アンケートのタイミングが悪かったのかヒロイン候補に屈強な男性を挙げられていた間飛君に合掌(-∧-)……。
感想欄で虎、マグ姉、ジャックガム……果てはAFOまで確認できました。これは立派なハーレム♂だね!
そうはならんやろ……
ヴィラン連合開闢行動隊。そのメンバーは荼毘をリーダーとしてマスキュラーやムーンフィッシュ、マグネやジャックガムなどの凶悪犯罪者に改造人間脳無といった戦力。
トゥワイスやMr.コンプレスという社会のはみだし者に、マスタードという半グレのような輩までを揃えている。
そこに何やら死柄木弔の“先生”なる人物も別行動で参加すると聞いていたけれど、今の彼女の頭からは抜け落ちてしまっている。
(何でまたこんな事に巻き込まれなきゃいけないんですかァ!?)
秘密裏に闇の世界を調査する為、ヴィランを装って怪しげな話に首を突っ込む役割を持たされているのだけれども。まさか大物ブローカーの話に乗ってみれば雄英高校の襲撃だなんて思ってもみなかった。
話に聞いた通りヤバそうな雰囲気がプンプンしてる死柄木弔と、粘ついた殺意が抑えきれていない荼毘。ぶっちゃけいつ逃げ出そうかとずっと機会を伺っていた。
軽く自己紹介を、なんて振られた時は本当に死を覚悟した。下手な嘘がバレれば殺されると思い、必死に今時の破綻者を演じて誤魔化した。ステインなんて別にどうでもいいのです。
何故か憤った死柄木弔が殺しに来るわ荼毘も迎撃に回るわで、あの日のあの時だけで何度死を覚悟したことか思い出したくもない。
とりあえず何とか凌ぎきったと安心したのも束の間。癇癪を起こしていた死柄木弔に代わって別のヤバそうな人物が指示を出してきた。やめてください本当に。
結局今日という日までにヴィラン連合との縁を切る事は叶わず、雄英高校襲撃犯の一人として参加してしまった。
「というか本当に何が起こってるんですかぁ……?マスタード君はいつの間にか【ガス】止めちゃってますし」*1
なるべく誰の記憶にも残らない内に離脱してしまおうと思っていたけれど、雄英高校なら誰かしら助けてくれるかもしれないと期待していたのに。
森の中にはほとんど誰もいないわ、いてもヤバそうな雰囲気で近づきたくないわで八方塞がり。どうしろと言うのか。
また一つ轟音が響き渡る。ああもう、ここで戦争でも起こっているのかと愚痴りたくなる。ヴィランも生徒もレベルが高過ぎて迂闊に踏み入ることが出来ないじゃないか。
先程から特にヤバい音が連続している方に近づいているのだが、一体何が────
「ハ、ハハハハハハハハハッ!!やるじゃあないか!!」
「上から目線で物言うには実力不足だぞ三下ァッ!!」
「ぴいっ!?……って、えっ?」
【空気を押し出す+筋骨
【フィジカルギフト×瞬間移動】による全方向からの衝撃波。
たった二人による無数の個性の激突。無限の手札に究極の二枚で食い下がる……否、優勢にすら立ってみせる。
全ての攻撃が並のヒーロー/ヴィランを一撃で黙らせ、一瞬の駆け引きが次の瞬間の生存者を決める。
間飛の拳が漆黒の爪を砕き、誰かの鱗が紡がれた拳を受け止める。音も前兆も無く間飛の姿が掻き消え、誰かの風が魔王を運ぶ。
「素晴らしい……!【ワン・フォー・オール】と【瞬間移動】が完全に共生している!互いを喰い合う事もなく、当たり前のように!」*2
「そういうテメェは随分と醜悪だな?無理やり束ねた個性が悲鳴上げてんぞ」
「皆強情なものでね。要らないと言うから貰って上げたのに返せと言ってくるのさ。自分から寄越したのに酷い態度じゃないか?」
「悲惨なのはテメェの顔と頭だろ。異形型の持ち主でも差別する面しやがって」*3
渡我被身子が、誰もが割り込めない戦場で尚、彼らは会話を交わす余裕すらある。未だ両者共に無傷。間飛はオール・フォー・ワンの防御を崩せず、オール・フォー・ワンは間飛を捉えきれない。互いの手札の強みがこれ以上なく発揮されていた。
遠距離からのデコピンスマッシュ。狙いを絞って威力を抑える代わりに速度の上がった跳ぶ打撃。夜の森を駆け抜けながらオール・フォー・ワンへと打ち出していく。
「そんな豆鉄砲じゃあ、話にならないよ!?」
「安心したよ。この程度でくたばってたらガッカリだ」
「ふふふ……!オールマイトと違って口が達者だ。君との戦いは楽しくて仕方がないよ!」
【個性空気砲+粉塵煙幕+発火】
オール・フォー・ワンの手元から爆風が放たれる。ただの空気を押し出すだけだった攻撃に爆炎が上乗せされ、火事が起こる前に木々が吹き飛ばされていく。
先程までの攻撃にほんの少しの個性を上乗せしただけの一撃。ただ傍観しているだけのトガの背筋を冷たいものが伝う。
(あんなの……こっちに来たら絶対ヤバいです!)
防御なんて選択肢が生まれない。死に物狂いで回避に徹するべきだ。隠密が基本であっても分かる高い破壊力に腰が抜けてしまいそうだ。
「雑な遠距離ばっかしやがって……近接戦闘に自信がありませんって言ってるようなもんだろ?」
「何?」
「当たるかよあんな大振りが!」
「ぐっ、おおっ……!?」
爆撃を回避していた間飛がオール・フォー・ワンの懐に潜り込んでいた。その距離は間飛のテリトリー……オール・フォー・ワンにとってのデッドゾーン。戦闘開始から数分、とうとう魔王に一撃を加えた。
固く握りしめられた拳が鳩尾を捉え、腹の奥へと深く深く痛みを届ける。空気の破裂音を立てながら魔王が吹き飛ばされた。
「マズイな……弱りきったオールマイトならともかく、今の君を相手するには僕の方が不足しているかな?」
「最初から言ってただろうが。恥かくだけだって」
「なあに、心配はご無用さ。それに僕の本命は別に今日この時である必要も無い」
でもね、とオール・フォー・ワンは続ける。
「やられっぱなしで終わるのも悔しいだろう?」
「ッ!!?テメッ……!」
【放電+磁力制御+カッター生成+変電】
バチリと電流が弾け、音が消えた。
バリバリバリィッ!!!
「……?はて、僕が何をするか分かっていたのかい?アレすら避けられるんじゃあ本当にマズイぞ……」
「ッッッ……!
「連発は出来ないけどね。ほぅら、僕の手の方が保たないんだよ」
ダラりと垂れ下げられた左腕は所々が炭化しており、痛々しい反動をありありと示している。それも時間にすれば数秒で治癒しているのだから理不尽なことこの上ない。
ならばこちらも理不尽で対応するしかあるまい。
「じゃあ……もう片手も使い物にならなくしてやるよッ!!」
「チッ、【衝撃反てn───」
打撃のインパクトが来る瞬間にオール・フォー・ワンはカウンター用の個性を発動し───間飛の姿が殴る前に掻き消える。
どこに、など思わない。魔王の背中に感じる誰かの重みと熱。
「こっちだぞウスノロ」
「……!!」
腕を組んでオール・フォー・ワンの背中にもたれ掛かりながら、嘲笑うように魔王へと話しかける。
正面からの超スピードによる突貫を餌に、あの一瞬でオール・フォー・ワンの背後へと【瞬間移動】を発動。一秒もないほんの僅かな一瞬、オール・フォー・ワンは間飛を見失っていた。
「離れろ!」
「嘲笑はどうした?オール・フォー・ワン。余裕が無いじゃないか」
「この……ッ!?」
肥大化させた腕での裏拳。オールマイトと互角どころかオールマイト以上のパワーによる薙ぎ払い。やはりオール・フォー・ワンに手応えは感じられることがなく、彼の腕の上で間飛が冷めた目で見下ろしていた。
振り払おうと腕に力を込め、フルフェイスの髑髏に膝蹴りが叩き込まれる。上から踏み潰すように飛び込んできた間飛の膝が髑髏を砕いて顔へと到達。浅いとは言えないダメージが通る。
「チッ……!頭蓋砕く勢いで蹴ったってのにピンピンしてやがる」
「……そうでもないさ。不完全とはいえ【ショック吸収】を貫いた」
ユラりと人間味を感じさせない挙動で立ち上がる。砕けたマスクの隙間から覗くパーツのないのっぺらぼうが笑った気がした。
今間飛とオール・フォー・ワンの戦闘が成立しているのは、偏に“枷がないから”だ。周囲に民間人がいれば【瞬間移動】で無責任な回避は出来ず、自分以外の全てを人質に取れるオール・フォー・ワンの方がよっぽど有利になる。
もしオールマイトが周囲への被害損害を一切気にしていなければ、オール・フォー・ワンがこうして生き延びていることも無かったと言える程ヒーローの枷は大きい。
「様子見のつもりが興が乗ってしまった。ちょっとやそっとでどうにかなる相手で無いこともわかった……僕はここらでお暇させてもらうよ」
「そうかよ……帰るならさっさと帰りな」
「ふむ、見逃してくれると?」
「止める手立てがねえ。退くなら退け」
利口だね。とオール・フォー・ワンはつまらなそうに黒いモヤに包まれてその場から姿を消した。
一秒、二秒……オール・フォー・ワンが姿を消してから二分ほど立ってようやく、間飛は息を吐いた。
「っはあああ〜……しんっっっど……」
どさりとその場に腰を下ろす。おそらくオール・フォー・ワンは本当に去った。黒いモヤによる不意打ちは間飛には無意味で、やるとするならとっくに動いているだろう。災害級のヴィランなど一人で相手にするものじゃないなというのが間飛の感想だ。
しかし忘れてはならない。近くにはもう一人ヴィラン(扱いされていた少女)が…………。
「あ、あのー……移くん、です、よね?」
「……あ?トガちか?」
……あれ、お知り合いですか?
マスタード「……雄英生徒いなくね?」
マスタード「何か向こうはドンパチやってるし」
マスタード「一体どのバカが戦って───」
AFO「ははははははは!」
間飛「ぶち殺す!」
マスタード「」
マスタード「……え、何かコッチに向けてない?」
マスタード「ちょ、やめ──」
【悲報】戦いの余波でマスタード