リィン・シュバルツァー、貴様にクレア姉さん(語弊)は渡さないからなぁッ!?   作:発光米

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近郊都市・トリスタ①

 

 

帝都駅、ホームにて......

 

 

「まもなく、4番ホームにトリスタ方面行き、普通列車が到着します」

 

 

 

駅のアナウンスにしたがって、人混みをかきわけて進む。シェーマの不格好な姿を特に気に留める人も少なく、みんなそれぞれの目的地へまっすぐ進んでいく。

 

 

 

「あるま、あれは、なんですの?」

 

「列車だよ。あれに乗ってクレア姉さんに会いに行くんだ」

 

 

 

さすがに靴まで揃えることはできなかったので、シェーマをおんぶして、俺の荷物はシェーマに背負ってもらっている。側から見れば、歩き疲れた妹をおぶる兄......といったところか。

 

 

 

「......怖いか?」

 

「だいじょうぶ、ですの」

 

 

 

オッサンの執務室を出て、人混みに紛れてから、だいぶ喋ってくれるようになったが、軍の関係者が目に入るたびに、怯えて、俺の上着のフードに顔を隠す。固い表情や、導力銃に反応しているようだ。

 

この調子だと、ミハイル兄さんに会わせられるのは、だいぶ先かな?

 

 

 

それにしても、つくづくこの子......シェーマの置かれていた状況を考えると、反吐が出る。物置き同然の場所に長い間閉じ込められ、そして、この子が相当怖がっているのを見るに"返品"というのも、どうせロクなモンではないだろう。

 

あの鉄血ならさっさと起動して、秘書にでもするのかと思ったが。それでも物扱いなのは、きっと変わらないだろう。

 

 

 

トリスタ行きの列車は、1分の誤差もなく帝都に滑り込む。中はガラガラだった。なんなら乗った車両には、俺たちしかいなかった。

 

 

 

「ほらよ......っと。動くから座ってような」

 

 

 

列車のシートにシェーマをおろし、持たせていたバッグを預かる。ちょこんと座ったシェーマの足は、ギリギリ床についていない。

 

 

 

「はい、ですの......って、っわあ!?」

 

 

 

元気よく返事をしたはいいものの、発進時のGに耐え切れず、そのまま横に体制を崩してしまった。体重が軽いから、というのもあるんだろうか。

 

 

 

「はは、手すりに捕まったほうがいいかもな」

 

「了解、ですの。なるほど......これが、レッシャ......」

 

 

 

するすると窓の外の景色は流れていく。帝都の街並みを抜け、だんだんたてものの間隔が広くなっていく。

 

しばらくぼーっと列車が進むのを眺めていた。

 

 

そういえば、まだサザーラントを出て、1日目なんだよな。

 

もうそろそろ、母さん起きてるだろうな。父さん、後処理は任せた。どうか、女神の加護を......

 

マジで母さんがキレたら、あそこまで手がつけられないとは思ってなかった。結婚してから丸くなったとは、言っていた様な気もしたが.......

 

 

 

 

 

「......!あるま、おっきい建物、ですの」

 

 

 

シェーマが俺の腕をゆすり、窓の外を指差す。木々の隙間から、少しずつ、坂の上にあるであろう目的地が見えてきた。

 

 

 

「______ん~?......ああ、俺も見るのは初めてなんだ。あれが、トールズ士官学院......ドライケルス帝ゆかりの名門校だな」

 

「どらいけるす、ってなんですの?」

 

「うーん、なんか、大昔のすごい人ってクレア姉さんは言ってたな。悪い、詳しいことは俺もあんまりわからないや」

 

 

 

程なくして、アナウンスが入り、下車の準備を整えることにした。

 

......数時間前には、全く想像もつかなかったな。こんな早くに、クレア姉さんに会いに行くことになるなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「さ、設定の確認をしておこう......クレア姉さん相手にどこまで通じるかわからないけどな」

 

「はい、ですの」

 

 

 

即興ででっち上げた筋書きはこうだ。

 

帝都に偶然知り合いを訪ねてやって来た俺が、裏路地で迷子らしき子......つまりはシェーマを発見。そのまま近くの兵隊さんに確認したが、二日待っても迎えがこないので、捨て子の可能性が高いと判断。

 

他に身寄りがいないので、唯一、薄すぎるが繋がりのあった俺のところで引き取ることになった。

今はこの子の知り合いや身内を探すために、帝国を回る準備をしようとしている......といった感じだ。

 

 

 

「もしも、怖い人がいたら......まあ、クレア姉さんは大丈夫だと思うけど。無理して話さなくてもいいからな」

 

「わかりました、無口キャラ、ですの」

 

「......うん。まあ、そろそろ行こうか」

 

 

 

列車が止まる。またシェーマはよろけたが、手すりに捕まって、倒れるのは阻止していた。

 

また俺のリュックサックを背負ってもらって、そのシェーマを俺がまた俺がおぶる。結構重い。

 

 

駅員さんに2人分の切符を渡し、改札を通る。待合ロビーには、透き通るような水色の髪の、制服を着た女性が座っていた。他にも何人か一緒だ。

 

 

 

「あ、いたいた。おーい、クレア姉さんっ!」

 

 

 

ふと、声に気が付いたのかこちらをふりかえる。少し驚いたように目を見開いた後、後ろのシェーマのことも確認して、彼女はふわりと笑った。

 

 

 

「アルマくん、よく来てくれましたね」

 

「うん、クレア姉さんも通信でさっき声は聞いたけど元気そうで良かった......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______天使か???

 

 

 

昔から髪を結んだ姿は可愛いと思っていたけど、士官学院に入ってから美しさにまた磨きがかかって、それでいて可愛らしさはまったく衰えていない、お姉さん的な魅力が倍、いや三倍くらいになっていますというか、セントアークにいたときみたいに、楽器を奏でる繊細なクレア姉さんの腕も素敵だったけど士官学院に入ってきたえたのかな、筋肉がついてしっかりした腕もお綺麗です、ピンク色の瞳もあいかわらず、いやまえよりもキラキラパシオンルージュみたいに輝いてます、宝石そのまま埋め込んでもこんな風にはなりませんまさに帝国の至宝、ゼムリアの誇る絶世の美女。手はちょこっと昔より荒れてるみたいだけど、ハンドクリームとか塗ってるのかな、士官学院は剣術銃術一通り習うって聞いたから昔より厳しい環境なのは明らかだけど、爪はちゃんとケアしててすてきだなぁ、昔ネイルアートをしてみたこともあったっけ。クレア姉さんは塗るのもうまかったけどミハイル兄さんに塗ってもらった後のちょっと照れた顔クッッッッッッッッソ可愛かったんですけど。こっちではネイルとか校則で禁止されてたりするのかな、地元のアストライア小等部の子は学校ではそういうのしちゃいけないって言ってたけど......ってかいつもセントアークでは大人っぽい長袖着てたけど制服の夏服かな、半袖カッターシャツのクレア姉さんもかわいいですこんなクソ暑い日でもちゃんと前のボタン閉めるのは昔から全く変わってなくて安心したっていうか、熱中症は心配だから変な虫が寄り付かなさそうなところで適度に涼んで欲しいんですけど、でもスカートの丈だけはちょっと短くないですかそこの後ろにいる男どもが変な気を起こしちゃうじゃんいやクレア姉さんは天使だから色んな人からモテるのもわかるし虫ケラどもが不埒なこと考えちゃうのも当然だからちょっとくらいは考慮してあげなくはないけど______

 

 

 

 

 

 

 

「______ところで、お兄さんがたの中で、一度でもクレア姉さんに不埒なことを企んだクソ野郎は、いませんよね?」

 

 

 

するとクレア姉さんの横にいる女の人......同級生のようだ。が、後ろの男へ話題を振る。耳のフチがどうやら赤くなっている様だが。

 

 

 

「え、やっぱりチビくんそういうの気になる?実はね〜」

 

「お、おいやめろって!別にアレはそういうつもりじゃ......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い ま せ ん よ ね ?」

 

 

 

 

 

「ヒッ......」

 

 

「もう、アルマくん。私なんかにそんな気起こす人いませんよ。トールズには、ただでさえ魅力的な女性が多いんですから」

 

 

「はは、そうだったんだ。でも俺としてはクレア姉さんのことが心配で仕方ないんだけどな。ご飯ちゃんと食べてる?」

 

 

「大丈夫ですよ。私の話より、早くしないとお店が閉まっちゃいますから......」

 

 

 

 

......ふーん?

 

 

 

 

まあ、とりあえず隙を見てそこの後ろの男二人組はどうにかしとかないとな......今はクレア姉さんがいるから一旦引くけど。

 

 

 

「そうだね、本題を忘れるところだった......早速で申し訳ないんだけど、まず先に靴から揃えたくって......」

 

 

「あるま、目が死んでる、ですの」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

......暇だ。

 

もう今日は終電で帝都に帰ることにして、夕食をトリスタで食べて帰ろうってことになったのだが、クレア姉さんに「ちょっと何処か別のところに行っていてください」って言われて服屋からつまみ出された。

 

は、良いんだが......

 

 

 

 

「へえ~!!!これがRF社最新の戦術オーブメントですかぁ!」

 

 

 

変な瓶底メガネに捕まったんですが????

 

 

くそ、こうなるんだったら足のホルダーなんかに入れずに、トヴァルさんみたいにポケットか鞄にでもしまっておけば良かった!

 

キラキラしながらARCUSをみて、「わわわっ!」とか、「うひょー!」とか言ってる。頼むから壊さないでくれよ?

 

 

 

「一応秘慝事項なんスけど......ところでお目付け役サン、助け船とかは?」

 

 

 

一緒に女性陣に追いやられ、名目上クレア姉さんから「トリスタの案内」を任されている男どもに目配せをする。が、一人は苦笑、もうひとりは口笛を吹いて目を思いっきりそらしている。

 

 

 

「いやー、悪いね。そうなった教官は誰にも止められねぇんだわ」

 

「トールズの敷地に踏み入れるなら、そういう覚悟もしておかないとね。なにせ変人狂人がウジャウジャいるんだから」

 

「んなら事前に言ってくださいよ!?」

 

 

 

チッ、ビン底メガネの物色はまだかかりそうだ。今回のうちにトールズに生息している、クレア姉さんに群がる虫を、ある程度駆逐してやろうと思っていたのに......かといって一番の得物を放置したまま、このオーブメントヲタクにぶっ壊されでもしたら堪らない。

 

 

 

「ふふふ〜!とぉってもいいものを見せてもらいました〜。アルマくん、これはお返ししますね〜」

 

「あ、はい......?それでは俺はこれで、あとまだ回りたいところもありますし......」

 

 

 

大変満足そうで何よりです。20分のロスですね。さて、とっとと殺虫を済ませないと......

 

 

 

「ふむ〜、でも、せっかく見せてもらったのに、何もお礼をしないというのも、なんだか申し訳ありませんねぇ......」

 

「いえ、お気になさらず」

 

 

 

お礼はクレア姉さんを狙うクズどもを、ちょ〜っと無抵抗のまま捻らせてくれるだけでいいですので♡とっととここから去らせてくれると、嬉しいんだけどなぁ?

 

するとビン底眼鏡は「あ、そうだ〜ぁ!」と気の抜けた声で手をポンと叩く。なんだろう。イヤな予感しかしないんですけど......

 

 

 

間延びした言動と表情からは想像できない速さで、その辺を通りがかった生徒に声をかけていく。数分も経たないうちに、新たに4人の生徒を引き連れて、俺は学院のグラウンドに連れてこられていた。

 

 

 

 

「聞くところによれば、君はこれのテスターとか〜?でしたら、扱いもそこそこと見ていいですよね〜」

 

「えっと?つまり俺は何をさせられるんですか?」

 

「いい質問ですねぇ〜!」

 

 

 

メガネ教官はニコリと笑っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「模擬戦ですよぉ、模擬戦!ウチの生徒と!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい......?」

 

 

 

 

「え、ちょっっっっっっっっっっと待ってください???え、は?どうして?」

 

 

 

確かに、それぞれ皆さん槍とか宮廷剣とかお持ちですけど。まさか一対四でやれとか言いませんよね?え、本気ですか?そもそも俺へのお礼って話じゃなかったんですかビン底目鏡ェ!!!

 

 

 

「もちろん、ハンデはつけさせてもらいますよ。

 

生徒はアーツ、アイテム、回復系戦技の使用禁止、アクセアリーは身代わりマペット一つで固定、マペットが壊れた時点で戦闘不能と見做しますね。さらに、初撃はキミに譲る......というのでいかがでしょう?人里が近いと、高位アーツは気兼ねなく打ちづらいですもんねぇ〜」

 

 

確かに、さらなるロマンを追求しようとしたけど、街道を破壊しちゃいけないから思いとどまったアーツがいくつもある......対魔獣はともかく、対人でも通用するか試しては見たかったけど.......

 

 

そして、迷っている俺に近づいてきて耳打ちする。

 

 

 

「受けるか受けないかは、お礼ですので勿論自由です〜♩ですが、今回集まってもらった生徒諸君は、ちょっとした賭けをしている様でして......」

「それ、俺が賭けのダシに使われてるってことですよね?教師なんだから止めてくださいよ、未成年の賭け事は違法ですよ」

「いえ、別にお金をかけているわけじゃ無いんですよ〜。ただ、何かにつけて衝突し合うと言いますか......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「_____端的にいうとクレアくんの取り合いですねぇ♡」

 

「ぜひとも、殺らせていただきますねっ♡」

 

 

 

 

 







〜おまけ:そのころ女性陣は......〜



クレア(引き受けたはいいものの、最近ずっと制服ばかり着ていたから、おしゃれの勝手があまり分かりませんね......旅をするというなら、やはり動きやすさに重きを置くべきか、ですがこの年頃の子にはぜひ、可愛いものも楽しんでいただきたいですし......それに、この子の生い立ちを考えると_______)


クレア「......って、いけませんね。これから一番大変なのはアルマくんとシェーマちゃんなのに......」


女子生徒「ねえねえ、シェーマちゃん!次これ着てみてよ!」
女子生徒「そういえばシェーマちゃん、アルマくんから、クレアのことって何か聞いてたりしない?」

クレア「わ、私ですかっ!?」


シェーマ「......"クレア姉さんは天使であり、文字通り空の女神からの使いのような、この世で最も尊き存在である"」


クレア「あの子はまた......なんてことを吹き込んで......」


シェーマ「"クレア姉さんはこの世の至宝だから、みんなから愛されるのは当然のことだ。しかし、その優しさに漬け込もうとするものがいるならば、ただちに斬れ"......と。"実際俺は一回やったことがあるから、父さんとミハイル兄さんに、半殺しにしてもらったことがある"とも。」


クレア「そ、そんなことが......」(ドン引き)

女子生徒「ひゅ〜、愛されてるねぇ!」



シェーマ「......外で、爆発音......?」

クレア「ま、まさか。いえ、いくらあの子が喧嘩っ早いとはいえ流石にこんなところで......お膳立てでもされない限りは大丈夫でしょう......大丈夫ですよね?」




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