FREAKS 作:メヤニ
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「すでに君自身の身体にも変異が起きている」
ハヤマの言葉を受け、ベッドに横たえた自分の身体を眺めた。
「何も変わった所は見られないが」
「外見はね。どうやら君には身体を硬化させる異能が宿ったようだ」
男の視線は俺の腕につながれている、点滴の管に向いていた。
「針を刺すのに難儀したんだよ。そのままでは針が通らなかったから、色々試して結局表面麻酔を使った」
麻酔で異能を無効化できると分かったのは収穫だったよ、とハヤマは嬉しそうに口にした。
目が覚めたとき、その場にいた看護師の顔が一瞬、強張ったのを思い出した。彼女の違和感のある表情は、異能者という存在に向ける、警戒を含んだものだったのだと納得した。
「それで、俺は研究のために監禁でもされるのか?」
「そんなわけないだろう。倫理的にアウトだ。・・・・・・でも、うちの管理下にはなるね、保護観察とでも言えばいいのかな。犯罪者みたいで不服だろうけれど、君の異能は周囲に害のあるものではないから監視も緩い」
白衣の男は少しだけ言いにくそうに告げる。自分の想像しているよりは人道的な扱いを受けることに安堵していた。特に異論を挟まずに、次の言葉を待つ俺に、ハヤマは意外そうに眉を少し上げる。
「随分聞き分けが良いんだね。もう少しごねられると覚悟してたよ」
「ごねたところで多分変わらないんだろう?」
「まあね。・・・・・・ただ個人的にはヤツらの勢力拡大を防いだ功労者に対して、申し訳ないとも思ってるんだよ?」
皮肉っぽく返すと、ハヤマは苦笑しながら言葉通り申し訳なさそうにぼやいた。
「・・・・・・ヤツらを四体駆除できたのは、そこそこの成果だったと考えていいのか?」
つい、そんな問いが口をついた。アオキさんを含む犠牲が、無駄ではなかったと確かめたかったのかも知れない。
「数というよりは、大型を始末できたのが良かった。やつらはコアを生む可能性があるから」
「コア?」
「ヤツらの発生源、とでも言えばいいのかな。人気のない場所にいつの間にかあるものだから、未だに理解が及ばない部分が多いけれど」
「コアを生むってのは・・・・・・?」
「大型の報告があった場所には後日、必ずと言って良いほど新しいコアが発生しててね、大型がコアの元になってるって説が、今のところ最有力なんだよ」
ハヤマの言う説が正しければ、確かに俺たちは新たなフリークスの発生源が生まれるのを阻止したことになる。功労者という妙に大げさな言い方も腑に落ちた。しかし、それならばあの地帯の問題はまだ解決していない。
「・・・・・・すでにあるコアは処理できてない」
「そういうこと。そこで君に協力を頼みたいんだ」
神妙な面持ちでハヤマは俺を見据えた。俺は次に出てくるであろう言葉を予想し、先んじて口にした。
「もう一度、あの化け物の相手をしろって?」
「心苦しいが、つまりはそうだ」
「・・・・・・銃もダメになって、仲間もいない。俺一人でどうにかなるとは思えないぞ」
「武器も仲間もこちらで用意する。仲間については、今の君にとって必要か分からないが」
「どういう意味だ?」
意味深なハヤマの言葉につい顔を顰めた。ハヤマはゆっくりとベッドに置かれた俺の腕を掴むと、胸ポケットに入れていたボールペン握り、ペン先を突き立てた。
「おいっ!」
痛みを予想して声を荒げるも、腕に走るはずの痛覚はなく、代わりにペンが折れる乾いた音が響く。
「この通り、君の身体はフリークスの爪や牙でも傷つけることは出来ないはずだ、致命傷を受けることはまずないだろう。ケガする可能性のある人間を付けるより、君一人の方がむしろ効率的かもしれない」
白衣の男は至って平坦な声でそう告げる。
「だからって急に突き刺すことあるかよ!」
「見た方が早いだろう」
ハヤマは折れたボールペンの先を床から拾いながら笑っている。
「それだけ大きな声が出せるってことは体調も大分戻ってきたかな」
その言葉については、不本意ながらハヤマの言うとおりだった。意識ははっきりとしているし、全身にも問題なく力が入る。立ち上がるのにも、何の支障もないだろう。俺は無言で腕に刺さっている点滴の管を引き抜いた。
その様子を満足そうに眺めていたハヤマは、真剣な顔に戻り、俺に告げる。
「じゃあ、顔合わせといこうか」