一般性癖TS転生少女、真白 光は絶望的なまでにすくわれたい   作:エテンジオール

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TS転生者にはお友達が少ない。そして類は友を呼ぶのでそのお友達もまたお友達が少ない。そんな状態でお友達を集めた時、お友達同士がお友達である確率を求めよ

 お前は本当にそれでいいのかと言いたげな師範に見送られて、懐かしの道場を後にする。確かに、私が普通に負けるか、言葉で説得するのがいちばん綺麗な終わり方だったのは認めよう。間違いない。でも、それなら私はただ痛い思いをするだけか、そもそも試合を始めることすらなく将太くんを自立させることになったわけだ。そうすればきっと将太くんは私の事なんて振り切って、立派なキラキラになれていただろうね。

 

 でも、それじゃあだめなのだ。私は自分のキラキラが欲しいのであって、手に入らないキラキラがいくらあっても意味がない。この形で終わらせることで、将太くんを過去から解放しつつ、私に負けたという印象だけは残すことが出来る。要は私という存在を別の形で刻み込んだわけだね。けして、ただなんとなくの気まぐれで、少年の心を弄びたかっただけではない。そんなのは理由の半分くらいだ。ついでに、何かあった時に使える暴力装置の確保。美少女には危険がいっぱいだから大事だね。

 

 ちゃんと鍛えた男の子には勝てないってことが、今回の一件でよくわかったからね。……元々わかっていたくせに?ははっ、ナンノコトヤラ。ともあれ、比較的私に対して好意的で、頼ったら喜びそうな戦力はいた方がいい。使う予定はないよ。だって、そんな機会があるってことは、私がどこかで立ち回りをしくじったってことだからね。私は完璧美少女として振舞っているわけで、多少の嫉妬くらいならともかく本気の悪意を向けられるような生き方はしていない。嘘。向けられてもおかしくない生き方はしているけど、今の所向けてくる相手はいない。

 

 なんかあったら呼べよと、頼りにして欲しいアピールをする将太くんに、私に負けた将太くんを呼ぶの?と聞いてみると、拗ねたように言い訳をしてくれた。油断していなければとか、次があればけちょんけちょんにとか、負けワンワンの遠吠えが心地いい。最初に言ったと思うけど、君に次なんてないんだよ。そして私は言い訳を聞かない。こうなることがわかっていたから、色々と条件をつけておく必要があったんだね。

 

 ちゃんと冗談だと伝えた上で、もし何かあったら守ってねと約束する。ついでにそっと指を絡めて、嘘ついたらハリセンボン呑ますと言えば完璧だ。言質、とったからね。嘘ついたら生きたハリセンボンそのまま呑ませてやる。なんの罪もないのに丸呑みされるハリセンボンさんかわいそう。

 

 こうして非常戦力もとい新しいキラキラ候補を確保して、私の学校生活は平和になった。いつも通り一緒に登校する智洋くんと、なんだか安心する美保さん。きっしょい挨拶の聡くんに、俺以外のやつに負けてほしくないと言って付きまとうようになった将太くん。もう君と戦うことはないから、それなら私は誰にも負けられなくなってしまうね。

 

 そんな愉快なお友達で、私のメイン交友関係はおしまいだ。その他大勢のみんなとも話はするけれど、最低限の人間関係を維持するためって理由が私の中では大きいから、あんまりお友達って感じがしないのよね。どこからどこまでを友達に含めていいのか、相手も友達と思ってくれているかが心配になる、典型的なコミュ障だね。つまり私は人当たりのいい人気美少女コミュ障である。何を言っているのかわからないね。

 

「そういえば真白、なんでお前、空手やめたんだ?お前の実力なら、多少体格差があっても初等部までならいけただろ?」

 

 いつも通りのお昼休憩、美保さんと二人で仲良くランチを楽しもうとしている百合の花園に、突然紛れ込んできた異物は脳みその四分の一くらいが空手でできている将太くん。私はあまり気にしないからゆるされるけど、他のところで同じことしたら君八つ裂きにされるぞ。気をつけなよ。

 

 まったく、私が造花じゃなかったらどうなっていたことかと思いながら、将太くんの質問への答えを考える。これがただの無粋な輩だったら、答えずに失せろと言ってもいいのだが、私が無事かと心配していた美保さんは、どうやら私の過去に多少興味があるらしいのだ。まあ、私のようなかわいい少女が将太くんみたいなのに試合を挑まれて、勝ってきたと言っていたら、そりゃあ興味も湧くだろう。

 

「うーん、理由らしい理由はないよ。身体の成長に限界が見えたからっていうのもあるし、護身用としては十分なくらい習得したのもあるし。上を目指さないなら、やるとしても型の練習くらいだしね。それならわざわざ道場に行かなくても、鏡見ながらすればいいし」

 

 普通なら鏡みても無理かもしれないが、私には素晴らしきハイスペボディがある。そのおかげで、道場に通い続ける理由がなかったのだ。そんな、適当に思いついた理由を話してみれば、将太くんはそうだったのかと神妙な顔になった。こんな嘘に騙されちゃってかわいいね。

 

 実際のところは、カラテ少女よりもヤワラ少女の方が響きがかわいいなと思ったからで、将太くんに勝った時の背負い投げもそこで習得したものである。ちなみにそっちの道場は妹ちゃんにくさいと言われたため三日でやめた。でもうん、伝えない方がいい真実ってものも、世界にはあるよね。私はそういうことは気にするタイプなのだ。わざわざ少年に教える必要はない。

 

 真白さんってそんなに凄かったんだね〜とのんびり感心している美保さんと、昔から同年代では負け知らずだった自分が唯一勝てなかった相手だと誉めそやす将太くん。よせやい照れる。今の私はどこにでもいるただのハイスペ美少女だよ。

 

 そのまま当たり前のように百合百合ランチタイムに入り込んだ将太くんを、こいつ空気読めないなと思いながらお話しつつ、お弁当を食べる。今日のふりかけはおかかっ!わーいっ!光、おかかふりかけ大好きー!ふりかけに限らずママ様が用意してくれるお弁当ならなんでも好きだけどね。日の丸を忘れた日の丸弁当でも喜んで完食してみせよう。そうならないために学校にふりかけは常備しているけど。

 

 そんな和やかなお昼ご飯が終わり、将太くんに今度試合があるから応援に来てほしいとお願いされる。……なぜ私が貴様のことなど応援せねばならぬのだ。負け犬風情が、身の程を弁えろっ!なんて言うはずもなく、思うはずもなく、都合が合えば応援行くねと伝える。見た目で大体の力量はわかるけれど、実際にどの程度のキラキラを秘めているかは、スポーツに励んでいる姿、試合中の姿を見ることでしかできない。もしキラキラが足りていないようなら、その場で見限ってほかのキラキラを探すこともできる。空手繋がりならちょうどいい繋ぎもいるし、行く価値があるね。

 

 ただ、一人で行くのもさみしいので、デートしない(一緒に行かない)かと美保さんを誘う。応援なんていくらいてもいいですからねと将太くんも肯定的で、私とのお出かけに美保さんも満更でもなさそう。さては脈アリかな?

 

 どうせデートするなら妹ちゃんが良かったなと美保さんに失礼なことを考えながら、他に興味ありそうな人がいたら誘ってみるねと将太くんに伝える。いくらいてもいいと言った手前、嫌とはいえず、けどどちらにせよ自分の試合に興味がある人なんてそんなに居ないだろうとタカをくくって肯定する将太くん。本当は私だけを誘いたかったんだよね、わかるわかる。でも思い通りに動いてやるのは癪なんだよ。

 

 執着心を恋心と勘違いした哀れな少年の心を手のひらでコロコロ転がして遊び、まだ数学以外は本格的に始まっていない授業を終えれば、楽しい楽しい下校時間。おまたせ智洋くん、一緒に帰ろ?

 

 帰宅に私を誘おうとしていた将太くんをその場に残し、智洋くんと仲良く帰る。ふふっ、智洋くん、外部進学の子でお友達ができたんだね。私以外のお友達、これでお隣ママに嘘をつかなくても良くなったね。よかったね。

 

 もっと喜んで、はしゃいでもいいのに、不思議とあまり表情が優れない智洋くん。一体何があったというのだろう。……新しく出来たお友達に浮かれていたら、大好きな幼なじみがよくわからない人と試合することになって、それが終わったら仲良くなっていた。そしてその野郎はやたらと親しげで、距離が近い。うん、ちょっと曇るには十分な展開だね。だからこの子の瞳には今粘性があるのか。

 

「真白さん、あの六角って人と、何があったの?大丈夫って言っていたから決闘云々の時も何も言わなかったけど、やっぱり気になるよ」

 

 六角何某とは、将太くんの苗字である。同じクラスの智洋くんには当然、決闘決闘と付きまとっていた将太くんのことはバレているわけで、大事にはならないから心配しないでと誤魔化していたのだ。それが一晩であんなに仲良くなってたらそりゃあ驚くし、気になるし、ちょっと嫉妬もするだろう。思春期の少年としては健全だね。

 

「ちょっと話して、誤解とか勘違いをなおして、昔話をしただけだよ」

 

 細かい内容は将太くんのプライバシーだから言えないと言えば、いい子な智洋くんはそれ以上話を掘り下げない。他人を尊重できる優しい子に育ってくれたね。育成に関わった身として私も鼻が高い。

 

「ちょっと変わったところはあるけど、将太くんはそんなに変な子じゃないから大丈夫。……そうだ、今度将太くんの試合を見に行くことになってるんだけど、ひろちゃんも一緒にどう?」

 

 まともに話したこともないクラスメイトの、興味のないスポーツの試合。何が楽しくてそんなもの見に行くんだという話だが、同行者が想い人となれば話は別だ。晴れ渡った雲海でも、人工雪の雪景色でも、嵐の日の水鏡でも、好きな人と一緒なら絶景なのである。何を見るかより、誰と見るか。その方が人には大切なので、私がいれば智洋くんが空手の試合を見に来る可能性は十分にある。

 

「行くっ!僕も!」

 

 しょぼい餌だけつけた針を、大した期待もせずに垂らせば、お魚さんはすぐに食いついた。フィーッシュッ!入れ食い状態かな?釣り人初心者には智洋くん釣りをおすすめしよう。餌は幼なじみとのデートに見せ掛けたただのお出かけ。簡単に用意できるね。

 

 智洋くんが一緒で嬉しいなと喜んでみせて、智洋くんの自己肯定感をよしよしする。好きな人が自分と一緒のおでかけを喜んでくれて、うれしいうれしいだね。まるで自分にそれだけの価値があるみたいに思えて幸せだね。おやつくん風情が思い上がるなよ。

たまに入っているSEEDネタ

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