リィン・シュバルツァー、貴様にクレア姉さん(語弊)は渡さないからなぁッ!?   作:発光米

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世間は界の軌跡も落ち着いて、空リメイクに沸いてるってのに、いまだに閃の軌跡初代の物語にすら入れてねぇやついる???ここにいる。

前回の更新が4月でぶったまげてます。
リアルが何かと慌ただしいんで、本当にこのくらいのペースでじわじわやってるんで、本当にお暇な時に思い出してやっていただけると幸いです。


鋼の心、霞んだ硝子4

 

P.M.08:23ごろ

 

エレボニア帝国東部、レグラムにて……

 

 

「トヴァル殿……少し、時間を頂けないだろうか」

 

 

青髪の少女が、桟橋の手前に立つ金髪の男に声をかける。観光客であろう三人組を見守っていた男は、申し訳なさそうに少女に振り返る。

 

 

「おう、毎回悪いな……早くギルドの方の通信機が復旧できれば、そっちにかけてくるんだろうが……」

 

 

再び観光客達に目線を戻すトヴァル。桟橋の端に腰掛け、その手には釣り竿を握っている。白髪の青年と、黒髪の女性、そして栗毛の少女。青年は、少女を膝の上に乗せて、抱えるようにしている。

 

 

「ほら、もう少し糸をじっと下ろしていなくちゃ。魚が逃げてしまうでしょう?」

「だってよ、ちょっとは大人しく______」

 

 

嗜める意味で、少女の頭を数回撫でる男。しかし、その制止も虚しく、少女は青年の服を掴んだまま、身を乗り出す。

 

「ぁ、おさかな、ですの……!」

「え、おいちょっと!?暴れるなぁ!!!落ちる、落ちる!」

 

 

「……とまあ、だいぶ目が離せなくてな。適当なところでお屋敷の方に伺わせてもらうとするかね」

 

 

すると、青髪の少女は苦笑して、申し出る。

 

 

「では、私がトヴァル殿の代わりに、彼らについて行きましょう。大方、街に来たばかりで案内を頼まれたのでしょう?アルマ殿も、通信越しではありましたが、随分と焦っていた様子……私のことは、お気になさらず、どうか」

「へえ、焦ってたって……そりゃあまた。一体アイツ、どこで何をやってるんだか……まあ、それは兎も角だ。連絡、助かったぜ」

 

 

まだ幼いとはいえ、少女の実力は知っている。街道に出るわけでも無いので、そのまま宿屋に誘導するように伝え、その場を去る。

 

 

(……急ぎの用、か。ユミルはもう離れたらしいから、例の“リィン”って子についてではなさそうだが。しかし、どれだけ問題を呼び込んで来るんだ?それに、聞く限り、あの()()も治っちゃいないらしいし……)

 

 

屋敷の中の使用人に話を通し、受話器を取る。

 

 

「遅くなったな、こちらトヴァル」

 

 

すると、ノイズ混じりの声が息急き切って飛び込んでくる。と言っても、最近は直接なんて会っていないから、すっかりこのフィルターにも慣れてしまったのだが。

 

 

『______ッ、よかった、繋がった!』

 

 

前言撤回。あまりにも大きすぎる声に、耳を突き抜けるような痛みが襲ってきた。キーンと響く受話器から反射的に頭を離し、眉を潜めながらもう一度元の位置に戻す。

 

 

「おうおう、繋がったも何も、アルゼイドの執事さん曰くずっと繋ぎっぱなしらしいけどな」

『無線扱いなんで別に……通話料金取られないしっ……じゃなくて、大変なんですよ!』

「おう、そのくだりは前回も聞いたから、何が起こってるか落ち着いて話してみな?」

 

 

無線越しの少年……アルマ・カントゥータが、こうしてトヴァルに通信をかけてくるのは珍しいことでは無い。むしろ、最近になって頻度はますます増えている。大抵は、ギルド方面のツテを頼りたかったり、トヴァルの豊富なアーツの知識を頼って。時折、帝国軍方面からの情報を、不味く無い範囲で流してもらったり、ただ単に世間話に花を咲かせることだってある。

 

 

『それがどうやら、今回ばっかりは……そうもいかなくって!だあっ、連中、軍用魔獣まで……!シアン、そっちに一体向かった!』

 

 

よく聞けば、荒い息と声の裏で、何かがぶつかる音が聞こえる。シアンという名は、一応手紙で聞いた程度だが、彼と行動を共にしている狙撃手……いや、ガンナーと言った方が正しいのかもしれない。単騎で特攻しているという、最悪な状況では無いことに胸を撫で下ろしたが、なおさら渋い顔をせざるを得ない。

 

 

「これ、掛け直したほうがいいか?どうやら立て込んでいるらしいし」

『え“……っ!?あ、アポ無しで掛けたのは、本当にごめんなさい!』

「お前なぁ、アポ無しはいつもだろ。で?ロクに直接顔も見せないお弟子くんは、一体どこに寄り道していて、俺に何をして欲しいんだい?」

 

 

言葉に少し怒気を馴染ませれば、申し訳なさそうに押し黙った。トヴァル自身にだって、彼に対して思うところが無いと言えば嘘になる。年頃の少年が、特殊な肩書を得ているとはいえ、一人でその辺をほっつき歩いている。正直、今すぐにでも、誰か保護者のもとに預けてしまいたいと思うくらいには、心配しているのだ。

どうにか敵対勢力を無力化できたのか、呼吸を整えながら、アルマは無線越しに口を開く。次第に電波も安定していった。

 

 

『返す言葉もございません……その、ですね。一つ、聞きたいことがあって。ええと……』

 

 

『アーツの、適性について。なんですけど……』

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「ラインフォルトのご令嬢が、誘拐だって!?」

 

 

思わずクラッと眩暈がしたトヴァルは、受話器に齧り付くようにして、その後の報告を聞いていた。

 

 

『はい、いま現地の憲兵隊と急行中なんですが、その子が人質に取られちゃって。包囲自体は終わらせたんですけど、人質の開放条件が、どうやら俺に関係してるらしいんです。正確に言うと、俺のARCUSに……』

 

 

しれっと現地の憲兵を指揮できる程度の地位を得ている少年についてはさておき、民間人の保護を謳っている遊撃士としては到底見逃せる話題では無い。

 

 

「その、犯人の素性は?」

『RF社の開発グループが、複数の研究室に分かれて、それぞれの部門ごとに独立したプロダクトを遂行している事は、知ってますか?』

「ああ、同じ重工業でも、分けて競争させる魂胆だ、とは聞いたが……」

『なんでも、今回の主犯はコイツ______今回の新型オーブメントの主導を流れなかった開発部の、主任らしいです。まあ、有り体に言えば、私怨です』

 

 

ARCUSの開発には、エプスタイン財団も関わっており、社外の団体との共同開発となっている。それ故、失敗は許されないのだ。当然、研究室の垣根など超えた、ふんだんな技術をありとあらゆるところから集めて、今回のアルマの……試作版が作られたのであろう。

それでも、全体の方針の舵を取るため、主導となる人は必要だ。

 

 

「成程、お前さんの戦術オーブメント、いや、その中に蓄積された戦闘データを盾に、RFと取引しようって魂胆か」

『ただ、正直こんな暴挙に出る連中に、開発の主導は渡したくないですね。それに、そんな事したって、思い通りにはあの会長がさせないでしょう』

 

 

しかし、それだけならばアルマがとっととオーブメントを誘拐犯に渡して仕舞えばいいのだ。テスター機の予備なんていくらでもあるし、データのバックアップも、こまめに取らされているらしいので、大した痛手にはなるまい。RF側の損失は、ほぼ限りなくゼロ……社内の膿を出せるなら、むしろプラスに働くかもしれない。

 

 

……本人もわかっているのだろう。けれど、その話題は、本人では無い、アルマ以外の誰かが触れなくてはならないのだ。まあ、こういう役回りを担うのも年長者の役目だと割り切ることにした。トヴァルは、できる限り穏やかな声で尋ねる。

 

 

 

 

「やっぱり、切ったら不味そうなんだな?……その“霊的リンク”ってやつは」

 

 

 

通信越しに、息を飲む音が聞こえた。

 

 

 

 

 

……半年前の遊撃士ギルド爆破事件に際して、アルマは本人の実力に見合わない危機に陥った。

それを切り抜けるため、火事場の馬鹿力とでも言うべきか。威力こそ、本人が想定していたものとは違うだろう。しかし、恐ろしい規模の水属性アーツを放ってみせた。本来目の前の敵を凍らせる程度の術式は、広範囲に展開され、静かに雨を降らせたのだ。

 

結果として、テロ時の火災被害は最小限。アルマ本人も、協力者によって無事に救出されて今へ至っている。

 

しかし、もはや同化とも取れる過度な適応の代償に、彼とオーブメントの間を繋ぐ、霊的なリンクが、異常なほどに高まってしまったのだ。設計理念に“術者とのリンク”が一つ設定されているため、適正は限られているが、従来のものよりも操作が簡易化され、より感覚的に扱うことができる……ARCUSの最大の特徴であり強みが、完全に裏目に出た結果だ。

 

過度に繋がったそれを、強引に引き剥がすことは、危険であるとされた。霊的リンクとは、術者の存在……言ってしまえば、魂に糸をつけて固定しているようなもの。本来であれば、自由にオンオフが可能なそれを、正規の手順を踏まずに断ち切って仕舞えば、最悪、命にも関わるかもしれないというのが、医者の見解だった。多少の距離は影響しないが、オーブメントからアルマに対する通信が途切れて仕舞えば、どうなるかわからない。霊的にはもちろん、物理的な距離さえ、命取りになりかねない……

 

 

それ以降、アルマ・カントゥータは、旧式ARCUSを、文字通り肌身離さず道歩くことを余儀なくされたのだ。

 

 

 

 

 

『ッ…………俺、は______』

 

 

「いや、その判断は正解だ。相手の目の前で倒れて、最悪の場合人質が二人に増えるだけだからな。それより、別の方面から切り込んだ方が良いだろう。なんか、他に連中の目的に心当たりとか、無いのか?」

 

『………………わからない、です。正直。はは、手詰まりってヤツですかね!』

 

 

 

この状況で、「無理をするな」なんて言う方が、彼にとっては酷な話だろう。まだ周囲からは、憲兵たちの世話しない声も聞こえる。《鉄血の子供》として彼が振る舞う以上、折れることは許される立場に無いのだ。

 

心の中で、大きなため息をついてから、トヴァルはもう一度受話器を握る。近いうちに、この馬鹿にお灸を据えなくてはと、決心したのだ。そのためには、五体満足で帰ってきてもらわなくては困るのだ。

 

 

「あー、で。なんだったか、アーツの適正について、だったか?______」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「カントゥータ少尉、こちら通信網の構築、完了しました!」

 

「ターゲットは依然として動き無し……如何しましょう?」

 

 

 

「あー、通信ってどこまで繋がるんだっけ……とりあえず鉱山内の状況把握を優先して欲しい。並行して、できるなら麓のルーレ市内にも、応援要請はいらないから、状況の共有ヨロシク。一般市民の安全を先に確保したいから、突入はナシ。交代でいいから人質と出入り口の監視を絶やさないように!」

 

 

 

イエスサー、とキレの良い返答が返ってくる。……ほんの少し前まで、俺は返事をする側だったはずなんだけどなぁ。

 

トヴァルさんとの通信を切ってから、ひっきりなしに流れ込んでくる情報を、必死に処理する。なにぶん初めて……そう、今回が初めての部隊統率になってしまったのだ。どうして、よりによって、と嘆きたいが、まずは場を整えることを優先しなくてはいけない。

 

 

 

 

(よりによって、ルーレに滞在している軍人で、今一番立場があるのが俺だったなんて……ッ!!!)

 

 

 

単なる階級なら、俺よりも経験があって立場も上の人間なんて、何人もいる。しかし、そんなものを軽く跳ね除けてしまうくらいには《鉄血の子供》の称号は重かったのだ。

 

 

仮設のテーブルに突っ伏し、積み上がった資料や報告書を流しみる。内容は概ね予測していた通りだが、文字にされると、直視したく無い現実が、否応なしに脳に飛び込んでくる。まるで拷問でも受けているみたいだ。

 

 

 

 

 

 

「やぁ。だいぶ参ってるみたいね〜?」

 

 

軽い口調でこちらに寄ってきたシアンは、久しぶりに見る、身の丈ほどある長い銃を背負っていた。最近は援護のために拳銃を取り回すことの多い彼だったが、十分に部隊が整っていれば、やはりそちらの得物の方がしっくりくるらしい。

 

本来、お払い箱宣言を食らった彼がこの作戦に参加する義務はない。せっかくの里帰り中だったのに、事件に巻き込んでしまったという罪悪感が、否応なし俺の心に渦巻いた。

 

それでも、見知らぬ部隊の指揮を独りで取るよりは、断然心強い。いつものような砕けた口調で返して見せた。

 

 

 

「参るだろ、こんなの。自分より年上に命令するのなんて、いくら心臓があっても持ちそうに無いな……」

「これに関しては俺たち二人の責任ってことで。まあ、向こうは人殺しができそうなタマじゃ無いし、問題はアリサの体力だよね〜」

 

 

そういって、シアンは手書きの調査書を俺に手渡す。どうやら近くまで偵察に行っていたらしく、幾つか目新しい情報も見えた。

 

 

 

 

今回の経緯は、至ってシンプル。

 

俺たちが、アリサ嬢との情報交換を終えて、RFビルまで送り届けた、その後に事件は起きた。上層階に戻ろうとする彼女を強引に引き留め、無理やりRF社地下の鉄鉱山行きの貨物列車に乗って、そのまま鉱山で立てこもりを開始したらしい。

 

犯人自体に大した戦闘力はないものの、大量の軍用魔獣と人形兵器が周囲を威圧しており、鉱山の職員の安全観点から突入を見送っている状態だ。人質がいる以上、治安維持組織だってヘタには動けない。その代わりに、相手方が要求してきたのが、()()ARCUSの譲渡だった。

 

わざわざ名指しされた以上、当事者が呑気に別件に当たるわけにもいかず、街道に昨日の魔獣発生の原因を探りに行っていた俺は、通信で呼び寄せられ、今に至る……というわけだ。

 

 

 

もう春とはいえ、陽が沈んだ鉱山内は冷え込むだろう。……判断は、早めの方が吉だろうな。

 

 

 

 

「……そろそろ動くぞ、諸々を考えるのは、主犯に口を割らせてからでも遅くない」

 

「おお怖、それじゃあみんな呼んでくる?」

 

「いや、見張りの人には後で俺から直接話に行く。通信班の人と、偵察隊……それと、待機させてた実働隊かな。それと、突入前にいくつか仕込んでおかなくちゃいけないこともあるし、10分後に再集合で良いな?」

 

 

 

無言でサムズアップしたシアンを見送り、俺は通信機を手にかけた。

 

 

 

 

 

ー ー ー ー ー

 

 

 

オープンコンバット、と自分が発した声と共に、忙しなく人が動き出す。

 

 

場所はザクゼン鉄鉱山、内部製鉄所から採掘場にかけて。

 

目標は人質1名と共に最奥に立てこもり中。道中には人形兵器が多数配置されていて、鉱山員の脱出が困難となっている。単独犯の模様。

 

 

 

(そして、目的は…………ARCUS関連の事業の私物化。その第一段階として、俺のオーブメント本体と、そのコアであるマスタークオーツの譲渡を要求してきた、と…………)

 

 

方針はこうだ。

 

手勢を2つに分け、まずはローラー作戦で鉱山内の職員を粗方解放する。そして、主犯がそれに気がつく前に、俺が単独で最奥まで侵入。犯人と交渉して粘って、鉱山員の無事が確認された瞬間に、殴り飛ばすって寸法だ。脳筋だけど、相手は素人だし、大規模な爆発物が仕掛けられていなさそうなのは、事前に確認してある。鉱山道が崩落して生き埋め……とかにはならないだろうから、その辺は大丈夫だろう。

 

万が一があった場合に備えて、別働隊として遊撃に動ける部隊を1つ。これはすぐに動けるように、各部隊の中継地点に居てもらう。2、3人程度だが、居ないよりかは安心度がはるかに違う。

 

 

 

そして、本当に万が一……俺がしくじった上で、犯人がアリサ嬢を手にかけようとした時。その可能性に備えて、狙撃手……シアンは、事前に狙撃ポイントを探りながら、それに備えてもらう。

 

通信班は、街との連絡……主にRF社方面との交渉に動いてもらうことにした。援軍は、正直呼びすぎたところで狭い鉱山では邪魔にしかならない。それよりも、サクッと犯人を捕らえた後、RF内で処理してもらわなくては。

ザクゼン鉄鉱山は、皇族の所有地ということになっているので、いくら軍属で、正当な理由があったとしても、そこでドンパチやるのは避けたい……ので、RFの内輪モメってことにできると、とっても楽なのだ。主に現場監督になってしまった俺が、だけど。

 

 

一通り部隊が配置につき、部隊長が突入の合図を出したと同時に、方々の扉やバリケードが破られる。特に苦戦する様子もなく潜入できたのを見届けて、俺は自分の装備を再確認した。

 

 

 

「というか、ここまで来ると、俺にかけられてる産業スパイの容疑……今回の犯人の仕業じゃないのか?」

 

 

 

そう考えれば、多少強引にでも辻褄は合う。ARCUS関連のデータを入手しようとして、失敗したから、大元の俺のオーブメントをハードごと欲しがっている。なんだ、案外単純じゃないか。

 

 

 

「……つまり、今回の事件はアリサ嬢を助けて、犯人を縛り上げて、RFに突き出せば終了!……ってことで、いいのか?」

 

「______いえ、そこまで単純では無いかと。とはいえ、私がいながら、お嬢様をこんな目にあわせてしまうなんて……」

 

 

 

 

コツコツと、場の雰囲気に合わないような優雅な足音が鉱山へ響く。背後からだ。……とはいえ、ある程度予測してはいたのだけれど。

 

 

 

 

「来てくださったんですね。きっとあの会長なら、貴女を寄越すと思っていた______」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………シャロン・クルーガーさん」

 

 

「はい、()()()()()()()シャロン、ですわ♡」

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