リィン・シュバルツァー、貴様にクレア姉さん(語弊)は渡さないからなぁッ!? 作:発光米
お気に入り登録とか、評価とか、なんかいろいろありがとうございます(語彙力)
UAも1000超えました!タイトル回収まで、まだだいぶかかると思いますが、気長に見守っていただけると幸いです。
……前回それなりにまとも回にしちゃったから、あらすじコーナー作れなかっただけです。ハイ……
「オズボーン宰相、お客様がお見えになっていますが......」
扉の向こうから受付嬢の困惑した声が聞こえる。ふむ......そういえば、もうそんな時期だったか。
「"良いだろう"。通してくれ。大方、ここまで押し掛けてきたのだろう?」
「失礼します」
ずかずかと緑髪の少年が、執務室のカーペットを踏んで入ってくる。案内してくれた受付嬢は、目配せをすれば戸を閉めて、元の位置に戻ったようだった。
デスクを挟んで向かい合う。口を開くタイミングを決めあぐねている、目の前の少年を、私は椅子に座っているから見上げている形になる。目にはあからさまに「文句を言いに来た」と書いてある。
「随分、かかったものだな?背も伸びたようだが......」
「ま、背以外にも色々伸ばしたつもりではあるけど。逆に目標からは更に遠ざかっちまったっていうか。コイツを融通してくれたことだけは、感謝してるけどな」
腰にチェーンでぶら下げた、戦術オーブメントをポケットからだす。既に金属部分には細かい傷がつき、相当使い込んでいることがわかった。自分でなにやら改造もしていたようだ。製造元が聞けば、全力で取り込もうとするだろうが......
「前置きはこのくらいにしておこうぜ。まどろっこしいのは苦手なんだ。まさか、忘れちゃあいないと思うけど?」
皮肉以外の何物でもない。この男は、「自分は、あの日のこと、大事なものを盗られたことを、忘れた覚えはない」と、そう言いたいのだ。
「ああ、そうだったな......ついてくるがいい。"就職祝"をやろう」
紫色の目が、少し驚いたように見開かれた。
「まず一つ目は......私からではないのだがな。君が愛用している"それ"のスポンサーからだ」
執務室の奥______ちょっとしたプライベートスペースに通され、ソファに腰かける。やっぱり帝国の実質トップ、調度品も、ハイアームズ侯爵んちと引けをとらない。
そして"それ"というと、第五世代戦術オーブメント、ARCUS。
トヴァルさんから行き掛けに聞いたが、ラインフォルトとエプスタイン財団が共同で開発しているらしい、新型オーブメントらしい。となると、"スポンサー"というと......まあ、普通に考えればRF社の人間ってことだよな?
机の上には、手のひらより少し小さいだけの、簡素な白い箱が置いてあった。
「マスタークオーツ......使えば使うほど、持ち主に馴染み、本来の性能を引き出すことができる、特別なクオーツだそうだ。もっとも、それはまだ空らしいが」
「どういうことだ?」
「さて、私にはわかりかねるよ。君の方が詳しいんじゃないかね?マニュアルを受け取ってきたから、自分でカスタマイズすると良い。小型通信ユニットも内封されているので、そちらのテストも頼みたいとのことだ」
おいヒゲおじ!今さらっとデスクに置いた取説、辞書並みの分厚さなんだけどッ!?鈍器だよ鈍器、人殺せるって!こんなの読んでたら日が暮れるだろ......
「技師というものは、説明書はあまり読まないと聞いたのだが?」
「偏見だ、ヘ・ン・ケ・ン!第一借り物をそんな適当な扱い______」
「それについてだが、正式に譲渡する、とのことだ。曰く"そんな型落ちを返品されても困る"だそうでな」
「......!そりゃ、ありがたいですけど......その対価が"マスタークオーツ"とやらのデータ提供ですか」
ぱらぱらとページをめくれば、後ろの方_______ざっと五分の一ほどだろうか______まるまる報告用テンプレートと白紙が閉じてあった。調べものがこれ一つで完結するようになっているのは、実にありがたい。
それにしても、成長するクオーツか......トヴァルさんに言ったら目を輝かせそうだな。あ、説明書に注意書が......"機密事項なので他言無用"?え、なにこの取説作った人俺の心読めるの?こわ......
「一ヶ月後にデータを回収しに来るそうだ」
鉄血宰相はそういってソファを立つ。いつのまにか、大きな段ボールを抱えて帰ってきた。薄茶色の箱は、俺の下半身を軽く越える大きさで、それを音もなくカーペットに置く。
「開けてみるが良い。こちらは、私からだ」
「......っ」
恐る恐る、既にガムテープがカッターナイフか何かで切られた蓋を開ける。
中にはぴったり円柱のガラスケースが入っていた。水のようなもので満たされているようだったが、白い蓋で封がされていて、中身は見えない。
俺はそれを、両手で持って開けた。
まず目に飛び込んできたのは、薄栗色。数秒経って、それが水に浮かんだ長い髪の毛だと気がついた。
______溺死する!
反射的にそう思って、手をガラスケースの中に突っ込んだ。中に満たされていた水は、油っぽくて、なんとも言えない感覚だった。若干薄緑色をしていた、ねとねとした、気持ち悪い感触が腕にまとわりついて離れない。
その中からようやく"腕"のようなものを探り当て、引っ張りあげる。
「っ......!ぅ、ぁ......」
引き上げ、水から出た口から声が漏れる。少女の体は冷たかった。
きっと俺よりも少し年下くらいだろう。抱き寄せた四肢はあまりに細く、白く、軽かった。
彼女の顔を放心したように眺めていると、不意に、表情筋がピクリと動いた。
瞼がゆっくり持ち上がり、数度瞬きをする。瞳はきれいな赤色だった。
「______Oz62、起動完了。初期設定モードに移行します。私の名前をつけてください」
瞬間、なにかがブチリと焼ききれた気がする。
クレア姉さんが、ミハイル兄さんが引き裂かれたときと、同じ感覚......
気づけば俺は、鉄血宰相の胸ぐらをつかんでいた。
身長の低い俺では、脅しにもならないし、こうなることすら予見していたのか、リアクションはニヤリと口の端を上げるだけ。それが余計に腹がたつ。
「アンタ、自分が何やったか......わかってんのかッ!?」
「何をしたか......わかっていないのは、君自身の方じゃないのかね?」
「は?どういう______」
顎で俺の後ろを指す。栗髪の少女は、呆然とそこに立ち尽くしていた。水がポタポタと髪を伝って床に落ちている。
「あんなもの、"生きているハズがない"だろう?」
「なにを......そんな、だって、」
目の前がぐらつくのをかんじる。あまりに信じがたい光景と、耳から入ってくる内容。なにかの薬品を混ぜ合わせたような、不自然なほどに爽やかな香りが、鼻をつき抜け、頭を直接、ぶん殴られているような心地だ。
「アレは、兵器に他ならない。感情を持たずに生まれてきた、精巧な人形だ。君が丁度、欲しがっていた"力"そのものじゃないかね。機械いじりは、好きだろう?」
「______っ、」
「Oz62は、君がここに来るより、遥かに前に私のところに"返品"された______それに、物の状態はきちんと良く見てみるがいい」
右手で、トンと首を押さえる仕草をする。
少女の首は、そこだけひび割れていた。塗装......いや、人工皮膚とでも言うべきか。数平方リジュ剥がれたそこから、"なにか"が見えている。
赤?......紫?それとも茶色だろうか。明らかに人には存在しない器官が、うごめいている。グロテスクさが、一周回って神秘性さえ感じさせる、少女の体には不釣り合いな体内。時折血が脈打つ様に、赤いラインが浮かんでは消え、消えては浮かぶ。
手の先から血の気が引いていくのがわかった。
「......っ、それでもだ、最低だなアンタ!!!おい、お偉いさんの執務室ってくらいだから、シャワー室くらいあるんだろ、借りるぞ!」
呆然とする少女の手を引っ張って、更に奥の部屋の戸を開けた。自分自身も、貧血で倒れ込みそうだった。
「通信、ですか?」
受付嬢の方が、移動教室でギムナジウムへ向かう途中で声をかけてくれた。
「ええ。お知り合いらしいですけど、何やら切羽詰まっていたみたいでね」
どういうことだろう。私に動力通信を使える様な親しい親族はいない。一瞬従兄弟の顔を思い浮かべたが、わざわざもう姓まで変えてしまったのだ。学院の事務室を通してまで、連絡を通してくるとは思えない。セントアークの子どもたちも、両親が死んでからはめっきり会っていない。
......もしかして、オズボーン宰相?
その人が取り乱すとは、どんな大事件が起きたのだろうか。もしかして、もう、学院に居られなくなってしまったのか......
「ありがとうございます。すぐに行きますね」
幸い快く次の授業の教官も、事情を察してくれた。単位からは引かれてしまうだろうが、ゆっくり話すといい、と。そこまでピンチになる程授業はサボっていないので、心配は要らなさそうだ。
「失礼します」
「お、来ましたね〜?まだ切れてないので、そのままどうぞ〜」
もうすぐ授業が始まるので、職員室にはほんの少ししか教官陣はいなかった。受話器を持ちながら、ひらひらと手を振るトマス教官。礼をして、受話器を受け取れば、他の2人ほどいた教官たちの腕をがっちり掴み、ぞろぞろと職員室から退散していく。
最後に、「どうぞ、ごゆっくり〜」と笑顔を見せながら、悲鳴を上げるのも気にせずに引きずって出て行ってしまった。
......気遣い、なのだろうか?
気を取り直して受話器を手に取る。番号表示が文字化けしているが......とりあえず、固定回線でないことは確かだろう。
「もしもし、クレア・リーヴェルトです」
すると、ジジッとノイズが走り、電子音でフィルターをかけた声が飛んでくる。
「クレア姉さん......?よかった、繋がった......」
「.......その呼び方、もしかして、アルマくん……!?」
ほっとしたように、受話器の向こうでため息を漏らす少年の声。最後にまともに会ったときよりも、少し声が低くなっている気がした。そうでした、アルマくんももう14歳。変声や成長期がきてもおかしくない時期です。
......でもどうやって?まず動力通信機を彼は持っていなかったはず。彼の両親が揃えたか、ハイアームズ公爵家を頼ってかけてくることもできるはずだが、それなら固定回線でかかってくるはず。電話番号が表示されないこととの辻褄が合わない。
そして、そもそもなぜ?
私が士官学院に入ったのはもう3ヶ月も前になる。いくら周囲が伏せていたって、知るのが遅すぎる。
「その、突然押しかけちゃって、ごめん。授業の……合間だったら、空いてる時間に、っかけ直そうと、思ってるんだけど……」
彼の息は若干乱れていた。胸の中で渦巻く不安が、一気に膨れ上がった。何か危険な状況に巻き込まれているのだろうか。
「いえ、教官方が計らってくれたので、一時間くらいなら大丈夫ですよ。それとも、時間がかかりそうだったら放課後にしましょうか?」
すると彼は少し悩み、「それじゃ、放課後にもう一度いいかな?」と結論づけた。どうやら急を要する事態になっていない様で、ひとまず心を落ち着ける。通信機の件は、受付の方にでも相談して、どうにかしてもらうとしよう。
「ああ、ちょっと待って!要件が要件だから、先に概要だけざっくり説明させてもらえない?」
「え、ええ。別にそこまで時間に余裕がないわけではないので。それにしても、どうしたんですか?手紙じゃなくて動力通信なんて.......」
「あー、えっと......なんていうかな、なんていえば良いのかな.......その、クレア姉さん......」
「クレア姉さんって下着どうしてるの......?」
「出直してきてください」
〜おまけ:硝子くんの進路〜
inいつかの鉄血宰相のデスク
硝子くん「だーかーらー!アンタは何にもわかってない!クレア姉さんがナイスバディなのは周知の事実!この世の理、赤子でもわかるんだって!こんないかにもなエロ_________露出度が高い服着せるのは、ど素人のやることだろ!?」
ギリおじ「ククク、それもそう……だな。だがしかし、ベタで定番というのもまた一興……それに、きみは見たくは無いのかね?コレ(鉄血騎士衣装)の氷の乙女を……」
硝子くん「みたいに決まってるじゃ無いですか。そもそもクレア姉さんのどんな姿もこの目に納めたいんですが???」
ギリおじ「ではこれで仕立てを_________」
硝子くん「赦すとは言ってねえよエロオヤジ。ヒゲ全部剃り落とすぞ?……クレア姉さんがいいって言ったらですよ。あの人を《氷の乙女》って読んでる間は絶対に仕立てさせません」
ギリおじ「まあ、いいだろう……ところでだが、きみ自身はどうするつもりだね?希望するならそれなりの家庭教師をつけるのもやぶさかでは無いが……」
硝子くん「結婚の前にバディ兼かわいい娘ができちまったんで進学する気はありませんー」
ギリおじ「他の《鉄血の子供》は皆、学園生活を謳歌したというのに……うまくいけば《氷の乙女》の後輩に収まれるのは、なかなか魅力的では無いか?」
硝子くん「あっ虫除けなら心配入りませんよ。(クレア姉さんを狙う奴への)調教は済ませてきましたし、卒業後はミハイル兄さんのいるTMPですから、安心ですね!!!」
硝子くん「まあミハイル兄さんなら?正直クレア姉さんを全力で守り抜いてくれると思いますし?他の何処の馬の骨とも知らないやつに掻っ攫われるくらいなら、ミハイル兄さんなら清く正しすぎる交際をしてくれると思いますし???」
硝子くん「まあでも、交際した暁にはどなたとも俺と相棒のSクラを喰らっていただきますけどね!!!」
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ミハイル少佐(まだ大尉)「ヘクションッ!!!」
ミハイル少佐()「な、なんだ?今、猛烈な寒気が……?」