モモンガがツアレに憑依する話(仮)   作:佐倉ハル

8 / 15
08.王国戦士長

 

 

 

 

 

 

 

あれから少し経った後。落ち着きを取り戻した村人たちは事後の処理を始めていた。騎士の死体を片づけつつ、犠牲になった村人の死体を中央広場に集めて並べていっている。村人たちの表情は皆一様に暗く、村全体が悲愴感に包まれている。ほぼ全員が友人や家族を殺されたのだから、無理もないだろう。中には全滅してしまった家庭や、1人だけ取り残されてしまった人もいる。

 

結論から言うと、エンリとネムの両親は助からなかった。2人の死体はエンリが騎士に襲われたという場所──自宅付近の草むらに血まみれの状態で事切れていた。エンリとネムは変わり果てた姿となった両親の亡骸に、縋り付いて泣き叫んだ。騎士によって集められた村人の中に2人が居なかった事から覚悟はしていたが、いざ現実と直面すると実感が込み上げ、色々な感情が綯い交ぜになる。モモンは2人の様を直視出来ず、唇を噛みつつ視線を逸らしてしまった。

 

 

 

 

 

「モモンさん。本当に何とお礼を言ったら良いか………皆を、カルネ村を救って下さって、本当にありがとうございました。」

 

 

作業が終盤に差し掛かった頃、モモンは生き残った村長に声を掛けられ、エンリとネムと共に対面したところ、お礼の言葉とともに深々と頭を下げられた。

 

 

「何かお礼が出来れば良かったのですが……。」

 

「い、いえ!お礼なんて…。むしろ──私が今日に限って出かけていたばかりに、たくさんの方が犠牲になってしまって……ごめんなさい。」

 

「モ、モモンさん!!頭を上げてください!!」

 

 

モモンが頭を下げると、村長は動揺し、隣にいたエンリが悲鳴のような叫びとともに止めに入る。

 

 

「なんで…どうしてモモンさんが謝るんですか!!」

 

 

モモンの言葉は本心から出たものだった。村に来てから今まではずっと村にいるか他の村人と出かけるかのどちらかであり、1人で出かけたのは今日が初めてだった。その動機だって好奇心を満たしたいという個人的なものだ。

自分が森に探索に行きたいなんて言わなければ、こんな事にはならなかった──エンリとネムの両親だって、死なずに済んだかも知れないのに──

そんな思いが消えないのだ。

 

2人は今日、最愛の両親を失った。

モモン自身も元の世界では両親は既に他界し、孤独の身だった。だが、状況は全くと言っていいほど違う。彼の父親は幼い頃に、母も小学生の頃に。母は大切にしてくれていたが、多忙ゆえに家にはほとんどおらず、あまり会話をした記憶もなかった。愛情を感じられる機会など、まず無かった。

2人は両親と毎日共に過ごし、会話を交わし、温かい家庭を築いていた。それがたった数時間にして、闖入者に殺害されるという形で突然に終わりを告げてしまったのだ。耐えられるはずがない。モモンだって同じ形で両親を失っていたら、きっと2人と同じ反応をしただろう。

 

 

「お願いだから、そんなこと言わないでください…私はもう、大丈夫だから…。」

 

 

エンリはモモンを抱きしめ、大丈夫だからと言い聞かせ続ける。モモンの心に、深い罪悪感と後悔の念が湧き上がり、胸を締め付けた。まさに今悲しみを背負っているであろう彼女に、それを押し殺してまでこんな事をさせてしまっている自分に、余計に腹が立ってしまう。

 

少しだけ期待していた精神抑制は、働いてはくれなかった。

 

 

 

 

 

──────

────

──

 

 

 

 

夕刻。日は既に傾き、村の景色も橙一色に染まり始めている。人手が足りなかったのだが、モモンの協力もあり遺体の埋葬は既に完了していた。

村の外れにある共同墓地。名前の刻まれた未整形の石を立てかけただけの簡素な墓が横一列に並び、それぞれにその親族である村人が寄り添い、亡き家族との最期の別れを惜しんでいた。こちらの世界でのお経のようなものだろうか、村長がよく分からない言葉を並べている。

エンリとネムもその中にいた。墓石の前、両親の遺体が埋められている場所に一輪の白い花を添え、その前にしゃがみ込んでいる。2人からは静かに啜り泣く声が聞こえている。モモンはそれを後ろから、悲痛な面持ちで眺めていた。

 

モモンはアイテムボックスから先端に青い宝石の付いた短い杖を取り出し、それを手の中で弄っている。手持ちの消費アイテムである蘇生の杖(ワンド・オブ・リザレクション)だ。

 

これを使えば1レベルの村人でもデメリットなしで蘇生することが可能だ。やろうと思えばエンリとネムの両親を生き返らせる事だって出来る。だが、それを安易に行ってしまった結果生じる問題は計り知れない。杖は持っている数自体は多いが、情報が乏しい状況で使ってしまうのは危険だ。

これまでの村長やエンリたちの口ぶりからして、この世界には死者を蘇生させる魔法は存在していないらしい。単純に彼らが知らないだけなのかもしれないが、つまり少なくともこの村やその周辺には蘇生の概念は存在しないという事。つまり、この魔法は奇跡とも言える代物だ。

奇跡を与える魔法詠唱者なんて、単に殺すだけの存在よりも厄介事に巻き込まれる予感しかしない。

 

ひとたび蘇生を行ってしまえば、その噂は瞬く間に広まってしまう。口止めをする手段は考えられるが、限度があるし流石にそこまでは信用しきれない。騎士たちが村人を簡単に殺して回っていたように、この世界での人間の命の価値はモモンの常識よりも遥かに軽い。ゆえに家族を何らかの形で失って、生き返らせて欲しいと思っている人なんて、この村の外にだってたくさんいるだろう。ウチの家族もやって欲しいと際限なく懇願され、断ろうもんならどうして出来ないんだと非難され、家族を見捨てる人でなしのような悪者扱いにされる可能性だって当然ある。感情的になっている状態の人であれば、反射的にそう思ってしまう可能性は高い。最悪、蘇生を受けた家庭とそうでない家庭とで埋められないほどに大きな軋轢が生まれ、人間関係が崩壊してしまうかもしれない。それだけ避けなければならない。感情の出処は自分本位なものかも知れない。だが、本当の意味で心を許せると思った大切なこの場所を、そんな形で失いたくはなかったのだ。

 

 

(強くてニューゲームな状態で転移して、ワールドアイテムまで使ってチートでしかない程の能力を手に入れていてもこのザマか。全く…惨めだな、モモンさんよ。)

 

 

モモンは自分が手段を持ちながらも、リスクを恐れて悲しむ村人たちに何もしてやれない現実に直面し、心の内で自身に悪態を吐く。

 

 

 

 

 

 

 

そんな折、村の外で警戒に当たっていた村人が慌てた様子でこちらに走って来るのが見えた。何かあったのだろうか。村人は村長の前に駆け寄ると、少し息を整える。モモンはアイテムボックスに杖を仕舞い、彼の言葉を聞き逃さんと意識を集中する。

 

 

「き、緊急事態です!遠方に戦士風の人影が十数名、馬に乗ってこちらに向かってきています!」

 

 

途端に空気が張り詰める。

最後に村人は、装備が先程の騎士とは異なるので別の組織かもしれない、とも付け加えた。墓石の前にいた村人たちからどよめきが上がる。ひいっと悲鳴を上げ、怯え始める者もいた。あれほどの事があった直後に再び同じような集団が現れたと聞けば、このような反応になるのは当然だろう。

 

 

「うむ、分かった…敵かどうかはまだ分からないが、出迎える必要があるな。」

 

「私が行きます。」

 

 

モモンは2人に歩み寄りつつ、若干食い気味に名乗りをあげる。

 

 

「村長さんは村の代表として行く必要があると思います。なので、もし交戦状態となった時に守れるよう、私も同行します。」

 

「──あぁ、そうですね。モモンさんであれば、この上なく心強い。どうか、よろしくお願いします。」

 

「はい、任せてください。村の皆は必ず──私が守ります。」

 

 

モモンはきびすを返し、村長と共に中央広場へと歩みを進める。気持ちを切り替え、臨戦態勢を取る。最初は平和的に対話を試みるが、もし彼らが敵だった場合はその場で即座に殲滅するつもりだ。まだ彼らの強さが分からない以上警戒すべきだが、それくらいの気持ちでいなければ、また何かヘマをやらかしてしまうかもしれない。

手に力がこもる。もう二度と、村の人たちを危険に晒すような事にはならないようにしなくてはいけない。そのためにも、まずは自分が先陣を切って迎え撃つ必要があるだろう。モモンはそんな決意を胸に、新たな来客の元へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央広場にて、モモンは村長と横に並び、向かってくる人影を観察している。

村人たちには安全な場所へ避難するよう伝えてあったが、どうしても気になるのか数名が少し離れた家の影からこちらの様子を伺っている。

向かってくる集団は、報告にもあったように先程の騎士集団とは様相が異なっていた。統一された重装備ではなく、それぞれが独自の改装を施したような比較的軽い装備だ。兜をして居るものはほぼ居ない。パッと見の印象では、騎士や戦士というよりは傭兵という表現の方が近いだろう。

モモンは能力探知の魔法を使い、相手の力量を確認する。多くの者は10レベル程度であり、村を襲った騎士と大差ない存在だ。しかし、先頭を走る人物は30レベル程度あり、明らかに頭一つ飛び抜けている。恐らくはこの集団のリーダーだろう。全体的なステータスも他の者よりも高いように見える。モモンにとっては取るに足らない存在ではあるが、初めて見る30レベルの人間に好奇心が刺激される。

結論としては、脅威となる人物は居ないようだ。全力で立ち向かう必要が無いと分かり、少しだけ肩の力を抜く。

 

戦士たちはモモンらのいる村の中央広場まで馬を走らせ、モモンの目の前で急停止する。リーダーと思しき人物が先頭に立ち、その後方に他の者たちが寸分の違いもなく等間隔、横一列に整列する。先程の騎士連中とは違い、統率の取れた見事な動きだ。元の世界で軍隊モノに興味のあったモモンは思わず感心してしまう。

 

リーダーの男は無精髭を生やし、彫りの深い顔立ち。体は一目見ても分かるほどに逞しく筋肉が隆起しており、まさに“屈強な男”という表現が的確な人物だ。彼は少しの間無言で村全体を見回し、そしてモモンと村長に視線を移し、ようやく口を開く。

 

 

「私はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。この近隣を荒らし回っている帝国の騎士達を討伐するために王の御命令を受け、村々を回っている者である。」

 

「王国、戦士長……。」

 

 

聞いた事のない役職と名前だ。後方で野次馬をしている村人からもどよめきの声が上がっている。

カルネ村がリ・エスティーゼ王国という国に所属しているという情報はここでの交流の過程で既に得ている。戦士長という名称と国王から直々に命を受けているという事だから、国王に近しい存在──元の世界にかつて存在した内閣という組織に例えるのであれば、大臣くらいの立ち位置だろうか。いずれにせよ、かなり高い身分の者であると考えられる。

隣にいる村長にもさり気なく聞いてみたが、モモンの想像を超えるような情報は返ってこなかった。おそらく彼も良く知らないのだろう。カルネ村は王国中枢の王都からは非常に遠く離れているので、ネットどころか電話すら存在しない環境では知らないのも無理はないか。

 

 

「貴方がこの村の村長だな。──隣にいる武装した女性もこの村の住人か?かなり高価そうな装備だが…。」

 

 

ガゼフは村長からモモンへと視線を移しながら問いかける。──どうやら王都にいた奴隷だとは分かっていないようだ。“彼女”は王都から脱走してきた身であるため、何らかの理由により顔が割れている可能性があったからだ。もしそうなっていたら、王国の上層部であれば知っていてもおかしくは無い。モモンは王都に悪い意味で顔が広まってしまって居ない事を悟り、一応は安心する。

 

 

「私はモモン・アインズ。──というのは便宜上の仮名なので、モモンとお呼びください。元は旅人だったのですが、諸事情により現在はこの村に住まわせて貰っています。」

 

「承知した。──して、村長殿。見た所建物に多少の被害が出ているようだが、騎士連中はどうしたんだ?」

 

「私が答えましょう。」村長が口を開きかけた所を手を上げて制止し、モモンが言葉を続ける。

「彼らはこの村に土足で踏み込み、半数以上の村人を虐殺するという蛮行を犯しました。なので、殲滅いたしました。」

 

「──何?という事は、モモン殿が奴らを…?」

 

「はい。」

 

 

ガゼフはそれを聞くと素早く馬上から降り、モモンに対し深々と一礼する。

 

 

「この村を救って頂き、感謝の言葉もない。」

 

 

再び後方からどよめきが起こる。隣にいる村長も、そしてモモン自身も表には出さないが内心で驚いていた。この世界ではモモン自身が転移直後にそうであったように、人間が人間に奴隷のような扱いを受けていたりなど、身分の差が自身の処遇にハッキリと現れている歴とした階級社会だ。そんな環境においてガゼフのような身分の高い者が、出自不明の村人風情のモモンに対して頭を下げるなど通常では有り得ない事だ。そういった行為からも彼の人柄が良い意味で立派だと言うことが窺い知れる。

彼らは敵では無い──むしろ信用に値する人物だろうとモモンは考える。

 

 

「いえ…たまたま出掛けていたとは言え、結果的に救助が遅れて半数以上の民を失ってしまいました。感謝されるような事は──」

 

「何を言う。モモン殿。私はここに来るまでにも複数の村を回ってきたが、どこも家屋は全て焼き払われ、村人も数人を残す程度だった。貴女のおかげで半数近くの村人が助かったのだ。十分に賞賛に値する。」

 

「──そう、ですね。」

 

 

モモンの心境は複雑だった。確かにガゼフの情報通りなら、この村は対外的には救われているのだろう。だが、住人側のモモンからすれば、仲間を半数以上も失っていることになる。毎日自宅で食卓を囲み接してきたエモット夫妻を初め、交流のあった多くの村人を失った。自分が出かけていなければ────エンリには散々慰められたが、この罪悪感はなかなか割り切れる感情ではないだろう。

 

 

「一つ確認したい。モモン殿は殲滅したと言っていたが、それは全員殺したという事なのかな?」

 

「はい。」

 

 

モモンがそう言い切ると、ガゼフは少し驚いた表情を見せる。「なるほど………。」と言いつつ彼女の腰の辺りまで視線を落とし、再び顔まで戻してから口を開く。

 

 

「帝国の騎士連中全員を相手取って勝てるということは、余程腕の立つ人物とお見受けするが…。一体どのような方法で?」

 

「魔法ですよ。私は魔法詠唱者ですから。」

 

「魔法、か…すまない。私は魔法には疎いものでな。モモン殿は冒険者なのか?」

 

「いえ、冒険者ではありません。あと、それと一つ補足を。彼らの身なりは帝国の騎士でしたが、実態は違います。彼らは偽装兵で、スレイン法国の囮部隊だそうですよ。」

 

「なっ…!?」ガゼフの顔色が変わる。

「──一度詳しく話を聞きたいのだが、よいだろうか。」

 

「ええ、構いませんよ。村長さん、どこか場所を用意できますか?」

 

「分かりました。では、今回の件で空き家になってしまった家屋に場所を設けましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所が変わり、村長、モモン、ガゼフの3人は空き家となった家にテーブルと椅子を設置し直し、そこを囲んで座っている。追加で証人として村人を数名招き、護衛としてガゼフの部下も数名が家の内外に配置されている。残りは村の外に置き、見張りとしているらしい。

 

まず第一として村が襲撃を受けた時の状況を村長と代表の村人が説明していく。この時点ではまだモモンは村にいなかったので、モモンも情報収集のため聞き役に徹していた。

その際、たまたま招集された村人の中にエンリたちが襲われている所を目撃している人がいたため、モモンが詳細を問いかけ、その話も聞くことが出来た。

 

隊長と思しき騎士──他の騎士からそう呼ばれていたため間違いない──が、エンリに下心を持って掴みかかり服を剥がそうとしていた所をエンリの父親が飛びかかって阻止しようとした。それに激怒したのか、男は罵声を浴びせながらエンリの父親に剣を突き立て、滅多刺しにした────

 

 

(あのクズ野郎────────!)

 

 

この話を聞き、モモンは目の前のテーブルに当たり散らしたい程の激情に駆られる。

隊長というのは、あの時仲間を盾にしようとしていた男に間違いないだろう。まさかエンリにそんな事をしようとしていたなんて。

失態だ。

こんな事なら即死魔法で楽に死なせてやるんじゃなかった──ありとあらゆる手段を尽くして、この世の全ての苦痛を与えて絶望の淵で死に絶えて行かせるべきだった──

 

 

「モ、モモンさん!落ち着いて下さい!」

 

「────っ!す、すみません。取り乱しました。続けてください。」

 

 

声に出ていたのか、それとも態度に出ていたのかは分からなかったが、村長が慌てた様子でモモンを宥める。ガゼフを含め、周りの人が息を飲むように様子を伺っていた。モモンはちょうど精神抑制が働いて少し楽になった事もあり、謝罪の言葉と共に襟を正した。

 

気を取り直し、続いて話すのはモモンが到着したあと敵を殲滅するまでの流れだ。ここはモモンが説明を行う。どのようにして敵兵を殺害したのかについては言う必要は無いだろうと判断し、詳しくは語らなかった。重要なのは尋問した騎士が語った内容だ。

帝国の騎士に成りすまして王国内の村々を襲撃し、王国のとある人物を誘き出す事。そして数名を残してターゲットの戦力を削りつつ、法国の特殊部隊が待ち構える場所まで誘導する事。そしてこの村がその最後の地点である事。騎士が知っていたのは作戦の概要だけだったため詳細は不明だったのだが、ガゼフが来た事でその人物が彼であった事を知る。

ガゼフは話を聞くと、どこか納得したように苦笑する。

 

 

「まさかとは思っていたが、やはり俺を誘き出して殺す事が狙いだったとはな。しかし、そのために他国の村人を殺して回るとは…過激な手段に出たものだ。人類の守り手が聞いて呆れるな。」

 

 

ガゼフの話によると、村の救出に当たって戦力の確保を要請したところ、貴族連中が横槍を入れてきて最低限の人員しか回して貰えず、あまつさえ装備ですら難癖を付けられて粗末なものしか持たせて貰えなかったそうだ。どういう繋がりがあったのかは分からないが、その貴族連中が一枚噛んでいたのは間違いないだろう。

 

王国の貴族は既に手の施しようがない程に腐敗している。王国に根付いている反社会組織と結託し、人身売買や麻薬の密売も斡旋している者もいるという話だ。人身売買に関しては最近になって第三王女の発案による施策によって禁止されたようだが、それでもまだ水面下で取引が行われている可能性は高い。モモン自身がその身売りされた奴隷であったならば、そう考えるのが妥当だろう。

 

国の最高戦力であるガゼフを殺して王国の戦力を削ぎ、帝国に併呑させることで腐りきったリ・エスティーゼの再興を謀る事が目的。ガゼフはそう推測している。

確かに腐敗した政治体制を野放しにしておくと多くの人々が不幸に見舞われる。“彼女”もその被害者かも知れないのだから。だが、そのために無関係な村人たちを殺すというのは些か本末転倒な気がしてならない。もっと他にやりようはあっただろうに──と、モモンは内心納得がいかない思いだった。

 

ガゼフの話がひと段落した所でモモンが話を切り変える。

 

 

「先程お話したように、ここは敵の作戦の最終地点です。つまり、間もなく敵の本陣がやってくる可能性があると言うことです。」

 

「──あぁ、そのようだな。だが、今のところ村の外で見張りに当たっている部下からは何も無いようだが──」

 

 

その話をし始めたちょうどその頃に、外の方がバタバタと騒がしくなり始める。誰かが家の外に慌ただしくやって来たようで、家の前にいたガゼフの部下と何やら話しているようだ。その後すぐ家の木製の扉がバタンと音を立てて開けられる。

 

 

「失礼します!せ、戦士長!魔法詠唱者と思われる人影が複数、村の外を取り囲んでいます!」

 

「何!?」

 

 

村の外で見張りをしていたガゼフの部下が息を切らして飛び込んできて報告した内容は、まさに今からその話をしようとしていた所のものだった。ガゼフは慌てたように席を立つ。モモンもそれに続いて席を立って扉の方へと向かい、振り返りながらガゼフに言う。

 

 

「噂をすれば何とやら──ですね。確認しに行きましょうか、戦士長様。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。