あんまり関係ない話ですが前回の感想のほとんどが『Mr.コンプレスやらかしてて草ァ!!』的なコメントで笑いました。
あんな特大爆弾抱えていけばそりゃそうなりますわな……。
ブラドキングの通報によって救急や消防、警察が到着した。ヴィランが去ってから十五分後に。
生徒四十二名の内ヴィランのガスによって耳郎、葉隠、回原、骨抜の四名が意識不明の重体。重軽傷者六名。そして行方不明
プロヒーローは六名のうち一名だけが頭を強く打たれ重傷。それ以外は無傷だ。
一方ヴィラン側は三名の現行犯逮捕。彼らと一名の潜入捜査官を遺して他のヴィランは跡形もなく姿を消してしまった。
これを受けて雄英高校では緊急会議が開かれていた。度重なるヴィラン連合の襲撃を思えば対応の甘さ、そして想定の甘さを反省するばかりだ。
「奴らは既に戦争を始めていた……ヒーロー社会を壊す戦争を」
根津校長の言葉に全員が同意する。雄英高校で警戒していたのはあくまでも“ヴィランの活性化”であり、ヒーローそのものに対する挑戦状などとは露ほども思っていなかった。
ミッドナイト、そしてプレゼントマイクが続ける。
オールマイトという平和の象徴が生まれて以来、組織立った犯罪はほとんどが淘汰されている。仮に彼らの脅威を正しく認識していたとして、我々は襲撃を防ぎきれていたのかと。
オールマイトという圧倒的な味方を得たが故に、自分達は知らず知らずのうちに平和ボケしていた事を思い知らされたのだ。
メディア達は挙って雄英高校の不祥事を報道する。仰々しい見出しと共に書き出されている記事の内容のほとんどは雄英を非難しており、現場で何が起こっていたのかも知らぬ記者が訳知り顔で書いた文章が羅列されていた。
「この際だから言わせてもらうがよ……いるだろ、内通者」
「マイク……やめて」
「だがよ、合宿先を知っていたのは俺達教師陣とプッシーキャッツだけだ。ヴィランがあそこに来る理由が何ひとつねえだろうが!」
堪えきれないといった様子でプレゼントマイクが声を張り上げる。USJの時からおかしいと思っていたが、ヴィランがこちら側の動きを把握しすぎていると感じていた。こと今回に至ってはプッシーキャッツの私有地での襲撃。さすがに不自然過ぎる。
待ったをかけたのはミッドナイトとスナイプ。この状況下で疑心暗鬼を引き起こすのはまずいと静止するが、やはりプレゼントマイクは不服そうに唸るだけだ。
その後も会議は続く。オールマイトがダサい着信音を鳴らしながら廊下に出たりなどあったけれど、ヒーロー達の方針は決まっている。
ヴィランなどに屈してなるものか、と。
◇
「……洸汰くん、無事かな」
一人病院のベッドに横たわって、ぽつりと呟く。
両腕にはテープやら湿布やらが貼られ、頭にも胸にも絆創膏が見られる。無茶の対価は決して安くはなかったらしい。
ゆっくりと上体を起こしてもさほど痛みは無く、とりあえずで左右を見回してみるとお母さんの字で書かれた書き置き。そして皮の剥かれたリンゴが置いてあった。
「おっ、今日は起きてたか」
「上鳴、くん?」
「おーい!緑谷起きてた!」
不意にかけられた声にドキッとしながら声の方に目をやると、上鳴くんがドアから顔を覗かせていた。僕が起きていることを知ると廊下の方にも声をかけていた。
一体誰に、と思っているとゾロゾロと想像よりもずっと多い人数が病室へと入ってきた。峰田くん、そのメロンは……?
「皆で買ったんだ!食えるか?」
「あ、うん。ありがとう……?」
「テレビ見たか?学校今マスコミやべーぞ」
「入学してすぐン時の比じゃねーな」
砂藤くん、尾白くん、常闇くんと……とにかく沢山の人が来てくれたみたいだ。メロンはとりあえず看護師さんにでも切ってもらおうか。
A組全員で来てくれたの?と尋ねてみると少し悲しそうに飯田くんが答えた。ヴィランのガスで耳郎さんと葉隠さんは未だに意識が戻っておらず、八百万さんも頭に酷い怪我を負ってここに入院しているらしい。
だからここにいるのはその三人を除いた……。
「いや、爆豪君も抜いて……彼がいるから十六人だ」
「……よぉ」
「心操くん……?」
B組に編入したばかりの心操くんが、A組の皆に混ざって来ていた。彼もヴィラン襲撃の際に戦い、ガスの原因だったヴィランを無力化して逃げていたのだとか。
「ヴィラン一人無力化出来て逃げるのがやっとだったよ……。近くで間飛もヤバいのと戦ってた」
「ッ、そうだ。間飛くんは……!?」
「落ち着け」
まだ、助けられるから。と切島くんが言った。
昨日轟くんと切島くんは今日のように病院へと来ていたらしく、そこでオールマイトと警察の人が八百万さんと話をしているところに遭遇した。
B組の泡瀬という人と協力し、ヴィランの一人に発信器を取り付けていた。そしてその信号を受信する為のデバイスを創ることも出来ていた、と。
つまり切島くんは八百万さんにその受信デバイスを創ってもらおうというのだ。
「それは……!オールマイトの仰る通りだろう!プロに任せるべき案件だ!」
「ンなもんわかってるよ!!でも!何っも出来なかったんだ!!」
「静かにしろお前ら」
声を荒らげる切島くんと飯田くんを、一言で心操くんが黙らせた。【洗脳】なんて使っていない一言で。
だって、彼の手は血が滲むくらいに強く握られていたから。
「さっきも言ったけど……俺は、間飛がヴィランと戦ってるところを遠くからチラッと見たんだ」
「……うん」
「……正直、どのヴィランよりもヤバそうな奴だった」
「え……?」
心操くん曰く、僕のスマッシュや轟くんの全力と同等以上の攻撃を連発していて、間飛くんでさえ互角に殴り合うのがやっとのように見えていたらしい。
後で合宿を襲撃していたヴィラン達の特徴や名前を知り、間飛くんが戦っていたヴィランの情報は無かったという。
マスキュラーよりも、死刑囚よりも。間飛くんが相手していたヴィランは間違いなく格上のヴィランだったと。心操くんは語る。
「切島の言うことも分かるし、飯田の言うことも分かる。でも……間飛よりも弱い俺達が、間飛を助けられるのかなって、思わなくも、ない」
「それは……」
「……最後に間飛を見たのはお前と、障子と轟だったか?」
あの場で間飛以上の実力がある奴はいたのか?という心操くんの問いに、僕達は答えられない。
マスキュラーもムーンフィッシュも、マグネもジャックガムも……間飛くんなら何とかなったんじゃないだろうかという思いが否定できない。
「それでも助けに行くって言うなら、俺は止めない。止められない」
「心操君!」
「……俺も、行けるなら行きたいよ。でも、足でまといになるのが分かってる」
反対するにも賛成するにも力不足。心操くんは自分の事をそう評すると、一言短く「……ごめん、邪魔した」とだけ言って去ってしまった。
静まり返る病室。来た時の賑やかさはどこへ行ったのか、痛いくらいの沈黙だけがその場にあった。
「……俺と、切島は行く」
「なっ……!?」
「爆豪を狙ってた奴らが“とりあえず”で間飛を攫ったんだ、何があってもおかしくねえだろ」
沈黙を押しのけて轟くんは賛成だと……いや、周りがどうであれ自分達は行くのだと言った。当たり前だけど皆はそれを止めようと言葉を尽くす。
障子くんが『感情で動いていい話じゃない』と、青山くんが『戦闘許可は解除されている』と、そして梅雨ちゃんが『冷静になりましょう』と。
「どれほど正当な感情であろうと……また戦闘を行うというのなら───ルールを破るというのなら、それは、その行為はヴィランのそれと同じなのよ」
「…………!!」
梅雨ちゃんの言葉に全員が固まった。あの合宿で自分達を襲ってきたヴィランと同じという言葉は、僕達に強く釘を刺した。
僕は……どうすればいいんだろう……?
◇
神野区、とあるバーにて。
「「わあっはっはっは!!」」
グビッ……グビッ……ダンッ!!
「「麦茶だこれ!」」
おい推定誘拐被害者。
マスタード「よおエリート学生共」
心操「(ヴィラン……!?)何が目的だ!」
マスタード「そんなのどうでも───」
心操「……かかった。今のうちに逃げよう!」
マスタード「……あれ?僕に何があった?」
マスタード「雄英生徒いなくね?」
〜【化け物VS化け物】の後書きに続く〜
実はちょろっとマスタードと接触していた心操君でした。一瞬過ぎてマスタードも何があったのか覚えていなかった模様。【洗脳】の命令待機が解けたのは間飛とAFOの戦いの余波です。