モモンガがツアレに憑依する話(仮)   作:佐倉ハル

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10.その後

 

 

 

 

 

 

 

あの後の出来事。

 

 

モモンはニグン達に本物の最高位天使を見せるという名目で、<第10位階天使召喚(サモンエンジェルテンス)至高天の熾天使(セラフ・ジ・エンピリアン)>を行使し、天使を召喚して見せた。

これ自体はワールドアイテムの効果で使えるようになったもので、召喚の方であれば行使するのに特に職業の制約はない。レベルはユグドラシル基準でだいたい80後半くらい。レベル差だけで見ればモモンにとっては十分に勝てる相手ではあるのだが、ユグドラシルではアンデッドであったために致命的に相性が悪く、それゆえに10以上の開きがあっても互角クラスであった。もしかしたら人間となった今はそうでは無いのかもしれないが、アンデッドの特性を微妙に引き継いでいる以上致命傷になるリスクは捨てきれない。相性の確認はしていないため現状は不明だ。

正確にはこれは最高位天使では無いのだが、見た目的にもこれが一番神っぽかったので採用した。

 

至高天の熾天使は威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)よりもさらに一回り大きく、4対計8枚のサイズの違う翼が一部を重ねるように伸びており、翼を含む左右の全長は身長を上回るほどに巨大。そして一番異なる点は、異形の姿をしている下位の天使とは違い人間の女性に近い姿をしている事。つまり、外見は文字通りの『女神』なのだ。採用したのも主にこれが理由だ。まあ、この世界でもこれが神の姿として認知されてるのかは分からないという懸念はあったのだが。

 

召喚された天使を見たニグンは少しの間その姿に釘付けになっていた。

 

 

「こ、これが…………本物の…………神の力…………」

 

「これは至高天の熾天使(セラフ・ジ・エンピリアン)。第10位階の召喚魔法により召喚できる天使です。」

 

「あぁ………こんな…こんなことが……………」

 

 

彼は感嘆の声を漏らすと共に涙を流し始め、表情が幸福に満ち溢れていく。この天使は先のドミニオンよりもずっと強力であり、探知阻害の能力は有しておらずその身に宿る魔力を周囲に放っている。彼が優秀な魔法詠唱者であるならば、その強大な魔力を肌で感じ取れているはずだろう。彼は天使から目を離さないまま、おぼつかない足取りでモモンの前まで移動してくると、おもむろに跪いて頭を垂れた。残った部下も同様で、ニグンの後ろで同じ姿勢を取っている。

 

 

「貴女は…いえ、貴女様こそが本物の神…………どうか、これまでの数々の無礼をお赦しください。」

 

 

ニグンは歓喜に打ち震えているのか、贖罪の意識で恐怖しているのか、震えた声でモモンへと赦しを請い始める。モモンは彼らのあまりの変わりように思わずギョッとして戸惑ったが、咳払いとともに気持ちを落ち着かせる。流石は神の存在を重んじる宗教国家と言ったところか。

しかし彼らの態度を見るに、至高天の熾天使ではなく自分に対して忠誠の意を示しているようだった。それを疑問に思い尋ねてみたのだが、「我々が法国の秘宝であるマジックアイテムでようやく召喚出来る天使すらも遥かに凌駕するほどの強大な天使を個で召喚できるなど、もはや神の御業でしかなく、ゆえにモモンは本物の神であると確信した」といった具合だった。

 

モモンは困惑する。私が神…?そんなバカな…どう見ても人間の町娘にしか見えないだろうに…と思ったのだが、ニグン曰く第7位階魔法以上を行使できる者は彼の知る限り一部の例外を除いて存在しておらず、ましてや第10位階が使える者など神以外に聞いたことがない。ゆえに第7位階以上は神のみが行使できる領域と言われており、その最高位である第10位階を行使できるモモンは紛うことなき神である…と。

そして、人間は常人では第3位階が限界で、ニグンのようなエリートの精鋭部隊でも第4、第5位階が到達できる限界点だとも語っていた。

 

モモンは安心したのか落胆したのか、自分でも判別がつかない複雑な心境になった。

カルネ村ではあまり目立たないよう使える魔法を第3位階までだと偽っていたが、この村や周辺のレベルが低いだけで、視野を広げればモモンと互角かそれ以上の強者たる人物も存在すると思っていた。だが実際に法国の精鋭クラスの魔法詠唱者からもたらされた情報は、その仮定を大きく突き崩すに足りうる衝撃的なものだったのだ。

確かに彼らはこの辺りの人間や亜人に比べれば十分に強者だと言えるだろう。しかし結局は、それをもってしてもモモンの想定を遥かに下回るものに他ならない。

こんなことなら王都から距離をとって力を無理に隠しすぎる必要も無かったのかな…との考えもよぎるが、結果的にカルネ村と出会い、エンリとネムに出会うことが出来たのだから、後悔はしていない。むしろ、その選択をした過去の自分に感謝すらしている。

 

 

彼らの処遇については、結局ニグンを始め生き残った者たちはそのまま逃がすことにした。本当は皆殺しにするつもりだったのだが、狂信的な──正直ドン引きする──ほどにモモンを崇拝し忠誠を誓ってくるがために、すっかり興が醒めてしまった。

無論、彼らは直接村人を手にかけてはいないとは言え、殺そうとしていたのは間違いないのだから無罪放免という訳には行かない。逃がす際には「このような事件を二度と起こすな、さもなくば即座に私はスレイン法国と敵対関係になる」という旨を飼い主に伝えるように、ついでにモモンが行使した魔法の能力に関しての詳細な情報は伏せるようにも約束させた。前者は提示して当然の内容ではあるが、後者は特に狙いがあるというわけでは無く、念の為の予防線だ。彼らのモモンへの認識を見るに、変に誇張して伝えられて面倒な事になりそうな予感がしたため、ここは伏せておこうと考えたのだ。

もう目立たないように行動する理由も無くなりつつあるとは思ったが、流石に神として崇拝されるのは御免被りたい。

 

 

 

 

 

 

 

その後──モモンはガゼフと生き残った彼の部下と共に村に戻り、村長に何があったかを要点をかいつまんで説明した。ガゼフからも、敵がスレイン法国の特殊部隊であったこと、モモンが居なければ勝ち目は無かった等を補足していた。村長からは何度も深く感謝され、「貴女は村の英雄だ」「お礼をさせて欲しい」と頭を下げられたが、丁重に断り今まで通り接して欲しいことを伝えた。今のモモンはあくまでもカルネ村に身を寄せている一介の魔法詠唱者であり、村人とは対等な仲間であり続けたいと思っている。そのような形で特別扱いされたりすることで、皆と距離が開いてしまう事は望んでいなかったのだ。

 

村長への説明を終えた後、もう暗くなっているから今日のところは休む事になり、ガゼフ達と別れた。日も暮れてしまった上、彼らも休息をとる必要があるため、村長から指定された空き家を使って一夜を明かすことになった。部下たちは村人の野伏と協力して、交代で村内の夜間警備をしてくれるそうだ。

モモンは安全のために空いた家屋に避難していたエンリとネムに合流する。2人の無事な姿を見ると、安心して自然と笑みが零れた。2人ともモモンが来たことに気がつくとみるみる表情が明るくなり、名前を呼びながら駆け寄ってきた。ネムはその勢いのままに彼女に飛びつく。

 

 

「モモンお姉ちゃん………よかった…よかったよぉ……!」

 

「無事で…本当に良かった…。モモンさんまで居なくなったらと思うと、私………っ。」

 

 

どちらも今にも泣き出しそうな表情で、モモンに縋り付いてくる。モモンは柔らかい口調で微笑みかけながら、2人の頭を優しく撫でた。

 

 

「心配かけてごめんね。もう…大丈夫だから。全部、終わったから。」

 

 

 

 

 

3人でエモット家へと帰宅した。エモット家は幸いにも大きな損傷は受けておらず、扉の木材に多少の切り傷がある程度だった。外は既に暗く、部屋の中も真っ暗だったため、モモンが<永続光(コンティニュアル・ライト)>で明かりを灯す。今日はもう何もする気が起きないからと、就寝して明日から行動する運びとなった。2人は着替えのため自室に向かう。モモンも外装を寝間着へと変更する。

ふと、通りがかったリビングのテーブルを見やる。テーブルの周りに並んだ5つ分の簡素な椅子。本来は4つだったが、モモンが来てから他の家から余っていた分を譲り受けて使っていたため、一つだけ形が違っている。

 

 

(もう…ここを5人で囲むことは無いんだな…。)

 

 

モモンの脳裏にほんの一日前まで、全員でテーブルを囲んで食事をしていた時の思い出が蘇る。改めて考え始めるとエモット夫妻がもう居ない事を強く実感し、寂しさが込み上げ胸が締め付けられる思いになってくる。

モモンは椅子の上に座る5人の幻影から目を背けるように、2人の元へと向かった。

 

 

 

 

 

明かりを消し、3人でベッドに入った。普段であればここから少しの間は他愛の無い雑談を行っている事が多かったのだが、今日は当然ながらそんな気分にはなれない。

しばらくの間静寂が流れていたのだが、ネムがポツリポツリと思い出話を呟き始める。

 

 

「私が家の中を走ってたらね…お父さんに叱られたんだ。悪い子は家から追い出すぞーって…。」

 

「──うん。」

 

「友達と家で遊んでて家具を傷つけちゃった時も…すっごく怒られたの。」

 

「──うん。」

 

「お母さんにも…たくさん怒られたよ…。嫌いなもの食べられないからって…こっそり残した時とか……………ダメって言われてたのに、森に遊びに行こうとした時、とか……………。」

 

「──うん。」

 

「私………、たくさん、たくさん…っ、悪いことしちゃった………お父さんと、お母さんにっ…、迷惑、かけちゃった…………だから、いなくなっちゃったのかな…私がっ、悪い子だから…………神さまが、連れて行っちゃったのかな……………。」

 

 

だんだんネムが嗚咽を上げ始め、涙声になっていく。彼女はエンリと向かい合ってはいるが、誰と目を合わせる訳でも無く、涙をシーツに零しながら、ただ自身の感じる罪の意識を吐露し続けていた。

 

 

「お父さ…っ、お母さん…、ごめん、なさいっ………ごめんなさい…!私、もう悪いことしないから……いい子にするから………だから………だから、っ………!」

 

 

エンリがネムを抱きしめる。ネムはもう言葉を紡ぐことなく、エンリの胸の中で声を上げて泣き続けた。エンリは何も言葉をかけなかったが、彼女もまた、無言のまま目を閉じ静かに枕を濡らしていた。

 

モモンも傍らで仰向けになり、目頭が熱くなりそうになるのを堪えていた。見ていられなかった。

日中はまだ事の最中であり気の休まる時間が無かったため、ゆっくり考える余裕もなくどこか実感が持てていない部分もあったのだろう。全てが終わり、家に帰り、両親が帰ってこない現実を見て初めて強く理解し、寂しさが込み上げてくる。

2人の心情は察して余りあるものだった。無理もないだろう。ただの居候であるモモンですら寂しさをているのだから、産まれてからずっと、長く一緒に暮らしてきた実の家族である2人の悲しみは計り知れない。

 

もういっそ、彼女たちの両親だけでも────

 

モモンは頭を振る。蘇生の杖を使いたくなる衝動が沸き上がるが、それはダメだと考えを振り払った。

確実に面倒事になると結論を出したばかりじゃないか。それをした結果、このカルネ村にだって危険が及ぶかもしれない。これ以上皆を………彼女たちを不幸にしないためにも、村の安全を脅かしかねない安易な行動は慎むべきなんだ。

 

モモンも2人の方を向いて体を寄せ、エンリの反対側から2人に手を回すようにネムを包み込んだ。

今の彼女に出来ることは、こうして身を寄せ合い、少しでも2人を安心させてあげることだけだった。

向かい合っていたエンリが、涙を浮かべたままモモンに微笑みかける。

苦しみや悲しみを堪えて無理やり作ったような、痛々しい笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから一夜開けた朝のカルネ村。

ガゼフの出立の時間が迫ってきていたため、モモンは彼と合流するために中央広場へと向かっていた。

 

 

エンリは一晩眠った事で少しだけ心の整理が付いたようだった。まだ心の傷は癒えていない…寂しさで胸が張り裂けそうな思いは消えていない…だけど、今までは母親が作ってくれていた食事も、今日からは自分たちで材料を調達して作らなければならない。塞ぎ込んで手をこまねいていても、両親が戻ってくるわけじゃない。ネムにひもじい思いをさせないためにも、自分が頑張って支えていかなくちゃいけない──そう強く意気込み、真剣な表情で家の荷物整理などを始めていた。

ネムはまだ気分が落ち込んだままで表情も暗かったが、姉の様子を見て自分だけ腐っている訳にはいかないと奮起したのか、「私も手伝う」とエンリのもとへ行き整理の手伝いをしていた。

 

 

 

 

 

モモンは改めて村を見回す。

村の家々は多くが一部または大部分を破壊されていて、今なおその厄災の爪痕を残している。死体は移動させたが未だ処理できていない血痕がそこかしこに残り、乾いていても僅かに鉄臭さを漂わせている。これほどの惨状では、生き残った村人が生産活動を再開して安定するまで、建物の再建は難しいだろう。

 

歩きながら昨日にあった出来事を振り返る。

 

本当に色んな事のあった一日だった。多くの村人の命が失われ、たった一日でカルネ村を取り巻く環境は大きく変わってしまった。

モモンが身を寄せるエモット家もその被害を受け、エンリとネム、2人の最愛の両親であるエモット夫妻を失った。彼女も1ヶ月という短い期間ではあったが、ずっと彼らと寝食を共にし続けて来たために、その悲しみも一入(ひとしお)だった。

突然やってきたにも関わらず快く迎え入れてくれて、毎日食卓を囲み、それこそ家族のように温かく接してくれた。

そんな2人に対し愛着心が芽生えるには十分すぎる時間だったのだ。

 

 

モモンが中央広場に到着すると、ガゼフ達は乗ってきていた馬を連れて集まっていた。ガゼフが前に立ち、その後方に部下達が馬とともに整列しているような格好だ。

彼らの見送りに来ている人はモモンの他には村長一人のみ。当初はもっと多く集める提案をしていたのだが、まだ心の傷の癒えていない者や片付けに追われている者もいる中で自分のために時間を割いてもらうのは申し訳ない、というガゼフの配慮により2人だけの見送りとなった。

モモンが広場に来たことに気がつくと、ガゼフは軽く手を上げて彼女に合図を送ってきた。彼女も歩きながら同様にして返しつつ、ガゼフの前に立つ村長の隣に並んで立ち止まった。

全員が揃った所で、ガゼフが口を開く。

 

 

「大変な中、わざわざ見送りに来てもらってすまないな。」

 

「いえいえ、戦士長様こそ本当にお疲れ様でした。昨晩はよく眠れましたか?」

 

「ああ。それに、モモン殿から頂いた薬のおかげもあって体力も万全だ。これなら十分に王都まで帰ることが出来るだろう。本当に世話になった。モモン殿への報酬については、王都に戻り次第すぐに届けられるよう手配しよう。」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

 

ガゼフは言い終えると、馬の方へと移動し、(くら)(あぶみ)に足をかけて颯爽と飛び乗る。それを合図に、後方に控えていた部下たちも次々と馬へ乗っていく。ガゼフはふと、何かを思いついたのかモモンの方へと視線を向け、再び口を開く。

 

 

「そういえば一つ訊きたいのだが………モモン殿は冒険者にはならないのか?」

 

「冒険者ですか…。存在を聞いた時に少し気になってはいたのですが……お恥ずかしながら、あまり詳細を知らないのです。」

 

「君の強さはあまりにも規格外だ。自分で言うのも何だが、王国最強と言われる俺でも手も足も出せずに負けるだろうな。君であれば、きっと最高峰のアダマンタイトにだってなれるだろう。そうすれば金も沢山手に入る。この村の生活だってもっと良くしてやれるはずだ。」

 

 

カルネ村に来た時に村長から聞いていた冒険者が時々村にやってくるという話の流れで存在は耳にしていた。だが閉鎖的な辺境村ではそれ以上の冒険者に関する詳細を知るものもおらず、その後のモモンの心境の変化もあって、完全に後回しになってしまっていた。

会話の中にあったアダマンタイトとは、口振りからしておそらく冒険者のランクの様なものだろうか。どれほどのものかは分からないが、そのランクになることで多くの稼ぎを得ることが出来るのであれば、やる価値は十分にあるように思える。

 

 

「俺も冒険者になった事は無いから、知っているのは表面的な情報だけだ。気になるのであれば、一度最寄りのエ・ランテルに行って冒険者組合で話を聞くといい。まあ最寄りとは言っても、徒歩で2日ほどはかかってしまうがな。」

 

「貴重な情報をありがとうございます。今は村の復興作業がありますので、それが終わったら検討してみようと思います。」

 

「ああ。それと、もし王都に来ることがあったら是非声をかけてくれ。入口には検問がいるが、ガゼフ・ストロノーフからの招待だと言えば通してくれるはずだ。ささやかではあるが、精一杯もてなさせて頂こう。」

 

 

それでは失礼する。とガゼフは言い残し、手綱を引いて馬を走らせ、部下達と共に走り去って行った。

彼らの姿が見えなくなった頃、村長がモモンに少し心配そうな表情で話しかける。

 

 

「……モモンさんは冒険者になるのですか?」

 

「村の方が落ち着いてきたら、それも良いかなと考えています。お金が稼げるのなら、エンリもネムにも美味しい物を食べさせてあげられますしね。」

 

「そうですか………ですが、寂しくなりますね。」

 

 

モモンが冒険者になると決めた場合、まずはエ・ランテルに赴く必要がある。そうすれば普通であれば必然的にカルネ村を離れることになる。村長がそう考えるのも当然だろう。彼の言葉の中には単に別れを惜しむ感情の他にも、村を守る重要な戦力が抜けてしまうかも知れない事への懸念も内包されているように見えた。

だがその心配には及ばない。なぜなら、モモンは職業の制約を受けるものを除いてあらゆる魔法を使うことの出来る魔法詠唱者だからだ。

 

 

「大丈夫ですよ。私は転移魔法が使えますから、毎日だって帰ってこられます。」

 

「なんと……!我儘を言うようで申し訳ありませんが、そうして頂けると助かります。村の皆も喜ぶでしょう。」

 

 

村長は一転して表情が明るくなり、モモンに深深と頭を下げた。

 

以前までの彼女であれば、出会いは一期一会だと割り切ってカルネ村ときっぱり別れを告げ、冒険者としてまだ見ぬ世界へと旅立って行ったであろう。だが、それはもう過去の話だ。

当然今でも未知への憧れの気持ちは変わらない。冒険者になろうという選択をする理由の一つにはそれも含まれている。だけど、もうカルネ村を離れるつもりは無い。

家族も友人もいない…仮想空間越しに築き上げてきた仲間との繋がりも立ち消え、灰色の世界で孤独に仲間の幻影を追い続けてきたかつての鈴木悟はもう居ない。転移してきたこの世界で、カルネ村に出会い、エモット家に出会い、家族の温かさを知ることが出来た。仮初ではない本物の仲間の絆を知ることが出来た。

自分の姿は変わってしまったけれど…第二の故郷となったこのカルネ村を離れるなんて選択肢はモモンにはもう考えられなかったのだ。

 

彼女は村長に微笑みで返し、その場は解散してそれぞれ村の復興作業へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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