える」
「……そう、だな。可能か不可能かはさておき」
──手のひら以外でも使えたら……とは思うな。
と、間飛は苦笑いしながら言っていた。
「……参ったね。オールマイトは余程優れた後継者を見つけていたらしい」
「まさかとうとう始める前から潰しに来るとは思わなかったよ。いつも僕の後にしか動かなかった事に反省していたのかな?」
「余計なことをしてくれたものだよ。死柄木弔に僕を疑わせるなんて面倒な事を……」
「間飛移ゥ……!」
障子(何という探知能力……だが)
尾白(的確に捌ききってる……けど)
切島(スゲェ事してるのは分かるけど)
(((武器とアイマスクのせいで笑いそうになる……ッ!)))
八百万「強度的には問題なさそうですね」
相澤(……めっちゃ丈夫だなこれ)