リィン・シュバルツァー、貴様にクレア姉さん(語弊)は渡さないからなぁッ!?   作:発光米

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とりあえずまとまった量がかけたので投下します。
前回から今回の更新までの間で、夏が終わったってマジですか……?





雪降る春の麓町1

 

 

ガリレア要塞からTMPの特別急行列車に乗って、早数時間……

 

 

 

「うーん、毎度毎度、外が見られないっていうのは気が滅入るなぁ」

 

 

 

窮屈そうに銃の手入れをしながら呟くシアン。そうは言いつつも、別に慣れているので、鬱々とした表情では無いが。

 

 

 

「仕方ないんだろ、この列車自体が機密情報の塊……確か、ダイヤの方も秘匿されてるんだったか」

「そうそう、そんなのわかったら、線路に爆弾仕掛けられて、こうだからね」

 

 

レンチを宙に放り投げる。……あっぶない、顔面直撃コースだった。

壁に当たったそいつを拾い、工具と引き換えにコーヒーを差し入れる。

 

 

「ありがと……ん……?砂糖、幾つ入ってる?」

 

「3つだ」

 

「いつもボクのは5個にしてって言ったじゃん」

 

「だーめーだ。いい加減病気になって早死にするぞ!」

 

 

 

備え付けの角砂糖ポットに手を伸ばしたのを取り上げる。軽く味見した限り、だいぶ甘かったはずなのに。というか、3つでも十分多いぞ……

 

 

 

「ちぇ……えーと、で、今回ボクは何を撃ちに行くんだっけ?」

 

「つったく、ギルド事件が終わったからって気が緩みすぎだ。というか、大体俺は、お前のポイントマンじゃ______」

 

「んじゃあとっとと概要教えてよ」

 

 

 

そう言って、コーヒーと一緒に持ってきた指令書を、ひったくられる。もう怒るのもバカバカしくなって、適当なところに腰掛けて、俺もコーヒーをすすった。

 

よくわからないが、ここ半年くらい軍関係者と交流を繰り返すうち、軍人はコーヒー党が多いな、と思った。

その証拠に、今この列車に置いてあるのも、コーヒー用のドリップパックだけだ。正直、ミルクを入れないとカフェインがキツすぎて、頭痛がする。……まあ、最近はだんだん慣れてきた気もするが。

 

やっぱり、俺は紅茶の方が好みだな。フレーバーがかなり違うから、毎日飲んでも飽きないし。

 

 

 

「ねえ、これさあ……みて、此処なんだけど」

 

「ん……?ああ、任期【無期限:達成次第報告のこと】……ねぇ。ま、胡散臭いとは思っちゃあいたけど」

 

 

 

基本的に、どんなに長期的な活動が見込まれるものでも、大抵1年を境に任期は区切られる。給料だったり、定期的な報告が必要だったり。年度が変わる時、続投なり、引き継ぎなりの処置を行うんだけど。

 

 

 

「ついに来たかぁ……実質お払い箱宣言……」

 

 

 

思わずため息を漏らした。

まあ、一応俺が【鉄血の子供】としての立場をフルで使えるようにする配慮らしいが……それにしても、シアンを巻き込むのはやり過ぎだ。実質の解雇宣言だろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この前の顔合わせで、クレア姉さんが【武】としての牽制力、レクターさんが【知】としての交渉術で、ヒゲおじを支えるっていうのは確認できた。

 

 

 

……此処で俺に求められている能力は、【探】だと、鉄血宰相は言った。

 

責任が薄い立場で、縦横無尽に帝国という箱庭を、くまなく足で調べ、這いずり回るようにして、脅威をいち早く発見する。

 

どうせ新型オーブメントの方の「“探”求」という意味合いも掛けている、とかなんとかありそうだけど……

 

 

 

「……なあ、期限なしってことは、報告が一定の成果が上がらない限り、新しい任務は来ないってこと?」

 

「ああ、きっと……って、なんかヤケに嬉しそうだな?」

 

「え?だってさ、書いてある通り、【国家転覆の危機がない限り】、物資の補給アリ、給料もそのまま、各種手当は申請すれば出る!!!割と夢のような待遇じゃん!!!」

 

「おいおい……お前TMP所属だろ?ま、周りの目とかさ、」

 

 

 

シアンはキリッとした顔で俺に向き直る。

 

 

 

 

 

「別に、誰かに言われて動くタチじゃないし?」

 

 

「それでいいのかよ……」

 

 

 

 

 

「それにさ。……………人からの評価とか…………正直、最初から最底辺に近いし」

 

 

 

ねっ、と笑いかけられた奥に、どこか影が落ちていた。

 

時計を見つつ、浮き足立ちながら下車の準備をするシアンを、直視できないまま、自分の支度を始めた。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

ー温泉郷:ユミルー

 

 

シュバルツァー男爵家が統治する、東部ノルティア州に位置する、山岳地帯。

イシュガル山脈の麓に人里を構え、主な物流は細い山道とロープウェイに頼っている。

 

主な収入源は、山脈の麓であることを生かした、数々の温泉による観光業。皇帝ゆかりの旅館も擁するなど、国内外から高い評価を得ている……

 

 

 

 

 

「わぁぁっ、すごいぞ、雪がまだうっすら残ってる!もう4月になるっていうのに!」

 

 

 

実際、件のロープウェイからの景色はまさに絶景、その一言に尽きた。

 

最初の方は、地に足がつかない感覚が少し怖くもあったが、慣れて仕舞えば、街を飛び越え、山や木々と並んで、鳥と同じ目線で移動できるというのだから、飛ぶことのできない俺からすると、素晴らしい発明だ。

 

……というか、「飛べる人間の方が、おかしいんじゃないかなぁ」と、俺は常々言ってきているわけなのだが。

 

 

なんだよ闘気で翼作るとか!打撃、斬撃の強化はまだわかる。羽生やすのは、もはや人外でしょ……

 

 

 

 

 

「へえ、セントアークには雪、降らなかったの?」

 

「ああ、というか、降る方が珍しいんじゃないか?そういうシアンは……あんまり驚いてなさそうだけど」

 

「……まあね、伊達に任務で色んなところに飛ばされてないし。ま、でもユミルは初めてだよ」

 

 

 

そう言いつつ、恐る恐るガラス張りの窓の外を覗き込む。これが結構、落ちないとわかっていても怖い。現に今俺も、はしゃいでいることは自覚しているが、それ以上に揺らさないように必死なのだ。

 

 

ちなみに、二人ともゴンドラから降りる時、産まれたての子馬みたいに、足が震えてたのは、また別記にて。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

遡ること、一日前……

 

 

 

「……ってことは、次はそのユミルってところに行けばいいんだな?」

 

 

要塞内の、秘匿回線に、俺……アルマ・カントゥータ宛に通信が入った。ご丁寧に、【鉄血の子供】用、宰相サマのオフィスから直通だ。

 

 

 

『ああ、【氷の乙女】も通っていたトールズ士官学院に、新たなクラスが設立されることは、もちろん知っているな?』

 

「まあ……ホントに、あくまで机上の空論、教員やカリキュラム、予算についてもまだ確定していないそうですが」

 

 

 

いや、“知っているな?”じゃないんだよ。

 

仕事の合間に見つけた隠しファイルが、偶然それの立案書で。

かつ、イリーナ会長から聞いた【学生を対象にした大規模なオーブメントテスト】の概要をつなぎ合わせて、ようやく浮かび上がったやつだよ!

 

しかも、そのファイルのセキュリティ、ヤケにガチガチだと思ったら、皇室内の物理的に隔離されたサーバーだったし……ッ!俺があの時そっとページを閉じてなかったら、国家転覆罪の疑いで、即断頭台だったわ!!!

 

 

 

「えーと、で、その……なんでしたっけ。【特科クラス:Ⅶ組】……?それが、俺にどう関係するんです?」

 

『フフフ……よくぞ聞いてくれたな……』

 

 

 

いつになく上機嫌で、無線越しに話す声。

正直、この宰相にとって、計画概要を見るに邪魔な存在だろうに。

 

もしかして、それほどまでに退屈なのだろうか。望んで、自分で好敵手足り得る集団を作ろうとするほどに。もしくは……

 

 

 

「テンションバグってんな……偽物か?」

 

『クックック……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『______三徹明けだ……!』

 

 

 

「休めよッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ー ー ー ー ー

 

 

 

 

特科クラス《Ⅶ組》……

 

貴族派、革新派双方からの反対も見込まれる中、その存在を羽ばたかせるとするならば、相応の翼、そしてそれが飛び立つ足場が必要となる。

 

それを養うために、相応しいカリキュラム……《特別演習》というらしいが。

 

 

 

最終的な詳細は、現地の担任にお任せするそうだが、まずはその実習が行える……行うに足る候補地が、幾らあるかの把握が必要だ。1、2箇所見つかったところで、幾つか班に分けてしまえば、ちょっと過酷な遠足くらいのイベントへと化してしまう。継続的に開催、受け入れをしてくれる街が必要だ。

 

中途半端なものではいけない。

 

 

 

彼彼女らが、出向いた先で独自の人脈を形成し、その苦難すら己の血肉とし、かつ、今の帝国を肌で知ることができる……

 

 

…………そんな候補地が。

 

 

 

「はぁ〜あ、なんか、いいように使われてる気がするんだけど……」

 

 

 

そんなふうにシアンが溢したように、事実上の休暇を消費しない観光だ。

一応、体裁は【帝国東方諸自治区への、ガリレア要塞建立に伴う協力の要請】なのだが、「要塞にビビった魔獣が流れてくるかもしれないんで、気をつけといてくれよ〜」くらいのものだ。

 

その証拠に、宰相本人から、()()()()()()()()も並行して良いとの言質を取った。

 

 

 

その、記念すべき第一回目が、この温泉郷ユミルってワケ。

 

たぶん理由は、その治安の良さだろう。

 

 

軽く里を見て回っただけでも、観光地という側面を加味したとしても、住民が異常なほどにフレンドリーだ。現に、ロープウェイの管理人のおすすめで入ることになった“足湯”ってやつ。これが意外と画期的だ。

 

あ、いや別に、サボっているわけでは断じてない。

 

テオ卿を訪ねたは良いが、不在だったようだし、奥方も忙しそうだった。流石にこの状況で、「宰相から頼まれて学生の実習の候補地探しにきたで〜」なんて話せるほど、俺の肝は座ってないし。

 

 

 

 

 

「……ざっくり、滞在予定は一週間ってところか。案外すぐになるだろうし、次の行き先も吟味しておかないとなぁ」

 

「いやぁ、まさか領主サマの居ない間に、こんなイイモノを紹介してもらえるなんてね、これ、他のところにも作れないかなぁ……」

 

「どうだろうな、この寒い地域だからこその、澄んだ空気と、肌寒い気温あってこそ……って気もするが。でも、定期的に恋しくなりそうだな。また機会があったら来てみたいくらいだよ……っと、そろそろのぼせそうだわ、俺はお先に〜」

 

 

 

 

足だけ湯につけてるのに、のぼせるっていうのも変な話だけど。軽く水滴を拭き取って、靴を履く。

 

いやぁ、これなら観光地になるっていうのもわかる。訪れ前までは、漁港としての側面を持つオルディスとは違って、旅行客から落とされるミラだけでどうにかやりくりできるのか、と普通に心配だったのだけれど。

 

 

 

 

 

さて、ここらでもう一度、シュバルツァー邸に顔を出しても良いだろう。さっきから、女の子が玄関前をウロついてるし、もう少しで帰って来るのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「……すみませーん、あの、テオ・シュバルツァー殿に用がある者なのですがぁ……」

 

 

野菜畑の前でうずくまっている、黒髪の少女に声をかける。目の前には、生えかけのハーブの芽が、ぽつぽつと土から顔を出している。

 

 

 

「…………っ、え、ええと、旅の方……でしょうか」

 

「まあ、そんなところですね。お忙しかったでしょうか」

 

 

「いえ、すみません、私……気が付かなくて。その、父様______いえ、テオは今……屋敷にいなくて……っ」

 

 

 

 

そこまでいうと、女の子は、堰を切ったように、泣き出してしまった。

膝を抱えて、肩を振るわせている。

 

 

 

 

 

 

 

「もう、6日になるんです……」

 

 

 

 

 

 

 

「……え…………っ?」

 

 

 

尋常じゃない。

なんとなく、そんな気がした。

 

 

 

「それって……テオ男爵______君の、お父さんが居なくなってってこと?」

 

「いえ、居なくなったのは、父ではなくて……ぅ、うぅぅ……っ……」

 

 

 

 

 

エリゼ・シュバルツァー。

テオ・シュバルツァーを“父”と呼ぶ時点で、彼女をそう断じて良いはずだ。

 

養子を除けば、シュバルツァー家唯一の跡取り娘。

 

 

 

父は無い。本人が否定した。

 

母親っていうのも無いだろう。幾ら地元の住人とはいえ、六日経っても、無事でいる保証なんてない。そうなれば、もっと早くから、村をあげて大捜索が始まる。

何より、足湯に入る前に、お屋敷で忙しそうにしているのを見かけた。俺たちが訪れた後、たった30分かそこらで居なくなってしまうなんて考えられない。

 

 

……シュバルツァー家は四人家族。

その内、魔獣に対抗しうる戦力を持てるほど、武術に通じていて、どうにか六日経っていても、郷の人が納得するような理由がある……

 

 

 

 

……まぁ、無くはないんだけれど……そうとしか、考えられないよなぁ。

 

八葉の手のものだとすれば、若くしてそれだけの実力を持っていてもおかしくないだろう。

 

 

 

頭の中で、事前に送付されたシュバルツァー家の情報をサルベージする。彼のページに、ヤケにおかしい量の特記事項があった理由が、なんとなくわかった。

 

というか……あのヒゲおじ、まさかこうなることがわかってたな?

 

そうだとしたら、帝都にいながら一男爵家の養子の家出を、予測した……?

 

いやいやいや!流石に化け物すぎるだろ!偶然、これはきっと偶然だから……!

 

 

 

 

 

 

とりあえず、適当に持っていたハンカチをエリゼ嬢に渡して、今後の展開を考える……必要もなく、向こうからやってきたみたいだ。

 

 

 

「アールマぁー!テオ男爵、いたー?」

 

 

足湯を十分堪能したのか、上がってきたシアンが叫ぶ。

 

 

「近所迷惑だろ、ってか、それより______」

 

 

「……って何、これ、事案……?」

 

 

 

俺……正確にいうと、エリゼ嬢を落ち着かせるために、今肩を抱えているのだが。何か生ゴミでも見るような目でこちらをみて来る。

 

 

 

「誰がロリコンだって?」

 

「え、だって幼女泣かせてるし…………」

 

「おい、幼女って……エリゼ嬢に失礼だろ」

 

「……やっぱ“お嬢”と言い、そういう趣味なんじゃ……」

 

「だからちーがーう!良い加減、そこの適当なユミルの川に突き落として、全身凍らせるからな!」

 

「ハンっ、アルマの腕力でできるのぉ?その前に腕が折れそうだけど」

 

「できるわァ!!!……って、ちがう、それどころじゃないんだ」

 

「あー、皆まで言わなくても。」

 

 

 

 

話が逸れに逸れまくったが、なんとか本題に戻す。すると、シアンは、背を指す。もうすでに、いつもの山岳訓練用の装備が背負われていた。コイツ、さてはさっきまでの話盗み聞きしてたな?

 

 

 

「いつも通り、ボクは人命救助とか、そういうのは一切やらない……それで良い?」

 

「適材適所ってな。」

 

 

 

軽く、自分の武装を確認する……といっても、オーブメントの充電さえあれば、そのほかはお飾りに過ぎないんだけど。

 

 

 

「……エリゼ嬢、テオ殿がどのくらいで帰って来るか、わかるか?」

 

「え、どうして私の……いえ、もうじき日もくれますし、30分もしないうちに、一度戻って来るかと。郷の人間でも、夜の山は危険ですから……」

 

「……ひとまず、それまで待ってみるか。軽く夕飯だけ食べて来るから、絶対に一人で山に入ろうなんて、考えるなよ?」

 

 

 

 

心配そうな、納得いかなさそうな顔をしながらも、こくりと一度うなづき、家の中へ入って行った。

 

それを見送って、宿へと踵を返した。

 

途中の道のりで、シアンがはぁ、とわざとらしくため息をつく。

 

 

 

「なぁーんで面倒ごとばっかり呼び込むの?アルマ、なんか呪いでもかけられてるでしょ、絶対!」

 

「だぁっ、不可抗力だっての、こんなの予測できる方がおかしいわ」

 

 

ジト目でこちらを睨みつけられる。でも、正直俺だって今回は、せいぜい揉めるって言ったって口論とか、そういう方向だと思ってたんだって…………

 

 

 

「とにかく今は、待つことしかできないだろ」

 

「えー?山に入んないの?これ、どうせ父親でも見つからないやつでしょ、それに冬までじゃないけど、この調子なら夜は十分冷え込むよ」

 

「…………本当に彼______

 

リィンという子が、八葉の受け皿に選ばれたなら、あと三日は持つ。どちらかといえば、心配するべきは父親だろうな」

 

 

 

 

「……ふーん、ヤケに高く買ってるね?その……八葉なんたら流ってやつを。武術の類は齧ってないって言ってなかったっけ?」

 

「【八葉一刀流】な。小耳に挟んでいる程度だけど。というか、あんだけ散々な目に合わされた、例のリベールの元遊撃士のおっさんだって、【八葉】なんだからな」

 

「おえっ、もうソイツ話題に出さないでって言ったじゃん!あーあ、せっかく薄れてきたのにぃ…………」

 

「まあ、アレは酷かったなぁ…………」

 

 

 

今でも思い出すだけで、骨の髄が震え上がるような心地だ。

 

詳細は省くが、半年前に起きた、帝国ギルド爆破事件……あれを、当局はリベールの遊撃士、カシウス・ブライトを筆頭に、ギルドと一時協定を結ぶ形で解決した。

 

した…………のだが。

 

 

 

 

 

 

 

前々から、軍部の中で、遊撃士に反発する派閥というのはあった。

 

治安維持や市民のサポートなどは、地方では領邦軍、大きな町では遊撃士が主に請け負う。正規軍の仕事は、余程のことがない限り、ただの戦争のコマ。

 

その派閥の中でも、よりによって最も面倒……いや、過激派というべきか。

もはやその感情が、憎悪にまで膨れ上がった部隊が、よりによって今回の任に就いていたのだ。

 

 

 

各種被害状況の共有や、テロ班の行動プロファイリングのために、俺たちも同行した任務だった。

 

当然、遊撃士協会も最重視していた事件だったため、テロリストを追い詰め、居場所を割り当てたのは、軍部とギルド、ほぼ同時だった。

 

 

 

 

 

その時、一斉に過激派がギルドの部隊に襲いかかったのだ。

 

まあ、その件のカシウス・ブライトにあっという間に鎮圧されたのだが。

 

 

 

 

……正直、人間の恨みってものを舐めていた気がした。

 

後少しで、多くの犠牲を出したテロ犯を捕縛できるというのに、ただ“憎い”というだけの理由で……

 

 

 

 

いいや、あのやべーヒゲおじ・ブライト遊撃士曰く、「それを感情だけで“道理”にしてしまうのが、人の業」だと。

 

 

 

 

もはや“呪い”とまで言えるほどの、差別感。そしてそれに伴う負の感情…………

 

帝国が帝国であり続ける限り、必ず誰もが持っている、脈々と受け継がれる気質…………か。

 

 

 

まあ、とにかくそれでグダグダしたせいで、一度テロリストを逃してしまったのだ。

 

手痛い醜態を晒した当局……鉄道憲兵隊θ小隊は本部へ送還。現地との連絡役に俺たちが残り、一度膠着を迎えた。

 

しかし、俺たち追跡者にとって、時間の浪費は国外逃亡の隙を作ることになる。遊撃士側も、手をこまねきたくはないが、やむを得ず海外連携を視野に入れていたくらいの時。

 

 

本部から、本件の警戒度が過去最高クラスに引き上げられた通告が来た。

つまり、何をしてもいいから、絶対に捕縛せよ、との命令が降ったのだ。

 

 

この辺のくだりは、ぜーんぶ記録からは抹消されているだろうけど、極秘裏に遊撃士ギルドと交渉をする時のカードに、なぜかカシウス・ブライトが俺たちを指名したのだ。

 

「三人で話をして、取引はそれから」だと。

 

まあ、他の連中が頭カチコチだったら困るだろうし、ギルドの人間を襲撃した小隊に混じっていた俺らが、どうして送還されてないか、という疑念もあったんだろう。

 

実際、俺が【鉄血の子供】だから、現状把握のために送還されてない、ってことを考えれば、敵の情報源を確実に抑えたカシウス卿の慧眼っぷりがわかるだろう。

 

 

 

 

 

で、まあ。そのあとあったことをありのまま書くと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鍛えてやる」って言われて手合わせして、ボロボロになるまでボコられて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんかよくわからないうちに、ギルド側の作戦に参加させられて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手土産と謝礼って言われてテロリストを三人くらい、かるーいノリでコッチに引き渡して、一人で軍部に喧嘩売って帰って行きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんなんだよあのオヤジ!!!!

 

 

 

因みに軍部も軍部で、売られたケンカを買う気満々みたいで、だんだん遊撃士を締め出してます!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだよ、このオヤジ大戦争!!!

 

 

 

 

 

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