FREAKS 作:メヤニ
「俺が監禁でもされるのかって聞いたとき、倫理的にどうのっていう話をしていなかったか? 子どもを戦わせるのは問題ないのかよ」
「彼女がここにいるのは、自由意志だよ」
ハヤマは顎で少女を指しながら、答える。
「どちらにせよ監視が付くんだから、少しでも利用してやらないと癪だもの」
「……利用?」
「給料が良いの、ここ」
「福利厚生も良いからね、君もきっと満足すると思うよ」
今まで言い合っていた二人も、職場環境については意見が合うようだった。しかしハヤマの言葉に少し引っかかるものがある。
「……俺が手伝うのは今回の件だけだろう?」
ハヤマの言い方から感じられるのは、まるで俺が先ほど少女が口にした『特変室』なるものに所属して、今後も化け物退治に駆り出されるようなニュアンスだった。
「君は察しがいいから、言わなくても分かるものだと思っていたけれど」
白衣の男は気まずそうに頬を掻く。
「もちろん、彼女と同じように自由意志が尊重される。だが、よく考えてみてくれ、今の君が働いている会社よりずっと良い条件を提示できるぞ。……命がかかっている以上当然ともいえるが」
俺が目を覚ましてすぐ、ハヤマが口にした「管理下におく」という言葉は思っていたよりも広い意味を持っていたようだ、と認識を改める。
「……それに、異能者についてもいずれ世間に公表されるはずだ。さっき君も経験しただろう、異能者がどんな視線にさらされるか。今まで通り、普通のサラリーマンとして過ごせる保障はないぞ。まさか猟師だけで食っていくつもりじゃないだろう?」
「脅してるつもりか?」
「そんなわけないだろう、君へのメリットを提示しているだけだよ。詳しい話は応相談、という形にはなるが」
白衣の男はそこまで口にして、ふと面白いことを思いついたように口角を少しだけ上げた。
「……それに脅すならもっといいネタがある。フリークスと交戦したときの話をしてくれただろう、死んだ仲間のライフルを撃ったって。君が所持しているのは散弾銃の免許だけのはずだ」
「……随分詳しく調べられたもんだな。気持ち悪いくらいだ」
自分の顔が引きつっていくのを感じる。ここまでの話で目の前の男が、自分が所持している免許をはじめ、経歴まで把握していることは分かった。口にはしていないが、おそらく住所や人間関係についても調べはついているのだろう。
「気持ち悪いっていうのは私も同意する。まぁ貴方が残ろうが、いなくなろうがどうでもいいけれど」
しばらく黙っていた少女が口を挟んだ。その無表情からは何を考えているのかは読み取れず、きっと言葉通りにとらえる以外ないのだろう。まるで俺に興味がないのだ。
ただ、そのような他人に興味のない、自己中心的な人間が留まるだけのメリットが、この組織にあるのかもしれない。そう思い始めていた。
「……君が特変室に所属してくれるに越したことはないが、このネタで君を脅したいわけじゃないんだ。それはわかってくれ。君が望むなら、今ここで聞き取りの録音データを消したっていい。繰り返しになるが自由意志だ。ただ、特変室にとって、すでに実戦経験のある異能者は喉から手が出るほど欲しい人材なんだよ」
ハヤマは話し終えると、俺の反応を伺っていた。
「……分かったよ、よろしく頼む」
「よかった。では早速、今回の目標と現在上がっている情報について説明したいんだが……」
目じり下げて安堵したハヤマは、すぐに真面目な表情に戻り、会議室のプロジェクターの電源に手をかけた。