「よう、目が覚めたみたいだな」
気が付けば俺は、見知らぬ部屋にいた。目の前には、フードを被ったあからさまに怪しい、多分男だろう人物が居る。
此処は何処だ?
「いや、残念ながらお前死んだだろ?電車待ちしてる所で背中をドンッっで事故死。グロい死に様だったな」
そう言われた途端、言われた通りの光景が脳裏に蘇ってくる。
背中からの衝撃と、己に迫る電車。
それ以上を思い出せないのは、無意識に思い出さないようにしているのか、即死だったので記憶に残っていないのか。いずれにしても、あまり気持ちのいい記憶ではない。
というか、背中を押されて死んだって、事故じゃなくて他殺なんじゃないのか?
「いやいや、故意に押されたわけじゃない以上、事故でいいんじゃないか?っていうか、その辺もうお前には関係ないし、深く突っ込むとこじゃねーから」
何となく、ムッとした。関係ないって、俺はそれで死んだんだぞ?
「ああ、お前は死んだ。だから、これからちょっと別の世界に転生させようと思うわけだが」
『転生?』
それはあれか、SSとかでよくある、神様転生って奴か?神様のミスで死んでしまった主人公が特典もらって別の世界に転生する、的な。
「…状況の把握が早いのはいいが、やっぱりムカつくな」
ぼそり、と神様(仮)は何か呟く。
「だいたいあってる、が、俺は別に何もミスしてねーから。お前が死んだのはお前の…そうだな、運が悪かっただけだ。或いはそういう運命として生まれたというか。だから、俺はお前に対して何ら負い目はないから」
おわかり?と神様は指を振ってみせる。気障っぽいというか、カッコ付けすぎてムカつく。
「まあ、とりあえずその、特典付き転生、ってのは一応正しい。お前はこれからどう生まれるのかを選ぶことが出来るし、強大すぎない程度の特殊能力を持つことが出来るし、どんな
『…負い目がないなら、何で特典をつけてくれるんだ?』
「観測世界の人間は神秘に対する親和性が低いから、そのまま転生させると脆弱すぎてすぐ死ぬからな。特に、お前を転生させる世界は、割と簡単に裏側を垣間見る事が出来てしまう上に力のインフレも激しい。瞬殺だな」
よくわからない理屈だが、折角転生させるんだから、早死されては困る…という事だろうか。
というか、俺は一体どんな世界に転生させられるんだ。
「具体的には言わないが、観測世界から見てアニメ化されたラノベになってる世界だ。どっちかっていうと男性向け」
『…って事はつまり、ハーレムとかも夢じゃない?』
「まあ、その気になって頑張れば出来ない事もないだろうな」
その言葉で一気に気分が前向きになった。具体的にどのラノベの世界なのかは気になる所だが、ラノベの世界なら美少女や美女は多いだろう。好みの女の子の一人や二人、簡単に見つかるに違いない。
「お前の望みはハーレムか」
『ああ。ハーフのイケメンになって女の子にチヤホヤされたい』
「そこまではっきり言い切られると逆に清々しいわ…」
…いやでも、さっき転生先の世界は力のインフレがヤバイ世界だって言ってたな。だったら、ある程度戦闘力とかないと厳しいか?でもニコポとか撫でポとかも欲しいしな…
「ほう、付ける能力は
『出来れば勉強も運動もできるパーフェクトなイケメンになりたいんだが』
「素質は付けてやるから自分で頑張れ」
あっさりとそう返した後、神様はぶつぶつと独り言を呟き始める。
「となると…ヒュムとのハーフで、魅了系職能の家で、女の子と知り合い安くなるバイアスかける、って所か?元々そういう職能のある家ならこっちで付けるのが低ランクでも相乗効果で高い効果が出せるようにできるだろうし…」
一通り独り言を言った後、神様はフード越しにまっすぐ、俺を見た。
「後から文句言われてもウザイから、今の内に忠告しとくぞ」
『何だ?』
「俺に出来るのは、才能を与えること、きっかけを与えることだけだ。実際にどうなるのかはお前次第、お前が実際にどう行動するか次第だ。全くの努力なしに望むものが得られるとは思うな」
とりあえず才能だけは保証されてるって事だろ?だったらそれを開花させるための努力ぐらいはしてみせるさ。それが無駄にならないとわかってるなら、必要経費みたいなものだ。
「つまり、生まれてからの事はお前の自己責任だ。それを肝に銘じておけ」
『要するに、自分で考えて上手くやれ、って事だろ?わかったよ』
はあ、と神様は大きく溜息をついて肩をすくめた。フードがズレて艷やかな長い黒髪があらわになる。…が、前髪が長すぎて目元が隠れている。
フードが外れてもメカクレキャラ、だと…?
「まあ、そういうわけで…よい転生ライフを☆彡ってやつだな」
動揺する俺を余所に、視界が勝手にブラックアウトしていく。
「…つぅか、俺自分が神様だなんて一回も言ってねーんだけど。神様じゃなくて管理者だし」
神様が何か言っていたが、それを認識する前に俺の意識は途切れた。
10歳の誕生日を迎えた俺は、風邪で二日寝込み、その間に前世の記憶を取り戻した。酷い思い出し方だ。もっと穏当な思い出し方もあっただろうに。
それに、時期が随分中途半端な気がする。赤ん坊の時に思い出しても面倒だが、小学四年生って…せめて三年前にしろ。まあ、今更文句を言っても仕方ないんだろうが。
今生の俺は悪魔と人間のハーフとして生まれた。父が悪魔で、実家から出奔して母と駆け落ちして俺が生まれたらしい。神様、俺が言ったハーフってのはそういう意味じゃない。まあ、確かに、父は外国人に見えるから、ハーフのイケメンに生まれることはできたが。
ちなみに、父が悪魔だと伝えられたのは、先日の誕生日のことである。…それがきっかけになったのだろうか?
父には、ハーフとして生まれた事で俺も持っている魔力をちゃんと使えるように訓練する事を命じられている。一応、父が指導してくれるそうだけど。
しかし、魔力があるって事は、魔法とか魔術とかも使うことができるようになるって事だよな。それはちょっと楽しみだ。やっぱ、魔法ってのはロマンだよな。
俺がちょっとそういう意図を込めて微笑うと、面白い位に女の子をメロメロにできるんだが、学校でそうやって取り巻きを作っていた事が父にバレて怒られた。
何故バレたかといえば、父の実家の職能がそういう方面の能力になるかららしい。ニコポが職能の一部って、どんなエロ悪魔なんだ…いや、逆に言えば、その職能を使えるようになれば、よりすごい(エロ的な意味で)事ができるようになるのでは?ハーレム作るのにも役に立つのでは?
しかし、父はそういうのがあまり好きでないようなので、教えてくれなさそうだ。自分で頑張るしかないか…まあ、そういう素質があるってのはわかってるんだし、幾らでも習得できるだろ、多分。
中学に入った俺は
それと…神様がぼかしていた、此処が何のラノベの世界かも判明した。ハイスクールD×Dだ。ただし、主人公が成り代わりでもしているのか、おっぱい好きじゃなくて変態トリオに入っていなかったが。しかし変態コンビと友人関係ではあるらしい。
何でそんな事を考えているのかといえば、
「うちの妹にちょっかいかけるとか、いい度胸だな」
「ちょっかい?俺はただ、可愛い子がいたから話しかけただけだよ」
主人公、兵藤一誠が眉根を寄せて俺を睨みつけているからである。
「白音が可愛いのは認めるが、ただ話しかけるだけでなく
「うわあ怖い怖い。シスコンってのは嫌だねー」
俺はそう言って肩をすくめてみせる。兵藤と美少女の二人から冷たい視線を食らってしまった。
「…あなた程度に魅了されるつもりはないですし、私は兄様がシスコンでいいと思います」
「兄は妹を守るものだからな。当然だ」
美少女…白音、だっけ?はささっと兵藤の後ろに隠れた。兵藤は彼女を守るように腕を広げる。
何か完全に俺が悪人ポジションじゃね?これ。
「っていうか、お前、
兵藤は心底不思議そうに、俺にそう問いかけた。
「何が楽しい?じゃあ逆に聞くが
何でもやり放題、よろしいじゃないか。エロい事はまだ自重しているが、俺が望めばどんな女でも抱けるし、俺に跪く。
まだ、何でも思い通りになるというほどではないが、だからこそやりがいがある。
「相手の心はどうなるんだ」
「無理矢理じゃなくて、俺を好きになってそうしてくれるんだからいいだろう?」
兵藤は視線に嫌悪感をにじませて言う。
「どうやら、君は僕とは反対の考えの持ち主らしいな。誰を信用できなくてもいいのか」
「信用?何を思っていたって、重要なのは実際どういう行動をするか、だろう」
「そう言い切られると、逆に清々しいというか、なんというか…」
呆れたようにそう言った後、兵藤は白音の手を引く。
「行こう、白音。関わらないのが双方にとって一番平和だ。…君がどうしようと僕は関知しない。自己責任だ。だが、僕の妹や友人に手を出したら容赦なく潰すから、覚悟しておけ」
「はいはい、覚悟しておきますよ」
まあ、可愛い子がいたら話しかけないって選択肢はないけどな。俺のハーレムには色んな相手を集めたいと思っているんだ。美少女は勿論、そこそこ可愛い程度の子でも好みに合えば入れたい。
兵藤と白音が立ち去った後、俺は呟く。
「つーか、アイツただの人間じゃなかったか?」
神器持ちではあるはずだが、悪魔になっても魔力の才能皆無で魔法陣で飛ぶことさえできない悪魔じゃなかったか。転生成り代わりで何か特典が付いてるから、なのか?
当然のごとく、俺は高校で駒王学園に進学した。寧ろ、そうしない理由がない。女子のレベルが高いし、原作でも出てくる美女たちにお近づきになりたかったからな。
ただ…駒王学園に行くなら、ある程度自制しろ、と父に言われてしまったが。何を心配してそう言っているのかは知らないが…ああ、もしかして魔王の妹が管理しているからだろうか。出奔してても何かしらしがらみは残るのかもしれない。
幸か不幸か、一年次兵藤とは別のクラスになった。だが、原作に干渉するのなら、二年は同じクラスの方が都合がいいような気がする。腐っても奴が主人公だ。放っておけば物語はアイツを中心に(或いは巻き込んで)進むだろう。
まあ、俺は原作を大まかにしか覚えていないんだが。
「…で、俺に何か用か?女の子に人気のない所に連れ出されるなんて、用事は二択ぐらいだと思うが」
「
「だとしたら?」
俺はキスできる程度の位置まで、紫藤に歩み寄る。紫藤は俺を鋭く睨みつけた。
「悪いことをする悪魔は「ストップ」
「「!」」
突然その場に現れたのは、兵藤だった。面倒くさそうな顔をして、紫藤の手にいつの間にか握られていた剣を籠手で押さえている。
「い、イッセー君、何で此処に?!」
「何でって、イリナを訪ねて教室に行ったら、嬬蕗とどっかに行ったって言うから、また暴走してるんじゃないかと」
案の定だったな、と付け加え、兵藤は大きく溜息をつく。
「学園での
「だって、彼が女の子に変な術をかけてるのを見ちゃったんだもん。女の子の敵よ、こいつ!」
紫藤に思い切り指を差される。人を指差しちゃいけません、って習ってないのかね、彼女は。
「妙な術とは人聞きの悪い。気持ちよく協力してくれるように、ちょっと魅了しただけじゃないか」
「君、相変わらず気軽に
兵藤に蔑むような目で見られるが、男にそんな視線を向けられて喜ぶ趣味は俺にはない。
「今回はイリナの方からちょっかいかけたみたいだから僕は何もしないけど…その内女の子に刺されるんじゃないか?」
「残念ながら、既に刺された経験がある」
「それ自慢できることじゃないからな」
俺だって別に自慢できるとは思っていない。苦い過去として教訓にしているとも。現実のヤンデレを甘く見てはならない、とな。
気が付けば、紫藤にも呆れた視線を向けられていた。解せぬ。
そして、気が付けば俺はリアス=グレモリーの下僕悪魔になる事になっていた。自分でもわけがわからない。ちなみに、兵士で駒四つだそうだ。どちらかといえば魔術師タイプではあるが、僧侶だと微妙に価値が足りないとかなんとか。
「きっちり躾てくださいね、リアス先輩」
「あなたに頼まれるのは妙な気分だけど…任せておきなさい。私の下僕になったからには、しっかり躾てあげるから。いいわね?ハウル」
妖艶に微笑うリアス先輩に俺は肩をすくめて降参を示す。紫藤がその横で得意げに笑っているのが地味にムカつく。お前確か教会の信徒じゃなかったか。
「顔はいいんだから、魅了がなくてもクラっときちゃう女の子もいると思うけど」
「殿方は顔が良ければいいわけじゃありませんわよ?先輩」
「いや、一応アイツ頭もいいし運動もできるんだよ。…
「そこさえなければ、ただのイケメンなのにね」
褒められてるんだか貶されてるんだかわからないが、聞こえてるからな。後そこの見知らぬ美女は一体誰ですか。朱乃先輩じゃない方。是非お近づきになりたいんだが。
「僕が解呪できるレベルの
「イッセーが解呪できないレベルって最上級の術だから、流石に使えないんじゃない?」
「でも、彼は一芸に秀でているタイプみたいですし…」
…。まあ、俺が魅了系以外の魔術をあんまり磨いてないのは事実だが。別に戦う必要性もなかったしな。正直、正面から戦うより魅了して従えた方が早いし楽だし。
というか、紹介してもらえないんですか、先輩。
結局、一年次の後半はリアス部長によってみっちりしごかれる羽目になった。
地味に飴と鞭の使い方が上手いんだけどあの先輩…。何か大分躾けられて来てる気がする。拙いな、俺はハーレムの主になるんだから自分が躾けられるんじゃなくて躾ける側になりたいんだが。
まあ、リアス部長なら下僕でも…いやいやいや、ダメダメ。俺が王になるんだから。…まあ、まだ俺下級悪魔からランクアップできてないんだが。
でも多分、そう遠くない内に中級にはなれるような気がする。神器も発現したし。それと共に俺が某RPGでいうとジャマー系だって事も判明したけどな。前線で活躍するには禁手に至った上で禁手が攻撃的なものである必要がありそうだ。或いは、攻撃系の魔術をもっと使えるようになるか。
…魔術の方が現実的かな。殴り合ったりとかしたくないし。近接戦闘とかしたくない。遠距離から一方的に攻撃したい。怪我するの嫌だし、現在陣営で一番有能なヒーラーが兵藤なんだよな。男に回復されるとか何も嬉しくない。
可愛い女の子に回復されるんだったら、怪我の危険があっても前線に出ることもやぶさかではないんだが。(フラグ)
そんなこんなで進級して暫く経ったわけだが、相変わらず兵藤とは別のクラスである。同じクラスなのは木場。…ちっ。兵藤のクラスには主人公パワーで可愛い女の子が転入してきたりするんだろ?知ってる。
一年には見覚えのある白髪美少女とか、不思議ちゃん系黒髪美少女とか、オドオド系の金髪眼鏡美少女とかが入ってきて早速学園で人気の美少女に追加されたわけだが、三人共サクッとオカ研に加わっている。
何か多くね?今更だけどオカ研の人数多くね?いや、大体美少女なのは大変よろしいんだが。
「ちなみにハウル、手鞠に
「そっちの金髪ちゃんはいいんですか」
というかリアス部長にシスコン属性があったとは…。いや、そんな言われるなら
「そいつ男だぞ」
「なん…だと…」
「えっと、何か、ごめんなさい…」
どう見ても貧乳金髪美少女なのに、男だと…?リアル男の娘って奴か…見た目は充分俺の好みなのに、勿体無い。いっそ性転換してくれないかな。絶対何の違和感もないぞ。
「何か、邪な事を考えられてる気がしますぅ…」
「心配するな、多分神器対決になったら君が勝つから」
「それは安心できる情報じゃないですぅー…」
あざとい。何でこいつ女じゃないんだ…。
まあそんなこんなで一年生トリオがオカ研に馴染んできた頃の夕方。俺は学園の校門の前に立って学園の中を伺っている美少女を発見した。制服的に他校生である。
「お嬢さん、誰かお探しかな?もし暇なら俺とデートしない?」
「いえ、私、待ち合わせが…」
などと言いかけ、美少女は俺の顔を見て目を瞬かせる。うーん、黒髪清楚系と見せかけて、ビッチ臭がする。ちょっと押せば誘いに乗ってくれそうじゃね?
「君みたいな美少女をこんな所で待たせるような奴なんて放っておいて、俺と遊ぼうよ。最近出来たカップル専用メニューのあるカフェとかどう?」
彼女は少し考えた後、にっこり、と笑みを浮かべた。
「…そうね、デートしてあげてもいいわよ」
「それじゃ決まりだ」
俺は彼女の手をとって歩き出す。
この時の俺の行動を、後に俺は深く反省する事になるのだが、それはまた別の話である。
補足
・もう一人のリアスの兵士。士方より先にポーンになっている
・大賢者からの心証はあまり良くない
・大賢者にとって、ハーフとは国籍ではなく種族の話である
・ゼパル家は断絶とかしてないが、父は出奔してきた次男あたり。現在名乗っている名字は母方のもの。出奔しているので駒はない
・何で十歳だったって、精通が…いや、何でもない
・ロリコンではない。単純にストライクゾーンがやたらと広いだけである。でも多分同性趣味とかライトじゃない異種族属性とかはない
・残念ながら下衆といっても差し支えない。しかしある意味エロ要員である
・ゼパルの職能はエロ方面だからね、仕方ないね
・でも別に踏み台ポジションというわけではない
・ハーフ悪魔的には強いかって言うと微妙なライン。まあ神器持ちだけど
・原作変えてやるぜって気概は持っているんだが、実力が伴っていない
・ちなみに大賢者による"特典"はポイント割り振り形式である。TRPGのキャラメイクみたいなイメージ
・生まれた時から記憶を持っている転生じゃないのは、赤ん坊には重すぎて精神が馴染まないってのと、大賢者の干渉が可能になるのはフラグが立ってからだから、というメタ的な理由。憑依とかではないが、大賢者の干渉によって転生してきた存在だから、大賢者の干渉として処理されるため。他の他所時空からの転生者も同じ制約を受けている
・大賢者がメカクレ状態なのは転生先の自分=破壊者と自分を同一視されない為の保険的なの。フードも同じく。普段は普通に髪の毛縛って目も見える状態で他者と接している
・書きながらこいつが女で百合だったらそこまで非難されなさそうだなー、とか考えてたので多分僕は疲れているんだと思う