リィン・シュバルツァー、貴様にクレア姉さん(語弊)は渡さないからなぁッ!? 作:発光米
~前回のあらすじ~
ギリおじ「就職祝をやろう」(アークスの追加カスタムとOzのホルマリン漬け)
硝子くん「貴様、人間じゃねぇッ......!」
なもなきOz「こんないたいけな少女をシャワー室につれこむなんて......やはり、ニンゲンは不埒、ですの!」
「少し待っていてくれ。シャワーの使い方とか、わかるか?」
「当機にそのような動作はプログラムされていません」
鉄血宰相のプライベートルームには、シャワー室.....というか、普通にバスルームが完備されてやがった。中にあった椅子に少女を座らせ、シャンプーボトルなんかを一通りかき集めた。
割とテンプレだが、こういう......なんだっけ、ホムンクルス?の類にありがちな、平坦な声で返答が返ってきた。声なんかは、本当にセントアークでつるんでた年頃のロリと、ほとんど変わらないから、機械感とか、違和感はそれほどでも無いけど。
「......オッサン、タオルとか、ドライヤーとかは!?」
「好きに使うが良い。右手の棚だ」
とりあえず腕とズボンを捲って、シャワーの蛇口を捻る。自分の服も、実はさっきこの娘を引っ張り上げたときに、変な液体かかっちゃってたんだよな......あとでそっちは洗えばいいとして。
「暑くないか?」
「80度の熱湯を五分間程度なら、耐えられる設計になっています」
「......そっか。なら、いいんだけど」
80度を五分間。ある程度の耐性はあるけど、火には気をつけてあげたほうがいいのか?
というか鉄血宰相め、オーブメントの説明書より、こっちのオーバーテクノロジーの取説よこせっての!今だって勘で、「なんか変な液に浸かってたから水はいけるっしょ!」のノリでシャワー室に連れ込んで、壊れないかびくつきながらシャワーしてるんだからよ!
「......って、目に入るんだから。ちゃんと瞑ってないとシャンプー染みるぞ?」
一度湯をかける手を止め、顔の方へ回り込めば、なんとびっくり。目をかっ開いたまま、微動だにしていなかった。
俺の言葉を聞けば、すぐさま少女は瞼を閉じる。
「了解しました」
「うん、それじゃあ髪、洗うからな?」
えっと、マジで女の子のヘアケアとかわからないんだけど.......はぁ、パトパトおぼっちゃまのキューティクル講座ちゃんと聞いておくべきだったか?うーん、確か、シャンプーして、トリートメントして、乾かした後にオイルだったか?
......ヘアオイルなんて持ってねぇよ!!!
だー、流石にオーブメント用の機械油は論外だろうしなぁ.......しかも良し悪しとか全然わからないんですけど......こればっかりは鉄血のおっさんと同じオイルってのも不味いだろうしなぁ。というか俺がヤダ。
「......もう、目を開けても良いでしょうか」
悶々としながら手を動かしていれば、いつの間にか長い髪のぬめりはすっかり落ちていた。変な色の液体が落ちたから、ブロンドの髪がより綺麗な色に見える。
「!あ、ああ。後は体だけだからな......ところで、体って自分で洗えるの?流石に俺がやると、倫理的に危ない気がするんだけど」
「当機は動力機器全般が使えません」
「え、マジで......?それ結構な欠陥っていうか......」
「......っ、」
「ま、でも体だけならボディタオルを湿らせておけば、自分で洗えるかな?ゆっくりでいいからさ。流すときになったら教えてよ。扉の外にいるから」
シャワーで濡らしたタオルで、ボディソープを渡して泡立てておく。そのまま手渡せば、無表情のまま受けとる。扉を閉め、精神的な疲労から、おもわずヘナヘナと座り込んでしまった。
......妹がいたら、こんなかんじなのかな。
「はあ、ボーッとしている暇はないぞ、俺......!」
頬をつねって渇を入れ、とりあえずびしょ濡れになった上着を脱いだ。乾きが早い素材を使っているから、少し干して、ドライヤーの熱風を当てれば大丈夫だろう。
やるべきことを、頭の中でリストアップしていく。本当は、今日中に帝都を一通り回っておきたかったのだが、まずは衣食住の確保が先決だ。宿は今日一日分はとってある。
食べるものは......まって、ホムンクルスってものたべて大丈夫なの?
そして問題は服だが......あの液体の中に入れて放置してたオッサンが、服とかを用意している気はしない。かといって、女の子の服とかわからないしなぁ......!確かトレンドとか、なんかいっぱい気にしなきゃいけないこと、あるんだったよな?うーん、その辺に詳しい知り合い......?
「本当はもっと色々やってから会いに行くつもりだったけど......致し方なし、かな」
一度執務室に戻り、さっきもらった白い箱を持って脱衣所に戻る。わたわたと動くのを、オッサンは書類を片付けながら、ニマニマ眺めている。だからホント、その顔やめろっての!
中を開ければ、丁度オーブメントの中央にぽっかり空いていた、ネジ穴が見える部分にはまる、少し大きめのスロットの部品が入っていた。もう一個はいっているユニットは、通信機だろうか。
辞書並みの説明書をパラパラとめくり、後ろに索引がついていたので、取り付けのページを見つける。
......うん、このくらいなら手持ちの工具でもなんとかなるかな、早速取りかかろう。
で、できた~!!!
長きにわたる格闘の末、遂に電波が、通ったよ~!!!マジでエラー出まくったから、焦ったんだよなぁ......取説を作ってくれた、どっかのRF社の方には頭が上がらないなぁ。
全部対処を事細かに書いててくれたし、そりゃ、そう(辞書並みの分厚さにも)なるわ。
そしてさ、さっき連絡帳の欄開いたけど、デフォルトでトールズの職員室に電話がかかるのなんなの!?いや、帝都近郊からなら電波が通じそう、って理屈はわかる。でもそれを抜きにしても、絶対あのオッサン、ここまでわかってて仕込ませただろ......!ああ、本当にRF社の人、無駄なお手数をおかけします......
「善は急げって言うしな......あ、すみません、はい。アルマ・カントゥータと申します、今、授業の方は.......?あ、大丈夫なんですか!?えっと、それじゃあクレア・リーヴェルトへの取り次ぎをお願いできますか?はい......わかりました、ありがとうございます.......」
____________なんかブッチされたんですけど???
え、ちょっと待って、「出直して来てください」ってどういうこと!?なんかまずいことしたか?それとも急に都合が悪くなったから掛け直せってことか?
......ダメもとでもう一回かけてみるか。
「......もしもし、アルマくんですね?」
想像の二倍くらいの速さで繋がった。となると......何か怒らせちゃったってことか......心なしか若干声も硬い気がする。
「えっと、その、クレア姉さん.......」
「どんな事情があるかは知りませんが、とりあえず要件を聞きそびれたなと思いまして」
うわーん!絶対キレてるよ、これ!!!
一回エミルをそそのかして、イタズラしたとき並みにキレてるってば!久々にクレア姉さんのキレ声聞いたけど、うん......思ったより精神面にクるものがあるな、これ.......
「よ、用件......えーっと......」
さて、どう話したものか。いきなり「ホムンクルス貰ったけど何着せればいいかわからん」、なんていうのも不味いだろうし......
「その、とあるツテで、い、色々あって!?孤児を預かることになっちゃったんだよね......女の子の。で、その辺のお世話とか、服とか、全くわからないし......できれあ同姓の方にお話を伺いたく......」
クレア姉さんはしばらく考え込んだように、いや、これは呆れてるな。絶対「なんで私に来たんだ」って思って頭抱えてるあれだ......
深いため息をついて、ようやくクレア姉さんは口を開く。
「......いくつか、質問させてください。アルマくんは今、一体どこにいるんです?」
「えっと、帝......都?」
「......まず、小言になってしまいますが、電話をかけるときは、いきなり本題に入るのではなく、まずさっきの"孤児うんぬん"のような、事情や状況の説明をしてください。事前情報がなくては、電話では顔も見れないので、冗談と区別がつきませんよ?」
「う....... ハイ。キモニメイジマス......」
するとクレア姉さんは、もう一度深いため息をついて、「わかりました」と答え、何やらメモを取り始めた。
「アルマくん、トリスタ駅への行き方は分かりますか?私の授業が終わるのが16時ごろなので、15時27分発の列車でこちらまで、その子を連れてきてください。放課後の予定は空けておきますから......」
「......!?えっと、トリスタ駅。確かそこまで遠くなかったはずだよな......わかった、大丈夫だと思う、ありがと、クレア姉さん!」
「はい、次来るときは、ぜひアポを取ってくれると嬉しいです」
「......ぜ、善処します.....」
また夕方に会う約束をして、通話は一旦切れた。きっと受話器の向こうでは、恐ろしいほど綺麗な笑顔を浮かべているんだろう。そんなクレア姉さんもまた、天使だとは思うが。
「そういえばさ、君......名前、なんていうんだっけ」
風呂からあがった少女の髪を、できるだけ引っ張らないように、水気をタオルで拭き取る。変な色の水が抜けたためか、足元まである栗色の髪が、更にきれいに見えた。こうしてみると、人形かなにかみたいだ。
「......初期設定の途中で、貴方がシャワーを浴びさせたと認識して、いますが。ゆえに、まだ当機に名前はありません」
「そういえば、そうだっけ。でも体を冷やすだろ?」
「ニンゲンよりは丈夫に作られてます、よ?」
そういいながら、ドライヤーの風に目をつむる少女。今は一応、裾をあげた俺の服を着させているが、どうにもブカブカ感が否めない。
「名前の件だけどさ、その"返品"される前の名前って______」
"返品"というワードを聞いた瞬間、様子が変わった気がした。
「その、俺、」
「......ゃ、です......」
シャツの袖をぎゅっと握りしめていた。小さな声が聞き取れなくて、ドライヤーの電源を落とす。すると、俺に背を向けていた少女はこちらを振り返った。
「いやです......!いいます、言いますから!」
「ちょ、いきなりどうし_____」
「名前も、正体も、私がホントはどんな化け物なのかだって......!」
おもわず面食らった。今までほとんど自発的に喋ってくれなかった少女が、早口で、声に焦りを乗せて捲し立てている。
「面倒もかけません、メイワクなら、でていきます、だから、おねがいです......それだけは、返品だけは......っ......!」
一度軽く乾かしたはずの上着が少し湿った。どうやら少女は泣いているらしい。
「______はぁ、感情がない人形なんて。大嘘じゃねぇかよ、オッサン」
「......っ!ちが、わた、しは.....」
もうここまでしてしまえば、取り繕えないことを、少女は悟ったのだろう。無表情の奥に、ほんの少し絶望が見えた。目からはまだ涙がぽろぽろと落ちている。
「......今すぐじゃなくて良い。その"返品"って言うのが、君の中でどういう意味かはわからない。けど、正直今、詳しい説明を聞く時間は、あまり無いんだ。いずれ、気が向いたら話してくれ」
「......」
少女が黙ってしまったので、もう一度ドライヤーの電源をつける。長い髪がすっかり乾く頃には、少女は泣き止んでいた。
「その......シェーマ、ですの。シェーマ・オライオン。わたしの、なまえ......」
「そっか、かわいい名前じゃんか。俺はアルマ......アルマ・カントゥータ。ま、よろしくやってこうぜ。っと......ほら、できたぞ」
取り急ぎだが、予備に持ってきた組紐で、長い髪の毛を纏めてみることにした。結構雑だが、素材が良いので、かなりかわいらしく仕上がったのではなかろうか。
「えっと、あるま、どこへいくんですの?」
ちゃかちゃかドライヤーやら何やらをもとの場所に戻し、工具類をまとめてバッグにしまい直す。
実は体を洗ってもらってる間に、シャツの切れ端と持ってきたレースリボンで、チョーカー作っといたんだよね〜!!流石に人目につくところで、ひび割れた人工皮膚見せるのはまずいし?
「ふっふっふ......よくぞ聞いてくれたな......」
「______とっても可愛くて、聡明で、この世の至宝な天使様のところさ!」
シェーマの首にチョーカーを巻く。リボンで飾り付けられ、ますます人形のような姿をした少女は、キョトンとした眼差しで俺をじっと見つめていた。
〜おまけ:トールズの教官陣〜
トマス教官「いやぁ〜しっかし、良かったですねぇ!クレアくんにもちゃんと連絡をくれる人がいて!」
マカロフ教官「......中庭でタバコは......」
トマス教官「はっはっは、逃すわけないじゃ無いですか〜!!」
マカロフ教官「チッ......」
トマス教官「それにしても、一体誰からなんでしょう〜?」
マカロフ教官「アルマ"くん"ねえ......アイツ、年下趣味だったのか?」
クレア「出 直 し て き て く だ さ い」
マカロフ教官「おー、おっかないねぇ......」
トマス教官「あんな怒ったクレアくん、初めて見ましたよ〜!これは、今度会ったときに本人の口から、ぜひ!ゆ〜っくり話を聞かせてもらいましょう〜☆」
後日、授業のサボりを見逃したのをダシに、クレア大尉(まだ学生)を問い詰めるトマス教官の姿が確認された。
クレア「で、ですから!彼とは地元の知り合いだったくらいでしか......!」
トマス教官「ふむふむ〜!歳の差があったとしても、恥ずかしがることはないですよ!ボクも、陰ながら応援させてもらいますからね〜っ!」
クレア「っひ、人の話をちゃんと聞いてください〜ッ!」
トマス教官「ほ〜う?それではぜひ、少女時代のクレアくんの話も交えて、ぜひ詳しく〜!」
クレア「......墓穴を掘ってしまいました、か.......」(諦め)