平行世界間チャット   作:ペンギン隊長

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チャット形式じゃないSS
成り代わり的な描写があるのでそういうのが嫌いな人は(この作品読んでないだろうけど)注意


 破壊者√小咄1

 

 

 

『…私、死んじゃうのか…』

 どんどん体が冷えていくのがわかる。雨だけじゃない。体から血が流れていっているからだ。

 いやだなあ。

 まだ、死にたくない。

 しにたく、ないのに。

『――よう、お嬢ちゃん、転生って奴に興味はないか?』

 

 

 

「…はっ」

 起き上がってあたりを見回す。眠りにつく前に見たものと同じ、見慣れぬ部屋だ。

 どうやら、夢を見ていたらしい。

 "私"が、死んでしまう夢。普通の、人間の少女だった"私"が、理不尽に殺されてしまった夢。そうして死ぬ前にどう生きていたのかも、何となく覚えている。

 でも、"私"は私じゃない。だって、私は人間じゃない。妖怪…ムジナ族だ。まだ生きているし、生まれてからたったの7年しか経っていない子供だ。無力な、子供だ。

 "私"は、死んだ時には16歳だった。何の力も持たない、ただの人間の、女子高生で、雨の日に通り魔に刺されて死んでしまった。特に頭がいいわけでもなく、何が得意というわけでもなく、特別美人という事もない。何処にでもいるような、普通の女の子だった。

 普通の人間だった。

「…わたしは、いきてる」

 今、私の頭の中には、私と"私"の二人分(と言っても合計20年ちょっと分にしかならないが)の記憶がある。理由はわからない。でも、もしかしたら、"私"が死んだ時にあの人が言った、転生、というものが関係あるのかも知れない。

 つまり、"私"が転生した結果、私になったのではないか、という事。

 だからといって、それがどういう意味があるのかといえば、特に意味はないのだけど。

 だって、"私"の人生も知識も、私の役にはあまり立たない。そりゃあ、人間の義務教育の知識は無駄にはならないだろうけど、妖怪としての力に関する知識はないし、独り立ちができるような知識はない。

 私は、もう、ひとりで頑張っていかなきゃいけないのに。

「…にいさま」

 つい、ほんの少し前までは、私には兄がいた。両親は、物心着いた時にはいなかったからわからない。多分、死んだのだろう。私は兄と二人、…いや、兄に守られて生きてきた。

 兄は、仙術の才を見出され、悪魔に転生した、らしい。私は細かい経緯を知らないのだ。とりあえず、兄が転生悪魔になったことは事実である。悪魔になった兄はメキメキ腕を磨き、強くなっていった。

 そして、力に溺れて、己を悪魔にした(あくま)を殺し、何処かへ行ってしまった。

 いや、正確には、王を殺して逃げた所までが事実で、その詳しい経緯や方法については私は知らされていない。何処かで聞いたような話だ。よくある話なのだろう。

 兄は今や、はぐれ悪魔として指名手配されているそうだ。かけられた追っ手も返り討ちにされているそうで、危険視されているようだ。妹としては複雑な心境だ。兄が死んでほしいなどとは、全く思わないけれど。

 そして、その危険なはぐれの妹である私は、同じように危険分子になる可能性がある、と、暫定的な処置として閉じ込められている。生かすか殺すか、悪魔たちが話し合っているようだ。

「…にいさまは、どうしてわたしをおいていったの?」

 それは私が弱いからだ。弱くて足手まといだからだ。

 私には戦う力がない。野良猫程度の生命力はあるが、殺す気でかかってくる刺客(ハンター)には勝てないだろう。私を連れて行く事は、兄にとってマイナスにしかならない。…いや、そういう意味では、今まで私を守っていた事だって、兄に利なんてなかっただろう。兄一人の方が、もっと楽に生きていけたはずだ。だから、見捨てられた、なんて思うのも烏滸がましい。

「にいさま…」

 がちゃり、と音がした。私は音のした方向を見る。この部屋の唯一の出入り口である扉が開かれて、見知らぬヒトたち(寧ろ見知らぬ悪魔、というべきだろうか)が入ってきた。

「小春ちゃんだね?」

「…はい」

 多分、そのヒトたちの中で一番偉いのだろう、紅い髪の男の人が私を安心させようとするように目線を合わせてニッコリと微笑んだ。

「君の身柄は私の実家で保護する事になった。君のお兄さんははぐれ悪魔になってしまったけれど、君はそもそも悪魔になってもいない子供だからね」

「…にいさまは」

 言いかけて口をつぐむ。私に何が言えるというのか。何を聞いたとしても、出来る事などないのに。

「彼は、そう簡単には討伐されないだろうね。いずれ、ひょっこりと君の前に姿を現すかも知れない」

 それは、私が兄を招き寄せるための罠になるという事だろうか。

 私がそう思った時、男の人は少し困ったような苦笑いを浮かべた。

「いや、君を利用として彼を捕まえようとか、そういう話ではないよ。…ただ、兄としては、妹を完全に見捨てたりはできないだろう、と思っただけだ」

 その言葉には、不思議と実感のようなものがこもっているようだった。彼にも、妹がいるのだろうか。もしそうだとして、それで、何か同情のようなものでもあるのだろうか。

「とにかく、君はこれからの身の安全を心配しなくていい。…もしも、気が向いたらうちの妹の眷族になってくれるといいな、とは個人的に思っているけどね」

 そんな、優しいのか打算的なのかよくわからないセリフを聞いて、私は逆に信用してもいいんじゃないか、という気になった。甘い言葉の後ろには罠が隠れているものなのだ。どういう思惑があるのかを多少なりと教えてくれる分、私も対処ができる。

 私はこくり、と頷いた。

 

 

 

 

 

「私はリアス。リアス=グレモリーよ」

 紅髪の美少女はそう言ってにっこりと笑顔を浮かべた。私の思考回路が停止する。

 リアス=グレモリー。

 綺麗な紅色の長い髪。

 悪魔。

 転生悪魔。

 はぐれ悪魔。

 悪魔の駒。

 (キング)

 兄妹。

 仙術。

 暴走。

 主殺し。

 もしかして、私は、私と兄様は、取り返しのつかない事を、しでかしてしまったのではないか?

「あなたの名前は何って言うの?」

「わたし、は…」

 私の勘違いであってほしい。或いは気のせいとか。主要人物への成り代わりなど、私は望まない。此処が物語の世界であるのなら、原作と変えてしまうのは良くないはずだ。私は小猫じゃない。妖怪ではあるけれど、猫魈ではない。ムジナだ。

 私は、特別なところなど何もない子供でしかないのだから。

「この子は、これから名前を変える必要があるんだ」

「だったら、私が考えてあげる!」

 リアスちゃんはそう言って楽しそうに笑みを浮かべて考え始める。そうして、嬉しそうに笑って私の手をとって言う。

「あなたの新しい名前は、塔城手鞠(てまり)、ってのはどうかしら?日本の妖怪みたいだし、和風の名前がいいでしょう?」

「てまり…」

「可愛い名前でしょう?」

 私が頷くと、リアスちゃんはもっと嬉しそうな顔をした。

 その名前に関して、思うことがありすぎる。姓にも、名にも。しかし、うまく言葉にならなかった。私が何も言えない内に話はどんどん進んで、どうやら私は塔城手鞠になってしまったようだった。

 

 

 

 

 塔城。

 それはリアス=グレモリーの戦車(ルーク)の名であるはずだ。

 はぐれ悪魔になった姉との別離の後にリアスの手で転生悪魔になった妖怪。主人公の一つ下の後輩。小柄なマスコット系ロリ美少女。しかし、戦車の駒によって随一のパワーを誇る。ヘルキャット。主人公に思いを寄せる少女の一人。

 私が塔城になったら、本来の塔城である少女はどうなるのだ?この世界の物語は?

 それに、兄は、一体どういう立ち位置になるのだろう。

 もしかして、物語が滅茶苦茶になってしまうのではないだろうか。

 私が塔城(ルーク)で、大丈夫なのだろうか。

 そんな事を、ずっと考えていた。グレモリーの屋敷に引き取られてから数日が経つ。私はその間殆どずっと、己に与えられた部屋に引きこもって過ごしていた。

『自分の眷族になる子だっていうなら、王として自分でどうにかするべきだと思うけど?』

 部屋の扉の向こうで誰かが話している声が聞こえる。男か女かはわからないが、多分私とそう年の変わらない子供、だろう。

『だって…父様たちはそっとしておいてあげなさいって言うけど、手鞠をこのまま放って置いちゃいけないと思うんだもの。でも、私にはどうすればいいかわからなくって…』

 続いて聞こえた声は、リアスちゃんの声、だろうか。内容はよく聞こえないが、私の名前を口にしていたような気がする。

『…まあ、様子を見るくらいはするよ。でも、ケアは自分でやってね』

 静かに扉が開く音がして誰かが入ってくる。私は膝を抱えたまま、耳を澄ます。私からだいぶ離れた位置で、足音が止まる。

「…ふむ。具体的な事はわからないけれど、彼女は不安なんだね。自分が、今ここにいるという事そのものが」

 私は思わず顔を上げて声の主を見る。綺麗な紫色の瞳が、私を見ていた。

「大丈夫、リアスは君を受け入れる気でいるよ。それで何か問題が起こったとして、その時はその時だ。責任を持って二人で、周りの人も巻き込んでどうにかすればいい。…まあ、詳しくは素直にじっくり話してみればいいと思うよ」

「じっくり話してみる、って言われても…」

「悪魔だって言葉なくして分かり合うことはできないよ。まあ、無事和解したら、その内白音を連れて遊びに来るから。年も近いみたいだし、仲良くできるんじゃないかな、多分」

 そう言って、その人はさっさと部屋から出ていってしまい、後には私とリアスちゃんだけが残された。

 気まずい。

 とても気まずい。

 というか、あの人は一体誰だったのか。何をしに来たのか。さっぱりわからない。

「あのね、手鞠」

「…はい」

 リアスちゃんが私のすぐ傍まで歩み寄り、ちょこんとしゃがみこんで言う。

「私ね、あなたがうちに来てくれて、嬉しかったの」

 それは、知っている。何故ならリアスちゃんはとてもわかりやすいからだ。思っている事が完全に表に出ている。だから、理由はともかく、私を歓迎してくれている事だけは知っていた。

「私にも妹ができたみたいで、嬉しかったの。イッセーたちみたいに、血の繋がりのない、別の種族でも、家族になれたらいいな、ってそう思ったの」

「…わたし、よわいし、あしでまとい、ですよ?」

「そんなの気にしなくていいのよ。手鞠はまだちっちゃいんだもの。これから十分強くなれるわ。…私だって、今は弱いわけだし」

 そう言ってリアスちゃんは不服そうに口を尖らせた。何やら己の強さに関して、思う所があるらしい。私は今の彼女の実力を全く知らないので何とも言えないが。

「だから、私と一緒に強くなりましょう、手鞠。目標は打倒ヴァーリよ」

 ヴァーリって誰ですか、とは聞けない雰囲気だったので、私は頷いた。いや、原作的に思い当たる節はあるのだが、この時点で知り合っている訳のない相手なのだ。そもそも陣営が違うのだし。

「リアスおねえちゃんは、わたしで、いいんですか?」

「愚問ね。手鞠でいい、じゃなくて手鞠がいいの。私の戦車(いもうと)になってくれる?手鞠」

「…うん」

 私がそう言って頷くと、リアスちゃんはまた、本当に嬉しそうに笑ったのだった。

 

 

 

 

 そして数日後。

 私は、自分と同じくらいの年頃の、猫族と思われる少女と相対していた。短めのサラサラの白髪を揺らし、彼女は私の顔を覗き込んで金色の瞳を細めた。

「…ムジナぞく、ね」

「…そう、ですけど」

「わたしは、兵藤白音」

「塔城手鞠、です」

 …何か今、すごく突っ込まなきゃいけない事を言われた気がする。

 兵藤って、確か主人公の苗字じゃなかったっけ。白音って確か原作の塔城の本名じゃなかったっけ。私の覚え違い?それとも、私の事以前に既に原作とか崩壊してたってこと?

「一兄さまにもたのまれたし、なかよくしてあげてもいいよ」

「それは、ありがとう…?」

「にゃん♪」

 白音ちゃんは満足そうににっこりと笑みを浮かべた。少し離れたところでリアスちゃんとあの見知らぬ男の子(多分、白音ちゃん曰くの一兄さま…兵藤一誠、だろうか)が安心したような笑顔を見せている。何か話しているようだが、よく聞こえない。

「あ、でも、一兄さまによけいな事したらつぶすにゃん♪」

 笑顔を浮かべたまま低い声で私だけに聞こえるように囁かれた言葉に、私は何度も頷くしかなかった。

 明らかに本気だ。そしてブラコンだ。怖っ。

 余計な事って何なのか、ってのは、聞かない方がいいよね。それとも、聞いといた方がいいのかな…こういう相手に接したことないからな、私…。

 "私"は友人関係も普通だったし…私には言うほど交流のある同年代の人がいないんだよねえ。

「白音、あんまりその子いじめちゃダメだぞ。友人関係は上下関係じゃないからな」

「いじめてないもん。兄さまの妹のわたしが、よわいものいじめをするわけないでしょ」

「…まあ、白音の事は信用してるけどな」

 ぽんぽん、と頭を撫でられて白音ちゃんは嬉しそうに笑う。本当にお兄さんの事が好きらしい。

 いつの間にか来ていたリアスちゃんも私の頭を撫でる。

「手鞠をいじめる事は私も許さないけどね」

「リアスさんのゆるさない、なんて別にこわくないもんね。いじめないからかんけいないけど」

「うふふ、その言葉、撤回する時が来ないといいわね」

 リアスちゃんと白音ちゃんが微笑みつつ笑っていない視線を交わし合う。雰囲気からして怖い。

 …この二人、仲が悪いんです?

 私が視線を向けると、彼は少し困ったような顔で笑った。どうやら、今に始まった事ではなさそうだ。何が原因なのかはわからないが。

 …いや、さっきの白音ちゃんの発言と、リアスちゃんが彼を頼ったという事実を考えると…

「折角遊びに来たんだから、二人共そんな険悪な雰囲気ださない。この子も困ってるだろ?」

「…一兄さまが、そう言うなら」

「イッセーがそう言うんじゃ、しょうがないわね」

 まさに鶴の一声という感じだった。イッセーさんマジパないです。でも多分、根本原因もある意味あなたですよね。多分だけど。

 

 

 主人公自ら物語を変えていってるなら、私程度が何をしたって大勢に変わりはないだろうなぁ。もう、原作について深く考えるのはやめておこう。主に精神衛生上よろしくない気がする。

 それに、白音ちゃんがあんな幸せそうに笑える世界なら、きっと、そんな主人公でも大丈夫。悪いことにはならないだろう。…多分。

 私も、自分のことを自分なりに頑張らなくちゃ。

 

 

 

 

 





補足
・この世界の塔城が転生してリアスの眷族になるまでの話
・大賢者に、なんとなく目に付いたから拾い上げただけ、程度のノリで転生させられた
・大賢者は割と彼女の事を気に入っているので、加護を与えてるが、加護元がアレな時点でその効果とかお察し。そもそも異世界の神様に等しいが神様ではない存在の加護だし…
・兄が主殺ししたのは彼女が6歳の時。本編の9年前くらい
・兄は邪気暴走とかでなくただの俺TUEEE的なアレいや、ポジション的にシスコン属性であっちの理由でもあるんだが。転生者。でも記憶同期は二人共暴走後かな…
・ムジナ族。仙術が使える
・兄の名前は(ナバリ)、塔城の本名は小春、前世名は万里江(まりえ)
・大賢者による転生者はもれなく大なり小なりの誘導スキルに対する耐性スキルがついている
・大賢者は、人間(ヒュム)は皆傲慢で自分勝手で貪欲で差別主義者で精神的に醜い、みたいな偏見を持って接している。ので、その枠を外れる相手には結構簡単にデレる。チョロい。でも対象の拡大はしてくれない。お前はお前、お前の友達は只の他人
・え、ラノベ時空?!っていうかハイスクールD×D?!原作変えちゃまずいよn…あー、うん。どうにでもなーれ∩(´・ω・`)つ―*'``*:.。. .。.:*・゜゚・*っていうスタンス
・転生者が原作改変するというよりは、原作改変からの穴を埋めるために転生者が配置された感じなので、ぶっちゃけ何らかの間違いでこの子が外れたとしても他の誰かが同じポジションになっていただけというアレ。まあ、大賢者の介入でこの子のポジションはほぼ確定枠だったわけだが


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