前話の魔王様に対して数多くの感想ありがとうございます!
多分今までで一番多くの感想を頂いた回になったんじゃないかと思います。まさか7ページ分の感想を頂けるとは……。
これからも本作をよろしくお願いします!
「あわよくば……【サーチ】の個性が欲しかったんだけどね。まさか彼女と君が一緒にいるとは思ってもみなかったよ」
髑髏を模したデザインの黒いヘルメット。目と鼻を完全に覆い隠してしまい、口元も複数のパイプが繋がったマスクによって表情の変化をこれっぽっちも見せようとしない。
微かに上擦った声から上機嫌なんだろうとしか読み取れるものは無い。
月明かりが照らす森の中、キッチリと着込まれたスーツはかえって不気味なばかりで。芝居がかった身振り手振りで嘲笑うように話す。
「さすがに君がいては彼女に手を出す余裕は無い。オールマイトそっくりだね……僕の狙いを尽く潰しに来てくれるじゃないか」
間飛と魔王の距離は10m程。互いの個性ならば無いも等しい距離だ。衝突に割り込める者も、割り込もうと思う者もいない。
ニヤニヤと口角を釣り上げたまま話す魔王に対し、間飛は一言も返さない。愉悦を隠そうともせずにいたけれど、こうも無反応では面白くなかった。
「何か話したらどうだい?人は会話をする為に言葉を作ったんだ。口を閉ざしたままでは何も始まらないじゃないか」
「……じゃあ、言わせてもらおうか」
「?」
「その首のやつイカしてるな。いいデザインしてるわ」
「……残念だ。出会いが違えば君とは良き友人になれたかもしれない」
真面目にやれお前ら。
◇
「あうう……私たちも肝試ししたかったぁ……」
「アメとムチっつったじゃん!アメは!?」
「サルミアッキ*1でもいい……アメを下さい先生……」
「サルミアッキ旨いだろ」*2
捕縛布で縛り上げられた四名は引っ張られるがまま相澤に連れられていた。自分達の努力不足と言われれば反論できない己の責任ではあるけれど、他の皆は楽しんでると思うと余計に悲しくなってくる。
少しでもいいからお慈悲をくだされと訴えてみれば、まさかのサルミアッキを旨いと宣う相澤に『嘘だろ……』という顔しかできない。
合宿所の中に入るとそこには既に先客が。片方はB組担任のブラドキングと、彼の教え子の物間寧人が。入ってきたA組生徒達を見るやいなやいつもの調子でHAHAHA!と笑い始めた。
「あれぇおかしいなァ!?優秀なはずのA組から赤点が四人も!?B組は一人だけだったのに!?おっかしいなァ!?」
「どういうメンタルしてんだお前!!?」
お前も補習じゃろがい!と突っ込みたくなる内容で煽る。よくよく見れば本人もさすがに無理があると思っているのか、はたまた一人だけ補習で凹んでいたのかあまり顔色が宜しくない。
何よりこの煽り方は今回で二度目。一言一句同じでなくとも内容はほぼそのままの煽りを二日間連続で行っている。これには芦戸も『心境を知りたい……』と対応に困っている。
相澤とブラドキングが今日の補習内容について相談し始めた時、全員の脳内にマンダレイの声が響いた。
「っ?マンダレイの【テレパス】だ」
「これ好きー!ピクってする」
「でも交信出来るわけじゃないからちょい困るよな」
「……静かに」
続くマンダレイの【テレパス】がヴィランの襲来を伝える。確認できた人数は二名、動ける者は施設への撤退を。会敵しても決して交戦すること無く撤退するように、と。
相澤の意識がイレイザーヘッドへと切り替わる。即座にブラドキングに生徒を任せ、捕縛布に手をかけながら教室を後にする。
焦りを感じながら合宿所の外に出てみれば、森の奥からモクモクと立ち上る黒煙。間違いなく個性云々のものではない、山火事に発展しかねないレベルの火事が起こっているのが分かった。
「心配が先に立ったかイレイザーヘッド」
「───ブラド!!!」
蒼い炎が解き放たれる。超火力の一撃は荼毘の腕を反動で後ろに弾き飛ばしてしまうほど。時間にして一秒もない放出の反動でこれだ。
「邪魔はよしてくれよプロヒーロー。用があるのはお前らじゃない……が」
己をも焼き焦がす炎であろうと、当たらなければなんの意味も無い。荼毘が視線を上にやれば咄嗟に捕縛布を利用して上へと跳躍したイレイザーヘッドがいた。
掠りもしなかったらしく、ダメージどころか装備の欠損さえ見られない。さすがプロかと賞賛すべき反応速度だ。
「プロだもんな」
「炎は出ねえよ」
避けられたのなら二発目を、と次は右腕を砲身のように突き出す。しかしそこはイレイザーヘッドの【抹消】が許さず、無意味に伸ばされた手を無視して捕縛布が荼毘を絡めとる。
腕を縛られた荼毘はろくな抵抗もせずにされるがまま、イレイザーの方へと引っ張られ──
ゴッ!!グシャッ!!
顔面への膝蹴り、体勢を反転させて地面にうつ伏せに叩きつける。容赦のない早業であっという間に荼毘を鎮圧した。
「目的、人数、配置を言え」
「何で?」
二の句を待たず荼毘の左腕をへし折る。枯れ枝のような音を立てて骨が折られ、そこには一切の躊躇も手心も感じさせない。
ただでさえUSJから好き勝手されてきたのだ、イレイザー一個人を狙ったのならさておき『雄英高校』を狙ってきたヴィランに容赦する段階はとっくに通り過ぎている。
次は右腕だと短く告げる。やはり荼毘に答える気はなくもう一度骨折の音が響いた。
同時に、森の奥で爆音も響く。
「何が……」
「先生!」
一瞬爆音に、森から帰還した生徒たちに気を取られた。その隙を見逃さずに荼毘がイレイザーを跳ね除けるも未だ捕縛布は健在、荼毘に自由は無い。
「さすがに、雄英の教師を務めるだけはあるよ……なあ、ヒーロー」
御託はいい。口にするまでもなくイレイザーが捕縛布で荼毘を引き寄せようとして。
ズルッ……
「生徒が大事か?」
「ッ!?(さっきの発火が個性じゃないのか!?)」
捕縛布がすり抜ける。それも荼毘の肉体を真っ二つに千切りながら。
置き土産だと言わんばかりに挑発を残し、肉体は泥のように崩れ落ちて消えてしまった。
「……中、入っとけ。すぐに戻る」
何が起こっている。誰が、何を目的として動いている?相澤は生徒達を避難させながらそんな事を考えていた。
◇
マンダレイの【テレパス】は雄英高校の教師、A組B組の生徒達。一人だけ別の場所にいるラグドール……そして洸汰にも届けられていた。
ひみつきちから見下ろしていた森は煙と霧、炎が跋扈する地獄絵図に変わり果てている。けれどもそれすら生温く感じてしまう恐怖が彼の前に立っているのだ。
全身を黒いローブで隠し、唯一見える首から上もフードとマスクによって見えているのは首と腕だけ。明らかに危険な空気を纏うソレに洸汰は怯えながら逃げを選択。
「おいおいどこ行く気だ?景気づけに一杯……殺らせろよォ!!」
「おまえ……!」
洸汰を軽く飛び越す速度。蹴り付けられた岩肌が砕ける程の威力と速度も、ヴィランの顔を見た洸汰にはどうでもよかった。
猛スピードで動いたことでフードが外れ、顕になったその素顔。
──『ウォーターホース』素晴らしいヒーロー達でした。
──しかし二人の輝かしい人生は。
──1人の心無い犯罪者によって絶たれてしまいました。
──この顔を見かけたらすぐに110番及び、ヒーローに通報を。
──尚現在左眼に。
──ウォーターホースに受けた傷が残っていると思われ──……
左眼に 傷の 跡が
「パパ……!ママ……!!」
「やめろおおおおおおおっ!!?」
SMASH!!!
「あ!?」
肥大化した筋繊維に包まれた
マンダレイでも知りえないひみつきちを唯一知る人物が、緑谷出久が間に合った。
「んん……?お前は……リストにあったな」
「効いてない……!?」
咄嗟の高出力を受けて尚、ヴィランに……【マスキュラー】には大したダメージを与えられていない。腕を蹴られていたはずなのに骨一つ折れちゃいない。精々がシビレを感じている程度。
それに、無理やり迎撃に割り込んだ為か連絡手段として持っていた携帯は壊れた。誰にも知らせずここに来てしまったので、増援はまずないと思うしかない。唯一可能性があるとすれば間飛ぐらいだろうか。
マスキュラーは舌なめずりをしながらローブを脱ぎ捨てる。振り返れば恐怖と怒りと様々な感情で顔をぐちゃぐちゃにしている洸汰。緑谷の選択肢は一つしかない。
「ッ……大丈夫、だよ洸汰くん……!」
落ち着け、恐れるな。こういう時のために鍛えてきたんだろうと、己を奮い立たせながら【フルカウル】を起動。緑谷の全身をエネルギーのスパークが駆け巡る。
「必ず救けるから!」
「たすける、ねえ?はぁははは……ァ……さっすがヒーロー志望って感じだな?どこにでも現れて正義面しやがる」
ウゾウゾとマスキュラーの肌から筋繊維が蠢き、伸びて腕を覆う。見た目通りのパワータイプの個性が牙を剥いた。
「血ィ見せろやァ!!!」
間飛「そのパイプ何?みたいな装飾好きなんよ」
魔王「分かりみが深い」
間飛「あと敢えて全部は隠さないタイプのマスク」
魔王「狐のお面の口元出てるやつとか良いよね」
YEAH!!ピシガシグッグッ